澪ちゃんに嫌われて一日経った。
雨の中を独りで下校している。ずぶ濡れの制服が気持ち悪い。
唯「………」
まばらに人とすれ違う。
傘は家に忘れた。もちろん置き傘も。
かといえ誰かの傘の中に入る気はもうしない。
唯「ははっ自業自得かぁ」
6月の雨が私を冷たく包み込む。
唯「あっ車…」
唯「…よけないと…」パシャパシャッ
そのまま私の横を
唯「わっ! きたなぁい」
通りすぎるとき思いっきり泥水をかけられた。汚れた足とスカートを手で払う。
唯(まあ雨が洗ってくれるよ)
唯(泥も)
唯(…鼻水も)
かかった泥をとくに気にせずゆっくり歩く。足を速める気にはなれない。
唯(………あっ家…)
電気はついてない。
まあ当然。さっき通りすぎたお店の時計で5時だもん。この時間なら憂は買い物に出かけてる。
唯「……さびしいなぁ」
雨が少し強くなってきた。
―――昨日も昼休みから雨だった。
部室はいつもの5人で騒がしい。
律「ほれみおー、梓はもう猫ミミつけ慣れてんぞー」
梓「べっべつに慣れてるわけじゃないです!///」
澪「いやだ! なんで私までつけなきゃいけないんだ!///」
唯(おお! いじられて恥ずかしがる澪ちゃんかわいい!)
律「いいじゃんかよ、去年隠れて装着してたくせにー」
澪「おまっばらすな!///」
紬「kwsk」
唯(久しぶりに澪ちゃんを抱きたくなっちゃった♪)
唯(背後からこっそりと…)ソローリ
唯「みーおちゃん!」ダキッ
澪「ひゃっ!」クルッ
澪「って唯!?」
唯「あずにゃんと抱き心地がちがーう」ギュッ
澪「そっそうか…じゃなくてぇ///」
紬「どんな風に!」ハァハァ
梓「ちょっとムギ先輩!」
唯「うーんとね」
唯「あずにゃんがお人形さんなら澪ちゃんはお母さんかなぁ」
梓「つまり私は人間味がないと」
澪「わたしがママ…わたしがママ…///」
唯「そうじゃないよあずにゃん!?」
唯「あずにゃんは一緒に寝たくなるんだよ!」
律梓「「ちょっ!!///」」
紬「あらあらあら!」
唯「でね澪ちゃんは抱きしめてて安心できるんだぁ」ギュゥッ
澪「あっありがと///」
あったかあったか。
こんな感じに、はじめ澪ちゃんはスキンシップを受け入れてくれてた。
唯「澪ちゃんあったかーい」
澪「ゆい…はなれてよぉ…///」
紬「まあまあ」
梓「見てるこっちが恥ずかしい///」
律「梓も普段あんな感じだぞ」
梓「なっ!?」
唯「ぎゅー」ギュー
澪「あわあわわわ///」
そしてあずにゃんにしてることと同じことをした。
唯「ほっぺたすりすり~」スリスリ
澪「なっ!!?///」
唯「ん~モチモチー♪」スリスリ
澪「……」プルプル
梓「うひゃぁ///」
律「だから梓もあんな感じだってば」
紬「ふふふふふ」
唯(あずにゃんとはまた違う、いいにおいがする♪)スリスリ
澪「…っ!」ドン
唯「わっ!?」
唯「いたっ!!」ドサッ
律紬梓「「「 」」」
澪「はあっはあっはあっ……」
唯「…いたたた…」
唯(おしりぶつけた…じゃなくて!)
澪「はっ……/////」
唯(わたし、澪ちゃんに突き飛ばされた…?)
澪「はぁぁっ…/////」
唯(澪ちゃんの顔が尋常じゃなく赤い…)
唯(こんな澪ちゃんはじめてだよぉ…)
澪「…ふぅ///」
唯(怒らせちゃったのかな…)
唯「あっあの澪ちゃん」澪「帰る///」
唯「えっ」
律紬梓「「「 」」」
澪「///」ズカズカズカ
唯(かばんのある椅子に早歩きしてく…)
澪「///」バッ
唯(引ったくるようにかばん取って…)
澪「///」ズカズカズカ
唯「まっすぐドアの方に……ってなに観察してんのわたし!?)
唯「あっあの…澪ちゃんごめん」
澪「///」ズカ
澪「///」ガチャッ
唯「澪ちゃん待って!」
ドア「バタンッ」
唯「みおちゃああん!!」タチアガリ
律紬梓「「「はっ!」」」
律「あんのバカなにやってんだよ!?」
紬「りっちゃんどうしよう」
梓「とんだヘタレですね」
唯「わたしあやまってくる! …あぃたたたっ」
唯「お尻が…」
紬「だいじょうぶ? ケガしてない?」
唯「…うん、へいき」
律「あー唯隊員よ」
唯「用はあとで! 澪ちゃんを追いかけなきゃ!」
律「そのことなんだけどさあ…」
梓「りつせんぱい、それは…」
紬「りっちゃん…」
唯「……?」
律「えーとな…」
唯「…」
律「私から澪に言っとくから心配すんな」
唯「えっ…」
唯(なっなに?)
紬「…そっそうね、ここはりっちゃんに任せましょう」
梓「ですね。じゃあ唯先輩練習しましょう」
唯「えっちょっと…」
唯(なんでみんな…そんなにあっさりしてるの……)
律「大丈夫だって。明日には澪の機嫌戻ってるさ」ツカツカ
律「な?」ポンッ
唯(…そんなふうに肩に手置かれても)
唯(安心できないよ…)
唯「……うん」
梓「それでは決まりですね」
紬「みんな、お茶にしましょ」コポコポ
律「おーそうだな」ツカツカ
唯(……)
律「じゃ澪の分は私が食べちゃっていいな?」イスドカッ
梓「それでいいですけど、食べたら練習しましょう」
律「ベースいないし今日はよくね?」
梓「うっ…わかりました」ツカツカ
唯(…なんでみんないつもどおりに過ごせるの?)
