背が高くて大人っぽい。
クールでかっこいい。
でもとっても恥ずかしがり屋で怖がりさん。
それでいてメルヘンポエマーときた。
私はこのギャップを目の当たりにしてこう思ったのである。
唯「か、可愛い……!」
こうして私はこの女の子を愛でる対象と認識したのであった。
―――
――
―
澪「……」チラッ
唯「……」ジー
澪(さっきから唯がみつめてる……)
唯「……」ジー
澪「な、なあ唯」
唯「なあに?」ジー
澪「もう授業始まるぞ?」
澪「自分の席に戻った方がいいじゃないか?」
唯「うん、そうだね」ジー
唯「じゃあ、また後ほど!」タタタッ
澪「……?」
唯(う~ん、やっぱり可愛い)
唯(あのツリ目といい、綺麗な黒のロングヘアーといい……)
唯(もうたまんないね!)グッ
――授業中
澪「……」カリカリ
唯(澪ちゃん真剣に授業聴いてる)
唯(ここからだと顔見えないなあ)
唯(……)
唯(澪ちゃんに手紙書こーっと)
唯(えーと)カキカキ
唯(よし!)
唯「ねえ、姫子ちゃん」ヒソヒソ
姫子「ん?何?」
唯「これを澪ちゃんにまわしてくだせえ」
姫子「澪に?わかった」
唯「……」ワクワク
風子「澪ちゃん」
澪「え?」
風子「これ、唯ちゃんからだって」スッ
澪「唯から?」
澪「なんだろう」ガサガサ
『 パンはパンでも食べられないパンはなーんだ? 』
澪(なぞなぞか?)
澪(なんで授業中に……)
澪「……」チラッ
唯「……」ジー
澪(こっち見てる……)
澪「……」
澪「……」カキカキ
澪「ごめん、これを唯に」スッ
風子「唯ちゃんね」
澪(なんだったんだ?)
姫子「はい、これ」
唯「ありがとー」
唯(どれどれ)ガサガサ
『 ショパン? 』
唯(ぐっはあ!)ズキューン
唯(ショパン!?)
唯(普通フライパンと答えるとこをあえてのショパン!?)
唯(しかもなぜに疑問形!?)
唯(可愛いぃぃぃぃ!)バタバタ
先生「おい、平沢!」
唯「!」
先生「なに授業中バタバタしてるんだ」
唯「ご、ごめんなさい!」
先生「まったく……」
澪「……?」
唯(うおおおおおお!)
――休み時間
唯「なあに?」
澪「さっきのは何だったんだ?」
唯「えへへ~、ちょっと暇だったもんで」
澪「暇って……授業中だぞ」
澪「ちゃんと授業聞いてないとみんなに置いていかれちゃうぞ?」
唯「澪ちゃんそんなこと言わないでよ~」ツンツン
澪「ちょっ……」
唯「み~おちゃん♪」ツンツン
澪「脇腹はだめだって……」
唯「えいえい♪」ツンツン
澪「ゆ、指でツンツンするなって……///」
唯(ツンツンって言った!ツンツンって言った!)
唯(ああん!もうっ!)
澪(なんなんだ……?)
――放課後 部室
律「授業やっと終わった~」グデー
澪「律は授業中寝てばっかりだったろ」
紬「今日はショートケーキよ♪」
唯「わーい!」
梓「これ食べたら今日は練習しますからね!?」
律「わかったわかった」
梓「もうっ……」
唯「おいし~」モグモグ
紬「紅茶よ~」カチャカチャ
律「サンキュー!」
澪「あ、おいしい……」モグモグ
唯「……」ジー
唯「澪ちゃん澪ちゃん」
澪「ん?」
唯「あ~ん♪」
澪「えっ、ちょっ……」
紬「まあ!」
梓(あ、いいなあ……)
唯「ほらほら♪」
澪「じ、自分で食べれるよ……!」
唯「み~おちゃん♪」
澪「りつぅ……」チラッ
律「食べちゃえ食べちゃえ」
澪「うぅ……///」
澪「あむっ!」パクッ
唯(きゃー!)バタバタ
律「?」
澪「も、もういいだろ……!///」
唯(今の写真とればよかったなあ)
――下校中
唯(もっと澪ちゃんとお話したいなあ)
唯(そうだ!)
唯「ねえ、今日澪ちゃんの家に行ってもいいかな?」
澪「え、私の家?」
唯「うん」
澪「唯が一人でか?」
唯「うん!」
澪「あー、うん……」
澪「別にいいけど……」
唯「やったあ♪」
澪(なんで唯一人だけ?)
