「親子丼があるなら姉妹丼ってのもないのかな?」

唯ちゃんのその一言で部室は静まり返った

なるほど、確かにもっともな意見だと思うが、律っちゃんや澪ちゃんの反応はどうも歯切れが悪かった

「お、おい唯」

「へ?」

「……いやなんでもない」

「そ、そろそろ練習するぞみんな!」

そう言った澪ちゃんに今日は珍しく律っちゃんも賛同して、ティータイムもそこそこに私たちは練習を始めることになった

練習が終わり帰宅した後、珍しく私は寝る前にPCを起動した

「姉妹丼」

唯ちゃんの発言以降私の頭から離れないその言葉を調べようというのだ

りっちゃんのあの反応。まるで唯はしらないのか?とでもいうかのような反応だったからだ

「普段聞かないだけで、そういう食べ物もあるのかな……?」

おなじみの大手検索サイトにその文字を入力して私は検索結果に目を通した

[姉妹丼とは、姉妹関係にある複数の女性と性行為を行うことである]

なるほど。確かに姉妹を一緒に美味しくいただくそのまんまの意味だ




「………~~っ」

急に顔が真っ赤になってしまう。いわゆる……エッチな言葉だったわけだ

律っちゃんや澪ちゃんの反応もうなずける

姉妹かぁ……姉妹といえばつい身近な平沢姉妹を想像してしまう


PCの電源を消してベッドに寝っ転がりながら妄想にふける

イケナイ事だと分かっているけど、ついつい友達の姉妹でいやらしいことを考えてしまう

「唯ちゃんと憂ちゃん……」

無垢な二人を柔らかいベッドに乗せて服を穿く



何故そうなってしまったか、そもそも悪いことなのかもわからないが。私はどうやら女性の体に興奮する


恥ずかしそうに、でも期待に満ちた目でこちらを見つめてくる唯ちゃんと憂ちゃん

両脇に彼女達を抱いてそれぞれに口付けをする


prrrrrr

!!!


着信音で急に現実に引き戻される。ディスプレイで相手を確認すると

「……唯ちゃん」




もう日付も変わろうという時刻に何の用なんだろう?

