● 梓side

まったく律先輩も本当に油断も隙もないんだから

一人だけ、なんのリスクも負わずにおいしい思いができるとでも思ってるんでしょうか

律「おいおいおい、お前らのことだからどうせ唯の横争ってたんだろう?私は無関係じゃないかー」

澪「そんな、わけないだろっ! どうみてもあそこは2番人気になる」

律「うるへぇー、お前らあれだ、あそこは第2候補だろ!? 私はあそこが第1候補だ!」

うん、いいたいことはわかりますが

はたして、この面子にそれが通じますでしょうか?いいえ通じません

紬「りっちゃーん?さっきから ぬ・け・が・け が目立つわよ~♪」

律「ぐぅ……」

さすが、ムギ先輩、律先輩を一発で黙らせてしまった

律「……じゃぁ、どうするんだよぉもぅ」

紬「そうねぇ~、ジャンケンで勝ったもの順に席を決めていけることにでもしましょうか?」

……あれ、これ私にとっていい展開なんじゃ

梓「(だって、律先輩は私がグーだすことをしらないわけだし、もしかしたら初手があいこになる可能性も……)」

律「んー、じゃぁそれでいくかー」

よっし、乗ってきた

澪「それじゃぁ、いくぞー、っとその前に律、初手はパーだせよ」

……!?

紬「んふふ、そうね。りっちゃん最初だけは勝てるわよ~。なにせ梓ちゃんはグーしかだせないもんね~♪」

律「?」

梓「(終わった……さよなら唯先輩。私は一人寂しくあなたから遠くの位置で鍋を食べます)」

……神は死んだ

澪「よっし、それじゃぁ、いくぞー」

紬「ジャンケン」

律・梓・澪「ぽんっ!」


● 澪side

……なん……だと!?

一戦目は簡単に勝てるはずの勝負だった

本当の死闘は2戦目からだったはずだ。

……少なくとも梓はここで脱落するはずだった……

それがフタをあけてみれば……

梓がグー 私がパー、ムギもパー

そして

律がチョキだとおおおおおお!?


● 紬side

なんたること……

りっちゃん……あなた……

まさかここで引き分けなんてことになるなんて

澪ちゃんを見てみれば、やはり彼女も驚きを隠せない模様

りっちゃんを見れば

へっ?あれ、なんか私やっちゃった? みたいな顔をしている

なぜ、なぜそこでチョキなの~!? りっちゃ~~ん


● 梓side

神はいた

いや、唯先輩って言う女神は前からいましたけど

……律先輩、正直見直しました!!

今なら、私の撮った唯先輩の日常盗撮コレクションをわけてあげてもいいくらいの働きです!

澪「ちょ、おいりつ~、なんでパーださなかったんだよ~」

ふふふ、無様ですね澪先輩。

私は約束どおりグーを出しましたよ

律「いやぁ、だって、お前らのことだから、また私を嵌めようとしてるのかな~、なんて」

律先輩、私誤解してました。

律先輩って結構聡明な方だったんですね。

私今日のことは忘れません。だいたい2時間くらいは

紬「あら、りっちゃん、その言い方じゃ私達がいつもりっちゃんを嵌めようとしてるみたいじゃない♪」

澪「そうだぞ~、りつ~。私達がいつお前を嵌めようとしたんだよ~」

うん、嵌めようとはしてませんが、結構直接的な方法とってますよね

力技っていうんですか、まぁ簡潔にいえば、しめる?みたいな?

……あれ、なんかこう言ったらドロドロして聞こえますねー

唯先輩がそのドロドロの真ん中にいるっていうのも、なんか嫌な話なのでやっぱり気のせいってことでいいや

律「おまえらな~、今日一日ふりかえってみろよー」

紬「あら、嵌めようとなんてしてないわ。力任せにこう……」

自覚はあったんですね、ムギ先輩


なにはともあれ

……これで私にも唯先輩とのイチャイチャ空間を作れる可能性がでてきたわけで

梓「(お互いにアーンとかしちゃったり……あぁ、唯先輩だめですぅ……そんな……お肉大きすぎて入りません……あああああ、らめえええええ)」

おっといけない。少しトリップしてしまったようだ

梓「それじゃぁ、気を取り直して続けましょうか」

澪「……」

紬「……」

律「じゃぁ、いくぞぉジャンケン」

もう私を縛るものはない。

梓・澪・紬「ぽん」



●唯side

目の前には二つのお鍋がある

一つは待望のましゅまろお鍋ー!一つは普通のお鍋!

