紬「唯ちゃんは150度、澪ちゃんは140度」

唯「……?」

澪「……何測ってるんだムギ?」

紬「りっちゃんは180度」

律「はい、何測ってるか分かりましたー!」セクハラキンシ!

唯「何だ、お胸のことかー」

澪「うええ!?」サッ

律「こら唯! 人があえてボカしたものを……」

唯「まあまあ気にしなさんな」

律「気にするわ! 絶壁は流石に納得いかーん!」

律「そもそもなんで唯と30度も差がついてんだよ! 昔は大差なかったのに」

唯「慢心、環境の差だよ、りっちゃん!」

律「うるへー」

唯「て言うかいつのまにやら澪ちゃんとの差がたった10度に!」

澪「ン……」

唯「あと一歩であのおっぱいが私のモノに……」ジー

澪「な、なんだよ……///。ジロジロ見るな!」バッ

唯「よし、私は今日からやるよ!」



憂「バストアップ大作戦?」

唯「そうだよ! 澪ちゃんを超えるバインバインになるのです」

憂「うーん。それならそうと一言言ってくれればよかったのに」

憂「お姉ちゃん、冷蔵庫の牛乳飲み干しちゃうんだもん。今日の晩ご飯に使うつもりだったんだけど」

唯「ええ!? ご、ごめん憂ぃ……」

憂「あ、そんな気にしなくていいよ。別のメニュー考えるから。ただ、次からは一言言って欲しいな」

唯「そうだ、私今から牛乳買ってくるよ!」

憂「え、もう日が落ちるの早くなってきたからいいよ!」

唯「だいじょーぶ、大丈夫! それじゃ、ひとっ走り行ってきまーす」

憂「あ、お姉ちゃん! ……もう、気をつけてねーッ!」

唯「はーい」



スーパー!

唯「ぎゅっうにゅー、ぎゅっうにゅー……っと」

唯「自分の分も買っちゃおうかなあ。まだお小遣い貰ったばっかりで余裕あるし」

唯「さて、と……およ? あれは……」

唯「おーい! 澪ちゃーん」

澪「ン……。よお、唯。奇遇だな」

唯「澪ちゃんお買い物ここに来てるの? 少し遠くない?」

澪「いや、近くのスーパーが今度新装オープンするからって今閉まってるんだ」

唯「なるほど」

澪「唯も晩ご飯の買い物か?」

唯「まあそんなところかな」

澪「……牛乳ばっかりこんなにたくさん。いったい何作る気だよ」

唯「えっと……あ、そういえば今晩のおかずまだ聞いてないや。まあとにかく、今の私には牛乳様が必要なのです」

澪「ふうん」

唯「フフフ……見ててね、澪ちゃん。今に追い越してみせるよ」

澪「なんだそりゃ……」

唯「ところで、澪ちゃんちは晩ご飯何なの?」

澪「んーまだ決めてないんだ。もう適当にお惣菜ですまそうかなって思ってたとこ」

唯「澪ちゃんがお料理するんだ」

澪「今日お母さん遅いし、ご飯も食べてくるらしいから」

唯「お母さん?」

澪「……なんだよ」

唯「なんでもー」

澪「む……」

唯「あ、だったらウチで晩ご飯食べてかない? 手料理振舞っちゃうよー……憂が」

澪「いや、流石にこんな直前になってからは……」

唯「大丈夫だよ。ちょっと憂に聞いてみるね」メルメル

ピロリロリン

澪「なんだって?」

唯「ぜひ来てもらってだってー。さあ、澪ちゃん! 拒否権は無いよ!」

澪「……なら、お言葉に甘えてお邪魔させてもらおうかな」

澪「外も暗くなってきたみたいだし、唯を一人で帰らせたら危なそうだ」

唯「むー。どういう意味さー」

澪「はは。そんなむくれるなって」

唯「あっそうだ、明日休みだし、どうせなら泊まっていきなよ」

澪「いや、流石にそれは……。何も準備してないし」

唯「着替えくらい貸すよー」

澪「うーん。ちょっとお母さんに聞いてみる」メルメル

ピロリロリン

澪「わ、はやっ」

唯「なんて?」

澪「オッケー。あまり迷惑をかけないように、だって」

唯「やったあ!」

澪(そう喜ばれると悪い気はしないな)

澪「じゃあちょっと待ってて。流石に下着まで借りるわけにはいかないから、そこで買ってくる」

唯「うん。あんまりエッチなのはダメだよ?」

澪「誰が買うか!」



唯の家!

