――――――――――――――――――

AM9:00

唯「ん…んんーっ」

唯「ふわぁ…おはよう…」

唯「うぅ…まぶしい…」


シャーッ


唯「…わぁ~」

唯「お日様は今日も快晴ですなぁ」

唯「うーん」









唯「…ぐぅ」


――――――――――――――――――

AM9:30


唯「じゃあ憂、行ってきます」

憂「いってらっしゃい。お姉ちゃん」

憂「ちゃんと夕方には帰ってきてね」

唯「はいは~い」







唯「ふんふんふんころが~し♪」

唯「ふふんがふんっ!」フンスッ!

唯「肥やしにはまって」

唯「さぁ大変♪」

唯「あっ!」

唯「おーいりっちゃーん!」


・・・・・・・・・・・・・・

律「おっ、唯じゃないか。こんな朝早くに何してんだ?」

唯「天気がいいからお散歩してたんだ~」

唯「そういうりっちゃんこそ何してたの?」

律「私?私は筋トレの途中だよ」

唯「?りっちゃんボディービルダーにでもなるの?」

律「お前はチェ・ホンマンみたいになった私の身体を見たいのか?」

唯「何言ってるのりっちゃん!?そんな汚物見たい訳無いでしょ!」

律「張っ倒すぞお前」

律「聡が走りこみしてたから私も付き合ってた途中だったんだよ」

律「ドラムだって体力がないと駄目だからな。これも練習の一種だよ」

唯「そっかぁ、りっちゃんは努力家なんだね~」

律「そ、そんなに誉めるなよ…照れるだろ?」

唯「えっ?そこまで褒めてないよ?」

律「おい」

唯「それにしても今日はいい天気だよね~」

律「だな~。こんなに晴れてると草むらで寝転がって青春でも満喫したいよな」

唯「ははっ、そうだね」

律「あっお前今私の事痛い奴だって思っただろ!?」

唯「そ、そんなこと思って無きにしも非ずだよ!」

律「思ってんじゃねぇかこの野郎」ポカッ

唯「あうんっ」

「おーい姉ちゃーん。早くしないと置いて行くよー」




律「いけね、アイツ放置してた」

唯「うん。早く行ってあげなよ」

律「おう、じゃあな唯。また学校でな~」

唯「りっちゃんばいば~い」








唯「ふんふ~ん」

唯「しあわせは~歩いてこない♪」

唯「だーから世の中金なのさ~♪」

唯「一日一億、三日で脱税!」

唯「三億包んで二個テッポドーンッ!!」チュドーン!

