10月31日はハロウィンの日。

私はお姉ちゃんが着る仮装用の衣装作りをしています。
せっせと縫ってお姉ちゃんに似合うのを作りたいと思います。

毎日夜の空いた時間でしか作れないけど
一ヶ月前から取り掛かれば出来るかな?

一生懸命頑張りましょう。

お姉ちゃんの衣装はお化けの衣装でいいかな。
私は魔女にしようかな。

目一杯可愛く作ろう。そう思います。

憂「もうちょっともうちょっと」

今日も夜なべをして作ります。
最近寒いですからちょっと手が冷えて動かしにくいんですよね。

お姉ちゃんからのプレゼントであるマフラーを巻いてやってます。

こうするとお姉ちゃんに護られて
お姉ちゃんを感じることが出来るのです。
そうです、あったかあったかになるんです。

もう首から全身に伝わり心も体もぽかぽかです。
とても良いことです。
ありがとうお姉ちゃん。私、頑張るよ。

しーんと静まった部屋に居ると寂しさを覚えてしまいます。

そして耳を澄ませば隣の部屋からお姉ちゃんの寝息が聞こえてきそうです。
ちょっと可愛らしい寝息。もっとずっと聴いていたい気分です。

でも私にちょっと寄り道をしている時間はありません。
早く完成させないと。そう考えるばかりです。

後少しで完成ですからね!

お姉ちゃんの喜ぶ顔が浮かびます。
衣装を着たお姉ちゃんの姿も浮かびます。
それはそれはとても可愛らしいことでしょう。

喜んだお姉ちゃんはそのまま私に抱きつき、頬擦りをし
いっぱい頭を撫でてくれます。

そう考えているとちょっと位寒くたってへっちゃらですし
寂しさも吹き飛びます。ただただやる気が満ちて意気込むだけです。

そんなこんなでハロウィン前日には
お姉ちゃんの分と私の分が完成しました。

我ながら上手く出来たと思います。
ちょっと付け焼き刃なところもありますが――精一杯頑張りました。

このお化けのひらひらした服を着たお姉ちゃんは
とても可愛いにちがいありません。
作っている時も衣装を着たお姉ちゃんを想像して作っていました。

その姿はやっぱり可愛さを全身に纏っています。
ああ可愛い可愛い。どうしてそんなに可愛いの。

頭の中に居るその可愛いお姉ちゃんが一向に消えません。
いえ、消えてしまっては困るんですが。
でもでも他に手がつかなくなるのでやっぱり困るかな?

それにいつまで経っても興奮が治まることは無いので寝ることも出来ないでしょう。

私は部屋を出て、お姉ちゃんの部屋に行きました。
中を覗くとベッドに寝ているお姉ちゃんが見えます。

またギー太を抱いて寝ていました。
寝返りとかでギー太が折れないのか心配です。

乱れていたカバーをキレイに掛けなおし
暫くお姉ちゃんを見詰めました。

とても心地よさそうな表情で寝ています。
口からは涎が少し垂れていました。
そっとティッシュで拭いてあげます。

そして頭を優しく優しく撫でてあげます。
今日も可愛い寝顔が見れた。そう思います。

憂「お姉ちゃんおやすみなさい」


――次の日

ジリリリと云うけたたましい音に起こされ私は目が覚めました。
睡眠不足からか少し体が重く、のっそりと上体を起こします。

そして小さいあくびを一つ。

横に目をやれば、昨日完成したばかりの衣装が掛けてあります。
今夜はこの衣装が大活躍ですね。
そう思うと感極まり胸が熱いですよ。本当に。

今夜が待ち遠しいです。
早くお姉ちゃんを起こして、学校行って、授業終わらせて
お姉ちゃんと一緒にお揃いの仮装をしたいのです。

そうと決まれば早くお姉ちゃんを起こしましょう。

お姉ちゃんの部屋へ直行し、声をかけながら体を揺さぶって起こします。

おねーちゃーん。朝だよ起きてぇ――という感じですね。

寝ぼけ眼のお姉ちゃんが可愛く、大きなあくびのお姉ちゃんが可愛く
目を擦るお姉ちゃんが可愛く、また涎が垂れてるお姉ちゃんが可愛く
抱きしめたいです。いえ、実際に目の前に居るとそう感じるのです。

