律「……というワケなんだ」

梓「本気で言ってるんですか?」

律「本気と書いてマジって読むくらい本気」

梓「……」

律「黙るなよ。私も話してて悲しいキモチになったっていうのに」

梓「こんな話をされたあとでどんな顔をすればいいのか私にはわかりませんよ」

律「笑えばいいと思うよ」

梓「ははははは」

律「笑うな」

梓「……」

律「黙るな」

梓「ははははは」

律「……」

梓「まあ、この際ムギ先輩に正直に話すのはどうですか?」

律「なんだ、私はムギに向かってハアハアしながらあんなことやこんなことを話すのか?」

梓「そういうことになるんですかね」

律「そんなことしたら私とムギがこの三年間で築きあげた友情が、一瞬で崩壊するだろ」

梓「ムギ先輩ほどの包容力の持ち主なら大丈夫じゃないですか?」

律「……たしかに言われてみると……」

梓「ムギ先輩ならきっと律先輩のすべてを受け入れてくれますよ」

律「そうだな……そうだな! よし、私、ムギに私のキモチを告白する!」

梓「頑張ってください」

律「おう!」

律「というわけでムギかわいいよお!」ハアハア

紬「次の日になって音楽準備室に入ったら、いきなりそんなことを言われてびっくり」

律「悪い、でもムギも悪いんだ」

紬「どうして?」

律「ムギがかわいすぎるからだよお!」ハアハア

紬「そ、そう?」

律「とにかく私とあんなことやこんなことしたくない?」

紬「あんなことやこんなこと?」

律「えっちだよ、えっち」

紬「え、え、えっち!?」

律「セックス、SEX」

紬「……!」ポッ

律(やばい。顔が赤いムギも最高にかわいい!)ハアハア

紬「そ、それはちょっと……」

律「やっぱりダメか」

紬「う、うん」

律「じゃ、じゃあまずはキスから」

紬「いや、あのキスもできれば……」

律「じゃあなにならいいんだよ!?」

紬「今まで通りの関係じゃダメなの?」

律「我慢できない!」

紬「りっちゃん。ここのところのりっちゃんは少し変よ」

律「変じゃない。言っておくけど私は本気だぞ」

紬「うん、本気だってわかるからりっちゃんのこと、変だって言ってるの」

律「……じゃあひとつ聞いていい?」

紬「なに?」

律「ムギは私がキスしようとしたらどうする?」

紬「それは……」

律「それは!?」

紬「……かも」

律「え?」

紬「……いや、かも」

律「いやなの?」

紬「正直、ね」

律「ゴキブリとサシで対決するのと、私とキスするのとどっちがいや?」

紬「……りっちゃんとキスするほう」

律「すみませんでした!」

紬「そんな……土下座しなくても」

律「いやいや! そこまでムギが私のこと嫌いとは思わなかった! ていうか素でビックリだよ!」

紬「あのね。私、りっちゃんのことは大好きだよ?
  でも、キスしたりとか、えっちしたりとかは無理かな」

律「よく考えたら当たり前のことだな」

紬「うん、私はとにかく無理だから。なんなら澪ちゃんに頼んだら?」

律「いやだ! 私はムギとじゃなきゃヤダー」

紬「りっちゃん……」

律「ごめん。今日のところは帰るわ」

紬「こっちこそごめんね」


~~

律「……というわけで私の恋はあっさり玉砕したわけだ」

澪「……」

唯「……」

梓「恋っていうか、それって単なる肉欲じゃないですか?」

律「ナニごともカラダから入らなきゃダメなんだよ」

梓「だとしても直接的すぎでしょう」

澪「しかし……おかしいな」

律「なにが?」

澪「私は正直うまくいくと思ったんだ」

梓「うまくイク……だと?」

律「ひ、卑猥だぞ! 澪!」

澪「ち、ちがう! 私はムギなら律の要求を呑んでくれると思ってたんだよ」

律「なんでさ?」

