#15
キーンコーンカーンコーン
純「梓、前に猫預かってくれてありがと」
梓「え?あぁ、うん」
純「これ、今さらで少ないですがどうぞ」
梓「……なにこの封筒?」
純「中に謝礼が入ってるよ」
梓「謝礼…?」
梓(まさか……お金!?)
梓「い、いいよいいよそんな!!受けとれないよ!!」
純「えーなんで?」
梓「だって…そんな大げさなことしたわけじゃないし」
純「せっかく梓のために用意したのに…」
梓「だけど、お金はさすがにちょっと…」
純「お金?なにが?」
梓「は?」
純「私があげたいのはドーナツの割引券だよ」
純「封筒の中見てみて」
梓「……」
梓「あっ、本当だ」
純「まったく梓は、そそっかしいんだから」
梓「じゅ、純がややこしいことするからだよ!わざわざ封筒なんかに入れて…」
純「なんかコレに入れた方がお礼っぽいじゃん?」
梓「もう……じゃあ、ありがたく受けとっておく」
純「どうぞどうぞ」
純「あっ、そうだ。放課後どうする?」
梓「放課後?」
純「もうすぐ試験だし、図書館で一緒に勉強しない?」
梓「あー…ごめん。学校終わったら先輩たちと約束があって」
純「そっか…」
梓「ごめんね」
純「ううん。いいよ別に」
純(憂はどうかな…)
――ジャズ研 部室
先輩「……」
先輩「……はぁ」
ガチャッ
先輩「!」
先輩B「あっ、いた」
先輩「な、なんであんたが…」
先輩B「ここで勉強しようと思って」
先輩「どうしてわざわざ…」
先輩B「だって図書館は飲食禁止だし~」
先輩B「でもここなら、お菓子もジュースも食べ放題飲み放題」
先輩「そんなことのために?」
先輩B「甘いもんは脳の疲労を回復させるんですよ」
先輩「はいはい」
先輩B「それにしてもいいな~三年は。期末試験がなくて」
先輩「こっちはもうすぐ人生のかかった試験があるっての」
先輩B「大学受験ですか」
先輩B「…で、ここでなにしてるんですか?」
先輩「………勉強」
先輩B「わざわざこんなところで?」
先輩「い、いいじゃない!気分転換よ気分転換!!」
先輩B「ふーん……まぁいいけど」
先輩B「じゃ、お邪魔します」
先輩「まったく…これじゃあ集中できないわ」
先輩B「でも一人じゃ寂しいですよ」
先輩「なに?あんた寂しがりやだったんだ」
先輩B「いや、先輩が」
先輩「なっ!?」
先輩B「分からないところがあったら教えてあげますよ~」
先輩「っ!」カチンッ
先輩「ノーサンキュー!!」
先輩B「おぉ…英語だ。気合い入ってる」
先輩B「でもまだまだだね~…」
先輩B「――No,thank you」
先輩「!?」
先輩B「こうやって発音するんですよ~」
先輩「う、うるさい!」
――一年生 教室
憂「ごめんね、帰ったらすぐスーパーに行かなきゃいけないの」
純「スーパー?」
憂「うん、半額セールが今日までなんだ~。だから安いうちにいっぱい買っておこうと思って」
純「主婦だ…」
憂「だからごめんね。でも明日だったら大丈夫かも」
純「りょーかいっ」
純(憂もか……)
純(しょうがない、一人で勉強しよ)
――図書館
純「……」
純「……」
純「……」
純「はぁ~……」
純(だめ……全然頭に入らない)
純(このままじゃテストまずいなー…)
純(赤点なんて取ったら先輩になんて言われるか…)
純(憂ー梓ー!助けてー!!)
和「あら?」
純「あっ…」
和「えっと…確か憂の友達の…」
和「純ちゃんだっけ?」
純「はい。こんにちは、和先輩」
和「そこの席いいかしら?他が空いてなくて」
純「どうぞ、いいですよ」
純(やった!救世主がきた!!)
純(和先輩なら頭も良さそうだし、分からないところを聞い…)
和「……」
純「……」
純(そんな気軽に話しかけれるほど仲良くはなかった…)
和「……」
純「……」
純(どうしようかな…聞いてみようかな)
純(でも和先輩ってなんか怖いんだよね)
純(もし迂闊に話しかけたら――)
和『集中してるの、邪魔しないで』
純『ひっ…』
和『それにここは図書館よ。私語は慎みなさい』
純『ご、ごめんなさい!!』
和『分かったなら手を動かしなさい。試験はもうすぐなんだから』
純『はいぃ!!』
純(……ってことがありそう)
和「どうしたの?」
純「はい?!」
和「教科書ジーっと眺めてるけど…なにか分からないところがあるの?」
純「いや…その…」
和「分からないところがあったら私が教えてあげるわよ」
純「え…いいんですか?」
和「えぇ、せっかくだし」
純「あ、ありがとうございます」
純(よかった…普通にいい人だった)
純「ここと、ここが分からなくて…」
和「ああ、そこね」
和「ここは公式に当てはめて、こっちはその応用だから…」
和「……」カキカキ
和「はい、こういうことよ」
純「なるほど~」
和「他にも何かあったら遠慮なく聞いてね」
純「はい!」
純(かっこいいなー…)
和「……」カキカキ
純「……」
純(考えてみれば、先輩たちってみんなかっこいい…)
純(ベースが上手かったり、美人だったり、頭が良かったり)
純(みんな長所があって…)
純「……」
純(私はどうやったらかっこよくなれるんだろう)
――軽音部 部室
律「ありえねぇ!!」
律「なんで部室に来てまでテスト勉強するんだ!?」
澪「いや…勉強するから集まったんだろ」
律「えー勉強やだやだー」
唯「やだやだー」
澪「なに言ってるんだよお前たちは…」
律「そうだ!気晴らしに演奏でもしようぜ!」
唯「はい!りっちゃん隊長!」
唯「私は大賛成です!!」
律「うむっ」
澪「気を晴らすほど勉強してないだろ!!」
梓「テスト期間なのにそんなことしてて…いいんですか?」
唯「少しくらいはいいじゃ~ん」
梓「さわ子先生、なにか言って…」
さわ子「ムギちゃん、おかわり」
紬「は~い♪」
梓(餌付けされてる!?)
