Azusa side
ちゃっちゃちゃちゃー♪
梓 「今夜もお休み☆ ふわふわたーぁいむ」
純 「ふわふわたぁーいむ」
梓 「ふわふわたぁーいむ」
純 「ふわふわたぁーいむ」
梓 「ふわふわたぁーいむ」
純 「ふわふわたぁーいむ」
じゃじゃっじゃじゃっじゃーーーん♪
梓 (憂はさすがだな・・・ まだまだ初心者なのに、キーボードのあつかいがグングン手馴れてきている)
梓 (演奏は新歓ライブで披露するのに申し分のない域に出来上がってきている)
梓 (問題は・・・ ドラムが無いってことだ)
梓 (パワー不足。演奏にパンチが足りない・・・・・これで新歓ライブでみんなの心に響く演奏ができるのかな・・・)
梓 (部費さえ出れば、何とか無理して安いドラムセットを買っちゃうって手もあるんだけど・・・・)
梓 (部費が出る前に廃部させないことが大前提なわけで・・・・)
梓 (ドラムが無いからパワーが足りない。パワーが足りないから心に響く演奏ができないかもしれない)
梓 (心に響かなければ部員が集まらない。部員が集まらなきゃ廃部になって、当然部費も出ない)
梓 (部費が出なけりゃドラムも買えない・・・ 負のスパイラル。ジレンマだ・・・)
梓 (て、無い物ねだりしても仕方がないんだけれど・・・)はぁ・・・
憂 「どうしたの、あずさちゃん。ため息なんかついちゃって」
梓 「あ、ううん。なんでもないの。それより純」
純 「ほいさ」
梓 「またペースが速すぎだよ。リズムを揃えて。それになんか、今日は凡ミスが多いみたい」
梓 「・・・調子でも悪いの?」
純 「うんにゃ、そ、そんなことないよ!」
梓 「そう、なら良いんだけど・・・・ じゃ、もっかい行くよー!」
梓 「(ジレンマなんか感じてる暇なんてないよ!今はとにかく、人事を尽くして天命を待つってやつ!!)」
梓 「(ファイトだ、私!!)」
純 「あ、ごめん梓・・・ 私、ジャズ研に行く時間だ・・・・」
梓 「・・・え」
憂 「あ、本当だ。もうこんな時間。純ちゃん、お疲れ様。ジャズ研も頑張ってね」
純 「ありがと、憂。梓も。今日ミスしたところは、家で自主練してくるからさ、それzy
梓 「待ってよ、純」
純 「あい??」
憂 「梓ちゃん・・・?」
梓 「ねえ純。新歓ライブまで、もう一週間を切っちゃってるの」
純 「う、うん。そうだね・・・・ ???」
梓 「もう練習も仕上げにかからなきゃならない段階なのに、まだ全然納得がいく仕上がりにはなってないの分かるよね?」
純 「え、あ・・・そ、そーかな?結構いい感じになってきてると思うけど・・・」
梓 「本当にそう思う?」
純 「ど・・・どうかな。って・・・梓、なに?ちょっと怖いんですけど・・・」
梓 「機材も部員も足りないの。ないない尽くしで八方ふさがりの状態なんだから、せめて練習だけは・・・・」
梓 「練習だけは他に負けないくらいこなしておきたいんだよ!」
純 「梓・・・」
梓 「ねぇ純。せめて、せめてだよ。新歓ライブが終わるまでは、軽音部を優先させることってできないの?」
憂 「梓ちゃん、それは・・・」
梓 「憂は黙ってて!もう・・・軽音部には後がないんだから・・・・」
純 「それってどういう・・・・」
梓 「あ!と、とにかく!」
梓 「お願い、純。しばらくの間だけ、こっちの練習に集中して!このとおり・・・」
純 「ちょっと!やめて、頭上げてよ!そんなことされたら困る!それに、ダメ。無理だよ・・・・」
梓 「どうしても・・・?」
純 「ほんっと、ごめん!」
梓 「・・・・こんなに頼んでもダメなの」
純 「あ・・・ぅ」
梓 「・・・・そっか。わかったよ」
梓 「純は軽音部がダメになっても、ジャズ研に戻れば良いだけだもんね」
憂 「っっ!! 梓ちゃん!!」
純 「・・・・・・」
梓 「・・・! ・・・え?わ、私・・・いま・・・」
純 「・・・・梓。今のどういうこと・・・?」
梓 「純・・・ 違う・・・ 私・・・イライラしてて・・・つい・・・・」
純 「ついってなに?イライラって・・・!っく・・・・もういい!」
たったった がら!
憂 「あ、純ちゃん! 純ちゃん待って!」
ぴしゃん!
