澪部屋)

梓「み、澪様・・・!」

澪「なんで着いて来るんだよ!!!!」

梓「しょ、食事がまだ・・・」

澪「煩い!!!」ガッ

梓「きゃっ!!」

澪「もうなんなんだよ!!私は悪くないじゃないか!!あいつが急に入ってきたのが悪、い、ん、だ!!」

ゲシッゲシッゲシ

梓「うっ・・・げほげほげほ!!!」

澪「あああああイライラするううう!!!!!」

梓「げほげほげほげほっ!!!!」

唯「戻ってこないね、梓ちゃん・・・」

純「・・・。さ、早く片付けるわよ」

唯「う、うん・・・」



使用人宿舎

唯「ふーいいお風呂だったー」

梓「・・・」とぼとぼ

唯「あ、梓ちゃん!!!!」

梓「ゆ、唯さん」

唯「よかったー!澪様を追いかけていったっきり戻ってこないから心配して・・・」

梓「寝ます」

唯「え?」

梓「疲れました。・・・おやすみなさい」

唯「あ、梓ちゃん!?」

純「・・・ほっときなさいよ」

唯「じゅ、純ちゃん?」

純「使用人を10年も続けてるとあんなになっちゃうのかなー」

唯「あんなって?」

純「聞きたい?」

唯「え、あ、うん・・・」

純「じゃあ私の部屋に来なさい」

唯「うん・・・」


純部屋

純「澪様には気をつけなさい」

唯「え?」

純「きっと梓にも言われたと思うけど」

唯「う、うん言われたよ・・・」

純「でしょうね。・・・澪様は病気なのよ」

唯「びょ、病気?」

純「そう。心の」

唯「心?」

純「もちろん確かな情報じゃないわ。けどあれはどうみても病気よ」

唯「じゃ、じゃあ診てもらわなくちゃ・・・」

純「馬鹿ねぇ。あんた、ここがどこだか知ってるの?」

唯「純ちゃんの部屋だけど・・・」

純「ちがーーう!あんたが使えてるのはどこ!?」

唯「こ、琴吹家です・・・!」

純「そう、琴吹家よ。日本でも5本の指には入るかなりのお金持ちの家よ」

唯「う、うん」

純「そんな家に心の病気を持った娘がいるだなんて・・・、家としては知られたくないの」

唯「そんな・・・」

純「まぁもちろん今話したことは推測だから、確定情報ではないわ」

唯「・・・」

純「けど、きっとあの性格じゃ病気以前に問題あるわね」

唯「・・・」

純「あ、そうだ。梓から、旦那様に気をつけろ・・・って言われてる?」

唯「え?い、言われてないけど」

純「そう。じゃあ気をつけなさい」

純「旦那様は表はいい人だけど・・・裏ではとてつもないことをやってるみたいよ」

唯「と、とてつもないって・・・?」

純「さあ!それは知らない!」

唯「がくっ」

純「もう話すことはないから、帰っていいよ」

唯「・・・う、うん。じゃあおやすみ」

純「おやすみ、また明日ね!」

バタン

純「・・・梓の部屋行こう」



次の日・食堂

唯「み、澪様・・・」

澪「・・・」

唯「き、昨日は本当に申し訳ございませんでした!!」

梓「ちょっと、何してるですか!!」

唯「え?あ、謝ってる・・・え、あちょっと!」

梓「こっち来てください!!」

梓「お願いですから、これ以上澪様を怒らせるのやめてください!」

唯「お、怒らせる?」

梓「昨日のことはもう済んだでしょう?だったらいいんです」

唯「す、すんでなんか!」

梓「すんでます!!」

唯「あ、梓ちゃん・・・」

梓「いいですか・・・、使用人の唯さんが気軽に話しかけられる相手じゃないのですよ・・・」

唯「で、でも!!」

梓「・・・、昨日のことは私が謝っておきますから、唯さんは口出ししないでください」

唯「そしたら梓ちゃんが・・・」

梓「いいですね!?」

唯「・・・」


使用人宿舎

婆「みなさん、今月末に琴吹家主催でダンスパーティーを行います」

婆「旦那さま、そして娘様方々の出席も決まりました。
  忙しくなると思いますが、準備の方よろしくお願いしますよ」

一同「はい!」

婆「では解散」


唯「ダンスパーティー?」

