唯家

唯「」セッセ

唯「」セッセ

憂「お母さん、なんでお姉ちゃんは毎日毎日本棚の本を全部出してまた並べなおすの?」

唯ハハ「私にもわからないわ・・・ただひとつわかっていること、それは」

唯ハハ「あなたのお姉ちゃんは自閉症なのよ」ポロポロ

憂「どうしてこうなった」

唯「」セッセ

唯「」セッセ

憂「お姉ちゃん、一人じゃ大変でしょ?私も手伝うね」スッ

唯「!?」

唯「ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!11」

憂「!」

唯「うああああああああああああああ!!!!!!!!!!あーーーーーーーーー!」

唯ハハ「ちょっと憂!何してるの!?」

憂「私はただお姉ちゃんの手伝いをしようと・・・」

唯「ぎいいいいいいいいいああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

唯「ふー!ふー!」

唯ハハ「大丈夫よ誰も唯の仕事を取ったりしないからね。だから落ち着いて」

唯「ふー!ふー!」

唯ハハは唯を抱きしめた
唯は自分の仕事を奪った憂を睨み続けている

憂「おねえ・・・ちゃん」

唯ハハ「何してるの憂。あなたはさっさとその本を置いて部屋から出なさい」

憂「・・・はい」

唯「・・・」



ガチャ、バタン

憂(ハア・・・)

憂(なんであんなのが私のお姉ちゃんなの?)

憂(クラスの子はお姉ちゃんと服を買いに行ったり、ご飯食べに行ったりしてるのに)

憂(私とお姉ちゃんじゃ、一生できないことだよね)

憂(まあお姉ちゃんと一緒にいるところを誰かに見られたくないからいいけど)

唯『ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!1』

憂「まーた始まった」

翌朝

憂「おはよー」

唯ハハ「おはよう憂。ご飯できてるわよ」げんなり・・・

憂(お母さん疲れてる・・・)

唯「ぱくぱくもぐもぐ」

唯は1秒も狂うことなく毎朝5時に起床する
もちろん目覚まし時計をセットすることはない

憂(我関せずみたいな顔しやがって)



玄関

憂「いってきまーす」

母「待って憂。今日は唯の高校まで付いてってあげて」

憂「えー・・・」

母「どうしても外せない仕事があるの・・・お願い」

憂(勘弁してよ・・・)

憂(お姉ちゃんの高校って確か桜ヶ丘擁護学校だったよね)

憂(お姉ちゃんみたいな人がいっぱいいるのかな)

憂(考えただけで寒気が・・・)ぶる

憂「わかった。それでお姉ちゃんは?」

母「うんこ中よ」

唯の大便はきっかり5分である
1秒も狂うことはない


母「頼んだわね、それじゃ」ガチャ、バタン

憂「はあ・・・」

憂(憂鬱だ・・・)

