数ヵ月後


梓「唯さんもここに来てから、ずいぶん経ちましたね!」

唯「ほんとだ!・・・まぁ相変わらず失敗は多いけどね」

梓「自分で言ってどうするですか・・」

ブォン・・・キキーッ

梓「ん?玄関の方から車の音が・・・。誰かしら?」

唯「お客様かな?」

梓「見てきますね」

唯「はーい」


玄関先


和「あら、久しぶりじゃない、梓」

梓「の、和様!!」

和「澪、いる?」

梓「は、はい!お部屋の方にいらっしゃるかと・・、と、とにかくお入りください」

和「ありがとう」

バタン

唯「(あ、お客様だ)いらっしゃいませ」

和「あら、知らない顔ね。新しく入った使用人かしら?」

唯「はい。4月からここで使用人をさせて頂いております、平沢唯と申します」

和「唯ね。よろしく。私は真鍋 和よ。苗字は違っても、私は澪の姉よ」

唯「へー・・・えええええええ!?お姉さまですか!?!?」

梓「こ、声が大きいです!!」

唯「はっ!し、失礼しました!!」

和「ふふ、構わないわ。私も澪と同じで、真鍋家に養子に出されてるの」

唯「ほー・・・」

和「似てないでしょ?母が違うのよ」

唯「ふ、複雑なんですね・・・」

梓「ゆ、唯さん!」

和「ふふ、面白いのね」

唯「よ、よく言われます」

和「血は繋がってないけど、あなたの言う通り、複雑な環境で過ごしてきたからね。
  だから離れ離れになった今でもたまに会ってるの。まぁ澪が自分から会いにくるようなことはないんだけど」

唯「2人は仲が良いのですか?」

梓「唯さん!質問は・・・!!」

和「構わないわ、私はそういう使用人の心得だっけ?そういう堅苦しいの嫌いなの。
  ・・・で、そうねぇ。仲が良いと言えばいいかしら?周りはどんなふうに見るかは知らないけど。
  けど小さい頃、ほんの少しの間だけど、一緒に支え合って過ごしたから、見えない絆はあると思ってる」