梓「なんて唄歌ってんですか…」

唯「あっ!あずにゃん!」





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AM10:00

唯「あずにゃんと二人きりって久しぶりだね~」

梓「そうですね。ココ最近はずっと部活メンバー全員で行動でしたからね」

唯「今日はどうしたの?あずにゃんもお散歩?」

梓「いえ、私はちょっと用事があって…」

唯「そっかぁ、どんな用事なの?」

梓「別に大した事では…あっ、着きましたよ」


唯「?」

梓「ほら、あそこです」




・・・・・・・・・・・・・・・・


猫「ナー」

唯「あっ猫ちゃんだ!」

梓「はい、あずにゃん3号です」

唯「2号は?」

梓「今は純の家にいますよ。それよりも…」

唯「あっ」

梓「分かりました?この子、捨て猫なんです」

梓「その横には…」

唯「……これって」

梓「…はい、子供です。もう、動いていませんけど…」

唯「でも、親猫の方はずっと子猫を包んでるみたいだよ?」

梓「そうですね、きっとお乳をあげてるんだと思います」

梓「…気付いてないのか、認めたくないのか、どっちかなのか分かりませんけど…」

唯「このままじゃ絶対ダメだよね」

梓「はい、…だから私がお墓を作ってあげようと思ってたんです」

唯「そっかぁ…」

唯「でもどうやってこの子を親猫から引き離すの?」

梓「はい、私もどうしようか悩んでたんです」

梓「無理やり引き離すのも可哀相で…」

唯「うーん…」

梓「先輩、何かいい案はありませんか?」

唯「う~ん…」






唯「あっ、じゃあこれはどうかな?」


唯「ほーら怖くないよ~」

猫「フシャーッ!!」

唯「うっ…大丈夫大丈夫。何もしないよ~」

梓「……」ゴソゴソ

猫「キシャーッ!!!」

梓「きゃっ!」

唯「『おかあさ~ん。私おっぱいのみたいよ~』」

猫「……」

唯「『その猫は偽者だよ~泥棒猫だよ~』」

唯「『私が本物のお母さんの子だよ~』」









猫「……」ナデナデ


唯「あずにゃん、上手くいった?」

梓「はい、唯先輩のおかげで」

唯「そっか、良かったね」

梓「はい、でも…」












猫「…ナー」ナデナデ

梓「…あの子、ずっとあのぬいぐるみを子供として育てようとするんでしょうか?」

唯「ううん、きっとあの猫は分かってくれる筈だよ」

梓「えっ?どうしてですか?」

唯「ほら、よく見てよあずにゃん」

梓「…?」

猫「……」ナデ、ナデ…


唯「普通、匂いも何も無いぬいぐるみを子供だなんて思うはずがないよ」

梓「えっ?でもあの猫は…」

唯「うん、だから分かってるんじゃないのかな?」

唯「自分の子供は死んでる、でもそれを認めたくない」

唯「でも、このままじゃ絶対にいけない。って…」

梓「……」

唯「あの子は、きっと誰かに後押ししてもらいたかったんだと思う」

唯「その勇気がないから、ずっと死んでる子猫を抱えてたんだよ」

梓「…そう、でしょうか?」

唯「うん、私はそう思うな」

唯「あの猫の悲しい目を見てると、なんとなくそんな気がした」

梓「……」

唯「…その子のお墓、作ってあげようよ。あずにゃん」

梓「…はい、そうですね」


――――――――――――

AM11:30



唯「ふぅ、こんなもんでいいかな?」

梓「そうですね。結構時間かけて作っちゃいましたから」

梓「この子も、きっと満足してると思います」

唯「うん、そうだね」

梓「……」

唯「…あずにゃん?」

梓「あっ、大丈夫ですよ」

梓「ただ、この子もあの親猫も幸せになれればいいなぁって、思っていました…」

唯「大丈夫だよ。場所は違うけど、あの親子はきっと私達に感謝してると思うよ」

唯「私達を一歩前に進ませてくれてありがとう。ってね…」

梓「…はいっ。そうですよね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


梓「じゃあ私はここで失礼しますね。」

唯「うん、元気出してねあずにゃん!」

梓「はい。…あの、唯先輩」

唯「なーに?」

梓「えと…その、ありがとうございました」

唯「?」

梓「正直私は、あの子猫を土に還すかどうか迷ってましたから…」

梓「あの親子にとっては、ずっとあのままの方が幸せなんじゃないかなって…思ってましたから」

唯「…うん、あずにゃんがそう考えるのも分からなくないよ」

梓「でも、やっぱりこれで良かったんですよね」

梓「あのままじゃ、もうあの親猫は子供を産もうとしなかったかもしれませんし…」

唯「あははっ、…うん、これで良かったんだよ。あずにゃん♪」

梓「…後押しされたのは、あの猫達じゃなくて私なのかもしれませんね」

唯「ん?何か言った?」

梓「いえ、では唯先輩、失礼しますね」

唯「うんっ!また学校で会おうね~」ギュー

梓「もうっ!抱きつかないで下さいよっ!」

唯「あははっ♪じゃあねーあずにゃーん!」

梓「はいっ、さようなら!」












唯「ふんふん~♪」

唯「はっ!!」

唯「お腹すいた…」

唯「うぅ…そういえばお昼ご飯がまだだったなぁ」

唯「お金お金…はっ!財布忘れた!!」

唯「あうぅ~うぅ~…」シオシオ…












紬「あれ?唯ちゃん、こんな所で何してるの?」

唯「あうぅ~」グキュルルー

唯「私…死ぬのかなぁ…たくあんが浮かんで見えるよ…」

紬「??…よく分からないけど、お腹すいてるの?」

唯「あぁっ!その声はムギちゃん!」

紬「ねぇ唯ちゃん、折角だからちょっとそこで休んでいかない?」

唯「えっ?」




唯「ハムッ!ハフッハフッ!ハムウッッ!!!」ムシャムシャ

紬「私こんなにいっぱい食べれないから困ってたの~」

唯「んぐっ…んぐっ……んぐっ!?」

唯「ぐえっふぇ!ぐえっふぉ!ぶほぉっ!」ベチャアッ!

紬「あ、あらあら!そんなにがっつかなくてもハンバーガーは逃げないよ!?」

紬「ほら、ジュース飲んで?」

唯「んぐんぐ…ぷはぁ」

唯「ありがとうムギちゃ~ん。私色んな意味で死ぬかと思ったよ~」

紬「うふふ、大袈裟なんだから…」

唯「でも何でこんなにいっぱいハンバーガー持ってたの?」

紬「え、えっとね…その…これはね…」

唯「?」

紬「私が…その…ミスしちゃった分なの…」

唯「お、おぉう…」

紬「ほら、ああいう流れ作業が主流のお店は一つ間違えたら全部がストップしちゃうでしょ?」

唯「うん、だから働いてる人たちはいつも真剣な顔してるよね」

紬「そうなの」

紬「でも私、お客様にちょっとクレームを出されただけで集中力が切れちゃって…」

紬「そしてその…それが原因でオーダーミスをしちゃったの」

唯「そっかぁ…災難だったね」

紬「うん、でも私一人が損するならいいけど、今日はお店全体に大きな損害があったから…」

唯「怒られちゃった?」

紬「うん…店長さん、怖かったなぁ」

唯「そっか…」

紬「私、このバイトもうやっていける気がしないの…」

唯「えっ!?どうして!?」

紬「他のバイトの子は、ミスは誰にでもあるって励ましてくれたけど…」

紬「私、今度ミスしたらどうなるか想像したら…怖くて」


唯「ムギちゃんは、バイトは楽しい?」

紬「えっ?」

唯「一回でもバイト楽しいな~って、思ったことない?」

紬「それは…もちろん、あるよ」

唯「じゃあ、私は続ければいいと思うけどなぁ」

紬「唯ちゃん?」

唯「だって学校や部活と違って仕事でしょ?」

唯「仕事が楽しいって思えるのって、とても幸せな事なんだってお母さん言ってたもん」

紬「…それは」

唯「本当に嫌だったらもっと違うバイト探せばいいし、もうバイトしたくないなら辞めて学校に専念すればいいからねっ」

唯「ほら、若い内にはなんでも経験してみなさいって言われなかった?」

紬「…うん、言われた気がするわ」

唯「だったら、私は楽しい事をしようって思うよ」

唯「だって一度しかない高校生活だもん。楽しく過ごしたいもん」

唯「みんなと一緒に演奏して~、お菓子食べて~、一緒に遊んで~」

唯「あっ!また合宿とかも行きたいなぁ!」


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最終更新:2011年10月20日 22:13