梓「はーっ……」
梓「誰も来ないなぁ」
梓「どうしたんだろう……」
梓「あ、すみませーん。お冷もらえますか?」
梓「遅いなぁ」
梓「もうちょっとで1時間経っちゃうよ」
梓「誰も来てないってのもおかしいけど」
梓「そもそも発案者の唯先輩が最初にいないってのが問題だよ」
梓「昨日あれだけ念押したのに――」
~~
梓「――え? みんなで買い物ですか?」
唯「そうだよ~、明日は土曜でお休みだし~。たまにはいいじゃん」
律「んー、まぁいいんじゃね?」
澪「そうだな。新しい服も欲しかったしな」
紬「私も大丈夫。楽しみだわ~」
梓「はぁ。まぁ、私も構いませんけど……それじゃあ何時にどこに集合しますか?」
唯「う~ん、どうしようか?」
梓「そこまで考えてなかったんですか……」
律「ま、適当でいいんじゃね」
唯「じゃあ10時に駅前の喫茶店に集合ね」
澪「駅前のっていうと……ああ、あそこか」
紬「じゃあこれで決定ね」
律「唯~、発案者が遅刻とかすんなよ~?」
唯「だーいじょうぶだって! まっかせてよ」
梓「なんか前フリみたいで心配です……ちゃんと来て下さいよ?」
唯「あ~う~、あずにゃんまで~」
梓「唯先輩、この前もそんな事言って遅れてきたじゃないですか。この前の約束覚えていますか?」
唯「えっ、何か約束したっけ?」
律「あー、そういや何かしてたなー」
紬「あれね。次から集まる時に、遅れてきた人には……」
澪「その日ずっと荷物持ち、だったな」
梓「そうです、気を付けて下さいよ。潰れるまで持ってもらいますよ!」
唯「バッチリ思い出しました! 大丈夫だよ、心配性なんだから~」
澪「やれやれ――」
~~
梓「――それなのに来てないなんて。まぁ、他の人も来てないけど」
梓「11時過ぎちゃった」
梓「うーん、でもさすがにそろそろ誰か来るよね」
梓「暇だなぁ」
梓「そうだ、誰が最後に来るか予想しようかな」
梓「……やっぱり唯先輩が最後に来る気しかしないな」
梓「それぞれ一番遅く来た事を仮定して、どんな反応するのか考えてみよう」
梓「唯先輩ばっかり疑うのも不公平だしね」
梓「じゃあまずは律先輩かな――」
~~
唯「――でさぁ、いい所であれが出たんだよ~」
紬「へぇ~」
澪「」イライラ
梓「み、澪先輩、気持ちはわかりますが、少し落ち着きましょう?」
澪「あ、ああ、すまないな。わかってるんだけど……」
律「おーまったせー! ごめんなー」
唯「あ、りっちゃん。おっそいよー」
紬「お疲れ様。はい、お水」
律「お、ありがと……ぷはーっ、全力疾走してきた身に水が染み入るぜ」
梓「ここまで走ってきたんですか!? そもそもなんで遅れてきたんですか」
律「いやー大した理由じゃないんだけどさー」
唯「私達ずっと待ってたんだよ? 納得のいく理由が欲しいです!」
律「ごーめんって。そうだなぁ、いくつか細かい事件の積み重なりの相乗効果っていうか」
梓「何です、それ」
律「布団から出られなかった、目覚まし時計が鳴らなかった、そもそもタイマーセットしてなかった、二度寝は気持ちいい、とか……」
澪「……それ、全部寝てただけだな?」スッ
律「そうとも言うかなーって、澪しゃん……その振り上げた拳は――あいたーっ!」
紬「お、落ち着いて澪ちゃん!」
澪「お、お前って奴は……!」
律「ひぇ~~!」
梓「やれやれ――」
~~
梓「――と、まぁこんな感じかな」
梓「いい加減な律先輩の行動に、澪先輩の鉄拳が唸る」
梓「いつも通りの私達だね」
梓「……私も慣れちゃったなぁ……」
梓「次は澪先輩の場合かな」
梓「ちょっと想像しにくいけど――」
~~
梓「――それにしても珍しいですね、澪先輩が遅刻だなんて」
紬「そうね、澪ちゃんいつも時間にはキッチリ来てるものね」
律「澪も人の子。そういう時もあるさ」
唯「りっちゃんだったら何も違和感ないのにね~」
律「なんだと~、その言葉そっくり唯に返してやるわい」
唯「えぇ~? 私よりりっちゃんの方が遅刻してるよ~」
律「いーや、唯だね。学校は澪と行くからそうそう遅刻なんてしないしな」
唯「わ、私だって憂と行くから遅刻しないよ!」
梓「はぁ……お二人とも、一人で登校するときはどうなんですか?」
唯「えっ」
律「それは……」
紬「大体遅刻してるんじゃないかしら~」
唯「ああっ、ムギちゃんダメだよバラしちゃ」
律「だ、大丈夫だ。そんなことは月に2回あるかどうかだしなっ」
梓「普通は月に2回も遅刻はしないと思いますよ……」
澪「み、みんな、遅くなってゴメン!」