梓「そうです。毎年何回か、琴吹家主催でやるんです」

唯「へー・・・すごそうだね」

梓「すごいですよ、かなり。その分、準備もかなり大変です」

唯「覚悟してます」

梓「ふふ、その調子です」

唯「(よかった、笑ってくれた・・・)」


ダンスパーティー当日

使用人「唯!!こっち手伝って!!」

唯「はい!!」

使用人「唯、これ運んでーー!!」

唯「はーーーい!!」

使用人「唯、これ片づけて!!!!」

唯「はいはいー!!!」

唯「(な、なにこれ、忙しすぎて死にそうなんだけど・・・!)」

律「おーやってるな?」

唯「律さま!」

律「ダンスパーティーなんてかったるくて本当は出席したくないんだけどよー」

唯「そうなのですか?」

律「うん。別に私達が踊るわけでもねーしな。ただ踊ってる奴を見てるだけ」

唯「それでも楽しそうです」

律「そうかー?」

唯「はい!だって私、ダンスパーティーなんて見たことないですもん!きっと仕事しながらでしょうが
  隙を狙って見させていただきます!!」

律「ははは、仕事の手が止まって、婆に怒られないようにしろよなー」

唯「うっ・・・気をつけます!」

使用人「ちょっと唯-!!どこいったのー!?」

唯「あ、は、はーーい!!」

律「あらら、悪いね、忙しいとこ話しかけちゃって」

唯「い、いえ!!では、失礼します!!」

律「がんばれよー。・・・使用人も太変だなー毎年毎年」



ダンスパーティー

旦那「えー、皆さまに楽しんで頂けるよう、最高級の音楽団を用意させました」

客「おー」

旦那「では、最高の夜をお過ごしください」
パチパチパチパチ

紬「さすがお父様ね。音楽の本場から連れてくるなんて」

律「そうかー?音楽に本場もクソもあるかよ」

紬「クソはないわよ!」

律「あーはいはい」


唯「わーすごい綺麗な音ー!やっぱ本場は違うなー!」

純「本場って・・・。あんた分かるの?」

唯「わかんない」

純「がくっ」

唯「わかんないけど、きっとすごいよ!うん!すごい!!!」

純「あ、っそ・・」


梓「澪様、そろそろパーティーの方に顔を出さないと皆心配しますよ」

澪「・・・」

梓「澪様」

澪「あのさ、前から思ってたんだけど、お前調子にのってないか?」

梓「・・・」

澪「使用人を10年やろうが、私の使用人をやろうが、お前は使用人。使用人じゃないか」

梓「分かっております・・・」

澪「分かってない。使用人は私達に気軽に話しかけちゃいけないのだろ?」

梓「・・・」

澪「ちょっと黙ってたらこれだ。私は特別だから、何でも言っていいって思ってるんだろ?」

梓「そ、そんなこと・・・!!」

澪「口答えするな!!!!」

梓「・・・・っ」

澪「使用人が口答えするのか?」

梓「しません・・・」

澪「使用人が命令するか?」

梓「しません」

澪「使用人は私の言うことを聞くか?」

梓「聞きます」

澪「なら出てけ」

梓「・・・失礼しました」

バタン

梓「(説得できなかった。・・・怒られるかな)」


会場

婆「澪様が来られないですって!?」

梓「・・・すみません」

婆「・・・いえ。仕方ないです、一度言ったら聞かない方ですからね。旦那さまに話してきます」

梓「はい・・・」


唯「あー!梓ちゃん!」

梓「あ、」

唯「もー大変だよー!!人が何人いても足りないって感じ!!」

梓「・・・」

唯「?あ、あず・・」

梓「手伝います!!!」

唯「え?!」

梓「この料理運べばいいのですね!私がもってくです!!」

唯「え、ちょっと!梓ちゃんは澪ちゃんの・・・あーあ、行っちゃった・・・」


使用人宿舎

婆「本日はみなさんお疲れさまでした。とてもいいダンスパーティーになったと旦那様もおっしゃっておりました。
  これも皆さんのおかげです」

婆「今日はゆっくり休んでください。解散」

一同「お疲れさまでした!」

婆「唯、来なさい」

唯「は、はい!!」

