その日、午後から梓の家に行って、三人で宿題をすると言う約束があったんだ。
梓と(憂と)半日を一緒に過ごすってのは私にとってとても楽しみなイベントなのは、確かだよ?
でも、休日の朝6時に目が覚めるって言うのは、ちょっと私にしては珍しい事なんだ。
何で、こんな早くに目が覚めてしまったかと言うと、何かあまり良くない夢を見てしまったからなんだと思う。
内容は正直な話し、まったく覚えていないんだ。
なのに、何で良くない夢だったと言うのが分かるかと言うと、それは今洗面所の鏡に映っているこれのせいだ。
私は、自分の毛先を少し指に絡ませて引っ張ってみる。
びよよ~んと言う効果音がし(たような気がするだけだ、きっと)、バネのように跳ねる。
そうなのだ、目覚めが悪かったりすると、私の髪の毛の跳ねは、きつくなるんだ。
ちなみに、雨の日とかもその跳ねはきつくなるけど、別にそれは他の人と一緒の理由だと思う。
純「あー、午後まで何しようかな…」
午後はどちらにしろ勉強タイムなんだから、午前中も勉強を、何て言う選択肢は出る訳無い。
友人の顔が頭に思い浮かぶ。
純「よし、梓の家に行こう」
それで、午前中一杯を梓と二人きりで過ごすんだ。
昼ごはんを一緒に作ったりして…。
梓はもちろん裸エプロン。
それを私は後ろから抱きしめてみたり…、ふふふ。
そう言うのは冗談だし、そんなシチュエーションは有り得ないにしても、友達と言うラインを超えた愛情の対象と二人っきりで過ごす時間なんて、本当に最高だと思わない?
そうなんだ。
私は梓に思いを寄せている。
ライクじゃなくてラブって感じで。
でも、きっとこの思いは、死ぬまで心の奥に隠し持って行くことになると思うけどね。
・・・
純「あれ?留守かなあ…」
何度チャイムを鳴らしても梓は出て来なかった。
純「午前中一杯はホスト役の常だけど、部屋の片付けに忙殺されてると思ったんだけどな…」
何で、ドアノブに手を掛けたかは分からない。
本当に何となくだったと思うんだけど。
でも、ドアに鍵は掛かって無かった。
純「あ、開いてる…」
無用心だなあ。
これはちょっと、しっかり言ってやらないと。
純「おじゃましまーす」
返事は無かった。
純「あ…、れ…?」
きちんと片付けられた玄関には、梓の靴。
梓の両親は用事があるとかで、今日は家を留守にするらしい。
だからこその梓の家での勉強会で、だから梓以外の靴は無いはずなんだ。
なのに、梓の靴の横には私も見覚えのある靴がキチンと揃えられて並べてある。
憂の靴だ。
間違いない。
純「何だよぉ…、二人とも冷たいなぁ…、午前中から始めるなら、私も誘ってくれれば良かったのにさぁ…」
心が痛い。
憂の優しい笑顔が思い浮かぶ。
そして、梓の顔も思い浮かぶ。
純「二人が私をハブにするなんて無いよね…」
うん、ある訳無い…、よ…。
純「おじゃましまーす」
午後から、何も知らなかった振りをして、もう一回来るって選択肢もあったかも知れないけど、でもそれもしたくなかった。
私は靴を脱いで、勝手だと思ったけど、上がり込む。
憂への嫉妬が私を突き動かしていた。
純「いない…」
居間に二人の姿は無かった。
テーブルにはノートと参考書が広げられっぱなしで、やっぱり私だけが午後から誘われたと言う事実を突きつけていた。
純「なんだよ…」
私は涙が出そうになる。
純「なんだよぅ…」
私は涙を拭う。
きっと梓の部屋だ。
私は二人に向き合った時、何を言ったら良いかなんて分からなかったけど、
でも、もう引き返すと言う考えは頭のどこに思い浮かばなくなって、抜き足で階段を登る。
梓の部屋の扉は少しだけ開いていた。
階段を登っている時は、思いっきり扉を開いて、
「酷いじゃーん、二人ともー」なんて言って、
普段通りのちょっとおばかな純ちゃんを装って入って行こうとか、色々考えていた。
でも、扉の間から漏れ聞こえてくる二人の声がそんな私の計画なんて、軽い高級羽毛布団みたいに吹っ飛ばしてしまったんだ。
憂「ふふ、梓ちゃんの胸って感度良いねー」
梓「それは、憂が…、する…、からぁ…」
二人はベッドで絡みあっていた。
友達同士のスキンシップとかそんなものじゃなかった。
