朝食後


梓「・・・ちゃんとやってるですか?」

唯「ひっ!!」

梓「何びっくりしてるですか」

唯「だ、だって急に・・・」

梓「掃除は終わりました?」

唯「は、はい!!」

梓「・・・・うん、合格です」

唯「よ、よかった!何度も確認したからね!」

梓「そうですか・・・、で、あちらの手すりは?」

唯「え?」

梓「・・・」

唯「・・・」

梓「朝食の時間、結構ありましたけど、唯さんはこの手すりにずっと時間をかけていたのですか?」

唯「・・・はい」

梓「もう!!!!いいですか、琴吹家のお屋敷はとっても広いんですよ!?手すりだって1個や2個じゃないんです!!」

唯「うっ・・・」

梓「そりゃ最初だから、仕方なく時間がかかってしまうこともあるかもしれ・・・ふう」

唯「・・・」

梓「早く掃除しちゃいましょ」

唯「え?」

梓「説教しても時間の無駄です。旦那さまがお出かけまでに綺麗にしちゃいましょう」

唯「梓ちゃんも手伝ってくれるの?」

梓「今日だけですよ・・・」

唯「ありがとう!!すごく助かる!!」

梓「わかりましたから・・・はぁ」


梓「っと、こんなもんですかね」

唯「うおおお綺麗!!」

梓「いいですか。私達の掃除というのは汚いところを綺麗にするのではなく
  綺麗なところをもっと綺麗にすることです」

唯「はい」

梓「汚れなんてあったら許しませんよ。いいですね?」

唯「はい!」

梓「・・・じゃあそろそろ旦那さま達の御出勤の時間ですね。外に出ますよ」

唯「いよいよなんだね・・・」

梓「昨日教えたことをきちんとやれば大丈夫です。そんな緊張しないで」

唯「ハ、ハイ」

梓「あ、来た・・・!」

唯「!!」


ぞろぞろ

梓「いってらっしゃいませ、旦那さま」

唯「い、いってらっしゃいませ旦那さま」

旦那「うむ。お・・・新しい使用人か?」

梓「はい。今日からこちらで使用人をやらせて頂いてる・・・」

唯「平沢唯です!!!よろしくお願いします!!!」

旦那「はっはっは、元気がある娘だ」

梓「ゆ、唯さん!!」

唯「はっ!!す、すみません!!」

旦那「構わん。朝から元気な事はいいことだ」

澪「あー煩い」

唯・梓「!」

澪「朝から煩いんだが」

梓「も、申し訳ありません!」

澪「・・・なんだ、またゴミが増えたのか」

梓「こ、こちら今日から新しく入った使用人の・・・」

澪「誰が紹介しろと言った。使用人の名前など覚える気もない」

梓「・・・失礼しました」

唯「・・・」

紬「まー!新しい使用人ですって!?」

梓「紬さま!」

紬「まー可愛いじゃない!私、ここの長女の紬よ!仲良くしましょう!?ね!?」

唯「え、あ!!わ、私は平沢唯と申します!!よ、よろしくお願いします!!」

紬「唯ね!ふふふ、覚えたわ!」

澪「・・・ちっ」

律「おー、朝から賑やかだねー」


紬「りっちゃーん!新しい使用人だってー!」

律「知ってる知ってる。朝会ったもんな、な?」

唯「は、はい!」

紬「えー!?ずるーい!普通は長女の私が一番先に・・・」

梓「紬様、律様!早く行かないと学校に遅れてしまいますよ!!」

紬「あ、そうだったわ!・・・じゃあね、唯」

律「がんばれよー!」

唯「い、いってらっしゃいませ!紬様、律様!!」

唯「・・・・」

梓「気にしちゃダメですよ?」

唯「え?」

梓「澪様のこと・・・」

唯「あ、ああ!・・紬様と律様の迫力ですっかり忘れてた・・・」

梓「・・・」

唯「はは・・」

梓「もう・・・。さ、掃除行きますよ!」

唯「うん!!」


梓「1階の方の掃除は終わったみたいですね」

婆「では2階の掃除に取り掛かりなさい」

皆「はい!!」

婆「あ、唯はまだダメですよ」

唯「え?」

婆「唯はまだ2階の掃除をできるほど経験を積んでません。2階は琴吹家方々の寝室となっておりますからね」

唯「そうなんですか・・・」

婆「あなたは使用人宿舎の掃除でもしていなさい」

唯「はい!」


使用人宿舎)

