梓「あ、は、はい。わかりました」
唯「うん!あずにゃん、CDありがとうね~」
梓「いえ、他にもCDありますし、いつ返していただいても構いませんから」
唯「わかった~!じゃあ、また部室行くときはメールするね♪」
梓「そうですね、そうしていただけると助かります」
唯「うん、あずにゃん、バイバ~イ!」フリフリ
梓「お疲れ様でした~!」フリフリ
梓「…練習しよう」
――――――
―――――――――――――
梓(さて、やるとなったらちゃんと譜読みしとかないと…)
梓(スコアスコアっと…。あった)
梓(あ、一楽章だけでいいのかな…?)
梓(唯先輩もああ言ってたけど、やっぱり忙しいだろうからそんなに来られないだろうし…)
梓(でも、二人きりで演奏したのなんて、あまり無いよね…)
梓(ご近所のおばあさんの頼みが断れないからって、試験期間中なのに、二人で練習したとか)
梓(そういえば今回と一緒だな~。でも、今回はもっと大事なテストが控えてるんだもんね)
梓(………)
梓(あと、どのくらい一緒に演奏できるんだろう?)
梓(一応全楽章譜読みしておこう)
――――――
―――――――――――――
キーンコーンカーンコーン
梓(やっと放課後か…、昨日遅くまで練習してたから眠い…)
梓(今日はメールも来てなかったから、唯先輩はいないだろうけど、練習してから帰ろう…)
憂「梓ちゃん、なんだか眠そうだね」
梓「あ、憂。うん、ちょっと昨日遅くまで練習しててね…」
憂「そうなんだ~」
梓「ねえ、唯先輩はちゃんと勉強してる?」
憂「それがね~、お姉ちゃんったらすごいんだよ!あんなに勉強してるお姉ちゃんは始めてかも~!」
梓「そ、そうなんだ」
憂「うん!!あ、でもね、昨日は夜に息抜き!、って何か聴いたことない曲ずっと練習してたよ」
梓「!」
憂「あんだけ1日勉強してるんだもん。お姉ちゃんずいぶん楽しそうだったなあ~」ポワー
梓「そ、そう…」
憂「梓ちゃん、今日も練習行くの?」
梓「うん、ちょっとやらなきゃいけない曲があってね」
憂「…そうなんだ。それじゃ、また明日ね!」
梓「うん、また明日ね~!」
梓(…よし、行こう)
――――――
―――――――――――――
ガチャ
律「お、梓遅かったじゃないか!」
紬「あら、いらっしゃ~い!」
梓「あ、あれ、みなさんお揃いでどうしたんですか?」
澪「受験勉強の息抜きにな、ちょっと遊びに来たんだ」
唯「あ~ずにゃ~ん!!」ダキッ
梓「ゆ、唯先輩」
律「いや~、久しぶりの光景だな~!」
紬「よきかなよきかな~♪」
澪「ははは、唯、ほどほどにしてやれよ?」
唯「もうちょっとだけ~」
紬「ほら、唯ちゃんお茶入りましたよ~」
律「おお、やっぱりこれがないとやってられませんな~!」
唯「わ~い、ムギちゃん、今日のおやつなに~?」
梓「ふう…、みなさんいつもどおりですね。受験勉強はいいんですか?」
澪「これでもみんなちゃんと受験勉強してるんだぞ」
律「そうだぞ~!〝みんな〟ちゃんとやってるんだぞ~!」
澪「そうだな、律も珍しくちゃんとやってるもんな」
律「おい澪、珍しくって言うなあ~!私が普段やってないみたいじゃん!!」
紬「あらあら♪」
唯「ムギちゃんおかわり~」
律「お前は会話に参加しろ~!」
梓(みんな本当にいつもと変わらないなあ)
唯「…」チラッ
梓(ん?)