携帯電話を取ろうとしたが、すんでのところで手を引っ込める


「今電話に出るのは・・・」


ほんの少し前まで彼女と彼女の妹の裸体を想像していた

電話を取って会話を行うには、かなりの勇気が必要だった


prrrrrr ・・・・


唐突に電話の音が切れた。どうやらあきらめてくれたみたい


「・・・良かった」


唯ちゃんには悪いけれど、ほっとした。どんな顔をして電話に出たらいいか分らなかったから

携帯の光っているランプを消して、ついでに部屋の照明も落とす

今日はどんな夢を見るのかな?暗闇の中で一人微笑んだ


夢の中では、さっきの続きが行われていた。唯ちゃんと憂ちゃんがお互いにキスをし合っている

ゆっくりゆっくり舌と舌を絡めてのキス。『ちゅっちゅっ』音がだんだんと大きくなっていく


「私も混ぜてほしいの~」


一人だけ見ているのでは満足できそうになかった。私もキスをしたい

唯ちゃんと憂ちゃんが挟み込むようにして、キスをしてくれる

唯ちゃんは新しいことを覚えて、夢中で舌を絡めてくる

憂ちゃんは恥らいつつも、舌と舌を合わせる快感に身を任せている


「うふふ~♪」

「えへへ~♪」

「えへへ~♪」


キスだけでもう十分。他のことは一切考えることができない

二人の柔らかい体に挟まれていると、妙に心が安らかになるのを感じた

この姉妹独特の雰囲気なんだろうなと、幸せな気分に浸っているとベルの音が聞こえた


「ん~~もう朝か・・・」


時計を見ると、もう起床しなければならない時刻になっていた

先程までの夢を思い出していると、顔にだんだんと血液が回っていくのを感じる


「エッチな夢を見ちゃった・・・」

「今日は唯ちゃんと憂ちゃんに顔を合わせるのが恥ずかしい・・・」

「でも・・・いいところだったわ~惜しかったかしら?」


にやけながら妄想していたが、頭を振り追い払う

時計を再度見ると、時間に余裕が無くなってきているのが分った

「妄想癖ももう少し控えめにしないと・・・」

「今日は遅くなっちゃった・・・」


いつもなら余裕を持って歩いている道を、小走りに駆け抜ける

ゆっくり歩くと遅刻になってしまうので、仕方なく走っていた


「もう少しで学校に着くわ~」


そう呟いた時、前方に見慣れた後姿を二つ発見した

声をかけるか少し躊躇ったが、結局声をかけることにした


「おはよう~唯ちゃん、憂ちゃん」


声をかけられた二人は振り返り、ほとんど同時に挨拶を返してくれる


「おはよう~ムギちゃ~ん」

「おはようございます。紬さん」


二人の顔を見るなり、また顔が赤くなっていくのを感じた


「ムギちゃんどうしたの?顔がなんだか赤いよ~?」

「あ、本当ですね。風邪かな?」


憂ちゃんが手を私のおでこに当ててくる。触れられたときに思わず声を出してしまいそうになる

ひんやりとしていて気持ちが良かった。でも、さらに顔が熱を帯びてくる


「ごめんなさい、手冷たかったですか?」

「う~い~それじゃダメだよ~」


平沢姉妹の声が遠くから聞こえる。触られた瞬間から体が思うように動いてくれなかった


「こ~いうときはこうするんだよ!」


そう言うなり、唯ちゃんは私のおでこと唯ちゃんのおでこをくっつけた。

思わず、「んっ・・・」と呻き声が漏れてしまった

唯ちゃんが不思議そうな顔で見つめていたけれど、すぐに私のおでこの熱量を測るのに没頭し始めた


「ん~~熱は・・・無い!・・・と思う~」

「も~お姉ちゃんは~」


二人の笑い声が聞こえる。その中に私の笑い声が入っているかは聞き取れなかった

その後の会話は短いものだった


「い、急いでは、走ってきたから顔が赤いのよ~」

「あ~そっか~急いで・・・・あっ!」

「お姉ちゃん~急がないと・・・」


三人そろって校舎を目指して駆け出す

時計は後5分でチャイムが鳴ることを教えてくれていた

いつの間にか体は動くようになっていた


ぜえぜえと息を吐きながら教室に到着した。どうやら間に合ったみたい


「おはよームギ珍しく遅かったじゃん?」

「おはよう。本当ね、いつもなら早いのに」

「うふふ~おはよう~ちょっと寝坊しちゃったの~」


クラスメイトに挨拶をしている途中、ちらりと唯ちゃんの様子を伺ってみる

唯ちゃんはもう絶命寸前!というような顔をして着席もとい、机の上に倒れこんでいる


きーんこーんかーんこーん

チャイムの音が鳴り、担任のさわ子先生が教室に入ってくる

さっそく、倒れこんでいる唯ちゃんに渇を入れ始めた


「ひ  ら  さ  わ  さ~ん?」

「お代官様~お許しを~」


くすくすとみんな笑っている。私も唯ちゃんのの迷演技を見てくすりと笑った


HRが終わり、その後の授業は大きなハプニングも無く進んでいった

でも、私の心は授業には無かった。考えるのは平沢姉妹のことだけ

あんなに女の子同士で触れ合っている夢を見たのは初めてだった

いや、そんな夢を見たことが無かったわけではない

しかし、私が中心にいることはこれまでに一度も無かった

ぼんやりと思索の時間を重ねていると、チャイムが鳴った

もうお昼の時間か・・・今日は軽音部のみんなと部室でお昼を食べる約束だった


「ムギー早く部室に行こうぜー腹へったー!」

「わかった、わかったそう大きな声を出すなよ」

「今日は朝ごはんほとんど食べれなかったから、お腹すいた~」

「憂ちゃんが付いていたのに寝坊か?」

「いや~二度寝をしてしまいまして~」


がやがやと話すみんなと一呼吸置いてついて行く

音楽室に向かって歩いていると、いつの間にか唯ちゃんが隣に並んでいた


「ムギちゃんどうかしたの~?」

「んふふ~ちょっと考え事をしていただけよ~」


『ふーん』と、言いながら首をかしげる唯ちゃん。仕草の一つ一つにどきりとさせられる

今日はいつもより、イケナイことを考えてしまいそうだ


「あ・・・昨日は電話に出れなくてごめんね」

「ん?ん~ん全然構わないよ~」

「ところで、昨日の電話はどんな用件だったの?」

「えへへ~また後で話すよ!」


会話を打ち切ると同時に部室が目の前に現れた

みんな楽しみのお食事の時間だ

食事中はさすがにぼーっと、考え事をするわけにはいかなかった

サンドウィッチを口に運びながら、みんなと会話を重ねていく

お食事の後は、部活までまだ時間があったがティータイムを行うことにした

私が紅茶を入れている間、唯ちゃんがポツリとつぶやいた


「姉妹丼って・・・どんな意味なの?」


その瞬間、部室内の空気が凍った。意味が分っているりっちゃんと澪ちゃんは席に座っている

逃げ場が無いのは一目瞭然だった。二人とも、目を合わせないように必死になっている


「ねぇ、教えてよ~憂に聞いてみたけど言葉を濁して教えてくれなかったんだ~」


りっちゃんと澪ちゃんには悪いけれど、二人の様子を観察していた

二人とも、そりゃ言えないよな・・・といった顔をしている


二人が「えー」とか、「あー」といってる間に紅茶を入れてまわる

ついに唯ちゃんが標的を私に定めようとしているのが分った


「ねぇ、ムギちゃん?姉妹丼ってどういう意味?」


屈託の無い笑顔で私に問いかけてくる唯ちゃん

答えを教えてしまおうと思ったが、もう少し二人の様子を見ていたいと思った


「ごめんね、唯ちゃん。私にも何のことか分らないの~」


この言葉を発するや否や、りっちゃんや澪ちゃんも

『いやーわ、私も知らないなー』『あ・・あぁ。私も知らない』

と、しどろもどな返答が相次ぐ。それを見て唯ちゃんは残念そうな顔をした


「そっか~みんな知らないのか~」

「そ、そろそろ教室に戻るか?チャイムもなりそうだしなー」

「そ、そうしようか!ほら、唯たちも早く戻るぞ」


二人ともほっとした様子で部屋を出て行く。その後に唯ちゃんも部屋を出ようとしていた


「ねぇ、唯ちゃん」

「ん?どうしたの?ムギちゃん」

「後で姉妹丼の意味を教えてあげるからね?」

「え?知って・・・」


他の二人に聞かれないように慌てて口を塞ぐ

くちびるに指を一本立てて、にこりと笑った


その後の授業や部活のことは良く覚えていない。気が付いたらいつもの交差点まで来ていた

りっちゃんと澪ちゃんが交差点を渡る間、私と唯ちゃんはじっと見守った

どちらからともなく、手を繋いで無言のまま平沢家を目指す

『姉妹丼』の意味くらいすぐに教えてあげればいいのに、私は平沢家を目指す


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最終更新:2010年11月27日 03:01