道中


律「でもさ、唯。いくらなんでも何の考えもなしにギターを選ぶってのもなかなか難しいぞ?」

唯「……」ムム・・・

澪「ギターにもいろいろ種類があるんだ、音色だけじゃなくてネックの形とかな。あんまり重いやつだと持てないかもしれないし」

唯「……」フムフム

紬「まぁまぁ、そんなに難しく考えなくても、見た目で気に入った物を買うのもいいんじゃないかしら?」

澪「確かにそれも一理あるなぁ」

律「ま、唯のために集めたお金だし、唯の好きなようにすればいいって話だな」

唯「……(ありがとう)」ニコッ

紬「着きました~♪」

律「お、意外と普通に街の楽器屋だな」

澪「……」ワナワナ

唯「?」

律「あ、春の大レフティ祭やってら」

澪「ぃやったぁー!レフティモデルがいっぱいあるぞぉぉーっ!!」シュバッ タッタッタ

紬「喜んでもらえたみたいで嬉しいわぁ」

唯「……」

澪「ぱぁぁぁ…♪」

唯「…?」

律「ああ、澪はレフティのベースを見つけるといつもあんな感じになるんだ…しばらくそっとしておいてやってくれ」

唯「……」

紬「ちなみにレフティモデルっていうのは左利き用ってことよ、澪ちゃんは左利きだから」

唯「……」ナットク

律「(そりゃあマトモに練習もしてなきゃ気付かないわな……)」

紬「ギターはこっちにあるの」

唯「……」トテトテ

律「いや~、澪じゃないけどやっぱり楽器屋に来ると心躍るよな」

紬「そうねぇ…つい見てるとほしくなったりしちゃうものね」

律「ウィンドウショッピングって難しいよなー…ムギはそういうときどうするんだ?」

紬「ううん、私は自分で買い物に行くことはほとんどないから♪」キッパリ

律「そ、そっか…ハハハ……」

律「どうだ唯、気に入ったギターは見つかったか?」

唯「……」ジーッ

律「これがいいのか?ずいぶん高そうなやつだけど……って15万!?」ギョッ

唯「……」ジーッ

律「いやいやさすがにこれは無理だろ…諦めて他を探そうぜ、唯」

唯「……」ジーッ

律「……どうしてもこれじゃないとダメ?」

唯「……」

律「(困ったなぁ、なんとかして唯にギターを買わせてあげたいけど手持ちは5万しかない…)」

律「諦めようぜ、唯」ポン

唯「……」

唯「……」シュン

律「ま、まぁこればっかりは仕方ないさ、他にみんなで買えるギターを探そうぜ!」

唯「……」コク


紬「……」


紬「あのぉ……」

店員「いらssy・・・――!?紬お嬢様ではありませんか…!本日はどのようなご用件でございましょう?」ペコリ

紬「あのギターが欲しいのだけれど…」

店員「はっ、では後ほど御宅の方へ配送させていただきます」

紬「ううん、そうじゃないの。みんなで稼いだお金で買いたいから…5万円にまけて下さらないかしら?」

店員「はい、紬お嬢様のご希望とあれば、ぜひ」

紬「ありがとうございます♪」

紬「唯ちゃんっ!」

唯「?」

紬「さっきのギター、5万円に負けてくれるって♪」

唯「……!」

唯「♪♪」ヤッター!

紬「よかったわね、唯ちゃん」ニコニコ


律「(ムギ、サンキュな)」

紬「(いえいえ、それほどでも♪)」


唯「……」ルンルン♪

律「よかったなぁ唯、お目当てのギターが買えて」

唯「……」ブイッ♪

紬「これで明日からは忙しくなるわねっ」

律「えぇー…もうちょっとお茶してよーよぅ」

唯「……」メッ!

