澪(8分のユニゾンの後も音量を落とさない!!)
律(このまま最後まで行くのか!?)
紬(…まだ出せるでしょう?)
梓「♪」 唯「!」
唯梓「♪」
律(すごっ!嵐のようなパッセージ…)
澪(最初から耳に残る三連符だったけど、これは圧巻だ!)
律(しかも、まだクレッシェンドしていく…!!)
澪(なんて演奏なの!!?)
紬(…)ジワッ
唯梓「♪」
唯梓「♪♪」
唯梓「♪♪♪」
唯梓「♪~~~」
唯「…」
梓「…」
律「…」
澪「…」
澪「…」パチ
律「…」パチ
律澪「…」パチパチパチ
パチパチパチパチ
澪「おつかれ!!」 律「いや~、すごい演奏だったn」
紬「だめ」
澪律「え?」
ヒック
澪律「…!」
梓「…」
梓「唯先輩…」
唯「…なぁに?」
梓「私…、まだ唯先輩のいいところを…言ってませんでしたね…」
唯「…」
梓「さっきも言いましたが、唯先輩はいつでも明るく振舞ってくれて。でも」
唯「…」
梓「それだけじゃなくて、いつも表には出さないけど、すごく気を遣ってくれて」
唯「…」
梓「音楽に対しても、唯先輩はヴァイオリンの扱い方も知らないし、弦の交換も出来ないのに…、私なんかよりも全然楽器を大切にしてて…私なんかよりもずっと楽器と一緒で…」
ヒック
唯「あずにゃん…」
梓「楽譜も読めないし、曲の知識も全然ないのにこんなに魅力的な演奏が出来て…」
ヒック
梓「こんなにも音楽に一生懸命で!!」
唯「…違うよあずにゃん」
梓「…グスッ」
唯「あずにゃんがそうさせてくれたんだよ。私一人じゃこうはなれなかった。あずにゃんと一緒に演奏して、考えて…」
律澪「…」
唯「私はただ楽器を触っていられれば幸せだった。みんなと演奏できればそれでよかった。でも、あずにゃんが音楽の本当の魅力はもっともっと大きいってことを教えてくれた。私は音楽が好きなんだって気づかせてくれた!」
唯「だから、私のいいところはあずにゃんが作ってくれたんだよ」
梓「唯せんぱぁい!!!」
ダキッ
梓「ゆいせんぱい…!!ゆいせんぱい…!!私、もうゆいせんぱいと一緒に音楽が出来ないのやだぁ…ゆいせんぱいとはなれたくない!! ゆいせんぱいのことが、ゆいせんぱいの音が大好きなのぉ…」
唯「あずにゃん、ありがと」
ナデナデ
梓「はぁ、はぁ…」
唯「あずにゃん、ちょっとがんばっちゃったね。大丈夫。さっき一緒に弾いたときに…、あずにゃんの音と一緒にあずにゃんの気持ちが伝わってきたから…。だから、もう言ってくれなくても大丈夫だよ」
梓「ぐすっ、だめです」
唯「え?」
梓「一番大切なこと、まだ言ってません」
唯「…あずにゃん、だめ」
梓「私」
梓「唯先輩のことが好きです」
澪「え?…えええええええ!!?」
梓「唯先輩を離したくない。もう唯先輩なしじゃ無理です」
澪「ちょ、えええ!!??」
律「お前はちょっとだまれ」ポカ
澪「!!???!!?」
紬「あらあら」
唯「あずにゃん…」
梓「…」
唯「ありがと、あずにゃん。でも、ごめんね」
梓「…」
唯「私たち女の子だし、急に言われても私返事できない…」
梓「そう…ですよね…」
唯「でもね、あずにゃん」
梓「はい…?」
唯「私、待ってるから」
梓「え?」
唯「一年間、新しい舞台であずにゃんのことずっと待ってるから。ね?」
梓「! は、はい!」
唯「そしたら…、私の答えを言うよ」
梓「グスッ、…いいんですか?唯先輩が受かって私が落ちるとでも思いますか?逃がさないですよ?」
唯「ええー!!?なんかひどい!!」
唯梓律紬「あはははははは!!」
澪「!!???!?」
律「いやー。ムギいいもん見させてもらったなあ」
紬「そうね~、どうしてビデオカメラを持ってこなかったのかしら~」
梓「! ちょ、ちょっと!!今見たことは忘れてください!!!」
唯「ええ~、忘れちゃっていいの~…?」
梓「いや、あの、そうじゃなくて!!」
律「あっはっは!忘れろって言ってもなあ、ムギ?」
紬「ね~りっちゃん♪」
梓「???」
律「まだ録音続いてるし!!」
梓「えええええええええええええ!!!??」 唯「おおお~~…!!」
梓「今すぐ消してください!!」
律「むりむり~!そんなことしたらさっきの演奏も消えちゃうし~♪いいのかなぁ~♪」ニヤ
梓「そ、それは…」
紬「帰って早速ダビングしなきゃ!鑑賞用と、保存用と…」
唯「あ、ムギちゃんムギちゃん!私にも~!」
梓「あああああああ……そんなあ~…」
澪「!!??!??!?」
律「お~い澪、そろそろ帰ってこ~い…」
キャッキャッ
ワタスデス~ ヤ~ダヨ
ダビング10コハイルワネ..