憂 「・・・・純ちゃん」
梓 「憂・・・」
憂 「梓ちゃん、今のは良くなかったと思う」
梓 「ごめん」
憂 「・・・でも、梓ちゃんの気持ちも少しわかるよ。軽音部の存続がかかってるんだもんね」
梓 「・・・知ってたの?廃部の件・・・」
憂 「うん、お姉ちゃんが一年生の頃の話、よく聞いてたから」
憂 「でもその事で私が気をもんでるのを見せるの、きっと梓ちゃん良い気しないと思ってたから・・・・・黙ってた」
梓 「そう・・・ 純は・・・?」
憂 「純ちゃんは知らなかったと思うよ。純ちゃんが軽音部に入ったのは、純粋に友達を想う気持ちからだけだったから」
憂 「軽音部に梓ちゃんを一人ぽっちにさせておきたくなかっただけ」
憂 「新歓ライブを成功させて、梓ちゃんを喜ばせたかっただけ」
憂 「梓ちゃんに笑顔でいてもらいたかっただけ・・・・」
梓 「・・・・・純」
憂 「でも、梓ちゃんを大切に想うのと同じように、ジャズ研も純ちゃんにとって大切な場所だと思うの」
憂 「だからどっちかなんて選べるはずない。それは、軽音部を大切に思ってる梓ちゃんなら分かってあげられると思うな」
梓 (こくり)
憂 「うん。じゃ私、純ちゃんを追いかけるね。で、連れ戻してくる♪」
憂 「純ちゃん戻ってきたら、さっきのことちゃんと謝って。それと・・・」
憂 「純ちゃんの気持ち、分かってあげて。じゃないと私が許さないから」
梓 (・・・・こくり)
憂 「(にこっ)じゃ、行ってくるね」
とことこ・・・ばたん
梓 「・・・・・・・・・純」
梓 「私・・・ なんであんな事を・・・・」
梓 「なんでかなぁ・・・ どうしてかなぁ・・・」
梓 (ぐすっ)
梓 「・・・・サイテーだ」
Jun side
純 「・・・思わず飛び出してきてしまった」
純 (あんなの、梓だって本気で言ったんじゃないって事くらい、私にだって分かるのに)
純 (それでも自分を抑えられなかったのは・・・・)
純 「昨日の部長と同じ事を言われちゃったからだよなー・・・」
純 「さすがに連日のワンツーパンチは堪える・・・ ていうか・・・」
純 (もしかして私、良かれと思ってるのは自分だけで、余計なことして周りを引っ掻き回してるだけなんじゃ・・・)
純 「・・・はぁ。とか考えてるうちに、ジャズ研についちゃった・・・」
純 「昨日の今日だし、部長と顔を合わせずらいなぁ・・・」
もう耐えられません・・・!
純 「ん?中からなにやら穏やかならぬ声が・・・??」
部長 「ちょっと山田、落ち着いて」
山田 「落ち着いてなんかいられません!どうして?どうして鈴木先輩があのパートなんですか!?」
純 (え・・!?)
山田 「私は毎日欠かさず練習してるのに、鈴木先輩はいっつも遅刻してきて!」
純 (山田、私のことを”鈴木”先輩って・・・・)
山田 「それで良いポジションを任せるなんて、わたし納得ができません!」
部長 「つまり鈴木さんのパートを自分にやらせろと、そう言いたい訳?」
山田 「そうです!練習量の多い私のほうが絶対に上手くできます!」
純 (ちょ・・・ちょっとちょっと)
部長 「とにかく山田の言い分は分かったわ。鈴木さんとは後で話をしておくから、今はいったん保留にしておいてちょうだい」
山田 「・・・・はい」
がらっ
純 「・・・・・」
部長 「鈴木さん・・・」
山田 「じゅ・・・・鈴木先輩」
純 「あのね、山田・・・」
山田 (ぷいっ)
純 「え・・・」
部長 「はぁ・・・・やれやれ。これじゃ練習にならないわね・・・・ちょっと早いけれど、今日はこれで解散しましょう」
部長 「鈴木さんは残ってね。ちょっと話があるから」
純 「・・・・はい」
部長 「軽音部の練習ははかどってる?」
純 「・・・・ううん。あっちの部長ともケンカして飛び出してきた」
部長 「あらあら」
純 「昨日部長に言われたこと、梓にも言われちゃった・・・・」
部長 「うん?」
純 「軽音部に集中して欲しいって・・・・」
部長 「でしょうね。そうなるでしょうね(うんうん)」
純 「軽音部がダメになっても、ジャズ研があるから良いって思ってるんでしょとかも・・・・」
部長 「そちらの部長さんは、なかなか手厳しいのね。でも、そうね・・・掛け持ちっていうのは、だから難しいのよ」
純 「え?」
部長 「本人にその気はなくても、片方からはもう片方に肩入れしているように見られる。本人がいくら対等に両立しようと努めていてもね」
部長 「そう思われないように上手く立ち回れる人は問題ないんでしょうけど、あなた、そこまで器用じゃないでしょ?」