さわ子「お願い!今日だけは甘いもの欲しいの!!」
澪「はぁ……」
澪「仕方ない。梓、私たちはちゃんとやろうか」
梓「そうですね」
律「やーい真面目ー」
澪「お前たちが不真面目すぎるんだろ」
さわ子「そうよ、テストが近いんだから勉強しなさい」
さわ子「赤点でも取ったりしたら部活できないのよ?」
唯「うぅ…」
律「はーい…」
梓(先生が今日初めて先生らしいことを!!)
さわ子(部活ができないとケーキが食べれない)
さわ子(それだけは阻止しないと…!)
律「…しゃーない、やるか」
唯「ねーねーさわちゃん」
さわ子「どうしたの唯ちゃん?」
唯「数学の問題教えて」
さわ子「えっ」
唯「ここが分かんないの~」
さわ子「……」
さわ子「私、音楽の先生だから~」
唯「そっかぁ」
律(逃げたな先生)
唯「ならあずにゃんに教えてもらおうかなっ」
梓「何で私なんですか…」
唯「あれ?あずにゃん、それなに?」
梓「え?」
唯「その封筒」
梓「あぁ…これですか?」
梓「純からもらったんです。ドーナツの割引券」
唯「おぉ!!」
梓「ど、どうしたんですか?」
唯「いいな~ドーナツ」
梓「……」
梓「……一枚だけなら」
唯「あずにゃん大好き!!」ギュッ
梓「にゃっ!?」
唯「お礼にスリスリしてあげる~」スリスリ
梓「や、やめてください!」
律「仲良いなーお前たちは」
唯「えへへ~」
梓「はぁ……」
唯「学年が上がっても頑張ろうね、あずにゃん」
梓「…唯先輩は真面目にならないと上がれませんよ」
唯「ひどい!?」
――ジャズ研 部室
ポトッ
先輩B「あっ、消しゴム落ちた」
先輩「っ…」ピクッ
ポトッ
先輩B「また落ちちゃった」
先輩「……」
ポトッ
先輩B「また、“落ちちゃった”」
先輩「いやがらせ!?」
先輩B「いやだな~リラックスさせようと思っただけなのに」
先輩「イライラしかしないわよ…」
先輩B「まぁ少しは休憩しましょーよ。無理は体に悪いし」
先輩B「私が安らぎの言葉を提供してあげますよ」
先輩「あぁそう……だったら“受かる”とか“当たる”って言葉なら嬉しいんだけど」
先輩B「えー……うーん」
先輩B「例えば?」
先輩「例えば……」
先輩「カルボナーラを食べて、受かる(ボナーラ)」
先輩B「………まさか真面目だけが取り柄の人がこんなこと言うとはなぁ」
先輩「無し!今のは無し!!」
先輩B「あっ、私も思いつきましたよ」
先輩B「走行中のトラックにあたる」
先輩「交通事故じゃない!!」
先輩B「フグの毒にあたる」
先輩「あんた私を殺したいの!?」
先輩B「先輩が死んだらお葬式でスピーチしてあげますよ~」
先輩「絶対ろくでもないことしか言わないでしょ…」
先輩B「そんなことないですよ」
先輩B「今実践してあげましょう」
先輩「……」
先輩B「――先輩は志が高く、素晴らしい人でした」
先輩B「常に目標を高く持つ姿勢は見習いたいものです」
先輩「……」
先輩B「思えば小学生のころから理想が高かったですね」
先輩「え…」
先輩B「確か小学生のころの夢は、セー○ームーンになって宇宙人を倒し星の王子様と結婚…」
先輩「わーーー!!なんであんたが知ってるの!?」
先輩B「元副部長(先輩2)から聞いた」
先輩「あーもー最悪!!こんなこと知られたら死んだも同然よ!!」
先輩「ていうかアンタより先に死ねないし!!」
先輩B「そうかそうか、死ぬんじゃないぞ」
先輩「もういいから喋んないで!」
先輩B「なに言ってるんですか、私がいなきゃ寂しいくせに」
先輩「寂しくない!!」
――平沢家
憂「ふぅ、夕飯完成」
憂「いっぱい作っちゃったな~…」
憂「……」
憂「お姉ちゃんが帰ってくるまでなにしよう」
憂「う~ん…」
憂「お姉ちゃん遅いなぁ」
憂「……」
憂「寂しい…」
憂「早く作りすぎちゃったなぁ…」
憂「うーん…」
憂「勉強しよ」
憂「そうだ…純ちゃん」
憂「まだ図書館にいるのかな?」
憂「メールメール…」
憂「あとお姉ちゃんにも一応送ろっと」
最終更新:2010年11月13日 00:39