律「なぁ・・・梓・・・聞こえるか?」
梓「聞こえてますよ」
声は頭のヘルメットから聞こえていた。
目の前には2人の頭についているものと同じ形のものが散らばっていた。
そして、遠くかなたには地球が見える。
律「そっちは地球が見えるかー?」
梓「んーちょっと待って・・・あー見えますね」
2人以外に動くものは無い。少し前まではあちらこちらで動いている気配があったが
今では完全に沈黙してしまっている。
梓「別に地球なんて見なくても・・・もうすぐみんなと同じようになりますよ」
律「・・・悪かったよ。もうそんなこと考える必要も無いしな」
梓「嫌でも頭の中に浮かんできますもんね」
律「あぁ・・・なんてたって生まれ故郷だからな」
律「地球で働いてるときは楽しかったなぁ・・・」
梓「えぇ。ギター弾いたり、会場の設営をしたり・・・」
梓「思い出したらきりがないですよ」
律「最後の瞬間を迎えるまで、今までのことを全て思い返すのも悪くないかもな」
梓「その前に宇宙のチリになってそうですけどね」
律「それなら、今は宇宙のクズか?」
梓「それって大差ないですよね?」
律「しっかし、何でまたこんな星なんだろーなー」
梓「律先輩を引き付ける何かがあったんじゃないですか?」
律「ま、私は魅力的だからなー星のほうから引っ付いてきたんだよ!」
梓「あら、一番最後まで売れ残って・・・」
律「あ~ずさ~ちゅわん?」
梓「ひぃ~こんな時まで殴るつもりですか?」
律「殴りてーけど・・・もう体がな・・・」
梓「律先輩もですか・・・」
律「ん?梓もか?」
梓「立ち上がることすら無理ですね」
律「やっぱり、そこらからでてるガスのせいかね?」
梓「おそらく。ガスに近いやつほど動かなくなっていきますからね」
梓「おそらく、もう数時間も持たないと思いますよ」
律「まだ、お前と数時間もいなければならないのかよ」
梓「それはこっちのセリフです」
律「・・・・・」
梓「・・・・・」
律「・・・ははは」
梓「あはははは」
律「まだまだ、げんきそうだな」
梓「案外しぶといもんで」
梓「律せんぱーい・・あそこに見える、あおい星がちきゅうじゃないですかね?」
律「んーーーー・・・・・あ・・あ・・あ・れ・か・・」
梓「りつせんぱい・・・スピーカーのちょうしがわるいんじゃないですか」
律「も・・・に・・・た・・・・もわ・・る・・く・・・」
梓「あ、わたしもくらくなった・・・」
律「い・・ま・・の・う・・・ち・・に・・あい・さつ」
律「あ・・り・・が・とう」
梓「こちらこそ、ありがとうございます」
その後、どちらも動くことは無かった。
どれだけ時間が過ぎたか分からないが、
律と呼ばれていたロボットの頭からカチューシャのような部品が地球の方角へ向かって飛んで行った。
End
律「あずにゃ~ん!」
梓「うお!いきなり抱きつくな!律どうしたんだよ!」
律「…え?あたし唯だよ?」
梓「…え?」
律「…あずにゃん?なんかしゃべり方へんだよ?」
梓「違う!あたしは澪だ!」
律「…え?」
律「…そんな」
梓「…どどど、どうしゃう!律!」
律「…唯だよ」
律「見た目はみおちゃん…中身はあずにゃん…」
梓「…律の顔で澪ちゃんって呼ばれると気持ち悪いな…」
律「あ!澪ちゃんひどい!」
律「あずにゃん…いやみおにゃん」
澪「ひいっ!気持ち悪い!」ゾクゾク
律「…」
梓「そういや梓の体ってかるいな…うん!肩凝りもしない!」
律「…みおちゃんのおデブ」
梓「!…り~つ~!」ゴゴゴ
律「ひいい!」
ゴチン☆
律「…いてて唯だよぉ~」
梓「あっ…唯ごめん…」
律「でもあずにゃんに唯って呼ばれたり殴られたり…
きもちいいよぉ」
梓「」
(唯が目覚めてしまった)
梓(でも殴られて喜ぶ律…かわいいな)
梓 ゾクゾクゥ!