視覚の情報がダイレクトに来る私にはこんなお姉ちゃんが堪りません。

憂「お姉ちゃんおはよう」

唯「おはようぅぅ」

憂「お姉ちゃん、衣装できたからね。今夜着ようね」

唯「わぁ本当?ありがとう、ういーー大好き!」

――私も大好きだよお姉ちゃん。
お姉ちゃんにぎゅっと抱きつかれて私はそう言いました。

朝からあたたかい温もりが味わえて最高です。

一緒に朝食を食べ終え、一緒に登校します。
もうそろそろマフラーが必要でしょうか。
新しいマフラーはお姉ちゃんがプレゼントしてくれたけど
一つのマフラーを一緒に首に巻きたい気分です。

でも、それぞれのマフラーを
それぞれの首に二重に巻いてみるのも良いかもしれませんね。

今度やってみましょう。
首周りがモコモコしそうで少し笑えてきました。

唯「どうしたのかな?」

憂「何でもないよ~」

唯「むぅ……」

お姉ちゃんはちょっと不思議そうな顔をしますが笑って返します。
お姉ちゃんはそっかー、と言いながら私にも笑い返してきました。

そしてそのまま二人してにこにこ笑顔のまま学校へ着きました。

お姉ちゃんとの暫しの別れを惜しみつつも
自分の教室へ向かいました。

教室には梓ちゃんと純ちゃんがすでに来ていて
私も鞄を自分の机に置いてそこへ近づきます。

暫くお喋りをしていると予鈴が鳴りました。
授業のスタートです。

そのままお昼の時間まで時間は進みます。
あ、授業はしっかり聴いてましたよ。

梓「憂に純、お昼ご飯食べよ」

純「もっちろんっ!お腹すいたーー」

憂「うん、食べよう食べよう」

梓「それでさ憂。今日くるの?」

憂「うん、衣装完成したし、今夜行くよ~」

純「なになに、何かするの?」

憂「ハロウィンだよー」

梓「そっ、ハロウィン。唯先輩がやりたいんだってさー」

そうです。お姉ちゃんから言い出しました。
子どもみたいにはしゃいで可愛いです。
だから頑張って衣装を作りました。

純「ハロウィンねー。あれでしょ、とりっくおあとりーととか言うの」

梓「そそ、お菓子欲しいんだってさ。部室で食べてるのに」

憂「お姉ちゃん、ああいうお祭りごと大好きなんだ」

純「そうだったね。それでお菓子貰いに回るってのね」

梓「お菓子買わなきゃ」

憂「ごめんね梓ちゃん」

梓「いいよ、唯先輩のためだし、自分用にも買おうかな」

純「私も欲しいぃ!」

梓「純には明日あげるよ」

純「ラッキー」

そんな会話をしてちょっと笑い合ってお昼を終えます。
そうして午後の授業も終わりお姉ちゃんと一緒に家へ帰りました。
準備のため部活はありません。

家へ着けば早速お着替えです。
ああ早く仮装したお姉ちゃんを見てみたい。
そう思うと胸が高鳴るばかりですね。

唯「ういー。衣装どこぉ?」

憂「こっちだよ。私の部屋」

唯「わかったー」

お姉ちゃんを自室へ招き入れて出来上がった衣装を見せました。

唯「わー、服はこれ?カワイイー!」

憂「気に入ってくれてよかったぁ」

お姉ちゃんは衣装を持ってクルクルと回っています。
そうとう気に入ったのでしょう。
大変嬉しく思います。

そして案の定強く抱きしめられ、頬擦りをされ
いっぱい頭を撫でてくれました。

――気持ち良い。

お姉ちゃんの手からお姉ちゃんの心が伝わってきて
陶酔してしまいそうです。ぶるぶると身震いがします。

憂「さあ着替えよう」

憂「お姉ちゃんが着たところ見てみたいなぁ」

唯「そうだね。私も憂が着たところ見てみたいなぁ」

そのまま私のお部屋で着替えました。

ちょっと髪を乱して着替えるお姉ちゃんが可愛いです。
襟からホッと言いながら首を出す顔が可愛いくて見とれてしまいます。

ういー着替えないの?と言われ慌てて私も着替えました。

横目でチラッとお姉ちゃんを見ると
やっぱりというかサイズもピッタリで――私のと同じ大きさですが――
とても似合っていて
姿見にニコニコ笑顔のお姉ちゃんがとても可愛く映っていました。