――――――
―――――――――――――
エピローグ
梓(あれから1年が過ぎました)
梓(今日は私の引越しの日です)
唯「ふ~!これで、荷物全部だね!」
梓「はい。唯先輩の車があるおかげで助かりました」
唯「エッヘン!」フンス
梓「昨年の夏休みに唯先輩の車で出かけたときは死ぬかと思いましたけどね」
唯「だって、あれはあずにゃんが海に行きたいなんて言うからあ~!」
梓「うっ…、あんなに海が遠いなんて知りませんでした…」
唯「でも、あのときは楽しかったねえ~」
梓「…はい。なんだかんだで、高校三年生も楽しめました。唯先輩のおかげです」
唯「えへへ~、憂のふりして学校に行ったのは自分でもなかなかがんばったと思う!」
梓「まさか修学旅行にまでくっついてくるとは思いませんでしたけどね。友達なんて憂が二人!?ってかなり驚いてましたよ?」
唯「あのときはあせった~!!でも、おかげで二人で夜景も見られたしね~!」
梓「ええ。唯先輩、来てくれてありがとうございました」
唯「あずにゃんを一年も放ってなんておけないよ!」
梓「ゆ、唯先輩…、あ、このオーディオセットどこに置けばいいですかね?」
唯「おお、さすがあずにゃん、良さそうなものをお持ちですなあ…」
梓「音楽やるならこれぐらい当然です。あ、唯先輩のパソコンってマックなんですね」
唯「iPodに音楽入れるのにいいんだよ~!」
梓「じゃあ、これもその近くに置かせてもらいますね」
唯「どうぞ~。あずにゃんもiPod持ってきた?」
梓「ええ。私もiTunes使わせていただきますね」
唯「いいよ~、何か面白い曲入れよっか?あ、そうだ、去年みんなで演奏した音源あるよ!!」
梓「ぶっ!!そ、そうですね、最後の演奏以外でお願いします…」
唯「ええ~?なんで~!?あずにゃんの愛の告白が…」
梓「もうっ!その話はしないでください!!」
唯「照れてるあずにゃん、かわい~!!」ダキッ
梓「んっ、唯先輩…」ギュッ
唯「…今日から、あずにゃんとここで一緒に暮らせるんだね」
梓「はい…、一年間はやっぱり長かったです」
唯「ごめんね?」
梓「…どうして謝るんですか。これからは離しませんから」
唯「あずにゃん…」
梓「…あ、そろそろ澪先輩の家に向かわないといけない時間じゃないですか?」
唯「え?ホントだ!あずにゃんの入学祝いなのに、あずにゃんがいなかったら意味がないもんね!」
梓「そうですね。今日は引越しがあるから、澪先輩が気を遣ってくれたんですよね」
唯「そうだよ!りっちゃんがごはん作ってくれてるんだって!」
梓「律先輩、ホントに料理上手なんですね…、意外です」
唯「そう?でも、最近は澪ちゃんもりっちゃんに料理教えてもらってるんだって~」
梓「そうなんですか。…さて、準備も出来たんで行きましょう!」
唯「うん!!」
――――――
―――――――――――――
梓「うわあ、夕暮れが綺麗ですねえ!」
唯「いいでしょ~。ちょっと高いところにあるから、自転車とかだと大変なんだけど、眺めがすっごくいいんだあ~」
梓「…唯先輩、一年間もあんな広い部屋を借りてて、家賃払うの大変だったんじゃないですか?これからは私が多めに家賃払いますから」
唯「ダメだよ~?二人で割り勘にしようって決めたじゃん。それに、私が一年間待つって言ったんだから。当然だよ」
梓「…私、先輩と二人で生活できてホントにうれしいです」