だって、二人とも下着一枚付けてなかったし、憂は梓の胸に舌を這わせながら…、その…股のとこを弄っていたんだから。
憂「ね、今日こそは指入れて良い?」
梓「そ、それは…」
憂「駄目かな?」
梓「あ、やだ、クリトリス弄らないで…、あぅっ…」
憂「指入れて引っ掻いたら、これよりもっと凄いよ…?」
梓「だ、だって、やっぱり…」
私は止めたかった。
憂にしがみ付いて「私の梓から離れて!」って叫びたかった。
でも、身体は動かなかった。
その光景があまりに非現実的だったからって言うのもあるけど、顔を赤らめて喘ぐ梓はずっと私が見たくて、でも手が届かないんだと思っていて諦めていたものだったから。
その梓の姿ときたらとっても可愛くて可愛くて仕方無かったから。
それに、二人が窓から差し込む光を浴びて、ベッドの上で睦み合っている姿はとっても綺麗に思えたんだ。
憂「私は梓ちゃんの初めてになりたいんだけどなぁ?」
梓は、憂の言葉に頬を赤らめて黙り込んむ。
梓はとってもちっちゃくて、サラサラの黒髪が綺麗で、女の子って感じがして、それで凄い可愛くて…。
私は、今、憂がしてるみたいにしたいってずっと思って来たのに…。
何度も何度も想像の中で、梓に対してして来た事を憂は行っていた。
梓「も、もう少しだけ待って…、まだ、ちょっとだけ決心が付かないから…」
憂「分かった。梓ちゃんの決心が付くまで待つよ。だって、梓ちゃんのこと大切だもん」
梓「憂…」
憂「だーかーらぁ、今日も口でやらせてね?」
私の右手は何時の間にか、自分の股間に伸びていた。
いつも、想像の中で梓にやって貰うように、自分の股間を擦り始める。
純「あ、梓ぁ…、駄目だよぅ、そんなとこ…、あ、あぅっ、んくっ…、んあぁ!」
私は憂に攻められる梓に、梓に攻められていると言う自分を重ね合わせていた。
ショーツに染みが出来るのも構わず、ここが自分の部屋で無いことも構わず、
いや、梓と憂と言う大切な人間同士の交いを見ての、と言う異常な状況はさらに私を興奮させるばかりだった。
私の中からは右手を止めようと言う回路が消失してしまったかのようだった。
憂は梓の下半身を持ち上げると身体を折るようにする。
憂「梓ちゃんのお股丸見えだね」
梓は、当たり前だけど、その姿勢が恥ずかしいのか、顔を隠す。
梓「だ、だって、この格好じゃ…」
憂「うん、梓ちゃんに自分のお股がHな事になってるのを良く見て貰えるようなポーズにしたんだよ?」
梓「憂ぃ…」
憂「駄目だよ、だって、今日こそはって思ってたのに梓ちゃんに拒否されて悔しいんだもん。だから、これは意趣返しなの」
そう言うと、憂は梓の股を一舐めする。
梓「ん、はぁっ!」
憂は、見たこと無いような表情を浮かべる。
憂「私の舌はねえ、猫さんほどじゃないけど、ザラザラしてるんだよぉ。だから、ね?」
憂はそう言うと自分の舌がよく動く事を見せ付けるように唇の周りをペロリと舐めて見せる。
そして、顔を梓の股間に埋めるともう一舐め。
梓は顔を押さえたまま、快感を堪えるように顔をふるふると左右に振る。
憂「凄いでしょ?」
純「あ、梓ぁ…」
私は、下着の上からじゃ我慢出来なくなっていた。
既にカットソーの下から差し込んで胸を揉んでいた左手を抜いて、ショーツをずらすと、左手で大陰唇を押し開く。
純「梓、見えるぅ…、私のぉ…、大切なとこ…。ねぇ、もう、ヌラヌラしちゃってるでしょぅ…」
私は恐る恐る右手の指の腹で、小陰唇の淵を…。
純「あぁ!!梓ぁ、そこ、駄目、駄目ぇ。す、凄い…、あぅ!」
私は右手を細かく痙攣するように動かして再度同じ様になぞる。
純「あ、あ、あ、あぁぁぁ…」
憂「あはは、梓ちゃんのクリトリスおっきくなっちゃってるから、凄い弄りやっすい」
梓「や、やぁ、憂ぃ…、や、やめてよぅ…」
憂「梓ちゃん、本当にやめて欲しいのかなぁ?」
梓は黙り込んでしまう。
その反応を嘲笑うように、憂は再び梓の股間に顔を近づける。
憂の舌が梓のクリトリスを舐め挙げるたびに、梓は激しく喘ぐ。
梓「あ、駄目ぇ!駄目だってぇ!!」
梓「あ、や、やだ、何か変な感じ…」
憂「梓ちゃん、イくの?イっちゃうの?」