憂「・・・」

憂「はやくしてよもー!遅刻しちゃうじゃない!」

カラカラカラ、ふきふき、ジャー

ガチャ

唯「ふぅ」

憂「急いでよお姉ちゃん!」



むんず

憂「あ・・・やばい・・・」

憂は唯の靴を踏ん付けてしまった
唯は学校から帰ると、毎日靴を磨く
唯は靴の汚れひとつ許さないのだ

憂「やばいいい・・・騒がれたらどうすれば・・・」

唯が近づいてくる
その距離3m


憂「ああ・・・」

唯「あ・・・」

憂「お姉ちゃん、ごめんなさい。ごめんなさい!」

唯「・・・」

憂「許して・・・くれるの?」

唯「うわああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」ポカポカ

憂「い、痛い!やめて!お姉ちゃん痛いよ!」

唯「ぎゃああああああああ!!!!!!!ぬわーーーーーー」ポカポカ

憂「痛い痛い!ごめんなさい!お願いやめて!」

憂「一体どうすれば・・・そうだ靴を磨いて履かせちゃえば・・・」

唯「」ポカポカ


憂「うぐっ…いた…あぅっ」ゴシゴシ

唯「ぎゃあああううういああああ」ポカポカ

憂「キレイになった!あとは履かせちゃえばいいはず!えいっ」スポ

唯「」

憂「…」

憂「大丈夫…?お姉ちゃん」


唯は何事もなかったかのように玄関のドアを開け、歩き出した

憂「うぅ…私ボロボロじゃない…血も出てるし…」

憂「私がこんな辛い目にあってるのにお姉ちゃんはあんなにアッケラカンとしてるなんて…」

憂「自閉症が他人の気持ちを理解できないのは知ってるけどこれじゃあんまりだよ…」

憂「もう嫌だ…あんなお姉ちゃん…」

憂「^q^の方がまだましだよ…」

憂「お姉ちゃん、待って~」タタタタ

唯は憂の言葉を無視し、歩き続ける

憂「お姉ちゃんてばー!ハアハア…」

唯は待たない
なおも養護学校へ向け歩を進める

憂「お姉ちゃん、そっちよりここ通った方が近道だよ」グイッ

唯「!?」


唯「――!」ギリギリ

憂「だからこっちが近道なんだってば…うぐっ…凄い力…」グイグイ

唯「…!」グググ

憂「うぐぐ…」グイグイ

ついに唯は力つき、憂に引っ張られた
通学ルートから外れてしまったのである

唯「あああああああああああああ!!!」


憂「しまった…時間がなくてつい…」

唯「うあー!あー!」

憂「ごめんねお姉ちゃん。私は遅刻してもいいから元の道から行こう」

唯「あーーーーーー!うああああああああ」

おばさん「ちょっとあなた、朝からイジメなんてどういうこと!?」

憂「!?」



憂「ち、違います!イジメじゃないです!これは…その…」

憂(お姉ちゃんが自閉症なんて言いたくない…)

ババア「嘘おっしゃいな!こんなに泣かせて!普通じゃないわよ!」

唯「ああああああああああああああ!!!」

ババア「どんな酷いことしたらこんなになるのよ!ほとんど奇声じゃない!」

憂「だから…これは…」

警官「どうしたんです?なんの騒ぎです?」

憂「!?」

ババア「あらちょうど良かった。刑事さん、この子がイジメをしててね。どうやらカツアゲしてたみたいなの」

憂「え!?違います!イジメてもないしカツアゲなんてしてな」

警官「なんだと?カツアゲとはいかんな。とにかく交番へ。そこでゆっくり話を聞こう」

憂「違います!警察が出てくることじゃないです!それよりお姉ちゃんを元の道に戻さないと…」

警官「君、態度が悪いね。君のような子をゆとりと言うのだね。とにかく来い」グイッ

警官「泣いてる君、もう安心していいからね」

唯「ぎゃああああああああああ!あああー!」


交番

警官「なぜカツアゲをしたんだ」

憂「だから違うって言ってるじゃない!私はただお姉ちゃんを学校まで送り届けようと…」

警官「キミは姉からカツアゲするのか!なんて奴だ!」

憂「うぅ…全然話を聞いてくれない…」ポロポロ

唯「あーあー」

憂が交番に連れて来られて1時間が経過
さすがの唯も叫び疲れていた

憂「お姉ちゃんは少し他人と違うんです…本当なんです」ポロポロ

警官「だったら親御さんに連絡を取ってみよう。それでキミが嘘つきかどうかわかるからな」

憂「…」

憂(ひどい)


警官「もしもし、私○○交番の警官と申しますが、あなたのお子さんがカツアゲしようとしてましてね、実の姉から」

警官「お姉さんの方がすごく泣き叫んでいましたのでね、え?はあ、なるほど。わかりました。それでは」ガチャ

警官「なんだ、キミの姉は自閉症だったのかい。自閉症なら自閉症と初めから言ってくれないと」

憂「…」


警官「あーもう帰っていいよ」

憂(詫びの一言もなしか…まあ、いいや。こんな気分の悪いところ早く立ち去りたい)