お鍋!お鍋!

カセットコンロも完璧。材料もそろった。

もちろんマシュマロもあるよー!

あとは……

あれ、みんななにしてるんだろう

唯「おーい、みんなそんなところでなにしてるの?」

あれ、なんか澪ちゃんとあずにゃんのテンションが低い?

お鍋いやだったのかなぁ……?

紬「ふふっ、今行くわ~唯ちゃん♪」

律「だな、ほら、お前らも」

対照的にムギちゃんとりっちゃんは嬉しそうです

唯「もしかして、あずにゃんと澪ちゃんはお鍋いやだった?」

私がくびを傾げながら聞くと

あずにゃんと澪ちゃんが慌ててくびをふります

梓「いえ、そんなことないです。お鍋超好きです!ねぇ、澪先輩」

澪「うん、そうだよなー梓。鍋超たのしいなぁー」

どうやら勘違いだったみたいです

でも、どこか二人がぎこちないのはなぜでしょう

紬「じゃぁ、唯ちゃん、横失礼するわね♪」

私の右にはむぎちゃんが

律「ふぅー……」

正面にはりっちゃんが

そしてりっちゃんの両サイドにはあずにゃんと澪ちゃんがつきます



● 澪side

ああああ、負けたあああああ

くそおおおおお、誰だよ、温和そうな人はパー、賢そうな人はチョキ、一直線タイプはグーとかいったやつ

ムギとかどうみてもパーだすだろ!律とかどうみてもグーだろ!

……あ、でもこれでいったらずっとあいこか

いや、しかも最近のムギはどこかはっちゃけてるしなぁ……

少なくとも、おっとり雰囲気を常にかもし出してはいるが、温和ではないよなぁ……

まぁ、とにかく私のパーは一人負けなわけで……

律「澪、負けたところにとどめさすみたいで悪いけど、忘れてるみたいだから言っとくが、
お前の前にはマシュマロ鍋が置かれるから、ちゃんと食えよ。残ったら唯が悲しむから」

……別に忘れていたわけじゃない! 考えないようにしていただけだ

え?ところでみんな本当に私だけにマシュマロ鍋を押し付けるつもりなのか?

……いや、逆に考えろ、唯と私だけの鍋だと

唯が食べた後、当然その箸で次の具をとるときに、鍋のなかに箸をつっこむわけだ

ということは、そのだしには唯成分がじょじょに浸透していく

……これはもうキスだな。しかも時間を置くごとにその濃度もあがっていく。最終的にはディープキスといっても過言ではないほどに!!

これは不幸中の幸い。

いや、これのどこが不幸だろう。むしろ幸せしかないじゃないか

律「あ、とうとう澪が壊れたっぽいけど、まぁほっといて続きといくか」

ほっとけ



● 梓side

まずは澪先輩がおちた

ふふふ、いい気味です

……これは私の時代がきてますね

と思った矢先に

……ま、負けた…!?

私が?ははは、嘘!?

あれだけさっきからつきまくってたんだから、今回も……

紬「(ふふふ、梓ちゃん、あなたはすでに自分の勝負を運に任せてしまった……そんなものに勝利の女神は微笑まない)」

……っく!!