唯「ただいまー」

澪「お邪魔します……」

憂「お姉ちゃん、お帰り。澪さんもいらっしゃい」

澪「突然ごめんね」

憂「いえ、一人分増えるくらいは何ともないですし。それに、ご飯は大勢で食べた方が美味しいですから」

唯「はい牛乳」

憂「ありがとう、お姉ちゃん。澪さん、まだもう少しかかるのでゆっくりしててください」

澪「うん。ありがとう、憂ちゃん」

唯「澪ちゃん、私の部屋行こっか」

澪「ああ」


唯の部屋!

唯「ほい、飲み物」

澪「ありがと。……唯は牛乳か」

唯「そうだよー」

澪「帰り道でも飲んでたけど、あんまり飲みすぎるとおなか壊すぞ」

唯「大丈夫だよ~」

澪「やれやれ。いったい何を考えてるんだか」



晩ご飯!

唯「おお! 今日はシチューかあ」

憂「どうですか……?」

澪「うん、美味しいよ。やっぱり憂ちゃんは料理上手いな」

唯「そりゃ、私の妹ですから」

澪「唯にこれが作れるのかー?」

唯「む、私だってやるときはやるよ。お望みなら澪ちゃんのために毎朝シチューを作ってあげようじゃないか!」

澪「せめて晩にしてくれ……」

澪「て言うかまた唯は牛乳飲んでるのか」

唯「うん。癖になるね、この味は」

澪「どうなっても知らないぞ」



唯「おなか痛い……」プルプル

澪「ほら、言わんこっちゃない。後先考えずにガブガブ飲みすぎだ」

憂「お姉ちゃん、大丈夫?」

唯「うん……大人しくしてればそのうち治まるよ」

澪「唯は私が見てるから、憂ちゃんは先にお風呂入ってきなよ」

憂「すいません、澪さん。それじゃあ、よろしくお願いします」

澪「うん」

澪「……さて、と。結局何が目的だったんだよ」

唯「それは――」カクカクシカジカ

澪「――はあ、お前なあ……」



憂「お姉ちゃん、本当に大丈夫?」

唯「うん。だいぶ良くなってきたよ」

憂「それじゃあ、私もう寝るから。何かあったら言ってね」

唯「はーい」

澪「……さて、私たちも行くか」ガチャ

唯「ピロートークの時間ですな」バタン

澪「馬鹿言ってないで今日は早く寝ろ」

唯「えーせっかく明日休みな上に澪ちゃんまでいるのにー」

澪「自業自得」

唯「これで効果がなかったら牛乳様を恨むよ」

澪「と言うか、そもそも牛乳たくさん飲めば胸が大きくなるってのは俗説であって根拠は弱いんだぞ」

唯「ええ!? そうなの?」

澪「そうなの」

唯「そんなあ……私の苦労は一体……」フラッ

澪「おい、危な――」

唯「わっ」

澪「うお!?」

ドスン

唯(澪ちゃん用に床に布団敷いてて良かった……けど)

澪(この体勢は……その、色々と不味い)

唯(布団の上で澪ちゃんに覆い被さられた……///)

澪(布団の上で唯を押し倒したような格好に……///)

唯澪(……気不味い!)

澪(と、とにかく退かないと……ん?)

ギュ

澪「唯……?」

澪(袖を掴まれると退けないんだが)

唯「澪ちゃん」

澪「な、なんだ……?」

唯「知ってる? 胸って人に揉んでもらうと大きくなるんだって」

澪「ン……聞いたことはあるな。けど、それも――」

唯「俗説? ね、本当に俗説かどうか、試してみない……?」

澪「え……///」

澪(これはいつも唯がやってるようなスキンシップの類をやれってんじゃない……よな)ゴクリ

唯「ね?」

澪「……」

 一瞬の硬直の後、お互いの身体の隙間が徐々に、しかし確実に狭まっていく。
 覆水盆に帰らず。夜が始まる瞬間、合わせ鏡となった互いの瞳に、それぞれ友達として見せる最後の顔を焼き付けていた。

(了)



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最終更新:2010年11月14日 03:33