番外編

 大楠 優也のとある一日

やわらかな朝の日差しが部屋を包み、小鳥の囀りを耳にしながら私「大楠 優也」は目を覚ました。
(時計を気にせず睡眠が取れるのもずいぶんと久しぶりだな・・・)なんて思いながら、ゆっくりと身体を起こし寝室を後にした。

大楠 優也
26歳 男
職業 操縦士





・・・独身

それが私のプロフィールだ。

朝はパン食と決めている。・・・作ってくれる人などいないがな。
いつものようにトースターをセットし、焼けるのを待つ間湯を沸かす。・・・今日はアールグレイにしよう。
手早くベーコンと卵を炒めていると、パンの焼ける良い香りが漂ってきた。
・・・よし、できた。

紅茶の豊かな香りを楽しむ、優雅な朝食の時間。
つい最近まで、アクロチーム“SOG A分遣隊”の部長として世界を飛び回っていた。
帰国してからも取材やらなんやらで忙しく、1ヶ月が過ぎようとした昨日、ようやく1週間の休暇をもらえた。
確かに、にぎやかで充実した毎日を過ごしていたが・・・ゆっくり静かに休むのは大切だな。

ふと、某海軍大佐(そういえば准将に昇進したって言ってたか・・・)とその奥さんの顔が思い浮かんだが・・・
・・・寂しくなどない。



うん。寂しくなんか無いやい。



この気持ちを紛らわせてくれるのは僕の天使「女子アナのさきちゃん」だけだ。
テレビを点け、お気に入りのチャンネルに変える。
この時間なら、まだ朝のニュース番組に出ているはずだ。


・・・あぁ、やっぱりかわいいなぁ。
この声、この笑顔・・・癒される(ような気がする)
・・・と、急に画面が切り替わった

「おいっ!俺の癒しタイムの邪魔をするなよっ!?」
テレビに悪態ついてもしょうがないが、つい口を出てくる。

『ここで、臨時ニュースをお伝えします。国内航空会社大手、「エア・トラスト・コミューター」が事実上倒産しました。
同社は国内30%ほどのシェアを持つ大手航空会社で、先ほど東京地裁に会社更生法の適用を申請。記者会見については、まだ情報が入っておりません。
最近はアクロバット飛行による広報戦略も行っており、資料によりますと黒字経営を前面に謳っていて、粉飾決算の疑いもあるとして
東京地検特捜部が捜査に乗り出す方針だということです』



えっ









えぇっ!?



頭が理解することを拒否したのか、状況が把握できない。
えっ?うちが倒産?へっ????
頭の上にいくつものクエスチョンマークが浮かび、思考能力が著しく低下する。

そして鳴り響く電話・・・
『部長!一体どういうことなんですか!?』
「知るかっ!俺だって今知ったんだぞ!」


------------------
鳴り止まない、電
        第
        三
話      話
------------------

いや、そんなことをしている暇も無い。
とりあえず、現状の把握に努めなければ・・・


記者会見がテレビで放送され、大体の状況はつかめてきた。
・・・もっとも、部長職にある私にすら電話での説明が無いことを考えると、まだごった返しているんだろうがな。

要約すると
『首脳陣辞めます。ちょっと帳簿ちょろまかしてました。リストラします。アクロとかもうしません。ごめーんね』
って感じだ。

なんてことだ。・・・しかし、どうすることもできん。
夜遅くに、会社からの一斉業務連絡メールで“1週間後、アクロ部門に対する説明会を開きます。それまで待機してください”とあったので、それまで待つか・・・


説明会は混乱を極めた。
飛び交う怒号、嗚咽・・・結果として、およそ4割の人間のリストラが敢行されることとなり、年齢、勤務態度等勘案し書面で通知するとのことだった。
特に、我々アクロ部門については廃止。他の部署に転属させられることとなるが・・・厳しい状況だろうな。
もちろん「早期希望退職者については退職金を払う」と脅した上で、だ。

・・・最後に私だけ残るよう指示された。
「なぜ、残したのかもう予想はついてるだろう?」
脂ぎったおっさん(新社長)に話しかけられ、説明会でのストレスも相まって堪忍袋の緒はぶち切れ寸前だ。
「・・・さっぱりわかりませんな」

するとどうだ。
「ふっ・・・」と鼻で笑った挙句、人を見下すように胸を張り
「そうか・・・君ならわかってくれると思ったんだが、こちらの思い違いだったようだ」
心底こちらを小馬鹿にしたような表情で言ってくるあたり、この男の小ささが見て取れる。
・・・なるほど、前任者が俺のことを気に入ってたのが気に食わないのか。

「君も部長職にあり、責任者でもある。・・・たしかに君自身に直接の責任は無かったのかもしれないが、アクロチームにより経営が更に悪化したのも事実だ。
・・・故に、君には責任を取って辞めてもらわないと株主たちに説明ができんのだよ。もちろん退職金は支給しよう・・・わかってくれるな?」

確かに言っている事もわかるが、感情的に納得できん。が、しかし・・・
たっぷりと考えた後、ヤツの目をまっすぐ捉えてこう言ってやった。

「えぇ、企業ですからね。仕方ありません。サラリーマンとしては上の指示に従うだけですよ。今までお世話になりました」
この上司の下では、遅かれ早かれ決別することになっただろう。むしろ清々するわ。
自分もまだ若い。既にこの会社に対する未練は無かった。

家に帰り、紅茶を飲みながら思考を整理する。
・・・あの会社に対する未練はない。しかし、空に対するこの思いは尽きることが無い。
「自由に空を飛びたい」
あいつもこういう思いだったのかな・・・

・・・ん?あいつ!?

こうしちゃいられない。
部屋を見渡す・・・ダンボール何箱だ?家電は・・・捨てていこう。
さぁ、引越しで忙しくなるぞっ!
・・・とその前に電話しなきゃ。

『はい、○○○本部 募集担当です』
「もしもし、入隊希望なんですが・・・」

そう、こうして俺は新しい人生をスタートさせた。気分はまさに「A transfer (転校生)」だ!



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大楠君の電話した先は・・・


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最終更新:2012年05月07日 20:20