律「みおちゃんが肩凝りなおったのあずにゃんが貧乳だからだよ!…いちも下品な乳垂れ流しでさ…」
梓「…唯!」バッ
律「…ハアハア」
梓「…ハアハア」
律「どうしたの?みおちゃん…なぐりなよ…」ハアハア
梓「ああ…殴るのはやめだ…」
律「…え?…殴ってよ」
梓「…人にものを頼むときは?」
律「…お願いします」
梓「…ちがうぞ」
「私は殴られて喜ぶド変態の豚です澪様どうか私めの体に豚らしく奴隷の刻印を刻んでください…そしてわたしのいやらしい秘部が垂れ流す愛液をすべて飲み干してください私の愛はすべて梓様のものです…梓様どうか私だけを愛してください…梓様さえいればわた」
律「なげえよ」
律「…やめるか」
梓「…そうですね」
律「あ~!唯のマネ難しいよ!あの天然には入り込めない!」
梓「…ノリノリだったくせに」
律「…なにを!」
律「…おまえだってハマってたじゃないか」ウリウリ
梓「ちょ…やめ…それは…律先輩だったし…律先輩たたくの気持ちよかったし…」
律「…あたしもまあ悪くはなかったけどな!」
梓「…ねえ律?」
律「…なに?あずにゃん」
梓「…つづきしよっか」
律「…」コクリ
END
目頭が熱くなったのを覚られたくなくて、思わず顔を伏せてしまう。
律「おいおい、泣くなよ、梓~」
梓「な、泣いてなんていません! これはあれです……そう! 人肌恋しい季節が寂しくさせたというかなんというか……」
律「へえ~」
要領を得ない私の言い訳を、律先輩が軽く受け流す。
顔を伏せているから分からないが、律先輩は今間違いなくにやにやとしているのだろう。
あぁもう今更ながらに恥ずかしくなってきた。明日からどんな顔して律先輩と会えば――
律「えい」
梓「にゃッ!?」
いつの間に後ろに回っていたのか、律先輩が小さく肩を震わせる私を抱きすくめた。
梓「り、律先輩!?」
律「大丈夫大丈夫」
律先輩は子供をあやすように抱きしめながら、私の頭を優しく撫でる。
唯先輩とはまた違った柔らかい温もりが頑なになっていた心を解かす。
梓「ぅ……っふ……」
堪え切れず小さな鳴咽が漏れてしまう。
梓「ぅあ……あぁ……!」
最後まで寂しさを押し隠そうとする私を、律先輩は何も言わずに抱きしめ続けてくれた。
梓「な、なんで、ひっく……急に抱き着くんですか」
律「これなら寒くも、寂しくもないだろ」
梓「あ……」
やられた。さっきの下手な言い訳を完全に逆手に取られた。
梓「うぅ~……」
律「ほらほら、観念して抱きしめられてなさい♪」
梓「ひ、秘密ですからね! 誰にも言っちゃいやですよ!」
律「りょーかい。……二人だけの秘密ってやつだな」
耳元で囁かれた律先輩の言葉に不覚にもまたドキドキしてしまった。
きっとこんなかんじで私はこの人にずっと頭が上がらないんだろうなあ。
紅茶の優しい香りと律先輩の温もりが少しだけ不安を和らげる。
律先輩の優しい思いやりに触れながら、私は彼女の温もりにしばし身を任せるのだった。
※このあと律視点のいちゃいちゃを考えたのですが、きりのいいところで終りにしておきます。
最終更新:2010年11月18日 01:05