澪(それになんか最近唯のやつ、私にやたらくっついてくるよなあ)
澪「……」
澪「なあ、唯」
唯「なあに?」
澪「その……最近なんで私にくっついてくるんだ?」
唯「……」
澪「……」
唯「澪ちゃん」
澪「は、はい」
唯「一年生の春、私が初めて軽音部の部室に来たとき言った言葉を憶えてる?」
澪「うーん……」
澪「あんまりうまくないですねー……とか?」
唯「のんのん」
唯「私は『可愛いものが好き』って言ったよ」
澪「あー、そう言えば」
澪「……ん?」
澪「それとこれとどういう関係があるんだ?」
唯「ふふっ、秘密♪」
澪「?」
唯「さあ、行こう!」グイッ
澪「あ、ちょっ……」
律「……」
律「なん……だと……」
――澪の家
唯「わーい!澪ちゃんのお家~」
澪「あ、階段ちょっと急だから気をつけて」
唯「あ、うん」
唯(うおっほい!澪ちゃんが私を気遣ってくれたよ!)
澪「……」ピタッ
唯「……」
唯「あれ?部屋入らないの?」
澪「唯……」
澪「5分でいいからここで待っててくれないか?」
唯「え?どうして?」
澪「あの……その……」モジモジ
澪「へ、部屋が散らかってるから……」カアアッ
唯「!」
澪「ちょっと片づけたいんでけど……」モジモジ
唯(くうぅ~!)
澪「唯?」
唯「澪ちゃん!」
澪「は、はい」ビクッ
唯「私、何分でも何時間でも待つよ!」
澪「あ、うん……ありがとう」
澪「すぐ終わらすから!」バタン
バタバタ!
唯(乙女ですぞ!)
ドカーン!
唯(今の澪ちゃんすっごい乙女ですぞ!)
唯(もうたまんないね!)ムフー
――5分後
ガチャ
澪「はあ……はあ……」
澪「唯、入っていいぞ……」
唯「おじゃましまーす」
唯「わあ~、澪ちゃんの部屋だ~」ワクワク
澪「適当にくつろいでくれ」
唯「へえ~」キョロキョロ
澪(なんでこんなに嬉しそうなんだ?)
唯「あれ?このノートは?」ヒョイ
澪「!?」
澪(しまい忘れてた!)
澪「わー!わー!」
澪「これは見ちゃだめ!」バッ
唯「わわっ!?」
澪「あ、ごめん……」
唯「う、うん」
唯「ちょっとびっくりしただけだよ」
唯「そのノートは何が書いてるの?」
澪「こ、これは……」モジモジ
唯「うんうん」ワクワク
澪「あの……ポエムが……」カアアッ
唯「え?ポエム?」
澪「うん……」
澪「歌詞もこのノートから取ってきたりしてたんだ……」
唯「見たい!すごく見たい!」
澪「だ、だめ!」
唯「え、どうして?」
澪「だって……」モジモジ
澪「は、恥ずかしい……」カアッ
唯「!」ズキューン
唯(もう、澪ちゃんったら……)
澪「だから……その……」モジモジ
唯「澪ちゃん」
澪「え?」
唯「私澪ちゃんの書く歌詞、大好きだよ」
澪「え!?ほ、本当!?」グイッ
唯「うん、すごく素敵だと思う」
唯(自分から寄ってきた!)
澪「そうかー、素敵かあ」テレテレ
唯(はうう……)ウットリ
澪「やっぱり分かる人にはわかるんだな!」
唯「だからもっと見たいな」
唯「澪ちゃんの書いた詩を」
澪「ま、まあ、そういうことなら仕方ないな!」
唯「やったあ!」
澪「これなんて自分でも気に入ってるだけど……」
唯「どれどれ」
唯「……」
澪「ど、どうだ?」
唯「すごくいい……」ウットリ
澪「本当か!?」
澪「じゃあこれは!?」
唯(私、今すっごく幸せ……)
澪「えへへっ///」
――帰り道
唯「えへへ~」
唯「楽しかったなあ」
唯「あんな積極的な澪ちゃん初めて見たなあ」
唯「るんるん♪」
唯「でも今日はときめきすぎて疲れちゃった」
唯「今日は早めに寝よーっと」
――律の家
律「くそっ……!」
律「唯の奴……」
律「澪をあんな目で見ていたなんて!」
律「澪を愛でることに関しては私の方が格上だろうが!」バンッ
律「これは明日ガツンと言ってやらないとな」
――翌日 学校
唯「えへへ~」
唯「澪ちゃん♪澪ちゃん♪」
律「おい、唯」
唯「あ、りっちゃん」
律「話がある」
唯「話?」
律「そうだ」
律「最近、澪を随分可愛がってるみたいじゃないか」
唯「……」
唯「うん、そうだよ」
唯「澪ちゃんはすっごく可愛いからね!」
律(こいつ……マジだな)
律(よし……)
律「だがな、唯」
律「お前はまだまだ甘い!」
唯「え?」
律「私も今まで澪を愛でてきた」
唯「私だってそうだよ!」
律「そうかもしれない」
律「でもな……」
律「お前は澪の黄金期を知らないんだよ!」
唯「澪ちゃんの黄金期!?」
最終更新:2010年11月14日 01:03