唯「…」ニコッ
梓(あ…、唯先輩)
澪「ところで律、赤本はどこまでやったんだ?」
律「う…、さ~てなんのことやら…」
澪「それじゃあ、去年出題の古文がどんな話だったか言ってみろ」
律「…あ、あれだろ?光源氏が同性愛者のお姉さんに真実の愛を説く話だったっけ?」
澪「そんな話はない!!!」
紬「にこにこ」
――――――
―――――――――――――
律「いやあ~、やっぱりムギの入れるお茶はうまいなあ~」
唯「うん!あれを飲むと勉強がはかどる気がするよ~」
紬「ありがとう!また息抜きにお茶しましょうね♪」
澪「梓」
梓「はい?」
澪「今日いきなり押しかけてすまなかったな。練習の邪魔じゃなかったか?」
梓「いえ、久しぶりにみんなそろって楽しかったです」
澪「そうか、それならいいんだ。いや、事前に連絡しておけばよかったなあと思って」
梓「いえ、別にかまいませんよ」
澪「…実は、今日部室行こうって言い出したのは唯なんだ」
梓「え?」
澪「本人は久しぶりにみんなでお茶が飲みたいって言ってたんだけどな。どうも、梓が心配だったみたいでな」
梓「…そうなんですか」
澪「…ごめんな、受験終わったらまた部室に行くからさ」
梓「ええ、わかってます。今はみなさん大切な時期ですから」
澪「梓…」
律「お~い澪~、何やってんだ~?お前ん家こっちだろ~?」
澪「あ、もうこんなところか。じゃあ、梓、私たちはこっちだから」
梓「あ、はい」
澪「また遊びに行くよ」
梓「ありがとうございます」
紬「じゃあ、唯ちゃん梓ちゃん、またね~♪」
唯「ばいば~い!」
梓「お疲れ様です」
唯「じゃああずにゃん、途中まで一緒に帰ろ~!」
梓「あ、はい」
唯「今日のムギちゃんのお菓子、おいしかったねえ~!」
梓「そうですね」
梓(なんでだろう、なぜかちょっと緊張する…)
梓(澪先輩にあんなこと言われたからかな…)
唯「ねえあずにゃん」
梓「は、はい?」
唯「今日久しぶりに5人そろったねえ~!楽しかった?」
梓「(!)ええ、すごく楽しかったです」
唯「やっぱり放課後ティータイムはこうでなくちゃねえ!」
梓「そ、そうですねえ」
梓(ちょっと聞いてみようかな)
梓「でも、今日はみなさんどうして急にお茶しに来られたんですか?」
唯「うん、みんな受験勉強で疲れちゃっててねえ~…。それで息抜きしようって!」
梓「そうでしたか…、誰が言い出したんです?」
唯「…ううん、みんなとメールしたら何か流れでねえ~!」
梓「…なるほど」
唯「あ、そうだ、明日あの曲練習しに行ってもいい?」
梓「え?明日ですか?唯先輩、本当に勉強大丈夫なんですか?」
唯「あずにゃん、1日中勉強なんてしてらんないよ~!頭がパンクしちゃう!」
梓「まあそれはそうなんですけど…」
唯「ね?だからいいでしょあずにゃ~ん!?」ダキッ
梓「こ、こんなところでくっつかないでください!」
唯「いいって言うまで離さないよ~!」ウリウリ
梓「…いいですよ」
唯「ホント!?」パアア
梓「ただし、約束してください」
唯「え?」
梓「部室に来るまではちゃんと勉強しててください」
唯「あずにゃん…」
梓「それならいいですよ」
唯「わかった。約束するよ、あずにゃん!!」フンス
梓「お待ちしてますよ?あ、それじゃあ、私はこの辺で」
唯「うん!じゃあ明日ね!!」
梓「はい、お疲れ様です」
唯「バイバ~イ!」
梓(唯先輩、本当に大丈夫なのかな…?)
――――――
―――――――――――――
梓『やっほー、憂』
憂『こんばんは、梓ちゃん。急に電話なんてどうしたの?』
梓『今部屋?』
憂『ううん、居間にいるよ』
梓『…唯先輩いる?』
憂『ううん、私一人だよ』
梓『そうなんだ…』
梓『…』
憂『…』
憂『お姉ちゃんなら、部屋で勉強してるよ。お姉ちゃんがどうかした?』
梓『い、いや、別にそんなわけじゃないけど…』
憂『そうなの?お姉ちゃん今日部室行ってたんでしょ?帰ってからずっと勉強してるんだよ』
梓『へ、へえ~、唯先輩が』
憂『うん、それで今お夜食作ってあげてるんだ~』
梓『そ、そうなんだ。じゃ、じゃあ邪魔したかな。もう切るね』
憂『え?梓ちゃん?』
梓『また学校でね!』ガチャ
梓「…」プー プー
梓(唯先輩、ちゃんと勉強してるんだ)
梓(今回は私がスケジュール組まなくてもよさそうだね)
梓(明日、本当に来てくれるのかな)
――――――
―――――――――――――
キーンコーンカーンコーン
梓(ようやく授業終わった…。練習に行こう)
梓(…)
梓(あれ?今日はヴァイオリンの音しないな)
梓(唯先輩いるのかな…?)
