縁談数日前


トントントン

唯「澪様、入ってもよろしいでしょうか」

澪「・・・」

ガチャ

唯「澪様、お話があります」

澪「誰が入っていいって言った」

唯「申し訳ございません・・・。けど・・・」

澪「・・・」

唯「お話・・・いえ、お願いがあります」

澪「使用人のお前がか?」

唯「はい・・・」

澪「身分を弁えろ」

唯「梓のことでございます」

澪「梓・・・」

唯「梓に縁談の件は知ってますよね」

澪「・・・ああ」

唯「良い話しだと思います。けど梓は仕事を続けたいと言っています」

澪「・・・」

唯「梓が最近、この仕事が楽しくて仕方ないと言ってました。梓が熱を出して、澪様と一緒に戻ってきたときからです」

澪「・・・・」

唯「何があったのか知りませんが、きっと梓にとっていいことがあったのだと思います」


唯「私が来て数カ月しかたってませんが、あんな生き生きとした梓を見たことがありません」

澪「・・・」

唯「お願いです、梓の縁談を断ってください!!!」

澪「なぜ私が・・・」

唯「澪様しかいないからです・・・!」

澪「違う者だって・・・」

唯「梓を止められるのは澪様しかいません。お願いです、お願いです・・・!!!!」

澪「・・・」

唯「うっうう・・・」

澪「いいか。お前だって私だって人の縁談を断るなんてできないんだぞ」

唯「それは分ってます」

澪「分ってないから言ってるんだろ」

唯「・・・」

澪「なぜお前は梓の縁談を止めたい」

唯「そ、それは友達だから・・・」

澪「友達・・・か。まぁいい。じゃあお前は友達の幸せを願えんのか?」

唯「え?」

澪「女の幸せは結婚だ。それに梓の身分じゃ今度の縁談相手は充分すぎるほどの金持ちだ。
  梓自身、いや、子孫にとってもいい環境になる。琴吹家の雑用のために産まれてきた家系から脱出できるんだ」