純 「・・・ぐ」
部長 「必ず軋轢を生むと分かってたもの。だから鈴木さんには、どちらかの部に専念してもらいたかったのよ」
部長 「あなたのためにも、周りのためにもね」
純 「あ・・・昨日の部長、その事を伝えたくて?」
部長 「器用じゃない上に鈍いんだもの(くす)」
部長 「”純”じゃなくて”鈍”に改名してはどうかしら」
純 「んなっ!そこまで言われるほど鈍くないよ!・・・・多分だけど」
部長 「そう?じゃあ、山田のことも彼女の気持ちを汲んで、怒らないであげてね」
純 「分かってる・・・ 悪いのは私だし・・・」
部長 「山田もたいがい素直じゃないからね」
純 「え??」
部長 「自分のポジションが危機と聞かされたら、軽音部なんかにかまけてる暇なんか無くなるに違いない」
部長 「て、ところかな?」
純 「え・・・あ・・・ ああっ!」
部長 「慕われてるんだから、友達と同じくらい後輩も構って上げなさいね」
きゅんっ
純 「山田・・・ やばい、萌える」
純 「部長、ありがとうね。山田には明日にでも謝っておくよ」
部長 「ん。ちゃんとフォローしてあげてね」
純 「うん。山田にはずっと可愛い後輩でいて欲しいからね。仲直りするよ」
純 「それと、部長に言われたこともきちんと考えてみる。だから自分で納得のいく答えを見つけられるまで時間を下さい」
純 「ジャズ研も軽音部の友達もどっちも大切だから。いい加減な結論は出したくない。だから・・・」
部長 「了解。急かしても仕方がないもの。わかったわ」
純 「さんきゅね。じゃあ、まずは梓と仲直りしてくるよ。今日はこれで失礼するね」
部長 「あ、ちょっと待って」
純 「ん?」
部長 「・・・・あの、鈴木さん」
純 「ま、まだ何か怒られる事やっちゃったですか、アタクシ・・・」
部長 「違うわ。 ・・・・き、昨日も言った事なんだけれど」
部長 「あなたのことは三年間一緒にがんばってきた仲間だと思っているの。だから・・・・」
部長 「部長としてではなく友達として。あなたにとってベストな考えにまとまる事を祈っているわ。・・・・純」
純 「・・・・! うん、さんきゅっ!!」
廊下!
憂 「純ちゃん・・・」
純 「うわ、憂!ずっとここで待ってたの!?」
憂 「うん。ジャズ研の部長さんと話しこんでるようだったし、邪魔しちゃ悪いと思って・・・」
純 「迎えに来てくれたんだよね?にへへ・・・ありがと!」
純 「大丈夫だよ、私も音楽室に戻るつもりだったし。というか、梓に話したいこともあって・・・」
憂 「その前に純ちゃんに聞いてもらいたいことがあるの」
純 「はへ??」
Azusa side
梓 「憂、なかなか戻ってこないな・・・・」
梓 「純、戻ってきてくれるかな・・・・・」
自己嫌悪・・・・
勝手にイライラして、イライラの原因は誰にも言わなかったくせに・・・
自分の都合だけ勝手に純にぶつけて、純を怒らせて・・・・
嫌われちゃったらどうしよう。それとも、もう手遅れかな。
謝っても、許してくれないかもな。
梓 「こんなとき・・・・」
こんな時、先輩達だったらどうしただろう。
律先輩なら、多少強引でも持ち前の明るさで、和やかに部をまとめ上げられるんだろうな。
澪先輩なら、廃部の危機も持ち前の冷静さで、打開策を見つけられたかもしれない。
ムギ先輩なら、どんな辛い時でも笑顔を絶やさず、周りのみんなの心まで穏やかにできたはず。
そして、唯先輩なら・・・・ 大切な友達を傷つけたとしたら・・・・
梓 「唯先輩なら、どうしてましたか・・・・?」
唯 「あーーーずーーーーにゃんっ♪」
梓 「うわぁ!?」
ぎゅぎゅーっ
唯 「久しぶりぶり~~」
梓 「あぅ、唯先輩ですか?もー、考え事してるんだから抱きついてこないで下さい!」
唯 「あぇ~、久しぶりなのにあずにゃん、つめたいぃーー・・・・」
唯 「・・・・あずにゃんや、私が入ってきたことに気づかないくらい、何を真剣に考えてたのー??」
梓 「それはですね、唯先輩ならこんな時、どういう風に・・・・・・」
唯 「私がー??なになにー??」
梓 「・・・・・唯先輩?」
唯 「唯先輩です(ふんす)!!」
梓 「」
梓 「唯先輩だ・・・・ 唯先輩・・・・」
唯 「唯だよー。私だよー」
梓 「唯・・・せんぱ・・・」
唯 「んー?」
梓 「せんぱーーーい(ぎゅうううう!)!!」
唯 「ふぉおおおおおお!?」
梓 「先輩!せんぱ・・・・ う・・・ ぐすっ」
梓 「うえ・・・・ うえーーーーーーーーーん・・・・」
唯 「あずにゃん・・・・」
最終更新:2010年12月07日 01:32