aces @Wiki内検索 / 「二章改訂前4」で検索した結果

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  • 二章改訂前4
    戻る 「本当に少ないな」 琴菜が不審気に首をかしげた。 神殿の前にいる見張りの魔物兵は僅かに六体のみ。 その後ろには力任せに破ったのであろうたくさんの瓦礫と、神殿の中へと続く破られた入り口がぽっかりと黒い穴をあけていた。神殿の中の様子はさすがに伺えない。 「中に数がいるかもしれない。注意だけは怠るな」 ルギネスの言葉に全員が頷いた。 息を潜め、気付かれずに近付けるギリギリの岩の陰からそっと様子を伺う。 「中と連絡をとってる様子は今のところないな……」 ルギネスの言うとおり油断しているのか魔物兵達は雑談に興じているようだ。 「なんか聞き取れる?」 岩の裏側で琴菜と共に剣を抜いたカサンドラがルギネスに問い掛ける。 しばらく聞き耳をたてた後、ルギネスが首を振った。 「さすがに遠すぎる。人間と発音も違うし明確には無理だ」 「そっか。どうせ口の動きでもわかんな...
  • 二章改訂前6
    戻る 水が再び戻ってきた狂喜がやっと落ち着いてきた住人達が、今度は水ではなく澪達を歓声をもって囲んだ。 「魔物兵たちを追い出してくれただけじゃなくて、水まで呼び戻してくれるなんて……!ありがとう!本当にありがとう!」 泣き笑いの表情で住人達がかわるがわる手を握りにきたり肩を叩きにくる。 上がる一方のテンションに困惑気味なのは澪と琴菜だけのようで、春日は嬉しそうに見知らぬ人間と踊り、ルギネスとカサンドラは不思議なほどあたりまえに感謝を受けたり今までの苦労を労ったりしている。 「なんだか凄いな……」 未だ怪我人のためにくるくる働くエレンと拝まれているジルコンとサファイアを目の端に入れながら琴菜がつぶやき、澪が頷いた。 人々の喜びのエネルギーが心地よく、二人はゆったりとあたりを眺めた。 月明かりの下水飛沫が踊り、水路の流れがさらさらと音を奏でる。 ごちそうもなければ...
  • 二章改訂前5
    戻る 「おはようございます、ジルコン。――本当にお久しぶりです」 サファイアと呼ばれた石精霊が、その姿に相応しい天使のような微笑を浮かべる。 そして音をたてることもなく、優雅に地面へと降り立った。ふわりと空気が波紋を描く。 誰一人動けぬ中で、ジルコンが親しげな笑みを浮かべながらゆっくりと近づいていった。 「ほんとに。なかなか答えてくれないから心配したよ」 「神殿に入ってきてからの気配は感じられてはいたのですが……お答えできなくてすみません」 涼やかな音色を背景に穏やかに会話を交わす二人の精霊。それを呆けたように見ていた精霊使いの男がふいに口角を上げて顔を歪めた。 「素晴らしい! 予想以上だ……」 震える声が厳かな空気を壊す耳障りな音、それを呟いた男に視線が集まる。サファイアが形の良い眉を顰め、ジルコンが大げさに首をすくめた。 男はそれに構わず、歪んだ笑みを浮...
  • Main Story Ⅱ-14
    Back to Ⅱ-13 第二章 第十四節 閉鎖されたままの街にたどり着いたのは日も落ち夕闇が辺りを支配し始めた頃だった。 さらさらと水の流れる音を聞きながら、いまだ湖底に沈んだままの桟橋から街へと続く石垣をよじ登る。 薄暗い中もたれかかった石垣に濡れたような感触を覚えて、澪はついた手を引っ込めた。隣を見れば琴菜も同じように怪訝な顔をしている。 「なに……?水?」 「水路から水が溢れているんです。偵察に来た方々も驚いてらっしゃいました」 身軽に石垣を登り手を差し伸べたエレンが頭上で言う。 足場の悪さに閉口しつつ石垣の上に立つ。わずかに山の端から顔を出した月の光に照らされた街は、さらさらと心地よい音をたてる水の流れに洗われて侵しがたい聖域のように見えた。 魔物兵たちの再度の攻撃を恐れているのか、住民たちは街に留まらずその周辺で未だに野宿してい...