澪「いや、ムギもてっきりレズビアンなのかと……」

唯「ムギちゃんってレズビアンなの!?」

澪「いや、確証があるわけじゃないけどな」

澪「一年の頃、ムギがさわ子先生と唯のやりとりを見て顔を赤らめてたからさ」

梓「それはそれは、実に百合百合しいことで」

律「ていうか澪。それはマジか?」

澪「間違いない。確かに私は見た」

唯「じゃあムギちゃんはレズビアンなの?」

律「ちょっと待てよ」

澪「なんだよ」

律「なら、なんでムギは私の要求を拒んだんだ?」

梓「常識的に考えてくださいよ。そしたらすぐわかるでしょう?」

律「?」

梓「本気でわからないんですか?」

律「ちょっとわからない……」

梓「いきなり好きな人にセックスさせろって言わてセックスする人なんていないでしょ?」

律「いないのか?」

唯「私にはわかんないや」

梓「さかりのついた雌豚じゃあるまいし」

律「そうか。まずは手を繋ぐところからだったか」

澪「なんか論点ズレてない?」

梓「まあ、もしかしたら……」

律「なんだよ?」

梓「あくまで見るのが好きなだけというパターンもありますが」

唯「どういうこと?」

律「ようはアレだ。プロレスをやるのは好きじゃないけど、見るのは好き、みたいな」

唯「ムギちゃんはレズビアンで女の子どうしが絡むのを見るのは好きだけど、自分が絡むのは好きじゃない、みたいな?」

梓「そんな感じです」

律「それはなかなか手ごわいな」

店員「あのお客様、ところでご注文は?」

唯「あ、私クリームソーダーで」

澪「じゃあ私はレモンスカッシュ」

梓「ブラックで」

律「ムギ茶」

店員「はい、かしこまりました」

律「……で、なんの話してたっけ?」

澪「ムギについてだろ」

律「そうでした」

梓「もうこの際、強引な手に出るのもありかもしれません」

律「と言うと?」


梓「無理やりムギ先輩を襲う」


澪「……」ポッ

律「……」

唯「頭いいね! あずにゃん!」

澪「いやいやいやいや、ダメだろ!」

梓「なんでですか?」

澪「いや、ダメなもんはダメだろ。主に道徳的な部分で」

梓「でも私が読んでる本だとだいたいレイプされた後は、恋愛関係に発展したりしてますよ」

澪「どんな本だよ」

梓「エッチになる薬が出てきたりとか」

唯「エッチになる薬なんてあるの?」

梓「私は未だにお目にかかったことはありませんが、あるんじゃないですか」

律「エッチになる薬か……」

澪「なに真剣に考えてんだよ」

律「……そうだ。いいこと思いついた」

唯「なになに?」

律「みんなで頼めばいいんじゃね?」

澪「なにを?」

律「だから、みんなが言うんだよ『りっちゃんとエッチしてあげて』って」

梓「なるほど。軽音部のみんなの力を団結して律先輩とムギ先輩をエッチさせるんですね」

律「私ひとりでは無理でもみんなで頼めばセックスさせてくれるんじゃないか?」

唯「りっちゃん頭イイ!」

澪「いや馬鹿そのものだろ」

律「とりあえず私とみんなで真剣に頼んでみよう!」

律(というパーペキな作戦を立てた翌日の放課後)

紬「りっちゃん、今日はみんなはどうしたの?」

律「んー、知らなーい」

律(とりあえず最初は、昨日と同じようにムギに私の愛を訴えることにした。
  ただし、ハアハアしないように注意しなければな)

紬「今日のダージリンティーはいつものとはまた違うものなの」

律「へえー、そうなんだー」

律(ていうか昨日あんな告白をした私に普通に接してくれるなんて……)ズズズ……

律(しかし、ムギの煎れた紅茶はうまいなあ……)ズズズ……

律(ムギの煎れた紅茶……ムギが煎れた……)ズズズ……ハアハア……

律「ズズズ……」ムギかわいいよお! ハアハア……!

