マックスバーガー
純「あー、いい買い物した」
梓「うまくなりたいならジャズ研の先輩に教えてもらえばいいじゃん」
純「そうなんだけど~…先輩たち最近忙しそうだからなかなか声かけられないんだよね」
純「それに今回の大会はジャズ研にとって重要なものだし…気合い入ってんだよ」
純「だから私は自主練でがんばるしかないのっ」
梓「……」
純「…梓?」
梓「いいな~、そっちは真面目に部活やってて」
梓「純も音楽だけには真剣になれるみたいだし…環境が良いんだろうなぁ」
純「それじゃまるで音楽以外は真剣じゃないみたいだね…私」
純「でも軽音部は学祭ライブ成功させたじゃん。みんなすごいって言ってたよ」
梓「そうだけど…その後がね」
純「あと?」
梓「なんかいつもみたいにダラダラっていうか、いまいち締まりがないっていうか…」
梓「ライブ終わった後なのにこんなんで良いのかなって」
梓「もっとモチベーション上げてバリバリ練習してもいいはずなのに…」
純「軽音部らしいじゃん」
梓「だから、それがイヤなのっ」
純「ふーん……」モグモグ
梓「はぁ…このままダラダラ過ごしてていいのかな」
梓「せっかくの高校生活なのに…私までダメになりそう」
純「……」モグモグ
梓「私はもっと目標高く過ごしたいの」
梓「だから毎日をしっかりと…」
純「……」ゴクゴク
梓「…って、聞いてる?」
純「聞いてる聞いてる」モグモグ
梓「…本当に?」
純「ていうかさ、梓もけっこう腑抜けてたんだから練習なんてできないでしょ」
梓「!!」
梓「ふ、腑抜けてないっ!!」
純「どうだかなー」
梓「……」
梓「とにかく私は…目標にまっすぐとした学校生活を送りたいの」
純「ふーん…大変そうだね」
梓「大変そうって…」
純「まぁ…だったら今の梓のままでもいいと思うけどね、私は」
梓「えー…?」
梓「それじゃあ何も変わらない気が…」
純「食べ終わったしそろそろ出よっか」
梓「あ…うん」
純「…私、今日思ったんだけどさ」
梓「なに?」
純「梓って以外と…」
梓「?」
純「…やめた。やっぱなんでもない」
梓「な、なにそれ?気になる」
純「別に大したことじゃないよっ」
梓「こら純!教えろー!」
純「さてと、もう帰…」
純「あっ!ゲーセン寄っていかない?」
梓「え?」
純「なんかクレーンゲームやりたくなってきちゃった」
梓「いいけど…」
純「よーし、いっぱい取るぞー!」
ゲームセンター
チャリン
ウィーンウィーン
純「よし…そこだ!!」
ウィーン…ポロッ
純「あっ!?」
梓「落ちちゃった」
純「このぬいぐるみはダメだね、絶対取れないよ」
梓「諦め早っ!?」
純「じゃあ梓やってみなよ。無理だから」
梓「むっ」
梓「そう言われて引き下がるわけにはいかない…」
チャリン
ウィーンウィーン
ウィーン…ポロッ
梓「!?」
純「ね?難しいでしょ」
梓「も、もう一回」
チャリン
純「チャレンジャーだねー、梓は」
ウィーンウィーン
ウィーン…ポロッ
梓「!!」
純「あはは、だから無理だって」
純「ほら、他のゲームやりにいこうよ」
梓「もう一回…」
純「まだやるの?じゃあ私は適当にゲームやってくるね」
梓「うん」
チャリン
ウィーンウィーン
ウィーン…ポロッ
梓「にゃっ!?」
純(これは厳しい戦いになりそうだ…)
数十分後
純「お金ちょっと使いすぎちゃったかな…」
純「まぁいっか」
純「そういえば梓の方はどうだろう?」
ウィーン…ポロッ
梓「あっ」
純(まだやってる!?)