梓「ふぅっ」トスッ
紬「わたしもお茶いただこうかしら」トスッ
律「あっ」
律「あずさー」ニヤニヤ
梓「なんです、気持ち悪い顔しちゃって?」プッ
律「いつまで猫ミミつけてんのって言おうとしたんだよおお!!」ガタッ!
梓「にゃっ!?///」バッ
唯(…澪ちゃんが帰っちゃったんだよ…?)
紬「そのままで良かったのに」ニコニコ
梓「いやです!」
律「全く可愛いげない後輩だな…たく」ドスッ
律「唯もべつに良かったよなー? 梓があのままで」
唯(……)
梓「唯先輩に聞いても頷くに決まってるじゃないですか!」
唯(…わたしの考えすぎ……なのかな…)
紬「唯ちゃん?」
唯(…あとで謝ろう)
唯「あっごめんごめん、なんのはなし?」
結局ティータイムをして過ごした。
――暗い雨空の中を下校している。傘をさしていてもタイツが濡れる。
メールじゃ失礼だから、何度か澪ちゃんに電話した。いずれも私がやめるまでコールし続けた。
唯(…澪ちゃん…)
唯「ん…メール!」
唯「……なんだりっちゃんか…」カチカチ
唯フォン「ほんとに唯が心配することじゃないからな? これは澪の問題だ。私を信じろ!」
唯「…」
唯「信じてないわけじゃないんだけどなぁ…」
紬「唯ちゃん?」
唯(…あとで謝ろう)
唯「あっごめんごめん、なんのはなし?」
結局ティータイムをして過ごした。
――暗い雨空の中を下校している。傘をさしていてもタイツが濡れる。
メールじゃ失礼だから、何度か澪ちゃんに電話した。いずれも私がやめるまでコールし続けた。
唯(…澪ちゃん…)
唯「ん…メール!」
唯「……なんだりっちゃんか…」カチカチ
唯フォン「ほんとに唯が心配することじゃないからな? これは澪の問題だ。私を信じろ!」
唯「…」
唯「信じてないわけじゃないんだけどなぁ…」
唯(私のせいでああなっちゃったし…)
唯(…ほんとに追いかけなくて良かったのかな……て考えちゃうんだよね…)
唯(…気遣いはうれしいけど)カチカチ
唯フォン「ありがとう」
唯「…」ピッ
唯フォン「送信中」
唯「…」
唯フォン「送信したのにゃん」
――食事中の平沢家
憂「♪」モグモグ
憂「あっお姉ちゃん、明日もお昼から雨だって」
唯(だめだ…澪ちゃんのことが気になっちゃう)モグモグ
憂「おねーちゃーん?」
唯(返信こないよ…)
憂「……もう」
唯(……嫌われてない…よね?)
憂「澪さんのこと?」
唯「!?」ビクッ
憂「やっぱり」
唯「……なんで憂が知ってるの…」
憂「梓ちゃんにメールで聞いたよ」
唯「…そっか」
唯「ひどいよねわたし、友達の嫌がることしちゃったんだよ」
憂「大丈夫」
憂「お姉ちゃんは心配しなくていいから」
唯「っ…」
唯(憂までそう言うの…)
唯「…ねえ、それってどうい」憂「とりあえず律さんに任せようよ」
唯「…」
憂「律さんなら澪さんをなんとかしてくれるよ」
唯「私がしないと…」
憂「とにかく大丈夫だから、ね?」
唯(まるで私が悪くないみたいに……)
唯「……うん…」コクッ
憂「ほらほら、早くごはん食べちゃって」モグモグ
唯「うん…」モグ モグ
――0時。真っ暗な中ベッドに寝っころがっていた。
唯「雨、やんでたんだ…」
唯「……」
唯(寝れない…)
唯(……澪ちゃん…)
唯「……」
唯「…」チラッ
唯フォン「…」inハンド
唯(……まだ返信来ない)
この行動はもう何十回目だろう。
お風呂から上がって、すぐに部屋に戻った。何もする気になれない私は電気を消した。無気力なままベッドに横たわった。
それから返信をずっと待っている。
唯「こないなあ……」
手が汗ばんでいる。携帯がベトベト。
唯(……)
唯(…)カチカチ
唯フォン「ほんとに唯が心配することじゃないからな? これは澪の問題だ。私を信じろ!」
唯(……私を信じろ、かぁ…)
唯(…りっちゃんは何したんだろ…)
唯(…それに)
唯(なんでみんな…喧嘩のことを軽く見てるんだろ……)
唯(……)
唯(…明日にはちゃんと仲直りできるかな……)ウトウト
唯(……ねむい…)ウトウト
唯(……)ウトウト
唯(…ごめんね…)ウト ウト
唯(………)
唯「……」zzz
―――はっ! 思い出してたら足が止まってた…。
唯「フェックチ!」
雨の勢いは変わらない。辺りがますます暗くなってきた。
唯「さぶさぶさぶ…」
体がブルブル震える。
プールにでも飛び込んだように制服が体にはりつく。…あっ
唯「携帯……」
ポケットに手を突っ込んだ。ぐっしょりなんてもんじゃないね。
唯「ご愁傷さま……ヘッ…」
唯「ヘックシュン!」
唯「ぅぅ…」ブルブル
唯「…さすがにヤバイかな…」
唯「…走ろっか」
制服が重くて走りにくい。それでも私は走ったな。
平沢家はすぐそこだ。
最終更新:2010年12月06日 00:12