憂「じゃあお姉ちゃん、電気消すね?おやすみ」

唯「待ってよういー。まだ眠くないよう。だから…」

憂「お話、だね?じゃあ今日は塔に閉じ込められた梓ちゃんを…」

唯「あっ!た、たまには唯梓以外のお話が聞きたいなー!」

憂「そう?お姉ちゃんがそうしたいなら別のお話にするね。じゃあ…」


憂「こんばんは、ストーリーテラー憂です」キリッ


唯「待ってましたあ!」

憂「さて、要望をいただきましたので、ひとつ、いつもと少しだけ違うお話にしましょう」

憂「今の要望のように…人は誰しも、何かを望む、つまり欲を持っています」

憂「やはり物語の中でも同様です。登場人物たちは、欲することで何かを得たり、失ったり」

憂「何かと欲に振り回されてしまいます。本日は、その欲をテーマとしましょう」

憂「それでは一つ目のお話です」




『お姫様と仲良し姉妹』



 昔、ある国にひとりのお姫様がいましたが、このお姫様はいつも気を張っていて、不機嫌そうでした。
 そこで王様は、もし姫を楽しませることが出来たのなら、国の半分をあげようとお触れを出しました。
 言うまでもなく、やってみようという人が押し寄せてきたのです。

澪「やあお姫様、ご機嫌はいかが?」

和「そうね、実は最近忙しくて…あまり優れないの。面白いギャグでも聞きたい気分ね」

澪「えっ、ギャグ?」

和「……」

澪「さ、魚が驚いた…ギョッ」

和「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」

澪「メルキドに城塞がでk」

和「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」

澪「あn」

和「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」

ジャラッジャラッジャーン ミヨョョン

草野「秋山さん、ボッシュートです」

ガコン

澪「イヤァァァァァァァ!!!!」

 しかし、みなお姫様を楽しませることができず、ひどい罰を受けてしまいました。


 さて、あるところに仲良し姉妹がいて、何となく軽い気持ちで、旅をしていました。
 しばらくして、姉の唯が、死んだかささぎを見つけました。

唯「ういー!なんか見つけたー!」

憂「カササギだよ、お姉ちゃん。それじゃあ今晩はこれをご飯にしようね」

唯「やったあ!」

憂「ふふっ」

 またしばらく行くと、唯は古いヤナギの枝を見つけました。

唯「ういー!なんか見つけたー!」

憂「ヤナギの枝だよ、お姉ちゃん。別に珍しいものじゃないけど…」

唯「武器にするよ!憂を守ってあげるからね!ピシーッ!」

憂「お姉ちゃんカッコイイ!」

 それから次は割れたお皿を。

唯「よくわからないけど持っていくよ!」

憂「私たちのお皿はあるよ?」

 今度はヤギの角を。

唯「がおーっ!ツノお化けだぞー!」

憂(可愛いなあ…)

