その心は闇を払う銀の剣
絶望と悲しみの海から生まれでて
戦友達の作った血の池で
涙で編んだ鎖を引き
悲しみで鍛えられた軍刀を振るう
どこかの誰かの未来のために
地に希望を 天に夢を取り戻そう
われらは そう 戦うために生まれてきた
エピローグ 「果てのない闘い ~どこかの誰かの未来のために~」
――13が失踪してから、2ヶ月後…
ここは上空1万メートル…何者にも縛られない音速の世界…
俺の名は「パトリック・コーラサワー」AMS空軍のエースで、通称不死身の男だ。
しかし、そんなエース様でも、当番制の哨戒任務は免除されない…
まったく、戦闘機のエースパイロットと言えば、もっと敬われるべきだろう。
そもそも…
戦闘機を操縦しているというのに、思考の海に埋没するパイロット。
通常ならば、墜落してもおかしくないが、外から見る分にはそんな危険性はまったくない。
彼はたしかに、エースと名乗れる腕前はあるが、良くも悪くもバカであった。
ふとレーダーを確認すると、光点がある。
シグナルを確認するが、身元不明…所属不明機である。
―こんな、AMS基地の間近まで接近するとは命が惜しくねぇのか?―
そんな疑問が出てくるが、まずは確認しないと後々問題になる…
オープンチャンネルで、相手に呼びかける。
「こちら、AMS航空戦闘軍、第7戦闘航空団所属、パトリック・コーラサワー少尉だ
貴官のフライトスケジュールの目的を教えてもらいたい」
定型文を送ってみるが、返事は一切なし。それどころかより一層こちらに、つまりは
基地に近づいてくる。
無反応ならば、打ち落としても問題ねぇよな…そもそも、それが今の俺の任務だ。
そう考え、管制室に連絡を入れる。
「こちらパトリック、所属不明機を発見、広域回線で呼びかけるも返答なし
撃墜行動に移る。許可を求めたい」
「こちら管制室、不明機を確認できました。撃墜を許可します。」
よし、許可が出た。その言葉を聞いた瞬間に、エンジン出力を上げ、不明機に接近する。
しかし、肉眼で確認できるほど近づいたとき、パトリックは自身の目を疑った。
そのとき彼の眼に映った飛行体は…
待て待て待てッ!何だありぁあ? UFOなのか?
あまりの衝撃にファーストアタックで攻撃するのも忘れている。
が、そこは歴戦の軍人である。目標が何であれ、撃墜指示が出ている。
撃墜した後は、もっと偉い人が考えるだろう…
そう思い、大きく旋回し目標にロックオンする。次いで、ミサイルを発射
見事、一発で命中しUFOは煙を上げて墜落していく。
その後、基地に戻ったパトリックは知合いにUFOを撃墜したと話たが、
だれ一人として信じず、脳のバカさ加減が危険域に到達したか…と呆れられるだけであった。
「おお~~!!地球の重力にココロ惹かれるぅ~!!」
墜落するUFOを器用に操りながら、叫んでみる。うん、状況は変わらない…
もはや、墜落するのは時間の問題…耐ショック体勢でも取っていたほうが良いのだが…
墜落予想地点に軍の部隊が展開している。しかもAMSには見えないときた。
そんな訳で、無理やり制御しているのだが、ミサイルの当たり所が良かったのか
まったくもってUFOは言うことを聞かない。
ダメだ…墜落する
ドーーーーーーーン
グゥゥゥゥ
なんとか、意識を失わずにすんだようだ。それというのも新しい着ぐるみのおかげだろう。
今度のは丈夫である。
などと思いつつ、体調チェックをする。胸にはまだ新しい大きな銃創が出来ている。
あの銃弾で撃たれた後、レールガンの衝撃で壁際まで吹き飛ばされた。
そのまま、死を待つだけであったが、飛ばされた位置が良かったため
我輩は最後の賭けに出ることができた…
飛ばされた場所には、最初にはじき飛ばされたアンプル銃が落ちていた。
中身は青い薬…体内のナノマシンを狂わせる効果がある。
赤い薬にも、補助としてナノマシンが入っているので、うまくいけば、助かると判断したが
うまくいってよかった。おそらく、胸に受けた銃撃で、血が少なくなった分
薬の効能が弱まっていたのだろう。貧血で死ぬ前に意識が戻ったのも運が良かった。
しかし、この状況、墜落のショックで宇宙船の外装が壊れ
我輩の体に乗っているため身動きが取れない…
まあ、地上に居た見知らぬ部隊がここに来るだろう。
初めて墜落した時も、いきなり殺されることはなかったから、今は救助を待つとしよう。
―――――………
外が騒がしくなってきたな…ガチャガチャと何か移動させる音も聞こえる。
ようやく回収作業が始まったか。さて、いつごろ助かるか…
そう考えていると、その時は案外早くきた。
「なッ!なんだコイツは!?」
銃を構えている男がそう、叫んだ。ヒドイな、新しい着ぐるみは
もふもふの可愛らしい
首輪付きだというのに…
その軍服を確認すると…RHSという文字が入っている。
…聞いたことのない部隊だな、さて、どうすべきか…
と後方に見知った顔を見つけた…ッが、その表情はこちらは見て興奮している。
何か嫌な予感がするが、あちらは眼が合ったことに気づいたようだ。
恐ろしい勢いでこちらに向かってきた。そしてそのまま無言でダイブして抱きついてきた。
「結城ッ!!コイツをRHSで飼うぞッ!!」
飼うって…未確認生物をいきなり飼う気ですか?ガルシア中尉…
「う~ん、それは良いけど、伝染病に注意しないといけないな」
我が友が答えるが…注意すべきところはそこなのか…?
仕方ない、ここは一つ、我輩がビシッと一発ツッコンでやろう。
「私を飼うならば…ご飯はコシヒカリを要求するッ!!」
ここから先の物語は…今も何処かで続いている。
どこかの誰かの未来のために
それは子供の頃に信じた夢
誰もが笑う夢の話
でも私は笑わない 私は信じられる
あなたの言葉を覚えているから
あなたの差し出す手を取って
わたしも一緒に駆けあがろう
幾千万の私とあなたで
あの戦争に打ち勝とう
どこかの誰かの未来のために
Fin
最終更新:2012年04月18日 21:47