唯「そうなんですか・・・」

梓「もう、和様!喋りすぎですよ!さ、行きましょう」

和「ふふ、あなたと話せて楽しかったわ。またゆっくり話しましょうね」

唯「は、はい!」

唯「(似てない・・・、顔もだけど、・・・中身が)」



トントントン

梓「澪様、お客様です」

澪「・・・」

和「はぁ・・・、澪、入ってもいいかしら?」

澪「・・・入れ」

梓「・・・・」

和「たく、澪ったら。ごめんなさいね、梓」

梓「い、いえ!そ、それでは私は失礼します!」

和「ええ、また」

梓「ごゆっくり・・・」

バタン

梓「(私はいつになったら澪様に信用してもらえるのかな・・・)」

和「・・・また痩せたんじゃないの?」

澪「そんなことない」

和「ご飯はちゃんと食べてるの?」

澪「食べてる」

和「ふーん。で、どうなの?元気にやってる?」

澪「元気も何もあるかよ・・・こんなとこ」

和「もーまだそんなこと言ってるの?いい加減諦めなさいよ」

澪「・・・」

和「あーと、あんたも使用人いじめもいい加減にしなさいよね」

澪「いじめてなんかない」

和「いじめてないとしても使用人に少しは気を使ってやりなさい」

澪「使用人に気を使うだと?ふふ、面白いことを言うんだな」

和「使用人も人間よ。あんたと同じね。・・・梓、可哀想じゃない」

澪「使用人に可哀想もあるか。使用人は使用人らしくいれば問題ないはずだ。なぜなら使用人だからな」

和「はぁ・・・、あんたはいつからそんな性格になったのかしらねぇ」

唯「和様っていい人だねー!」

梓「もう、和様がいくらお優しいからって調子にのっちゃダメですよ!!」

唯「べ、別に調子にのってなんか・・・」

梓「和様だったから良かったものの、澪様だったら・・・あ、和様!」

和「今日はありがとう。失礼するわ」

梓「も、もうですか?」

和「ええ。最近あっちでも忙しくてね。本当はもっと説教してやりたいのだけど・・・
  また今度にするわ」

梓「そうですか・・・。お気をつけて!」

和「ええ、またね。・・・あと唯もね」

唯「は、はい!お気をつけて・・!!」

澪「あー煩い奴だ、ほんと・・・」

澪「けど・・・」

澪「久々にちゃんと人と話したな・・・」


数日後

梓「ゲホゲホッ・・・うーっ」

唯「うわー熱があるねー。今日はお休みだね」

婆「そうしなさい。ゆっくり休むのですよ」

梓「け、けど澪様のお世話が・・・ゲホゲホ!!」

婆「そんな体調でお世話なんかできませんよ。けど困りましたね・・・。そうだ、
  唯、あなたが梓のいない間澪さまのお世話をしないさい」

唯「ええええええええ?!」

梓「そ、それはいくらなんでも・・・!!!」

婆「私もちょっと不安なのですが、生憎今日はどの使用人も空いてなくてね。
  とにかく梓、あなたはしっかり治すこと。いいですね?」

梓「うっ・・・は、はい。・・・唯さん、澪様のことよろしくです」

唯「う、は、はい」
梓「(大丈夫かな・・・)」

唯「どうしよう・・・絶対、無理だ・・・私、無理・・・
  って弱気になっちゃダメだよね!!大丈夫!私はやればできる子って言われてたし!うん!」

トントントン

唯「澪様、おはようございます」

ガチャ

唯「おはようございます澪様。今日は梓が風邪のため勝手ながらお休みさせて頂きました。
  代わりに私が梓が復帰するまで澪様のお世話を・・・」

澪「すー・・・」

唯「寝てる・・・」

澪「・・・」

唯「寝顔は可愛いんだけどな・・・」

澪「ん・・」

唯「あ、やばっ!!」

澪「・・・ん、・・・な、なんだお前!!!なんでゴミが私の部屋に入ってきてるんだ!!誰が許可した!!!おい!!!」

唯「お、落ち着いてください澪様!!」

澪「触るなゴミ!!!!!!!」バシ

唯「うあ!!!」


唯「いたたた・・・」

澪「気色悪い!!お前が入ってきたせいで、カーペットも取り代えなくちゃならんだろうが!」

唯「ひ、ひどい・・・」

澪「酷いだと?!お前如きが私の部屋に入ってきて何を言ってる!さっさと出てけ!!!」

唯「わ、私は梓の代わりとして!!」


律「どうした!?」

紬「何騒いで・・・あ!」

唯「律様、紬様・・・!」

澪「こ、こいつが勝手に私の部屋に・・・!」

唯「ち、違います!今日は梓が風邪でお休みなので、私が代わりに澪様の世話を・・・」

澪「言い分けはいらない!!!」

律「落ち着け、澪!!」

紬「そうよ!唯は梓の代わりとして澪ちゃんのお世話に・・・!」

澪「関係ない!!」ダッ

律「あ、おい!!澪!!!」

使用人「きゃっ!み、澪様!?ど、どちらにお出かけですか!?」

澪「煩い!!使用人が質問するな!!!」

律「おい!!澪を止めろ!!」

使用人「え!?」

澪「ちっ!」ダッ

律「あ、おい!澪!!!たく、あいつ・・・」

唯「り、律様、ここは私が追いかけますから、律様はどうか食堂の方へ・・・!!」

律「いや、私が・・・」

唯「ダメです!澪様も律様も食事に参加しないと旦那様が心配してしまいますよ」

紬「そうね・・・、この事はお父様には秘密にしておいた方がいいかもしれないし・・・」

律「・・・」

紬「澪ちゃんのためよ、行こう、りっちゃん」

律「・・・唯、頼んだぞ」

唯「お任せください!!」


屋敷外

澪「(なんであいつら使用人の味方ばっかするんだ・・・!)」

運転手「・・・どちらにお出かけで・・・って澪様!?」

澪「煩い!!!さっさと車を出せ!!!!」

運転手「え?!け、けど・・・」

澪「私の命令が聞けないのか!?」

運転手「わ、分りました・・・!!!」

唯「澪さまあああ!!」

ブウウウン

唯「はぁはぁ・・・!!い、いっちゃった・・・・!ど、どこに行ったのか、な。と、とにかく追いかけなくちゃ・・・!」

唯「そうだ、あの車を追いかければ・・・!!」

運転手2「はぁ?使用人のお前をだと?」

唯「そうなんです!お願いします!澪様を追いかけなくちゃいけないんです!」

運転手2「だめだめ。使用人のお前を車に乗せることなんてできないよ」

唯「そ、そんな・・・」



使用人宿舎

梓「唯さん、うまくやって・・・るわけないよなぁゲホゲホ」

唯「梓ちゃんん!!!」バタン!