唯「ふう・・・使用人宿舎といってもかなり広いな・・・。そりゃあんだけ使用人がいて、
  それで一人部屋だもんね。当たり前か・・・」

唯「この広さを自分一人で掃除するのかな。1日じゃ絶対無理だよ・・・。
  それともこれが当たり前なの?・・・あたしやってけるかな」

唯「って!!何弱気になってるの私!!私が働かなくて誰が働くの!
  憂にもちゃんと進学させてあげたいのに!こんな弱きじゃダメ!!」

唯「うん、まだ一日目じゃん!あたし頑張れ!!!できるできる!!」


梓「終わったですか?」

唯「ひっ!!」

梓「そんな驚かなくたっていいじゃないですか・・・」

唯「だ、だっていきなり・・・!」

梓「さっきもそれ聞きました。・・・で、掃除は終わりましたか?」

唯「・・・」

梓「うん、一人でやったとしてはなかなかじゃないですか?」

唯「へ?」

梓「何間抜けな声出してるですか。・・・そろそろ宿舎の掃除当番も来るはずです」

唯「応援がくるの!?」

梓「お、応援?・・・あ、もしかしてこの宿舎を一人でやると思ったですか?」

唯「う、うん」

梓「ふふ、バカですねー。こんな広いのに一人でできるわけないでしょう」

唯「で、ですよねー」

梓「じゃあ私は戻りますから、引き続き頑張ってくださいね」

唯「はい!!」


梓「そろそろ紬様たちが帰ってくる時間ですね」

唯「お迎えに行く?」

梓「いえ、帰宅時のご挨拶は立派なものではありません」

唯「立派とは・・・」

梓「だから使用人が皆でご挨拶はしないということです」

唯「ほお・・・」

梓「何か催し物などがあれば別ですが、何もない時は使用人の一人や二人ぐらいで出迎えに行くものです」

唯「そうなんだ・・・」

梓「ただ廊下などですれ違った御挨拶するのは当たり前ですよ」

唯「そ、そっか・・・」

梓「もう・・・。では行って来ますね」

唯「え、梓ちゃん行っちゃうの?」

梓「はい。私は澪様の専属使用人ですから」

唯「せ、専属使用人?」

梓「ようするに、その人専用の使用人です」

唯「す、すごい・・・の?」

梓「ま、まあちょっと務めた者ではなれないと思いますよ」

唯「ほう・・・」

梓「専属使用人でも使用人は使用人です。偉いもないですよ」

唯「そんなことないよ!!梓ちゃんは偉い!!多分!!」

梓「た、多分って・・・」

唯「でも大変そうだね」

梓「そうですね。まぁ澪様ってだけで大変・・・って何言わせるですか!もう!行ってくるです!」

唯「(梓ちゃんが勝手に言っただけじゃ・・・)いってらっしゃーい」


梓「おかえりなさいませ、澪様」

澪「・・・」

梓「これからのご予定は?」

澪「煩い」

梓「失礼しました」

澪「・・・」

梓「・・・」

澪「なあ、あいつ、何日で辞めると思う?」

梓「はい?」

澪「あの新しく入ったゴミだよ」

梓「・・・」

澪「私は1か月もたたないうちに辞めると思うなー」

梓「・・・」

澪「おい、なんか言えよ」

梓「申し訳ございません」

澪「ちっ」


澪部屋

梓「お鞄、ここに置いておきますね」

澪「・・・」

梓「他に用はございますか?」

澪「見て分からないのか?ありそうに見えるか?」

梓「・・・申し訳ありませんでした。では失礼します」

ガチャッ

バタン

梓「・・・ふう」


唯「あ、梓ちゃん!戻ってきた!」

純「お、梓ー」

梓「ただいま・・ってえ、なんで2人が・・・」

純「一緒にいたら悪いかよー」

唯「さっき仲良くなったの」

純「だ、誰が仲良く・・・!?」

唯「え、違うの・・・?」

純「う・・・!べ、別に違うわけじゃ・・・」

唯「よかった~」にこー

純「な、何・・・」

梓「もう、2人で遊んでないで・・・」