律「わーかってるって!唯が早くギター弾けるようになれるまで猛特訓してやるぜっ!!」

ワイワイ キャッキャ



紬「そういえば澪ちゃんは?」

律「…あ」



唯帰宅


憂「おかえりお姉ちゃん……ってどうしたのそのギター!?」

唯「……」エヘヘー♪


~~~~~かくかくしかじか~~~~~


憂「そう、お姉ちゃん軽音部に入部してたんだっ」

唯「……」コクリ

憂「急にギターなんて持って帰ってくるからビックリしちゃったよ…」

唯「……」テヘヘ

憂「でもお姉ちゃんが部活かぁ……なんだか私まで嬉しいな」

唯「……」

憂「うまくやっていけそう?」

唯「……」コク

憂「そっか、よかったね」ニコッ


憂「そうだ!ギター持ってるお姉ちゃん、写真に撮ってあげるよっ!」

唯「!!♪」


憂「じゃあ撮るよ~!」

唯「……」バッチコイ!

憂「はい、チーズ」

唯「……」ピースッ

パシャ

【保存完了しました:image135.jpg】

憂「はいっ、お姉ちゃん!♪」

唯「……//」ニヤァ・・




To:澪ちゃん,ムギちゃん,りっちゃん

件名:唯です!

本文:
みんな今日は本当にありがとう!
軽音部に入部してからの毎日、楽しいことがいっぱいです。
みんなとバイトして、みんなと楽器屋さんに行って、ほしかったギターも買えて…私、本当に嬉しいよ。

みんなにお金出してもらっちゃったのは悪い気がするけど…
でもそのぶん一生懸命練習して、きっとみんなで演奏できるようにするから!
だから明日からも頑張ろう!これからもよろしくねっ!

添付画像あり:image135.jpg



【送信】ポチッ


唯「……」

パタン



とある昼休み


律「相変わらずムギの弁当は豪華だなぁ…」

紬「そんなことないわ、ただの夕飯の残り物だもの」

律「(どんな夕飯だよ…)」

澪「唯はいつも弁当どうしてるんだ?」

唯「……」

カチカチ

『妹につくってもらってるよ~』

澪「へえ…唯って妹がいるのか」

律「唯の妹か…ちょっとどころじゃなくかなり興味あるな」

澪「会ってみたいな」

紬「そうね~」

律「よし!じゃあ今日はみんなで唯の家に行こう!!」

紬「わぁっ、それはとっても素敵だと思うわ!」

律&紬「イェーイ!!」

澪「また律は唐突だな…唯にだって都合があるだろう?」

唯「……」


『妹に聞いてみたら大丈夫だって』

澪「あ、そうなんだ…」



放課後


律「うし、では早速向かうとするか!」

澪「なんだか悪いな、唯」

唯「……」ブンブン

『みんなが来てくれるなら大歓迎だよ!』

澪「そうか…?なら喜んでついていこうかな」

唯「……」コクコク

紬「私、友達の家に遊びに行くのが夢だったの~♪」

律「というワケで道案内よろしくな、唯!」

唯「!」キリッ!



道中


律「(でも、唯の妹ってどんな感じの子なんだろうな)」

澪「(うーん…きっと真面目な子なんじゃないか?言い方は悪いけど、唯の面倒だって見ないといけないわけだし)」

律「(まさか妹もしゃべれないなんて事はないよな…?)」

澪「(縁起でもないことを言うなっ!)」

紬「……」