警官「しかし自閉症の姉の世話とはね。大変だなキミも」

警官は憂に哀れみの目を向けた
憂の中で何かが切れた

憂「うわああああああああああ!」

憂は警官に飛び掛かった

警官「うわっなんだ!?」

憂「好きでお姉ちゃんの妹になったわけじゃないんだよおおおお!」

憂「私だって普通の姉妹のように買い物に行ったり映画見たり一緒に遊んだりしたかったよ!」

憂「だけど物心着いた頃にお姉ちゃんは自閉症だって聞かされて…お前なんかに私の気持ちがわかるかああああ!」

警官「なんなんだ急に!公務執行妨害だぞ貴様!」

唯「」

唯は二人のやり取りを静観していた


憂は警官に羽交い締めにされた

憂「うぅ…」ポロポロ

警官「まったく最近のゆとりはすぐにキレるんだから」

警官「私にキミの気持ちなんてわからないよ。家族に自閉症はいないからね」

憂「ちきしょう…」ポロポロ

警官「もう暴れないなら今回は見逃してやろう。私は心が広いからね」

憂「…」



唯はすっかり泣き止んでいた

憂「ハアハア…」

唯「」

憂「行こっか。はは、私もお姉ちゃんも完全に遅刻だね」

唯「」

憂「なんとか言ってよ…私のせいでごめんねくらい言ってよ…」

唯「」

憂「無理に決まってるか…」

憂は養護学校へ向けて歩き出す
唯は黙って憂の後ろを追い掛けた

憂「お姉ちゃん、着いたよ。もう完全に遅刻だね」

唯「」スタスタ

憂「…」

唯は憂の言葉に何ら反応を示さず、学校へ入っていった

憂(学校の先生や友達はお姉ちゃんとどう接しているんだろうか)

憂(何か参考になるかも。どうせ私も遅刻だし、ちょっとお姉ちゃんの様子見てみようかな)



職員室
さわ子「授業を見学したい?」

憂「はい。今後お姉ちゃんとどう接すればいいか、参考にできればと思って」

さわ子「へー、それよりあなた学校は?」

憂「あ、ああああの今日は休みでして…」あたふた

さわ子「制服を着てるみたいだけど?」

憂「これは…部活に行こうとしてて…」

さわ子「ふふ、まあいいわ。苛めるのはこれくらいにしときましょ。どうぞ見学していって」

憂「は、はい!ありがとうございます!」

さわ子「ふふ、お姉さん想いなのね」

憂「…」

憂(そんなんじゃない)

憂は唯に見つからぬよう教室の外から見学していた

憂(休み時間、お姉ちゃんはずっと座りっぱなし。誰とも会話する気配はないなぁ)

「ちょっと失礼」

憂「あ、ごめんなさい」

頭に黄色いカチューシャを着けた髪の短い女の子が憂に声を掛けた
その女の子は両足がなく、車椅子で移動していた

憂(あの子は身体障害者クラスの子かな)


車椅子の女の子は唯に近付く

律「おいっす唯ー!」

唯「」コクリ

律「今日も部活来るだろ?」

唯「行く」

律「そ。今日は澪とむぎも来るから久しぶりにみんなで演奏できるな」

唯「」コクリ

律「用はそんだけだ。じゃな~」



憂「お姉ちゃん、部活してたんだ…一体何の?」


授業中

憂(お姉ちゃん、数学が得意なんだな。スラスラ解いてるみたい)

憂(国語は苦手か。漢字とかは解けるみたいだけど)

憂(ふふ、悩んでる悩んでる。遠くからみると普通の女の子なんだけどな)

憂「…」

憂(家族は一生自閉症と向き合わなければいけない。私にそんなことができるだろうか)


2s
最終更新:2010年08月19日 00:53