梓猫が、私に包丁を突き付けてきた。
最初は何をされているのか、全く分からなかった。

ただの冗談だと思ったが、梓猫の目がマジなのを見て、
「あぁ・・・ここで死ぬかもな・・・」
なんて考えた。

いつも道で見かけたら可愛がってやってるのに・・・

律「あ・・梓猫・・取り合えず包丁をおろしてくんないかな・・?」

梓猫「・・・」フルフル

こりゃダメだ。
あぁ・・・お父さん、お母さん、聡、先立つ不幸をお許しください。
さて、小便はさっき済ませたばかりだし、神様にお祈りも終わった。
後は、部屋の隅でガタガタ震えて命乞いすりゃ問題は無いって訳だ。

アーメン。

いや、私は仏教徒だけども。

律「梓猫、な、何が望みなんだ?」ガタガタ

梓猫「おかねください」

律「い、いくらくらいだ?」

梓猫「さんぜんえん」


拍子抜けした。包丁持って強盗してるのに三千円かよ・・・
でも、まだ刺されないとも限らない。
慎重に行かなければ。

律「あ、あぁ、三千円ならちょうど財布の中に入ってるぜ・・・」ゴソゴソ

律「ほ、ほら三千円だ」ピラッ

梓猫「かたいのもください」

これは私に運が向いてきたな・・・小銭は100円玉がいっぱいあるぜ。
ん?でも、梓猫のぷにぷに肉球でこんなに小銭持てるのか?
つーか、お札持ってる梓猫可愛いな・・・

律「小銭のことか?・・・結構多いけど持てるのか?その手で?」

律「で、何買うんだよ?」

梓猫「カリカリ。いっぱいかいたいです」

律「そっか。でもお店遠いぜ?一緒に行ってやろうか?」

梓猫「・・・おねがいします」

律「包丁は重いから置いておきなよ。後で取りにくればいいから」

梓猫「はい」

よし、まずは凶器の包丁をを手放させることに成功したぞ。
つーか、包丁が無ければこのまま押さえ込めるんじゃないか?
いや、梓猫の爪は鋭いと聞いたことがある。
下手な抵抗はやめておこう。うん。

律「じゃ、行こうか?」

梓猫「はい」

律「・・・お腹空いたのか?」

梓猫「・・・はい」

律「いつからメシを食ってないんだ?」

梓猫「みっかまえから・・・」

律「そうか」

梓猫「ほかのねこがきて・・・えさが・・・」

律「・・・もうすぐ美味い飯が食えるからな」

梓猫「はい!」


ちくしょう。可愛いやつめ。後でちょっとだけ肉球を触らせてもらうか。


店員「らーしゃいませー」

律「どのカリカリがいいんだ?」

律「あ、ウェットもあるぜ?」

梓猫「う~ん・・・カリカリにする」

律「お。わかった」

梓猫「・・・」ジーッ

梓猫「・・・・・・」ジーッ

梓猫「まぐろたっぷりのこれもいいな」

梓猫「おにくがはいってるのも・・・」

梓猫「う~ん」


包丁を付き付けてきたくせに、こんなことで悩むのかよ・・・
あーもう、じれったい。


律「悩むなよ、全部買えばいいんだから」ヒョイ

梓猫「・・・ありがとうございます」

店員「お会計はーになりやーす、あーっしたー」


律「カリカリいっぱい買えて良かったな」

梓猫「はい」フラフラ

律「カリカリ重いだろ?それずっと持って歩くのか?」

梓猫「・・・重たいです」

律「貸せよ」ヒョイ

律「私ん家に置いとけばいいぜ?好きな時に取りにくればいいから」

梓猫「・・・はい」

律「家ついたらどうする?もう外寒いよ?今から帰るの?」

梓猫「・・・」

律「私の家に泊まるか?」

梓猫「・・・そうします」


新しい同居人の誕生だな。名前は何にしようか。梓猫と呼ぶのは他人っぽいしなー・・・
あず・・・あずにゃん。うん。これだわ。

これからは君はあずにゃんだ。
よろしく。あずにゃん。

End






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最終更新:2010年11月18日 01:17