~~~~~~~~~~~~
ムギの妄想

妹「お姉ちゃん…今日もお姉ちゃんは可愛いね…」

唯「……//」

妹「ねっ、お姉ちゃん……おかえりのキス、しよ……?」

唯「~~!///」

チュッ・・・
~~~~~~~~~~~~

紬「ハァハァ……」

律「おい、鼻血鼻血」



唯「……」ピタ

唯「……」スッ(家を指さす)

澪「着いたみたいだな」

律「んじゃ早速だけど上がらせてもらっていいかい?」

唯「……」コクコク

紬「ワクワクワク…♪」

律「ムギはさっきから何を期待しているんだ…」

ガチャ

憂「お姉ちゃんおかえり……あ、お友達の方ですか?」

律「軽音部部長の田井中律とその仲間たちでーす!」

澪「さりげなく部長って所を強調するな!」

紬「お邪魔します♪」

憂「はじめまして、妹の憂です。姉がお世話になってます」ペコリ

律&澪「(出来た子だー!!)」



唯の部屋


唯「……」ドウゾ

律「ここが唯の部屋か…ちゃんと片付いてるな」

紬「素敵なお部屋ね…」

唯「……」テヘヘ・・

律「それに引きかえ澪の部屋ときたら…」ニヤ

澪「わぁーっ!みなまで言うなーー!!」

ガチャ

憂「みなさん、お茶が入りましたよーっ」

律&澪「(本当に出来た子だー!!)」


律「とはいっても特にすることもないよな」

澪「律が妹さんに会いたいっていうから来たんだろっ」

律「そうだった…よし、だったら軽音部の代表として改めて妹さんに挨拶しておくか」

澪「それなら私も付き合うよ」

律「ムギはどうするー?」


紬「ふふっ、このマンガおもしろ~い!」

唯「……」エヘヘ

紬「唯ちゃん、こっちのも読んでみていいかしら?」

唯「……」コクコク

紬「ありがとう~♪」


律「…楽しそうだから唯に任せておくか」



リビング


律「憂ちゃんっ」

澪「改めて挨拶にきたよ」

憂「えっと…律さんに澪さんですよね?お姉ちゃんから聞きました、今日は遊びに来てくれてありがとうございますっ」

律「い、いやいや…むしろ勝手に押しかけてきちゃって悪いなーって…」

憂「いえいえ、お姉ちゃんがお友達を呼んでくるなんて夢みたいですから」ニコッ

澪「……」

憂「お姉ちゃん…軽音部でやっていけそうですか?」

律「まあな…大変なこととかもあるだろうけど、でも頑張ってやっていこうってみんな思ってるよ」

澪「なにしろ唯自身が一番頑張ってるからな、私もそう思う」

憂「みなさん……」ホロリ

憂「お姉ちゃん、高校生になって…軽音部に入ってから変わったと思うんです。きっとみなさんのおかげだと思うんです」

律「な~に、この田井中律様(部長)にかかればそんなモンだって!!」

澪「律はそうやってすぐ調子に乗る…私たちは本当になにもしてないからさ」

律「あと…ちょっと聞きにくいんだけどさ…、唯はいつから……?」

澪「……」

憂「…それは私もわからないです。気がついたときからお姉ちゃんはしゃべれませんでしたから」

律「そっか……憂ちゃんも大変だったんだな…」

憂「そうですね、大変だったこともありますけど…でもずっと一緒にいれば考えてることはわかりますよ?」

澪「確かにな、私たちにも言いたいことはなんとなく伝わるもんな」

憂「それに…私のことはいいんです。だって、本当に大変な思いをしてるのはお姉ちゃん自身だと思うから」


律&澪「(いい子すぎて何も言えない……)」


憂「本当に今日はありがとうございました。よければまた遊びに来てくださいっ」

律「じゃ、お言葉に甘えちゃおっかな~」ヘヘッ

澪「こちらこそごちそうさま、またみんなで遊びに来るよ」

憂「はいっ!」パアッ


律「おーい!ムギ、帰るぞ~!」

ガチャ

\ばっよえーん!ばっよえーん!/

紬「やったぁ!私の勝ちね♪」

唯「……」ガクッ


律&澪「まだ遊んでたんかいっ!!」



数ヵ月後


~♪~♪~♪

ジャーン・・・♪

澪「うんっ、今の演奏バッチリだったな!」

紬「みんな素敵だったわ♪」

律「かーっ、気持ちいいー!!」

唯「……」フゥ・・・

澪「唯もこの数ヶ月ですっかり上達したな」

唯「……」エヘヘ・・・///

律「これなら武道館も夢じゃないかもな!」フンスッ

紬「ねえねえりっちゃん、その前に学祭ではライブとかやらないの?」


律「………学祭?」


律「そういや学祭のことなんてこれっぽっちも考えてなかったな…」

澪「正直合宿とかいろいろやって満足してた感じだったよなぁ」

唯「……」コクコク

澪「律!学祭でライブやろう!きっと今の私たちならいけるって!」

唯「!!」コクコク!

律「そうだなぁ~…やっぱりバンドといえばライブが醍醐味だもんな、んじゃぁ学祭で一泡ふかせてみっか!!」


「「「オーッ!「(オーッ!)」」」」


律「…とは言ったものの、まずはどうすればいいんだ?」

澪「こらこら部長……」

紬「ステージの使用許可を取らなくちゃいけないから、まずは生徒会にお願いしに行くのはどうかしら?」

律「さっすがムギぃ!頼りになるんだからこのこのぉ!!」

紬「それほどでも~♪」


澪「本当に律が部長で大丈夫なのか…」

唯「……」フフッ


4
最終更新:2010年11月29日 21:43