梓「なんですかコレ…」

さわ子「なにって…ネコミミだけど」

梓「着けろってことですか…?」

律「そうだぞ梓、これは軽音部に入部する上での通過儀礼だからな」

澪「(律が悪ノリしはじめたぞ…)」

梓「じゃ、じゃあみなさんも着けてみてくださいよ!」

紬「にゃあ♪」スチャ

ヒョイ

唯「……」ニャー♪

梓「(墓穴を掘っただけだった……)」

律「な?着けるだけなんだからべつにいいじゃんっ」

梓「そこまでいうならやってやるです!!」

スチャッ

澪「おぉ…似合ってるぞ」

紬「かわいいわ♪」

さわ子「さすが私の見込んだ子ね…」

梓「見込まれた覚えはないですっ」ツン

唯「……」パシャ!

律「……」パシャ!

梓「写メ撮らないでくださいっ!!」

唯「……」トントン

梓「な、なんですか…?」

『にゃあ!って言ってみてよ!』

梓「えぇぇ……」

唯「……」ジーッ

律「どうする梓、唯先輩の期待を裏切るのか?」ニヤ

梓「わっ…わかりましたよ!言いますから!」

ゴクリ・・・

梓「に……にゃあ♪」


律「にゃあいただきましたーっ!!」ドンドン パフパフ

『あだ名はあずにゃんに決定だね!!』

梓「もう練習しましょうよぉ~……」ヘナヘナ


~~~~~~~・・・・・

懐かしいな……

つい昨日の出来事のようで、もう一年以上も前なんだ。

それにしても…入ったばかりの頃はイジられっぱなしで大変だったなぁ……

あずにゃんってあだ名はけっこう気に入ってるんだけどね。

…唯先輩には内緒だけど。


そうそう、私の初めてのライブのときは唯先輩がカゼ引いて大騒ぎだったんだっけ―――