純「休憩の時間だもん。あ、そうそう唯!」

唯「なに?」

純「私の事は純さまって呼びなさい」

唯「え?」

梓「なっ!?」

純「いい、あんたは私の後輩なの。年齢は上でも年下なの。わかる?」

唯「う、うん・・・」

純「はい、じゃあさっそく呼んでみて」

唯「じゅ、純さ・・・」

梓「調子にのるな!」ゴツン

純「い、いたー!」

梓「もう。純だって、唯とあんまり変わらないじゃない」

純「かわるわよ!3か月私の方が先にここで働いてるの!立派な先輩じゃない!」

梓「じゅーんー・・・」

純「うっ」

梓「・・・・」じーっ

純「・・・わ、わかったわよ!唯、私のことは純って呼んでいいから」

唯「い、いいの?」

純「この私がいいって言ってるんだからいいの!」

唯「わーい!じゃあ・・・純ー!!」

純「・・・ははは、変な子ー!」

梓「ふふふ」

唯「え、な、なんで笑ってるの!?ただ呼んだだけなのに・・・!」あせあせ



数日後


婆「唯、梓。来なさい」

唯・梓「はい」

婆「今日から唯を旦那さま達の食事を手伝いさせます」

唯「え」

婆「なんですか、まだ早かったですか?」

唯「い、いえ!嬉しいです!!」

梓「喜んでどうするですか・・・」

唯「あ・・・」

婆「・・・。食事は人間にとって大事な時間です。食事の時に気分を害すなんてもってのほか。
  いいですか唯。失敗は許されませんよ」

唯「は、はい!!」

婆「よろしい。ならば梓と一緒に行きなさい」

唯「はい!」

梓「失礼します」

バタン

婆「・・・大丈夫かしらねぇ・・・」


食堂

旦那「では、皆揃ったな。・・・頂きます」

皆「いただきます!」

律「おーー!今日は肉がいっぱいあるぜええ!」

紬「よかったわねー!いっぱい食べましょうね!」

律「おー!」

澪「・・・いらない」

梓「どうしました澪様」

澪「料理長呼んできて」

梓「・・・」

澪「料理長呼んできてって言ってるだろう!?」ダンッ

律「おい、澪ー。食事中だぞー」

澪「煩い!黙れ!・・・ちっ、使えない使用人だ。ならば私が直接行く」

梓「澪さま!なりません!!」

澪「うるさ・・・」

唯「きゃあ!!」

澪「うわっ!!!」

ばしゃん

一同「・・・・・・・・・・・・・」

梓「・・・だ、大丈夫ですか澪様!!!」

澪「つ、冷たい・・・」

唯「あ、あ、・・・!!!も、申し訳ございません!!」

梓「ふ、ふくもの持ってきて!!」

唯「は、はい!!」

澪「待ちなさいよ!!!」

唯「!!」

澪「ちょっと、この服いくらすると思ってるんだ!?外国から取り寄せたものなんだぞ!?」

唯「も、申し訳・・・」

澪「謝ってすむと思ってるのか!?お前如きが一生かかっても買えない代物だぞ!?」

唯「うっ・・・」

律「おーい、澪!!」

澪「煩い、黙れ!!」

律「これはお前が悪いぞ。お前が急に扉の前に飛び出すから」

澪「私は悪くない!!」

律「誰がどう見てもお前が悪い。・・・唯、ごめんな」

澪「なんでこんなゴミの味方をするんだ!!」

律「味方とかじゃないよ。あと、使用人をゴミ扱いするのをやめろと何度言ったら・・・」

澪「煩い!!!」ダッ

梓「澪さま!!」ダッ

律「あーあー・・・行っちゃった」

唯「ど、どうしよう私・・・」

律「気にするな。あいつはいつもああなんだ」

唯「でも・・・」

紬「そうよー。唯は悪くないわよ」

唯「・・・・」

律「さー、飯だ飯!・・・おい唯、これのおかわり!」

唯「え?」

律「だーかーら、おかわり!」

唯「は、はい!!!」


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最終更新:2010年11月19日 05:12