お姉ちゃんは姿見の前で色々ポーズをとっています。
その一挙一動全てが可愛いと言っても過言ではありません。

とても愛でたくなるのです。
お姉ちゃんほど可愛い人は居ないと自負できます。
私が一番お姉ちゃんの近くで一番見てきたからわかるんです。

唯「うーいー?どうどう?私似合ってる?」

憂「うん!とーっても似合ってて可愛いよ!」

唯「ホント?憂も似合ってて可愛いよ!」

憂「わぁ嬉しい。ありがとうお姉ちゃん!」

唯「えへへ。トリック・オア・トリート!」

憂「ええ?……今は……無いかな?」

唯「ふふふ……くれなきゃ、いたずらするぞー」

憂「きゃあ」

唯「そーれ、イタズラだー。コチョコチョ」

憂「あはははぁあぁ。お姉ちゃんくすぐったいいぃい」

唯「ダーメっ。もっとイタズラしちゃうよー」

憂「はぁはぁ……」

唯「やりすぎちゃったかな」

憂「ううん……。お姉ちゃん」

唯「なあに?」

憂「トリック・オア・トリート」

唯「へ?」

憂「私だって貰う側なんだよ~」

唯「……えへへ。持ってないや」

憂「……なら、イタズラだよー」

唯「わぁーー!」

憂「待ってお姉ちゃん。コチョコチョするからぁー」

唯「わぁぁくすぐったいい!」

憂「もっともっとコチョコチョ~」

唯「あははははぁぁああぁ」

唯「ふぇー」

憂「ふ~疲れちゃった」

唯「やりすぎだよ、ういー」

憂「えへへ。ごめんね」

憂「笑ってるお姉ちゃん可愛い!」

唯「そうかなー」

憂「うん!」

唯「ああ、遊んでたら結構遅くなっちゃった」

憂「本当だ。急いで準備しないと!」

唯「だねー、カボチャ買ってあるっけ」

憂「もちろん。お姉ちゃんはロウソク持ってきてー」

唯「ほいさ!」

はい、ランタンを作ります。
別名お化けカボチャとか云うみたいですね。

中身をくりぬき、刻み目を入れ
お姉ちゃんが持ってきたロウソクを中に立てます。
そうすると目の部分や口等から光が漏れるのです。

暗いところだと結構なキレイさを放ちます。
でも、少し怖さがある印象です。

唯「わーカワイイ」

憂「んー可愛いかなぁ」

唯「カワイイよぉ。ここの目なんか最高」

お姉ちゃんはそんなランタンに目一杯顔を近づけ
次の瞬間には頬擦りをしていました。

私は中に火があるから危ないよ、と言いました。

唯「あはは、このランタンなんかあったかくて」

唯「いいランタンですねー。いい子いい子」

憂「そろそろ準備もオッケーだし」

憂「外も暗くなってきたしいこっか」

唯「うん!行こう!!」

唯「さあ最初はちっりゃん家だよ!」

憂「うん!律さんの家へ!!ゴーだよ!」

――テクテクテクテク

唯「さぁ見えてまいりました。りっちゃん家」

憂「私初めて。大きな家」

唯「リビングとか広かったよ」

憂「へ~」

唯「さぁてピンポンしますか」

――ピンポーン ピンポーン

唯「わくわく」

憂「どきどき」

「はーい」

ガチャ――

律「うわっ……って……唯達かよ。はー本格的な格好だな」

唯「トリック・オア・トリート!」

憂「トリック・オア・トリート!」

律「へいへい。ほらよ」

――ポン

唯「やったぁ!」

憂「わぁーい!」