~~~~~~~~~~~~~~~

ちょうど一年前


梓「いよいよもうすぐ学祭ライブですねっ!」

律「張り切ってんなぁ~…梓は」

澪「梓にとっては初めてのライブだもんな」

梓「はいっ!絶対成功させてやるです!」

紬「去年は唯ちゃんも張り切ってたわよね」

律「…あれ?そういや唯が来ないな」

澪「珍しいな…唯が部活に来ないなんて」

紬「なにかあったのかしら…」


コンコン

梓「律先輩、誰か来ましたよ」

律「? どうぞー」

ガチャ・・・


憂「こんにちは~…」ソーッ

梓「あ、憂!」

律「誰かと思えば憂ちゃんかぁー、一瞬新入部員が来たのかと思ったよ」ハハッ

憂「あはは…」

澪「唯のことでなにか伝言かな?」

憂「はい、そうなんですけど…」

紬「どうしたの?」

憂「実はお姉ちゃん、熱が出ちゃったみたいで…今日は早退するって」

梓「なんだぁ、ただ熱が出ただけなら大丈夫……」


一同「え?」


律「おいおいマジかよ…」

澪「…唯の具合はどうなんだ?」

憂「私もお姉ちゃんに伝言頼まれただけですから…まだ詳しいことはなにも……」

澪「そっか…」

紬「学祭までに元気になればいいけど…」

憂「ごめんなさい…私のせいでお姉ちゃんが学祭に出れなかったりしたら……」

梓「ううん、憂も唯先輩も悪くないよ!それより凹んでる暇があるなら練習しましょう練習!ね、先輩?」

律「梓…」



練習終了後


律「う~ん…やっぱり唯がいないと雰囲気出ないよなぁ……」

澪「もしもの話だけどさ、もしも唯が学祭に来れなかったら…どうするんだ…?」

紬「そのときは4人で演奏するしか…」

梓「いえ、もしそうなったら辞退しましょう。一人でも欠けたら私たちの放課後ティータイムじゃないですからっ」

紬「梓ちゃん……」

澪「…それに唯のことだ、きっと明日には元気になってひょっこり戻ってくるよ」

律「……そうだな」



翌日


紬「今日も唯ちゃん学校お休みだったわね…」

澪「ま、まぁさすがに一朝一夕には治らないんじゃないか?」


ガチャ・・

唯「……」


澪「ゆ、唯!?」

梓「唯先輩!」

律「唯…お前…体調は大丈夫なのか?」

唯「……」コクコク

紬「今朝にはもう熱は下がったの?」

唯「……」

『朝には少し微熱残ってたけど…午後には下がったから部活だけ来ちゃった』

梓「あれ、唯先輩のケータイ…それ憂のですよね」

唯「!」ギクッ

『慌ててたからケータイ家に忘れちゃって…憂に借りたんだ~』


梓「(なんか怪しい……)」

律「ま、なにはともあれ唯も復帰したことだし!学祭に向けて合わせていこーぜー!」

澪「それがいいな」

紬「唯ちゃんも準備はオッケー?」

唯「はい!」


律澪紬「「「…え?」」」

唯「あ…」

梓「……」

憂「ごめんなさい…お姉ちゃんのこと考えてたらいてもたってもいられなくなっちゃって……」

律「まさか憂ちゃんが正体だったとは…」

澪「それにしても髪型変えるとそっくりだな…全く気付かなかった」

梓「私はちょっと変だと思ったけどねっ」

憂「梓ちゃんもごめんね…」

紬「じゃあ、唯ちゃんはまだ…」

憂「はい…治るにはまだ少し時間がかかりそうです…」



学祭当日


梓「唯先輩、来ませんね…」

律「昨日の晩もメールしてみたんだが熱が下がらないらしいからな……」

梓「そうですか…」

澪「…ムギ、生徒会に発表は辞退するってお願いしに行こうか」

紬「そうね…」


ガチャ

さわ子「諦めるのはまだ早いわよ!」

律「さわちゃん…」

澪「で、でも唯がいないんじゃどうしようも…」

さわ子「唯ちゃんならここにいるわ」

スッ・・

唯「……」

澪「唯……」

律「今度こそ本当に唯なのか…?」

唯「……」コク

梓「じゃあ唯先輩が私につけたあだ名は!?」

唯「……」

『あずにゃん』

梓「本当に唯先輩だ…」

さわ子「実はね、唯ちゃんは朝から学校に来てたの」

さわ子「でも体調が優れないから、軽音部の出番になるまでは私が保健室で面倒みてたってわけ」

さわ子「どう?偉いでしょ私?」

澪「出番になるまでは――ってことは唯は今日演奏するつもりなのか…?」

唯「……」コクリ

さわ子「(華麗にスルーされた…)」

紬「いいのよ唯ちゃん、無理しなくても…」

唯「……」ブンブン

さわ子「…私も早退するように言ったんだけどね、唯ちゃんが『軽音部は私のすべてだから』って聞かなくて」

梓「唯先輩…」

律「…そこまで言われたんじゃ、演奏しないワケにはいかないよなっ」

澪「本当にキツかったらすぐに言うんだぞ、私たちがなんとかするから」

紬「救急車手配しておく…?」

律「いや、そこまでせんでも…」

唯「……」クスッ

梓「たとえ唯先輩がミスしても私がカバーします!それがバンドってもんです!」

唯「……」

律「おいおい、なにもカバーするのは梓だけじゃないんだぞ?」

紬「私たち5人、全員揃って……」

澪「放課後ティータイムだからなっ!」


唯「……」

唯「(ありがとう、みんな……)」


さわ子「フフッ…いい話じゃない」

律「さわちゃんもありがとうな」

さわ子「いえいえ♪♪」パァッ



――それからライブがどうなったのか……実はあんまり覚えてないんだよね。

きっと周りから見たら上手くいってなかったのかもしれない。

でも…それでも、私は満足だったな。

憧れだった先輩たちと一緒に演奏できてすっごく楽しかったもん。


他にもいろいろあったけど……思い出話はこれで終わり。

先輩たちと過ごす最後の学祭、いまはこの瞬間を大切にしなきゃ!

去年のリベンジの意味も込めて…今年は最高の学園祭ライブにするんだからっ!