 唯の荷物がいっぱいになった頃、仲良し姉妹はお姫様のいるお城に着きました。
お城の周りには人だかりが出来ています。

唯「なんだろー?ふむふむ…」

 唯はそこで王様のお触れを見つけ、運試しにお姫様に会ってみることにしました。

唯「ういー!なんかね、お城に行けばなんか貰えるんだってさ。さっき書いてた」

憂「へー…、よくわからないけど、行ってみる?」



唯「こんにちはー!」

憂「こ、こんにちは…お城ってなんだか緊張しちゃうね」

 城の兵士に案内された先の部屋には、お姫様が座っていました。

和「あら、また誰か来たの?ひどい目に会う前に帰った方がいいわ」

唯「わあっ、お姫様だー!わたしは唯だよ、よろしくね!」

憂「お姉ちゃん、お姫様に失礼だよ…!」

和「いいのよ、そんなにかしこまらないで。私は和よ」

和「それじゃあ私とお話しましょう。退屈させないでちょうだいね?」

 仲良し姉妹は、よくわからないままお姫様と話をすることになりました。

唯「にしても、この部屋暖かいねえ」

和「それはね、私と国の半分を狙う愚か者を懲らしめるためよ」

 そう言うと、お姫様は近くにあったいろりから、やきごてを取り出しました。
 しかし、そんなつもりのない唯と憂は少しも怖がりません。

憂「お姫様って、大変なんですね…」

唯「せっかくいろりがあるんだから、もっと有効活用しなきゃダメだよ」

 唯はかささぎを取り出して、

唯「和ちゃん、ここ、借りていい?かささぎを焼きたいんだあ」

 と、聞きました。

憂「お姉ちゃん!?私が作るから…、じゃなくて!」

唯「今日という特別な日はわたし一人で頑張りたいんだ」

憂「お姉ちゃん…」ジーン

和「私の部屋を汚す気?カササギが爆ぜて飛ぶわ」

憂「それじゃあお姉ちゃん、ヤナギの枝を貸して?カササギを縛るから」

唯「たいへん!油が滴って火が強すぎるよ!」

憂「大丈夫、お鍋を持ってきてるからそれで受けるよ」

 仲良し姉妹はお姫様の目の前で、料理を始めてしまいました。
 ぽつねんと取り残されたお姫様は寂しくなり、

和「……私、生徒会行くね」

と、部屋をあとにしようとしました。

ジャラッジャラッジャ 唯「あれ?一緒に食べようよ、かささぎ!」

憂「和さんのお口に合うかわかりませんけど、もう少しだけ待ってもらえませんか?」

しかし、二人はそれを引き止めました。

草野「……」


和「でも…」

唯「ほらできた!三人で食べるときっとおいしいよ!」

憂「あ、でもお皿どうしよう」

唯「わたしのを使って貰うよ。わたしは割れたお皿でいいから」

唯「大事な友達に割れたお皿なんて出せないでしょ?」

和「…!!」

憂「お姉ちゃん…」

唯「えへへ、感動しちゃった?」

憂「ううん、そうじゃなくて。おはしは?」

唯「あ。……そ、そうだ!じゃーん、ツノっ!」

唯「ぬ、ぬぅぅ。使いにくい…!」

 しばらく二人のやり取りをお姫様は見ていましたが、
ヤギの角を使ってカササギを食べようとする唯の姿を見て、

和「ぷっ、あはははははっ…!」

とうとう笑い出してしまいました。

和「あは、割れたお皿とヤギの角で、ご飯を食べるだなんて、くくっ、バカみたい!」

唯「バカって言われたっ!?う、憂ー…」

憂「……ごめんなさい、お姉ちゃん」

唯「憂まで!?」

和「あぁ、おかしい!こんなに笑ったの、初めて!」

和「ふふ。ダメね、私の負け。国の半分はあなたたちの物よ」

憂「…はい?」

唯「なにそれ?」

和「えっ?」

 お姫様は、二人が王様の出したお触れを知らないことがわかりました。
 しかし、決まりは決まりです。仲良し姉妹は王様から、国の半分を貰うことになったのです。

 欲のない二人は、王様のほうびを断りましたが、
お姫様はどうしてもお礼をしたかったので、二人に家と少しのお金をほうびにとらせることにしました。


 それから、仲良し姉妹とお姫様は、

和「いらっしゃい、唯。憂も」

唯「今日もここはあったかあったかだねえ。眠くなっちゃうよ」

和「あんたにとって、寝ることは遊びなのね…」

憂「今日はケーキを焼いてきたんだけど…どうかな?」

和「ありがとう、それじゃあ早速いただくわ。……あ、おいしい」

憂「ほんとう!?」

和「嘘なんかつかないわ。今度、私にも作り方、教えてね」

唯「わたしが教えてあげようかー?」

和「唯はカササギもまともに焼けないでしょ?」

唯「むっ、失礼な!和ちゃんなんかこうしてやるー!ぎゅー!」

憂「ずるい、私もー!ぎゅーっ♪」

和「ちょっと、二人して抱き着いて来ないでよ……もう」

毎日一緒で、家族のように仲良く、ずっと幸せに暮らしました。


END




憂「お金が欲しいから、ではなく心から一緒に楽しみたいと思った姉妹」

憂「きっとこの姉妹とお姫様は、いつまでも友達でいられるでしょうね」

唯「お姫様も笑えたし、仲良し姉妹も友達が出来たし、みんな幸せになれてよかった!」

唯「…でも、その二人は国の半分をもらってもよかったんじゃないかなあ?」

憂「ないよりはある方がいい…そう思うのも、もっともです」

憂「しかし身の丈以上のものは、なくても困らない。たくさん持ちすぎるのは欲張りというものです」

唯「もらえるものをもらうだけなのに欲張りなの…?」

憂「さて、どうでしょうね。次のお話を聞いてからもう一度考えてください」

憂「次は、なんでも手に入れられるようになった女の子のお話です」




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最終更新:2010年12月04日 23:10