唯「お、澪ちゃんきた~」
紬「お疲れ様。はい、お水」
澪「ありがとう、ムギ……はぁ~、やっと落ち着いた」
梓「それにしてもどうしたんです? 澪先輩が遅刻するなんて」
唯「こりゃ明日は台風かもしれないね」
律「雪かもしれないぞ~?」
梓「茶化さないで下さいよ」
澪「いや、特に理由って程でもないんだけど、昨日は遅くまで歌詞作りしてて……そのせいかな。本当にゴメン」
梓「い、いえ! そんなに謝らないで下さいよ。そういうことは誰にだってあります!」
唯「う~ん、何か……」
律「私らのに対しての時と反応が違うよな」
唯「不公平だー!」
梓「う、そ、それは日頃の行いの違いです!」
紬「まぁまぁ、ちゃんと皆揃ったんだから行きましょう? ね、澪ちゃん」
澪「あ、ああ! すまないな」
唯「あ、逃げた~」
律「卑怯だぞー!」
梓「やれやれ――」
~~
梓「――こうなるのかな?」
梓「うん、やっぱり澪先輩が遅刻してくる絵が想像できない」
梓「澪先輩の事じゃなくて、唯先輩と律先輩の遅刻話がメインになってるしね」
梓「そもそも、律先輩と澪先輩はいつも一緒に行動してるような」
梓「登下校もそうだし、どこかで落ち合う時も大体一緒だよね」
梓「家が近いからそうなるのが自然か」
梓「そうなると、遅刻する時も二人一緒に遅刻する方が自然だよね」
梓「こういう風に――」
~~
紬「――りっちゃんはともかく、澪ちゃんも遅れてくるなんて」
梓「珍しいですね」
唯「でもでも、いつも二人でいるから遅刻する時も二人一緒の時あるよね?」
紬「ああ、確かに。でも大体原因はりっちゃんよね~」
梓「今日もそんな感じなんですかね?」
唯「お、噂をすれば」
澪「す、すまないみんな!」
律「おーっす、揃ってるなー! ヒーローは遅れて登場す……」
澪「遅れてきて威張るなっ!」ゴチン!
律「あたーーっ!」
紬「お疲れ様、二人とも。はい、お水」
澪「ああ、すまないなムギ。全く、律のせいだぞ」
律「だから悪かったって言ってるじゃんよー」
梓「今日は一体何があったんですか?」
唯「どうせりっちゃんが原因だってわかってるよ~」
律「何ぃ? 今回は澪にも責任があると言えるね」
澪「う……元を正せばなぁ」
紬「まぁまぁ、落ち着いて。何があったの?」
澪「えっと、私が律の家に遊びに行ってて……」
律「明日どこの店に行くか、とか話してたんだよな」
澪「そう。それで遅くなったんで帰ろうとしたら律が、あ、あれを……」
梓「あれ?」
唯「はっは~ん。この名探偵
平沢唯さんにはお見通しですぞ!」
梓「えぇ、突然なんです!?」
紬「唯ちゃん探偵! 一体この事件の真相とは何なのでしょうか!」
梓「ムギ先輩まで!?」
唯「それはだなぁ、ムギちゃん刑事よ。澪ちゃんが嫌がるりっちゃんの所有物といったらアレしかないでしょう!」
律「そう、これ。ホラー映画のDVDなんだけどさ」ヒョイ
澪「うわわわわっ! も、持って来るなよぉ!」
律「いやー、澪が急かすからさぁ」
唯「ちょっとー、犯人と被害者がネタバレしちゃったらダメじゃん」
紬「そうだそうだー」
梓「いや、ここは二人とも黙って聞いていましょうよ……」
律「私が犯人かよ……まぁいいや。そんで新作だし一緒に観ようぜ、って誘ってさ」
澪「無理やり、な! 私はそんなのちっとも観たくなかったんだから!」
律「でも澪ちゃんったら、一回観たら最後まで観ないと気が済まないタイプなのよね~」
澪「うぅ……ちゅ、中途半端だったら余計気になるだろ!」
梓「はぁ。それでそのDVDを最後まで観た、と」
唯「それが遅刻の原因?」
律「まぁ、原因はその後なんだけどさ」
紬「その後?」
律「観終わった後に澪は帰ったんだけどさ。すぐに電話かかってきて『眠れないから何か話してくれ~』って」
澪「しょうがないだろっ! こ、怖かったんだからぁ……」
律「それで澪が眠くなるまで付き合ってて、いざ自分も寝るか、となったら目が覚めちゃって」
梓「はぁ、なるほど。それで気付いたら起床時間を過ぎていた、と」
律「そういうこと」
澪「ご、ごめん……」
梓「そんな、澪先輩が謝る事じゃないです」
唯「そだね~。やっぱりどっちかっていうとりっちゃんに非があるね~」
律「へーいへい、全部私が悪いですよーだ」
紬「まぁまぁ、そんなに時間がオーバーした訳でもないんだし」
梓「そうですね。それじゃあ行きましょうか」
唯「しゅっぱ~~つ!――」
~~
最終更新:2010年11月25日 07:35