さっそく練習するぞ――といいたいところだけど、今日は遅くなっちゃったからもう帰ろう。

また明日から頑張るぞっ!



次の日の放課後


憂「梓ちゃんは今日もライブの練習?」

梓「うん、そうだよー」

純「でも先輩たちはいないんでしょ?梓、一人で寂しくないの?」

梓「さ、寂しくないもんっ!」

純「あはは…ムキになったら余計怪しいぞ?でもまぁ、梓も大変だねぇ」

憂「そっか、お姉ちゃんのクラス劇の練習で忙しそうだもんね…部活は梓ちゃん一人なんだ…」

梓「…うん」

憂「梓ちゃんも頑張ってね。私も軽音部のライブ応援してるから!」

純「梓ファイト♪」

梓「…ありがと」

梓「よし、今日は練習がんばるぞっ」

テクテク・・・

梓「(純たちにはああ言ったけど…)」

梓「(実際はちょっと寂しい)」

梓「(先輩たちライブのこと忘れてないかなぁ…)」

梓「(さすがにそれはないか…)」

梓「……」

梓「(やばい、けっこう不安になってきた)」



音楽室前


梓「ま、ウダウダ考えてても仕方ないよね」

梓「いまの私にできることは練習あるのみっ!」グッ


ガチャ キィィ・・・

梓「こんにちは~…」

唯「……」ヤッホ

梓「ゆ…唯先輩っ!?」



音楽室


梓「どうしたんですか先輩、こんなところで…」

唯「……」

『あずにゃんのこと待ってたんだよ』

梓「そ、それは嬉しいですけど……劇の練習はいいんですか?」

唯「……」コクリ

梓「でも律先輩たち心配するんじゃ…」

唯「……」

『うん、それがね――』


数分前
教室でのこと


律「実はさ、唯には軽音部のことを任せたいんだ」

唯「…?」

澪「たぶん私たちはしばらく部活に顔だせなくなると思うから…唯を一人にしちゃうのは申し訳ないんだけどさ」

唯「……」

『大丈夫だよ!私はみんなみたいに主役じゃないし、練習することも少ないから』

紬「ごめんね唯ちゃん、クラスの劇もライブも頑張って成功させようねっ」

律「梓も一人で寂しがってるだろうし、ひとつよろしく頼むよ」

澪「よろしくな、唯っ」

唯「!!」マカセナ!!

『――ということがあったんだ』

梓「そうだったんですか…」

唯「……」

『あずにゃんは一人で寂しかった?』

梓「そんな事ないですっ!」

唯「……」ジトー

梓「な、なんですかその目は……さあ!それより練習しましょう練習!」

唯「♪」

梓「そういえば今回の歌詞は唯先輩が書いたんですよね?」

唯「……」コクリ

梓「こっちの『ごはんはおかず』っていうのはともかく…『U&I』はすごくいい歌詞だと思いますよ」

唯「……//」

梓「唯先輩って作詞の才能もあるかもですね」

唯「……」

『私はみんなと違って、想いのたけを詞にするしかないからね』

梓「…そっか」

梓「ところでボーカルはどうするんですか?確かまだ決まってませんでしたよね」

唯「……」

『私はあずにゃんに歌ってほしいな』

梓「えぇっ!?私ですか!?」

唯「……」コクコク

梓「いやいや…私ボーカルなんてやったことないですし、澪先輩のほうが絶対うまいですよ」

唯「……」

唯「……」シュン

梓「(うっ……)」

梓「ほ…本当に」

唯「…?」

梓「本当に私でいいんですか…?」

唯「…!」コクコク!

梓「えと、じゃあ唯先輩がそう言うなら……私頑張ります」

唯「~~!」ダキッ

梓「に゛ゃっ!?急に抱きつかないでくださいっ!」

唯「♪♪」スリスリ

梓「頬ずりもダメです~っ!!//」

『ありがとね、あずにゃん』

梓「べ、べつにお礼を言われるほどのことはしてないです!」

唯「……」ニコニコ


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最終更新:2010年12月09日 01:39