  • Main Story Ⅱ-9
    Back to Ⅱ-8 第二章 第九節 翌朝、戦闘準備を整えてヴェルギリウスの畔までやってきた琴菜と澪が驚きの声をあげた。 「……広いな」 畔の木の陰から見るヴェルギリウスは辛うじて対岸が見えるが非常に広く深く、想像した「湖」の大きさを遥かに越えていた。 水を湛えていない湖はまるで大きなクレーターのようで、枯れた水草達が地面にへばりついていた。 少し生臭い匂い。落ちているゴミのようなものは魚や水辺の生き物の変わり果てた姿だろうか。 その中心にひっそりと聳える神殿が小さく見える。 「うーん……思ったより見晴らしがいいなぁ」 「しかしここからだと数の把握も難しそうだ」 いつの間にか隣に立っていたカサンドラとルギネスが呟く。 町から離れた林の間から見ると神殿のある中州がなだらかな丘になっていて、その裾野に天幕が張ってあるのが遠くに見える。 ...
  • Main Story Ⅱ-7
    Back to Ⅱ-6 第二章 第七節 「ジルコンさん、ここはもう近いんですよね?ある程度の場所はわからないんですか?」 エレンが問いかけた。 「やっぱりヴェルギリウスだと思うよ……この気配は『サファイヤ』っておねーさんだってこともなんとなくは」 ジルコンが民家の壁にもたれ掛りながら腕を組む。 「すごく広いんだよね、ヴェルギリウス。……でも少なくともサフのいる場所にもこいつら、いると思うよ。それが目印になるかも」 カサンドラが忌々しげに死体を数えながらぼやいた。 「そりゃここがこれだけ手薄だからなぁ……いるとしたら本隊さんだな。やだやだ」 「そのサファイヤっていうのは大丈夫なのか……?」 澪の問いかけにジルコンが自信をもって頷いた。 「それは大丈夫。保障するよ」 その時馬車の方から大慌てて春日と琴菜が戻ってきた。 「どうしました?」 ...
  • Main Story Ⅱ-8
    Back to Ⅱ-7 第二章 第八節 荷馬車の中ではエレンが澪と琴菜に手伝わせながら怪我人の世話をしていた。 商人は腕を折ったのと頭を打って気を失っていた以外は幸いにも怪我はないようだ。 折られた右腕は元通りに固定され、ぶつけた頭と額に絞った布を当てられている。 微かに瞼が動いて、青い瞳が開いた。 「おじさんっ大丈夫!?」 すがりついて揺さぶろうとする春日を慌てて引き留めると琴菜は外から覗き込んでいる三人に頷いて見せる。 「命に別状はないらしい」 「気分はいかがですか?」 エレンの柔らかい声に商人は微かに頷いてみせる。 そばで救急箱を片付けていた澪は静かに外に出るとルギネス達に話しかけた。 「これから、どうするんだ?」 「湖の中州にある神殿に石精霊がいるらしい」 「ただ、周りには魔物兵がいるって」 面倒だなぁ、とカサンドラは眉...
  • Main Story Ⅱ-3
    Back to Ⅱ-2 第二章 第三節 深い轍に車輪をとられながら、小さい荷馬車と四騎は疾走する。 「ななななななんでいそぐのっ!?……きゃんっ!!」 「今喋らないで下さいっ舌噛みますよっ!」 轍や馬の足跡を見てから、ルギネスはいつにも増して険しい目つきになり先を急がせた。 「どういうことだ?」 「……軍馬が通った跡があった。複数の人の足跡は逆向きだった。湖岸にある『パッペ』の住民があの土地から離れてるんだ」 「水が涸れたせいもあるんだろうけど。魔物とか盗賊とかのせいかも。どっちにしろ……今夜の宿が無い」 「……そっちをっ……重要視っ……してないか!?」 慣れない馬に揺さぶられながら琴菜も必死についていく。 陽が真上から少し傾いた頃、ヴェルトロの城壁に似た背の高い建物の前に辿り着いた。 城門は開けることが出来なくなっていて、すぐ脇...