唯「それは・・・」

澪「本当に友達と思ってるなら・・・応援してやるんだな」


律「・・・」

紬「あら?どうしたのりっちゃん。澪ちゃんの部屋の前で・・・」

律「え!?あ、!!な、なんでもない!!」だっ

紬「?」


律「つい立ち聞きしちまったけど・・・」

律「あいつがあんな風に思ってるなんてな・・・」



縁談当日

梓「婆さん、10年間・・・いえ、婆さんには産まれてきてからずっとお世話になりました。ほんとに・・・ありがとうございました」

婆「そうね。・・・貴方は私の娘みたいなものでした。私こそ本当にありがとうね」

梓「うっ・・・婆さん・・・」

婆「貴方なら平気ですよ。・・・ほら、早く行きなさい」

梓「・・・はい」

婆「・・・」

ガチャ

婆「うっ・・・」ぐす



屋敷内廊下

梓「あ・・・」

澪「・・・」

梓「み、澪様!おはようございます!」

澪「ああ」

梓「・・・」

澪「そうか、今日か」

梓「・・・はい、今までお世話になりました」

澪「・・・」

梓「私、澪様の専属使用人になれて本当にうれしかったんです。
  辛いことはたくさんありました。けど・・・」

澪「・・・」

梓「私、澪様の事が好きでした。本当はずっともっとお傍にいたかったのですけど・・・無理みたいですね」

澪「梓・・・」

梓「ずっとお傍でお世話したかったです・・・。それだけが悔やまれます」

澪「・・・」

梓「あ、ご、ごめんなさい!!私如きが何をしゃべって・・・」

澪「・・・」

梓「それでは・・・澪様お元気で」タッ

澪「・・・梓」



唯「ほんとにやるんですか!?」

律「あったりまえだ!私は梓の結婚なんて許さない!!」

唯「け、けど・・・!」

律「きっと父上がやってることはお金に絡んでる。あの人は人の幸せなんて望んだことがない」

唯「え?」

律「お金にしか興味ないんだよ。汚い奴だ、ほんと」

唯「・・・」

律「私はあんな奴のため、お金のために梓を利用されたくないんだ!!」

唯「律様・・・」

律「だから・・・」

唯「分りました!!協力します!!」


旦那「いやー、今日はよろしくお願いしますぞ」

中将「こちらこそ。しっかし、琴吹家から縁談の申し込みがあるとは思ってもみなかったですぞ」

旦那「はっはっは。そうですかな」

中将「使用人・・・ってのが気になりますがな」

旦那「ほう。なら養子にでも構いませんぞ」

中将「いや、今の時代、芸子と結婚する者もいますからな」

旦那「そう言っていただけると嬉しいです」



息子「んーんー!!!」

唯「り、律様、本当にこんなことしていいのですか?」

律「いいんだ!これも梓のため!」

息子「んーんー!(この縄を解け!!)」

律「何言ってるかわかんねーよ!ここで大人しくしてなっ!」バタン

唯「・・・律様ってすごいですね」

律「だろう!はっはっは、もっと褒め称えよ!!」

唯「すごい、すごいよー律さまああ!!」

律「あっはっはっは!!」

梓「失礼します」

旦那「おお来たか。入れ入れ」

梓「はい・・・」

中将「おお!なかなか可愛い娘ではないですか!我が息子も喜ぶことでしょう」

梓「・・・」

中将「しっかし我が息子は何をしているのだ。ずいぶん遅いな・・・」

律「貴方の息子さんは来ませんよ」

中将「!?」

旦那「律!?」

梓「り、律様!?」

律「この縁談、取りやめにして頂きます」

旦那「な、なんだ急に!?」

律「父上、お金のために梓を利用しないでください!!」

旦那「なっ!!」

律「使用人まで金の繋ぎにするなんて最低だ!!」

中将「い、いったい・・・」

澪「私からもお願いします」

律「み、澪!?」

梓「!!」

旦那「み、澪、お前・・・!」

澪「父上のやりたいことは丸見えですよ」

旦那「なっ」

澪「中将の息子様と結婚させれば、軍からの援助がもらえますものね」

梓「・・・」

澪「私たちを嫁にださなかったのは秋山家、田井中家の援助が途切れるから。紬に関しては可愛くて手放したくはなかったのでしょう。
  だから残るは使用人の梓」

旦那「ふっふっふ、使用人如きに何熱くなっておる、澪」

澪「熱くなっておりません。ただ梓はこの仕事を続けたいと言ってます。梓は私の専属使用人です。
  私の断りなく話を進められては困りますよ」

旦那「琴吹家の主は私だぞ?」

澪「けど梓は私の使用人です」

旦那「使用人なんていくらでも代わりがいるであろう?」

澪「そうですね、腐るほどいます。けど」

旦那「けど」

澪「私は我儘でおかしな人間です。そんな世話をできるのは梓しかいませんから」

梓「み、澪さま・・・」