婆「どうでした、ダンスパーティーは?」

唯「え、あ、た、楽しかったです」

婆「楽しかった?仕事がそんなに楽しかったですか?」

唯「(あ、そっちか!)い、いえ・・・仕事は大変だったけど、けど、楽しかったです!
  私、ダンスパーティーなんて産まれてから一度も見たことなかったので」

婆「そうですか。・・・このお屋敷にいるかぎり、これからも大きな催しが開催されるでしょう
  太変ですが・・・覚悟はできてますか?」

唯「はい!もちろんです!」

婆「よろしい。では寝なさい」

唯「はい!おやすみなさい!!」


律「あ、澪・・・」

澪「ちっ」

律「おいどうしてパーティーに来なかったんだよ!?父さんも困ってたぞ!」

澪「別に私が行ったって行かなくたって変わらないだろう!」

律「そういう問題じゃねぇだろ!なら私だって参加したくなかったわ!」

澪「なら参加しなけりゃいいだろ!」

律「お前は琴吹家の娘なんだぞ!?それぐらい自覚しろよ!!!」

澪「・・・っ!!べ、別にここに来たくて来たんじゃない!!」

律「それは私だって一緒だ!!!!」

梓「み、澪様!?と律様!!な、何を言い争いに・・・!!」

律「梓からも言ってやってくれよ!!もっと琴吹家の娘として自覚をもてって!」

梓「・・・」

澪「近寄るな、ゴミが・・・寝る」

律「お、おい、み・・」

梓「おやすみなさいませ、澪様」

バタン

律「・・・ごめんな、梓」

梓「律様が謝ることではないですよ」

律「・・・はぁ。いいよな、あいつは自分勝手できて」

梓「え?」

律「なんでもない。私も寝る。梓も早く寝ろ。おやすみ」

梓「お、おやすみなさいませ律様!!」



純部屋

純「あーそういえば知ってる?」

唯「え?」

純「紬様、澪様、律様って本当の御兄弟じゃないのよ」

唯「ふーん・・・・ってえええ!?」

純「いいねー、その初々しい反応」

唯「そ、それどういうこと!?」

純「ようするに琴吹家の名前が欲しいのよ」

唯「な、名前・・・?」

純「そう。琴吹家の長女、紬様は旦那さまと血は繋がってるわ。けど澪様、律様は養子としてここに来たの。
  澪様の旧姓は秋山。律様は田井中。琴吹家には及ばないけど、それでもかなりの有名な家柄よ」

唯「う、うん」

純「あの2人は犠牲になったの」

唯「犠牲・・・?」

純「どちらの家もかなりの資産家だけど琴吹家は越えられない。いや、越えようとはしてないかもしれない。
  けど同等の立場にいたいと思っているはず。だから2人を養子によこしたの」

唯「うん・・・?」

純「娘を養子として琴吹家に入れたら、繋がりができるわ。琴吹家の後ろ盾が欲しかったのよ。
  あの琴吹家の養子になれたとあっては、他のところからも援助されるもの」

唯「・・・」

純「そして女は家を継げないから。
  だから澪様と律様は利用されてるの」

唯「なんか可哀想・・・」

純「そうかしらねー・・・、生きていく分には困らない・・・いや、もう充分ってほどお金はあるし、なんだかんだで幸せなんじゃない?」

唯「そうなのかな・・・」

純「私から見れば十分すぎるよ」

唯「でも自分の家族と過ごしたいよ・・・」

純「まぁそれもそうだけど・・・。まぁお金持ちの親族としたら、自分の娘より自分たちの名前を来世まで息継ぐ方が大事なんじゃない?」

唯「そうなのかな・・・」

純「貧乏に産まれても大変だけど、金持ちに産まれても大変ってことよ」

唯「うん・・・」

純「だから私は働くの」

唯「え?」

純「ここ、お給金だけはいいでしょ?だからいっぱい貯めてから、結婚するの」

唯「結婚・・・・」

純「そう、恋愛して結婚するの。見合い結婚なんて嫌よ」

唯「結婚か・・・」

純「うん!あー早く私の殿方現れないかなー」


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最終更新:2010年11月19日 05:13