紬「!?」

律「はっ……! また私としたことが!?」

紬「り、りっちゃん?」

律「ち、違うんだ! 私はただ……」

紬「りっちゃん……りっちゃんは一回病院に行ったほうがいいかも」

律「ばか。恋の病が医者なんかに治せるわけないだろ!」

紬「今の台詞、ちょっとだけかっこいいと思っちゃった……」

律「なあ、ムギ」

紬「なあに?」

律「率直に言う。ムギはレズビアンなのか?」

紬「…………」

律「安心してくれ、ムギ。私はムギがレズビアンでも、否定するつもりはない」

紬「私は……」

律「……」ゴクリ

紬「私は 梓「あ、すみません」 なの」

律「!?!?」

唯「ちょっとあずにゃん!」

澪「部屋に入るタイミングが悪すぎだろ!」

紬「み、みんな? なんで扉の前で張り付いてたの?」

澪「そ、それは……」

律「みんなは私のためにその身を犠牲にしにきたんだ」

紬「よく意味がわからないんだけど」

律「私とムギが結ばれるために、努力してくれるって言ってんだよ」

唯「あずにゃん! 澪ちゃん!」

澪「くっ……やるしかないのか……!」

梓「ヤッテヤルです!」

ドサッ

紬「なっ……! みんなが私に向かって土下座した」

律「私からも頼む! 私とセックスしてくれ!」

紬「そ、そんなこと言われても私どうしたらいいか……」

律「私にまかせろ!」

紬「そういう問題じゃない気が……」

梓「いいんですか、ムギ先輩?」

紬「?」

梓「このままでは律先輩は誰かれ構わず襲いかかる性の化身と化しますよ?」

紬「そんなこと言われても……」

律「ムギ、私はドラマーだ。だからテクニックに関しては自信がない」

紬「え? なんの話?」

律「だけどその分体力がある」

紬「あ、うん、そうなの?」

律「うん。それに手だけじゃなく足の方もなかなか器用に使える」

唯「なんの話してるの?」

澪「聞きたくないし見たくもない」

梓「律先輩ヤリますね。見事なアピールですね」

紬「りっちゃん。ひとつ言わせてもらっていい?」

律「んん? ドラムスティックプレイもやれるぜ」

紬「そうじゃなくてね」

律「え? その上をイクのか? いやー、さすがにそれは私じゃあちょっと……」

紬「そういうことじゃないの!」

律「へ?」

紬「りっちゃんは私とどういう関係になりたいのかって言ってるの!」

律「……へ?」

澪「む、ムギ……?」

紬「さっきからりっちゃんは、私といかがわしいことをしたいっていう風にしか聞こえないんだけど」

梓「ていうか実際そういう風にしか言ってませんけどね」

律「な、なんかムギ怒ってる?」

紬「…………今日は帰るね」

唯「む、ムギちゃん?」


バタン


律「……あれれ?」

梓「……ムギ先輩帰っちゃいましたね」

律「なんでムギ怒ったんだ?」

梓「そりゃあ一方的にヤらせろと言われたら腹立つでしょうに」

律「私なりの求愛行動だったんだけどなあ……」

唯「りっちゃん……ムギちゃん怒っちゃったね」

梓「あーあ……」

律「……もしかしてヤバい?」

澪「ていうか律って本当にムギのこと好きなのか?」

律「当たり前だろ。そうじゃなきゃ、あんなこと言えるかよ」

梓「好きなのにあんなこと言えるって逆にすごいですね」

律「やっぱりまずかったのか?」

梓「正直ね。ムギ先輩が怒るってよっぽどですよ」

律「そこまで……」

梓「もう去勢してお詫びするしかないですよ」

唯「あずにゃん、きょせいってなに?」

梓「昔の出世の手段ですよ。唯先輩は知らなくていいです」

唯「そうなの?」

梓「そうなんです」


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最終更新:2010年12月01日 19:23