梓「うぅ…あとちょっとだったのに…」
純「もう諦めなって」
梓「……まだ」
純「え?」
梓「財布の中のお金はもうこれだけ…これがラスト!」
梓「最後の挑戦!!」
純「あーはいはい、私は止めたからね」
梓「やってやるんだから!!」
チャリン
ウィーンウィーン
純「おっ…いい感じじゃん」
梓「ここからだよ…ここからが勝負」
梓「ここで失敗したら全てが水の泡…!!」
純(なんか気合い入ってる…)
ウィーン…
梓「!」
梓「い、いけっ!!そこっ!!」
純「あっ、あとちょっと!」
ウィーン…ストンッ
梓「!」
純「や、やった…」
梓「取ったどー!!」
純「やるじゃん梓!まさか本当に取っちゃうなんて!」
梓「えへへっ」
純「たいしたもんだよ」
梓「何回もやればコツつかむ…」
梓「……」
純「ん?梓?」
梓「なんかさ…冷静に考えたら」
梓「お金使いすぎた。財布の中カラっぽ…」
純「…ドンマイ」
梓「はぁ~ぁ、なにやってんだろ私」
梓「こんなくだらないことに真剣になっちゃって…バカみたい」
純「別にいいじゃん、それで」
純「ほら、梓が言ってた…」
純「目標にまっすぐな高校生らしくて」
純「それでぬいぐるみも取れたんだし」
梓「そういう意味で言ったんじゃないんだけどなぁ…」
純「まぁ一つのことに夢中になってさ」
純「財布もカラっぽになったけど、頭もカラっぽになってスッキリしたんじゃない?」
梓「…なんだか嬉しくないような」
純「細かいことは気にしない気にしない」
梓「はぁ…」
純「あっ、私こっちだからここでお別れだね」
梓「うん、バイバイ」
純「梓、明日からはボーッとするんじゃないよ」
梓「わかってるよ」
純「じゃーね!」
梓「じゃーね」
梓「…ふぅ」
梓「……」
梓「頭もスッキリか…」
梓(シャキッとしなきゃ、私!)
梓「……」
梓「このぬいぐるみどうしよう…」
鈴木家
~♪
純「このフレーズが難しいなぁ…」
純「いたたっ、手が疲れてきちゃった」
純「うーん…」
純「……」
純「そうだ!気晴らしにネットしよう」
純「確か梓が買い物安くできるって言ってたし、ちょっと覗いてみようかな」
カチカチッ
純「どれどれ…」
純「へー、いっぱいあるんだね」
純「あっ、ギターやベースも売ってる…」
純「……」
純「私が中古で買ったベースはどれくらいの値段なんだろう」
カチカチッ
純「!?」
純「な…安っ!?」
純「私のときより安っ!!」
純「なにそれー!これじゃあ私損しちゃったみたいじゃん!!」
純「……」
純「……はぁ」
純「……」
純「いや、後悔はしてない」
純「このベースを買ってよかったんだ。私が自分の目で直接見て決めたんだもん」
純「……」
純「でもやっぱりショック」ハァ
純「あっ…今日買ったDVD…」
純「…まぁいいや、明日からで。なんかやる気出ないし」
翌日
軽音部 部室
律「さーて、今日は――」
梓「練習頑張りましょう!!」
律「お茶飲もっと」
唯「わーい」
梓「結局そうなるんですか…」
紬「はいどうぞ、梓ちゃん」
梓「あっ、ありがとうございます」
唯「あ!あずにゃんそのぬいぐるみどうしたの?」
唯「かわいいね~っ!」
梓「これは昨日ゲーセンで取って…唯先輩が好きそうだなと思って持ってきたんです」
唯「えっ!私にくれるの!?」
梓「はい、いいですよ」
唯「わ~い!ありがとあずにゃーんっ!!」
梓「……」
梓「やっぱダメです」
唯「えぇ!?」
梓「ちゃんと練習したらあげます」
唯「そんな~!!」
梓「欲しかったら真面目にやってください」
唯「う~…ぬいぐるみは欲しい…」
唯「でもお茶は飲みたい~…!」
唯「どうしようどうしよう~…」
梓「どんだけ悩んでるんですか…」
紬「うふふっ」
律「まったく唯はしょうがないな~」
澪「お前も部長なんだからしっかりしろ」
梓「…クスッ」
ジャズ研 部室
先輩「さ、今日も張り切って練習よ!」
先輩B「は~い」
純「……」
先輩B「どうした純?なんか元気ないね」
純「いや…昨日ちょっとショックなことがありまして」
純「私はこのベース選んでよかったのかな~って…」
先輩B「?」
先輩B「なんかよく分かんないけど…そういう時は楽器の声を聞けばいいんだよ~」
純「が、楽器の声…?」
先輩B「こうやって自分の楽器を抱き締めれば、声が聞こえるはずだよ~」
純「えぇ~??」
純(そんなこと…)
先輩B「ほら、やってみなよ~」
純「……」
純「…じゃあ」
純「……」ギュッ
先輩「…純、なんでベース抱き締めてるの?」
純「えっ!?あ、これはベースの声を…」
先輩B「聞こえるわけないじゃんそんなの」
純「えぇっ!?」
先輩「バカなことやってないで早く練習するわよ」
先輩B「面白いな~純は」
純「も、もうなにも信用しませんからね!!」
#13
おわり
最終更新:2010年11月13日 00:29