唯「おかし~おかし~おいしそう!!!」

憂「後で食べようねー」

唯「うん!」

唯「りっちゃんありがとう!じゃあまた!!」

――バタン

律「ホントにあれだけのためにきやがった。わざわざ仮装してまでねぇ」


――テクテクテクテク

唯「さあお次は澪ちゃん家だよ」

憂「澪さん家も初めてぇ」

唯「私もだよ!」

憂「え?」

唯「え?」

憂「お家の場所わかるの?」

唯「幼馴染で近所みたいだからその辺回ってれば見つかるんじゃないかなぁ」

憂「凄いしらみつぶしだね!」

唯「善は急げって言うしね」

憂「それ使い方が違うよぉ」


――テクテクテクテク

唯「ふぇ~疲れちゃった」

憂「お家無いね」

唯「近所じゃないのかなぁ」

憂「律さん家に戻って場所聞いた方がいいんじゃ――」

唯「お!あったあーーー!!」

憂「ホント?やったぁ!」

唯「ほら、秋山って書いてある。多分ここだよ」

憂「それじゃあ早速行こう!」

唯「おーー!」


――ピンポーン

唯「ふふふ」

憂「わくわく」

「澪ちゃん外に出てくれる?手が離せないの」

「わかったよママー」

ガチャ――

澪「はい、どなたですか――」

唯「トリック・オア・トリート!」

憂「トリック・オア・トリート!」

澪「…………」

澪「ひいいいいぃぃぃぃい!!!」

澪「おば、お、おおおおおばけえええええぇぇぇえ!!!!」

澪「ま、ママーーー!!!!」

唯「まって澪ちゃん!!!」


――ガシッ!!

澪「!!!!」

澪「ぎゃあああぁぁぁぁおばけがてつかんでるぅぅぅううう!!」

澪「……ガクッ」

憂「ああっ」

唯「ありゃ……気絶しちゃった」

唯「そんなにこわいかな」

憂「うーん。可愛く作れたと思うけどねぇ」

唯「もー澪ちゃんおかしくれないとイタズラしちゃうよー」

唯「みーおーちゃんてばー。おーきーてー」

憂「起きないね」

唯「むむ……しょうがない。イタズラをしておきましょう」

唯「この偶然持ってたペンで。おでこにカキカキ~ってね」

澪「う、ううん~」

唯「あ、澪ちゃん起きた」

澪「ひいい!!ま、まだ居る……!」

唯「澪ちゃん私だよ唯だよー」

澪「見えない聞こえない見えない聞こえない」

唯「もーほら顔を良く見て」

澪「…………あっ。唯、か」

唯「さっきからそう言ってるじゃん」

澪「ごめんごめん、てっきりお化けが来たかと」

唯「へへへ。憂が作ってくれたからね。精巧に出来てるんだよ」

澪「あ、あぁ。近くで見るとさらに怖いな」

唯「それよりトリック・オア・トリートだよ!!」

澪「わ、分かったよ。ちょっとまってて」

トテトテ――


――トテトテ

澪「はい、お菓子だ。これでいいかな」

唯「わーーい!おかしだぁ。ありがとう澪ちゃん!」

憂「お菓子だーありがとうございます。澪さん」

澪「あ、いや、いいんだ。喜んでもらえれば」

唯「では!また後で!!」

憂「失礼します」

――バタン

澪「……あーこわかった……」


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最終更新:2010年11月20日 06:23