梓「キャッ!!・・・え、唯さん!?ゲホゲホ、み、澪様のお世話は!?って何泣いて・・・」

唯「み、澪様が出て行っちゃったの・・・!!」

梓「出て行った・・・?!」

唯「私が悪いの、私が・・・どうしよう、梓ちゃん、うっうううう」

梓「お、落ち着いてください!と、とにかく追いかけなくちゃ・・・」

唯「車で追いかけようと思ったら、使用人は車に乗っちゃいけないって言われて・・・」

梓「澪様は車で出ていかれたのですか?」

唯「うん。だからもう間に合わないかも・・・ぐすっ」

梓「・・・大丈夫です」

唯「え?」

梓「私の予想が当たれば、澪様はあそこにいるはず」


唯「え!?ど、どこ行くの、梓ちゃん・・・!」

梓「澪様をお迎えに行くのです・・・!ゲホゲホ」

唯「そ、そんな体じゃ無理だよ!私が・・・」

梓「唯さんじゃ無理です。車は使えません。けど私なら使えます」

唯「そ、そうなの!?」

梓「はい。数年前から車を使う許可を得ています。もちろん仕事で使うだけですが」


屋敷外

梓「車をだしてください!!」

唯「わ、私も行く!!」

梓「ダメです!!使用人二人が朝から外出なんて見つかったら怒られます!」

唯「け、けど梓ちゃんはすごい熱で・・・!」

梓「私なら平気です。心配しないでください。唯さんは澪様が帰ってくるまで、なんとか話を合わせておいてください」

唯「う、うん・・・」

梓「では行ってきますね。車を出してください」

梓「ゲホゲホ・・・やっぱ辛いなぁ・・・」

運転手「どちらにお出かけで」

梓「真鍋家へ向かってください」

運転手「真鍋家・・ですか?」

梓「はい。お届けものがありまして・・・」

運転手「左様ですか。わかりました」

梓「(澪様が逃げたから、なんて言えないよね)」


真鍋家屋敷

運転手「着きました」

梓「ありがとうございます」

梓「(・・・私の勘が当たってればいいのだけど)」

トントントン

使用人「はい・・・えっと・・・」

梓「おはようございます。私は琴吹家の使用人をやっております、梓と申します。
  こちらに澪様はいらっしゃいますか?」

使用人「あ、はい。先ほどお見えになられ、只今和様のお部屋に・・・」

梓「案内して頂けますか?お願いします」

使用人「あ、はい。こちらです・・・」


和部屋

和「・・・呆れた」

澪「私は悪くない!あのゴミが勝手に私の部屋に・・・!!!」

和「だからって屋敷を飛び出してくることないじゃない」

澪「だ、だって・・・」

トントン

使用人「和様、お客様です」

和「お客様?こんな時間に・・・?入って」

使用人「はい。・・・どうぞ」

梓「ありがとうございます」

和「梓!?」

澪「!!」

梓「澪様、帰りましょう」

澪「や、やだ!!」

梓「みなさん心配しておりますよ」

澪「あのゴミが悪いんだ・・・!」

梓「悪いのは私です。風邪でお休みを頂いたばっかりに・・・」

和「か、風邪ですって?」

梓「とにかく澪様、帰り・・・ゲホゲホ!!!」

和「梓!!大丈夫!?」

梓「ゲホゲホゲホ、だいじょ、う、ぶ・・です・・・」ふらっ

和「梓!!!!し、しっかりしなさい・・・ちょ、ちょっと!誰か!!」

使用人「はい!」

和「この子を外まで連れていってあげて!!それと車の手配を!病院に連れていくわよ!!」

使用人「え!?あ、はい!!」

和「梓、梓、しっかりしなさい!!」

梓「ハァハァ・・・ハァ・・・」

澪「うっ・・・」


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最終更新:2010年11月19日 05:14