  • Main Story Ⅱ-2
    Back to Ⅱ-1 第二章 第二節 「明日から少し、移動ペースを上げようと思う」 ぱちぱちと小さく焚き火の音が響く中、ルギネスが思案顔で言った。 「コトナは慣れていないから道中きついかもしれないが頼む」 急に片方だけの視線を向けられて、エレンと共に食事の準備をしていた琴菜が慌てて首を振った。 「あ、あぁ気にしないでくれ。湖が枯れるなんてよっぽどの事だろうし」 「ヴェルギリウス周辺は水の恩恵の街ですから心配ですね……。いくらなんでも完全に枯れてるとは思いたくないですが、水車は大丈夫でしょうか」 ゆっくりとスープをかき混ぜていたエレンも顔を曇らせる。なんとなしに剣を触っていたカサンドラが答えるように頷いた。 「雨もそれなりに降ってた。と言っても降らなくてもそんな簡単に干上がる量じゃないし……。水ありすぎるのも困るけど無いのも困るよなー」 「ええ……...
  • Main Story Ⅱ-4
    Back to Ⅱ-3 第二章 第四節 息を整えるように、深呼吸。感じられない風を孕んで、濃紺の髪が揺れた。 『土を生じ、木を剋す。火行發令。我が声、我が言葉、我が言の葉に応じよ。急々如律令勅、勅令である』 滑らかに紡ぎ出された言葉が言霊を宿す。絶大なる言霊はその力を具現化していく。 盛大な爆発音と共に熱風が吹き付け……目の前にそびえ立っていたはずの扉はブスブスと黒煙を上げて燃え落ちていた。 「……行くぞ」 焼け落ちた扉を呆然と見つめていたルギネス達が澪の声にはっと我に返る。 走り出した澪を追うように全員が走り出した。 それに気づいたエレンが軽やかに城門から飛び降りる。 自分の体の数倍の距離から落ちたにも関わらず、着地姿勢には一切の乱れを感じさせないまま駆け出した。 「すっげー、魔法かぁ!もっと早く言っとけよな」 ひゅうと口笛を吹いて...
  • Main Story Ⅱ-6
    Back to Ⅱ-5 第二章 第六節 魔物兵達はエレンの鞭に捕らわれて息も絶え絶えの一体を除き斃されたようだ。 エレンの指示で春日が馬車へと救急セットを取りに走り、一人で行かせるのが不安になったらしい琴菜がそれに続いた。 「三人いたけど……だめだ」 近くを軽く見回ったカサンドラが首を振る。 水の無い水路に赤い液体が僅かに溜まっている。 エレンと澪が痛々しげに目を伏せ、ルギネスが悔しさを滲ませて捕らわれた魔物兵を睨み付けた。 「……お前達もここが石精霊の居場所と知って来たんだろう。何処だ?」 魔物兵が赤く濁った視界でルギネスを弱弱しく見上げた。 ルギネスの視線は何処までも冷ややかに魔物兵に向けられている。 「ハッ……シったところで……おマエらにもムリだ……」 精一杯の虚勢をはって魔物兵が悪態をついた。 「無理かどうかは知ってから決める。...
  • Main Story Ⅱ-5
    Back to Ⅱ-4 第二章 第五節『湖畔の狂想曲』 またしても大振りの戦斧の一撃を横に飛び退いて避ける。 固まっていては避けにくくてしょうがないので出来るだけ仲間から離れる。 最初の一撃で馬鹿力なのは承知していたので愛用の長剣で受けることは考えない。 カサンドラは不敵に笑いながら相手の隙を窺う。 どちらかというと隙は作る方なのであまり得意ではない。だが、いつものように戦っていては疲れからこちらに隙が出来てしまう。 「……俺、あんまり忍耐強くないんだよなぁ……」 訓練されているのかなかなか隙を見せない魔物兵に、焦りを軽口で誤魔化しながら強烈な一撃を右に左に避け続ける。 交錯する一瞬に斬りつけてみるが分厚い装甲の鎧に阻まれて思うようにダメージを与えられない。 「ムダだ、スナオにシぬの、イチバンラク」 笑いを含んだ獣の声と共に薙ぎ払ってくるのをし...
  • Main Story Ⅱ-13
    Back to Ⅱ-12 第二章 第十三節 細い水路に流れる水量が流れ始めた頃と比べて急速に増え始めていた。 水路から溢れ出した水が靴を濡らす。 気付いたカサンドラが声にならない悲鳴をあげ、気配を探るような表情をしていたサファイアがハッと僅かに身長の高いジルコンを見上げた。 「先程、外で何かしました?」 「……なんで?」 「湖の水源は、封印が破られる以前はこの神殿の真下にありましたが今は枯渇しています。この地下祭壇は石組みで水量を調節していたので人も入れましたが、でもこれは……」 「一体、何が……」 ルギネスが先を促そうとする声は石造りの壁に反響した、耳障りな笑い声にかき消された。 全身に浮かび上がる文様からパタパタと赤い雫が散り、水面に波紋を描く。 狂ったように笑い続ける男のまわりを、今にもかき消えそうな光がいくつか飛び交っていた...