唯「あずにゃん、ありがと!…そうだ、澪ちゃん家行く前に…」
梓「…補給ですか?」
唯「うん!」ギュッ
梓「えっ!?唯先輩、あの、手を…?」
唯「うん、澪ちゃん家に着くまでこうやって手から少しずつあずにゃん分を補給するね…」
梓「唯先輩…」
ギュッ
――――――
―――――――――――――
唯「つかれたあ~!」
梓「もうへろへろですぅ~…」
バサッ
唯「あ、ダメだよあずにゃん!髪解いてからベット行かないと跡つくよ~?」
梓「う~ん、せんぱぁい、ほどいてぇ~?」
唯「あらあら、今夜は甘えんぼさんだねっ♪」
ホドキホドキ
梓「…いつから澪先輩と律先輩は同棲してるんでしたっけ?」
唯「う~ん、大学入ってわりとすぐじゃなかったっけなあ~?」
梓「なんだか、部屋の家具とか、物の配置とか…」
唯「えへへ、なかなか仲良くやってそうでしょ?」
梓「やっぱりそうなんですかね?」
唯「二人は直接言ってこないけどね、ムギちゃん探偵の意見によると、『あの二人は黒ね!』らしいよ!」
梓「ムギ先輩するどいからなあ…。間違いなさそう」
唯「今日も二人を幸せそうに眺めてたからねえ。去年のあずにゃんの告白のおかげであの二人の〝こころ〟も変わったみたい」
梓「そうですか…」
唯「…」
梓「…」
唯「ねえあずにゃん、あのね?」
梓「すぅすぅ…」zzz
唯「あずにゃん、…寝ちゃったの?」
梓「…」zzz
梓「ゆいせんぱぁい…すきですぅ…」zzz
唯「…ごめんね、あずにゃん」
ナデナデ
唯「まだ私の気持ち、直接伝えてないよね…」
唯「多分、言わなくっても伝わってると思うけど…」
チラッ
唯「…それじゃああんなふうに告白してくれたあずにゃんに悪いよね」
唯「一年間待ってたのはあずにゃんもだもんね…」
唯「…ふぅ」
唯「風邪引くよ?あずにゃん」
ファサ
唯「…」
唯「…」
唯(よぉし…!)
――――――
―――――――――――――
チュンチュン
梓「う~ん」
梓「…朝?唯先輩?」
梓「…あれ、いない」
梓(ん?メモ…。唯先輩の字だ)
唯『今日は一コマ目からだから先に行くね!』
唯『後で部室で待ってるよ!』
梓(そっか、今日は一コマ目からだから先に行くっていってたっけ…)
梓(えーっと、壁に唯先輩と私の履修登録表貼っておいたんだよね)
梓(うん、唯先輩は一コマ目からだな。私は…、二コマ目からか…)
梓「今何時なんだろ、って、やばっ!!そろそろ行かないと私も間に合わない!?」
バタバタッ
梓「筆記用具にテキストに、あと楽器と楽譜!」
梓「あ、そうだ、iPod聴きながら行こう!」
スチャ
梓「よし、行って来ま~す!!」
バタン
梓「あれ、アーティスト名、HTT…?唯先輩が入れておいてくれたんだ。せっかくだし、これ聴きながら行こうかな…?」
ピッー
――――――
―――――――――――――
ピッー
梓『私は唯先輩のことが好きです………』
律『まだ録音続いてるし!!………』
梓『あああああああ……そんなあ~…………』
ピッー
唯『あーこほんこほん』
唯『聞こえますか~?』
唯『えへへ、なんだかこういうときって緊張します』
唯『でも、ちゃんと言わなきゃね』
唯『今日は4月10日、時間はもう夜中です』
唯『天気は晴れ。窓から星がたくさん見えます』
唯『出会ってから三年が経ちました』
おわり
最終更新:2010年12月15日 00:01