ガチャ
唯「あ、あずにゃ~ん!」
梓「唯先輩、もう来てたんですね」
唯「うん!今日はあずにゃんのために私がお茶とお菓子を用意したんだよ!」
梓「え?」
梓(本当だ、私のティーカップ…。唯先輩、紅茶入れられたんだ…)
唯「えへへ、授業疲れたでしょ?たまには二人でお茶しよーよ!」
梓「そうですね、昨日もしましたけど、最近はお茶の回数も減りましたし。」
唯「でしょでしょ?まあ、ちょっと飲んでみてくだせえ」
梓「はい、いただきます――」
ゴクッ
梓(ん…?)
梓「…」
唯「ど、どう?」
梓「あ、そうですね、何かいつもと味が少し違うというか…。葉変えたんですか?」
唯「う…」
梓「! い、いえ、決してまずいわけでは!」
唯「うん…、実はね、私はムギちゃんみたいにお茶なんか入れられないから、商店街で買ってきたんだけど」
唯「やっぱりムギちゃんがいないとダメだね~、えへへ~…」
梓(唯先輩…、私のために…)
梓「いえ、唯先輩のおかげで気分がすっきりしました!」
唯「あずにゃん…」
梓「今度から私がお茶を入れます!だから唯先輩は心配しないでください!」
唯「おお、頼もしいねえ!あずにゃん分補給~!!」ガバッ
梓「ふにゃああああ!!!?ち、ちょっと唯先輩…」
唯「あずにゃんはいい子だねえ~!」
梓「ふにゃあ~…」
梓(勢いで言っちゃったけど、お茶の入れ方なんかわからないし…。憂に教えてもらおう…)
梓「あ、あの、唯先輩、そろそろ練習しませんか?」
唯「ほえ?そうだねえ、はじめようか!」
――――――
―――――――――――――
唯「さて、はじめますか」
梓「はい」
梓(改めて、バッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲第一楽章)
梓「テンポはどれぐらいを考えてますか?」
唯「テンポ記号はVivaceだよね。結構早いってことだよね?」
梓「Vivaceは本来かなり早いです。ただ、CDを聴いてみましたよね?本当にVivaceで弾いてる演奏者はクレーメルぐらいしか浮かびません。反対にゆっくりな演奏もたくさんありますし…」
唯「そっかあ。じゃあじゃあ、とりあえずあのCDと同じぐらいで」
唯「1、2、3、4…ぐらいでどうかな?」
梓「わかりました。今回はそのぐらいでやってみましょう」
梓「それでは、私から入りますので…。いいですか?」
唯「りょ~かい!!」
梓「…」
梓(まず2ndヴァイオリンが主題を奏で、ついで1stヴァイオリンがイ短調で呼応する…)
梓(行こう)
梓「…スゥ」
~♪♪♪~
梓「この辺りでいったん止めましょう」
唯「ふい~」
梓「唯先輩、出だしのところもう少しテンポで入っていただけますか?私も合図送るようにしますので…」
唯「は~い!」
梓「ところで、ソロのところ、ボーイングとフィンガリングどうしてます?」
唯「う~ん、あのCDみたいに聴こえるようにしてみたんだけど」
梓「ちょっと弾いてみてもらっていいですか?」
唯「うん、こんな感じ」
♪~
梓(うわ…、確かにハイフェッツっぽい…)
唯「あ、あずにゃん、ど、どう?」
梓(最初のオクターブのとことか、すごく音が響いてる…。私だって…)
梓「いえ、私が唯先輩の弾き方に合わせます」
唯「そう?」
梓「ええ、練習しておきます…」
唯「なんだかやらせちゃってるみたいですまないねえ」
梓「いえ、唯先輩の弾き方かっこよくていいと思いますよ」
唯「おお、褒めても何も出ないよ!?」
梓「それは残念です」
唯「もう~。そうだそうだ、練習記号のここのところ何だかぐちゃぐちゃでよくわからないんだけど…」
梓「そうですか、じゃあ、そこのところからもう一度やってみましょう」
~♪♪♪~
――――――
―――――――――――――
最終更新:2010年12月14日 23:45