ムギ先輩がなぜ心の中で会話できてるか っていうのは置いておくとしても

……たしかに、私は運に身を任せてしまった

これでは勝てない……

ですが

梓「(次はありません!勝利の女神?そんなもの、はなからいりません。ただ唯先輩の微笑みは私がもらいます)」



● 律side

さてと、なんとか狙い通りの位置には座れたわけだが

……あー、あと一回勝てば、ムギの位置だったのになぁ

幸せオーラを振りまくムギをちらっと見る

……ほんと幸せそうだなぁ。わたしが勝ってたらああなってたのかなぁ

まぁ、そんなことを考えるだけ無駄なのはわかっているが

律「(あっ、そういえば準備、憂ちゃんにまかせっぱなしだった)」

「おーい、憂ちゃん、私も手伝うよー」

憂「いえっ、もうこれをもって行けば終わりですので、律さんはどうぞ座っていてください♪」

あぁ、なんていい子だ

天使の妹は天使なのだろうか

そして憂ちゃんが飲み物を持って、唯の隣に座った

唯「ほらっ、りっちゃん!鍋パーティの始まりだよっ!!開会の言葉をどうぞ」

…むっ、唯に求められては断るわけにはいかない

律「よっし、それじゃぁ、はじめるぞー」

唯「えぇ~、りっちゃんふつう~」

唯さんそんな期待しないでくだしゃい



● 紬side

うふふふ♪

唯ちゃんの隣♪唯ちゃんの隣♪

私今幸せです

唯「ふふ、なんかムギちゃん嬉しそうだねー」ニコッ

私、唯ちゃんの隣に座ることが夢だったの~♪

紬「うふふ、唯ちゃんの横だから、かな?」

唯「えへへ、照れますなぁ」

あぁああああ、もうもって帰りたい

斉藤に車の用意をさせて、このまま拉致してしまいたい

でも、唯ちゃんの悲しむ顔はみたくないから、それはできない

憂「どうぞ、飲み物です。はい、お姉ちゃんも」

紬「憂ちゃん、ありがとう」ニコッ

唯「ありがと~、うい~」

……あら、この匂いは

かすかな匂いを辿る

それは今渡されたグラスから来たものだ

唯「やった、ジュースだぁ」

憂「ふふ、おねえちゃん今日はいっぱいあるからたくさん飲んでね」

……いいえ、唯ちゃんこれはジュースじゃないわ

これは

紬「(お酒よ!!)」




● 澪side

あれ、なんだろうこのジュース……

……なんか……

澪「(おいしいけど、喉が熱い……)」

なんだろう、高いジュースなのかな

唯「わぁああああ、お肉だお肉!!」

そういいながら、鍋に肉を泳がせている唯はやはりかわいい

いや、ちょっとまってください唯さん

あなたマシュマロ鍋の発案者ですよね?

なんで、普通の鍋に夢中なんですか

……あぁ、でもかわいいからいいや

私もさりげなくあっちの鍋から取ってもばれないかなぁ?

いや、周りは敵だらけだしなぁ

律「あれ、澪。食が進んでないじゃん。しかたないなぁ、私がとってやるよ!!」

澪「ちょ、おい、おま……」

私の言葉など聞きもせず、私の器にゲテ物鍋を入れる律

そして

律「はい、おまちっ!!」

おいおいおい、ちょっとまて

なんだこれ……

なんでスープがこんな奇怪な色をしてるんだ?おい

……しかもところどころ茶色混ざってないか?

放置されたマシュマロの袋を見ると

……おい、それ中にチョコレート入ってるマシュマロじゃないかっ!!

律「おい、早く食えよ~、みお~」

うるさい、ちょっと黙ってろ

……あぁ、唯、私これを食べきるに力を……できれば愛を……

器を見ると、白くにごったスープに灰汁がういている……

そしてそのスープの中には白濁コーティングされた肉が……

律「もう、焦れったいから食わせてやるよ」

澪「おい、やめ、おい…………ああああああああああああああああああああああ」

口の中が甘い。

この感覚は、ご飯を食べた後にデザートを食べて、胃の中でシャッフルされた後、なにかの拍子でリバースした時の感覚に近い

……いや、駄目だ。顔に出すな……唯が見てるぞ……悟られるな

唯「どう、どう?澪ちゃん、味のほうは?」

澪「……いや、まぁ、うん、個性的な味だなぁ」

嘘ではない。

むしろ個性だしすぎて、ドン引きされるレベルの味だ

唯「やったぁ、私も食べ……」

――ビュン

――ボチャン

え?

憂「あ、ごめんおねえちゃん。マシュマロ鍋のほうにテレビのリモコン落としちゃった」テヘッ

えええええええええええ!?

今明らかに投げたよね。鍋めがけてホールインワンさせにいったよね?

紬「あぁ~、唯ちゃん、残念だけどこれはもう食べられないわ~」

唯「えー、楽しみにしてたのに~」ブゥ

憂「ごめんねー、おねえちゃん。また今度にしてね」

いや、よく考えれば憂ちゃんの行動は正しい

唯にこんなゲr……ゲテモノを食べさせるわけにはいかない

それにしても

澪「(私が食べる前にやってほしかった……)」

思いながら、見た私の器にはあの悲劇から奇跡的に生き残った残党たちがいた……


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最終更新:2010年12月23日 01:35