澪「あと父上。中将ぐらいで満足しておるのですか?軍の援助が必要なら大将ぐらいの階級は必要かと」

旦那「はっはっは、それもそうだな」

澪「中将の息子様の出世を期待されてたのなら、あれはダメですよ」

中将「なっ!?」

澪「女子にやられては日本の未来など任せられません」

律「・・・・」

中将「貴様、何を!?」

澪「貴方の息子なら地下でお眠りでしょう」

中将「!?こ、これはいったい・・・」

旦那「縁談は取りやめですな、中将殿」

中将「なっ!!」

旦那「澪がここまで言うのだから、仕方ないな」

紬「そうですわね」

旦那「紬!」

紬「澪ちゃんがここまで使用人に熱い方だと知らなかったわあ」

澪「別にそんなこと」

紬「確かに梓を手放すのはもったいないわ。琴吹家でできる使用人って梓しかいないもの」

旦那「ふむ」

中将「ちょ、っちょっと・・・」

旦那「ではそういうことです中将殿」

中将「あ、待って・・・!!」


紬「澪ちゃん・・・」

澪「・・・」

紬「貴方が何やるかは勝手だけど、琴吹家に泥を塗ることはしないでくださる?」

澪「・・・」

紬「秋山家なんて琴吹家がいなければ何もできないんだから」

澪「・・・」

紬「今回の件は父上にうまく言っておくけど、次はないわよ」

澪「わかってる」

紬「・・・琴吹家の恥が」

紬「ふふ、なんてね♪ あ、りっちゃーん!」

律「ムギー!どうしてお前がここにいるんだよー!」

紬「りっちゃんのことだからここにいるんじゃないかなーって!もう、私を置いてくなんて酷いじゃない!」

律「ははは、すまん」

紬「ふふふ、私りっちゃんのためなら何でもするわよー?」

律「それは助かる!」

紬「遠慮なく言ってよね、ふふ」


唯「(梓ちゃんの縁談がなくなってよかった・・・!!)」


梓「あ、あのお待ちください、澪様!!」

澪「誰に命令してる」

梓「あ、す、すみません・・」

澪「・・・。よかったのか、これで」

梓「え?」

澪「縁談」

梓「はい!!!これで仕事が続けられます!!澪様のおかげです!!」

澪「別に私は」

梓「まさか澪様が来られると思いませんでした。・・・夢みたいです」


澪「お前は私に言った。ずっと私の傍で世話ができないのが悔やむって」

梓「あ・・・」

澪「もちろん私の世話をずっとなんて無理な話だ。けどな・・・」

梓「・・・」

澪「悔やみながら嫁がれてもいい気はしないんだよ」

梓「澪様・・・」

澪「いつかまた縁談の話が舞い込んでくるだろう。それまで自分が納得できるよう頑張るんだな」

梓「は、はい・・!!」

澪「帰るぞ」

梓「はい!!お荷物お持ちします!!」

澪「うむ」


和「最近あんた変わったわね」

澪「そうか?」

和「なんか・・・人間らしくなったというか」

澪「失礼だな。私は元々人間だぞ」

和「ふふ、それは失礼しました。・・・澪の専属人使用人が梓でよかったわ」

澪「なぜそこで梓の名前がでる」

和「きっと梓がいなければ、澪は変わらなかった」

澪「・・・」

和「感謝しなさいよ。使用人としても人間としても、あんなできた子はいないわよ」

澪「・・・そうだな」

和「え?」

澪「なんでもない!」


唯「おかーさん、お父さん、憂、お元気ですか、私は・・・」

純「煩いほどお元気です」

唯「うわっ!!」

純「なーに?実家にお手紙?」

唯「か、勝手に見ないでよお!」

純「ははは、ごめんてばー」

唯「うー」


数十分後

唯「よしできた!」

純「おめでとー、今から出しに行くの?」

唯「うん!」

純「じゃあ街でお菓子でも買ってきてよー。おなか減った」

唯「えー、じゃあ純ちゃんも一緒に行こうよー」

純「私はやることがあるからね。さ、行った行った!」

唯「もー!」


紬「あら?唯じゃない」

唯「あ、紬様!こんにちは!」

紬「こんにちはー。あら、お手紙?」

唯「はい!実家に出そうと思って」

紬「ふふ、いいわね。あ、じゃあ私が出してきてあげる!」

唯「え?!」

紬「今から私、街に用があるの。だからそのついでにね」

唯「そ、そんなの悪いです!!」

紬「いいのいいの!唯にもやることいっぱいあるんじゃない?」

唯「うっ・・・」

紬「遠慮しないで」

唯「じゃ、じゃあよろしくお願いします・・・」

紬「まかせてー!」


純「あれ、ずいぶん早いね」

唯「紬様が手紙出してきてくれるって」

純「はぁ!?」

唯「やっぱりまずいよね・・・」

純「まずいわよ!!私のお菓子どうなるのよおお!?」

唯「そこ!?」


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最終更新:2010年11月19日 05:16