純「あ、梓ぁ、私、私…」
梓「イクイクイクイクイク…、イっちゃうよぉ!!」
憂「あははは!!」
純「あ、あ、ああっ!!梓の赤ちゃん欲しいよぅ!!」
・・・
梓は絶頂に至り、放尿したようだった。
憂はその結果に満足したように笑い、そして、私は一人廊下で果てた…。
私は一人。
愛の無い廊下で一人。
純「梓ぁ…、うぅ…」
・・・
憂は梓の股間に口を付けたまま、梓のを飲み干していた。
私は自分のパンティで濡らしてしまった床を拭いていた。
梓「う、憂ぃ…、やめてよぅ…、恥ずかしいよぉ…」
憂は梓の懇願を受けて、わざと喉をゴクゴクと鳴らし出す。
梓は声を押し殺すように泣き出す。
憂は梓の姿勢を解いてやると、ギュっと抱きしめる。
憂「ごめんね、梓ちゃんに意地悪しようとかじゃなかったの」
最初、少し驚いたように硬直していたが、梓もそろそろと憂の背中に手を回す。
梓「ううん、わ、私も、憂を疑ってる訳じゃない…、から…」
憂「こうしてる裸で抱き合ってると、ペターって貼り付く感じがあって、気持ち良いよねぇ…」
梓「うん…」
私は二人のそんな姿に立ち尽くすしか無かった。
私はその場をすぐ立ち去った。
出来るだけ物音を立てないようにと行動する自分の小心ぶりが、
今の憂と私の立っている場所の違いそのままであるように思えた。
私は全速力で走って帰って、
ベッドに飛び込んで今日の事は夢だったんだと、全てを忘れてしまいたかったけれど、
スカートの中のスースーする感覚と、手に握りしめた湿ったショーツの感覚がそれを許さなかった。
街は人が消え失せたかのように静かで、
つまり、人とまったく擦れ違わないと言う事は、
自分の無防備なスカートの中に関して考えずに済むのが良かった。
ただ、もしかしたら、人に自分のスカートの中を見られてしまうんじゃないかと言う緊張感は、
さっき自分が味わった絶望から目を背ける事に役立つのかも知れないのだけど。
純「あ、痛っ」
こう言う時に限って、不幸な事が起きるのは人生の常で、
私は、何でも無いところで転んでしまったのだ。
純「あー、もう、起きたく無いなぁ…」
ジンジンと痛む膝、キシキシと音を立てて壊れそうな心。
身体の側とそれを駆動させる心の側の両方に問題があると、私みたいに元気だけが取り柄のように思われている人間でも、
ちょっと躓いただけで立ち上がれなくなるんだ。
?「ひゃへ?」
「口に何かを咥えたまま、話そうとしてはいけません」
と言うのは、幼少時から良く言われる事だ。
その正しさと言うのは、大きくなって見れば当たり前の事で、傍から見ると非常にみっともない。
そう、そもそも見栄えが良くない訳で、お年頃になればそんな事はしなくなるものだ。
が、時々あまりそう言う事を気にしない人で、なお且つその姿さえ愛らしいと言う人がいる。
唯先輩は口に咥えたガリガリ君を左手に持ち替えて、私に話しかける。
唯「純ちゃん、そんなとこで何してるの?」
憂のお姉さんはそう言う感じの人だ。
純「いえ…」
唯「五体投地?」
何言ってるだろう、この人は。
純「そこまで熱心な仏教信者ではないです」
唯「うん、じゃあ手ぇ出して」
唯先輩は私の方に、右手を差し出す。
どうやら、助け起こしてくれるらしい。
純「あ、はい…」
私は促されるままに手を掴む。
・・・
唯「よっ…、と」
唯先輩はしゃがみ込んで、私の膝の傷を見てくれている。
唯「うわわぁ…、痛そー」
純「大丈夫ですから…」
唯「この傷見たら、澪ちゃんだったら卒倒しちゃうよねー」
澪先輩…。
純「あ、あの、もう大丈夫ですから、その…」
唯「これから、用事ある?」
用事はあった。
でも、今は無くなっています。
純「い、いえ、特には…、無いですけど…」
唯先輩は、立ち上がると、
唯「じゃ、取り合えず家においでよ、消毒した方が良いし」
そう言って、唯先輩はニコリと笑う。
憂と同じ顔なのに、さっきの憂とは全然ちがう。
さっきの憂の笑顔は氷姫の笑顔みたいだ。
見た人をたちまち凍らせてしまうと言うフィンランドのあれだ。
唯先輩の笑顔は向日葵みたいだ。
私は、思わず頷いていた。
最終更新:2012年01月07日 22:12