  • Main Story Ⅱ-1
    Back to Ⅰ-15 第二章 第一節 見えていること、見えていないこと。 気付く、新しい世界。 何も変わってはいないのに。 今すぐ君に、会いたくなった。 それでも、今は。 あそこではないどこかへ。 大事なものの無いどこかへ。 せめて、何かが変わるまで。 『閉ざされた水の街』 穏やかな気候の中、軽やかな足取りで馬は進む。緑の多い景色と暖かな日差しに包まれていれば自然と心も弾んだ。 特に春日は何を見ても興味をもつらしくいちいち馬車を降りたがり、エレンを少々困らせていた。 「ねぇ今何かそこで動いたよー!」 「あら、本当ですね。一体なんでしょう?って……あぁっあまり乗り出したら危ないです!」 「あっあっちも!」 騒がしい馬車を微笑ましさ半分、呆れ半分で見やりながら琴菜が笑う。 「こら春日、あんまり迷惑かけるな……子供じゃあるまいし」 ...
  • Main Story Ⅱ-10
    Back to Ⅱ-9 第二章 第十節 結局、カムフラージュになるかと身を覆っていた深い緑色のマントを湿った地面に敷いて一晩を明かした。 すぐそばに魔物兵がいるということもあって春日以外一睡も出来なかった。 しかし、物陰に隠れているとはいえすぐそばにあるはずの陣からは物音一つしていない。 朝日がようやく一条の光を放った頃、大胆にもテントに近づいていったカサンドラは昨日とは打って変わって足音一つ立てずに戻ってきた。 「本隊にしては数が少なかった。町に出払ってんのかな?」 「……いや、奴らの目当てが石精霊なら、わざわざ多数が町にいる必要は無いだろう。何かあったのか?」 「人数は少なかった、って町の人は言ってたよな」 琴菜が呟くとカサンドラはそうだっけ?と惚けてみせる。 「昨日街にいた魔物兵、随分訓練されていた。なぜかはわからないがいるとしたら精鋭だろう...
  • Main Story Ⅱ-12
    Back to Ⅱ-11 第二章 第十二節『矢車菊色の天使』 繊細な硝子細工が崩れたような音がした。 呆然と立ちすくむ男や澪達を尻目に、ステンドグラスのような羽根を広げたジルコンは薄く笑みを浮かべた。 「久しぶり。おはよう、サファイア」 祭壇に安置されていた大粒のサファイアを覆うように人影が浮かび始める。 幾重にも細い金細工で飾られた細い足首。 細くしなやかな腰と足首まで覆う幾重もの薄布は、一枚一枚に濃淡の差がある青。 大きく肩の開いたゆったりした青い布地の間からのぞく、白く細い腕にも細い金細工が飾られている。 細い首筋の先に見える耳は先が少し尖っている。耳たぶを飾る金と青い石の耳飾りや、手足の飾りが巻き上がる風で涼やかに鳴る。 舞い上がる髪は、絹糸のように細く艶やかな青。真ん中で分けた前髪の付け根には一際美しく輝くスター・サファイア。 ...
  • Main Story Ⅱ-11
    Back to Ⅱ-10 第二章 第十一節 「レイ、前触れ無しにあぁいうの、やめない?」 「…………」 静かに怒りを発しているカサンドラの足元で澪は、乱れた呼吸を何とか戻そうとしていた。 「澪、大丈夫か?」 「れいちゃん、お水飲む?」 けろりとした琴菜と先程まで肩で息をしていた春日が俯いた顔を覗き込む。 「……だめだねー、反応無し」 「こんな側にいるのに?」 「存在自体気付いてないかも。さっき外で色々やったけど反応なかったし」 神殿を入ってすぐに広い空間があった。 外観は灰色がかった白だったその建物の中は、壁や床、等間隔に並ぶ柱や高い天井までくすんだ青の石造りだった。 壁際にそって浅い溝が掘られ、柱と同じ間隔で目線の高さに流れる水のような曲線を描く彫刻の飾りがついている。 柱の根本や中程、天井との境目も同じような彫刻で飾られているが、...
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