第一章 転戦-James




16:48 January 27,2012
Capt. James I. "Flare" Martin
Over the Yellow Sea



「おい見ろ!あのA-10、翼の先っぽが吹っ飛んだぞ!」
Ray、今は他人の心配をしてる場合じゃない!」
『敵弾が命中、左翼の先がやられました!』
「こちらBlaze1、大丈夫か! 
あとはFA-18Eに任せて、一度撤退したらどうだ!」
『了解、撤退します!』
「墜ちるなよ!」

「・・・なんだ、結局心配してるじゃないか。」
「黙って火器管制に集中しろ!」
「はいはい。
レーダーに反応あり。35/7 ALT 11、敵機3機!」
「サイドワインダーを発射する!
FOX2!」

『Blaze1が敵機を撃墜!』
『よくやった!』
「しかしまだまだ数は減らないな。UNJMFはまだなのか?」
『今そちらへ向かってくれています。間もなく到着する、とのことです。』
「さっきからずっとそれじゃないか!奴らやる気あんのか?」
『Flare、あいつらが到着したら今までの分までしっかり働いてもらうことにしようぜ。』
「言われなくたってそのつもりだ!」

*****

なぜ、こんなところで戦うことになったのだろうか。

その大きな理由の一つには、「ビッグバン」の存在がある。

ビッグバンは元々、大国には見向きもされないような、中米の小さなテロ組織だった。
その元々の目的は「ラテンアメリカ諸国の統一」。
世界の完全掌握という野望を抱いていたアメリカ前大統領は、中南米の支配力を強めようとこのテロ組織に目を付け、資金援助を始めた。
半年ほどでビッグバンは小国を優に超える軍事力を持つようになったが、大統領との関係は完全に秘匿され、「謎の組織」として国際的に報道された。

その後、大統領が野望を見破られて拘束された後も勢いは衰えず、軍事力は更に増した。

しかし、米特殊作戦軍の要請を受けた民間軍事企業AMSによって行われた強襲作戦"Operaton Nighthawk's Growl"により、本拠地のキューバ・サンクリストーバルの基地が大打撃を受ける。その直後、一部のメンバーが報復としてパナマのAMS基地を襲撃、占領したが、すぐに反撃を受け壊滅した。

当初の目的を見失い始めたビッグバンの幹部は、組織の存続のため世界各地に飛んだ。
彼らは各地のテロ組織や軍の過激派にとある働きかけを行った。勢いは衰えてきたものの、一時は世界最大の非正規軍事組織となったビッグバン。その幹部の言葉に従う者は多かった。

その結果、中国や北朝鮮、ロシアなどの軍の一部、世界中のテロ組織が一斉に蜂起した。小国は自国の軍のみで対応出来ず、国連安全保障理事会はPKFの派遣を決定。PKFは「UNJF(United Nations Joint Forces)」と名付けられた。

AMSもUNJFの一員として世界各地に派遣され、そのためにFlare達もこうして戦っているのだ。

*****


09:12 January 28,2012
Capt. James I. "Flare" Martin
The northeastern part of North Korea


『Sentry2よりBlaze1へ、目標まであと22マイル……21マイル……
もうすぐOscar2に追いつきます。』
「了解。
Blaze1よりOscar2へ。3機のF-15Eで飛行中、6発のHARMで攻撃する。命中の確認を頼む。どうぞ。」
『Oscar2了解。目標を破壊してくれ。』
「よし、発射する。FOX3、FOX3!」
『…命中、命中。目標の破壊を確認。支援に感謝する。』
「了解。離脱する。
幸運を!」

編隊飛行しているMH-6リトルバードの下をくぐり抜け、左へ旋回する。
今回の任務はレーダーの破壊とヘリコプター・歩兵の援護だ。本来なら別の部隊が担当する予定だったが、数日前にいきなり部隊の配置が変更され、この任務も任されることとなった。


『先週は38度線の方で戦っていたのに今日はこっちか、少し休ませて欲しいよ。』
Blaze4、"Heat"が愚痴を言う。
「仕方ないさ、これが俺達の仕事なんだ。今はUNJAFの指揮下に入っているけど、金を貰っていることに変わりはない。」
後ろに座っている"Ray"が口を開いた。長年同じ戦闘機に乗ってきた相棒だ。
その正確な火器管制、冷静な判断には何度も助けられた。彼が居なかったら、俺は今ここに居なかっただろうと思う。


『All Blaze、こちらOverload。航空支援の要請だ。レーザーで指定された地点にJDAMを投下してくれ。』
「了解した。すぐに向かう。」

今日は靄があり、いつもより少しだけ視界が効かないが、作戦は順調に進んでいる。歩兵部隊の侵入も成功したようだ。
さっさと終わらせて帰れそうだな。

『Blaze1、目標地点まであと少しです。速度を出しすぎています、少し減速して下さい。』
「了解。」
指示に従い、速度を落とし始めたとき、後ろから声がした。
「ん?これは…
Flare、旋回しろ!右だ!」
「何だと?」
「早く!」
目的を理解出来ないまま、操縦桿を目一杯倒して右に旋回する。
身体に大きな圧力がかかる。

「もう…いいぞ。」
「ゲホッ…
Ray、一体何が起こったんだ?」
「他所のヘリと接触しそうになったんだよ。間一髪のところで避けられた。恐らくイギリス陸軍だな。」
「なぜあの高度にいる?あそこはこちら側の飛行空域になっていた筈だ!」
「そんなこと俺に聞かれても分からないよ。それぞれの司令部の間の情報伝達がうまく行われていないとか、そういうことだろう。」

UNJFは名前の通り、各国の軍や民間軍事企業などが統合されて成り立っている。
言語も練度も装備も異なるそれぞれの組織をまとめ、組織的に動かすのは困難この上なく、どうしてもエラーが起きてしまう。そしてそれによって大変な目に遭うのは、決まって前線で戦う奴ら。今のがそのいい例だ。

『こちらSentry2、Blaze1、大丈夫ですか!』
「ああ、何とか大丈夫だ。あいつらと一緒に地獄行きなんて御免だからな。」
『すみません、こちらの不備で…。この間のブリーフィングでそれぞれの飛行空域を何度も確認しておいた筈なんですが…』
「いいんだ、お前のミスじゃない。
それより航空支援はどうなった?」
『はい、Blaze4が行ってくれたようです。』
「Oh,気が利くじゃないか。では、この後はどうすればいい?」
『新たな支援要請が出されるまで暫く待機していて下さい。』
「了解だ。」

「またお前に助けられたな、Ray。ありがとう。」
「何を今更、これは俺の務めだ。礼はいらないとこれまで何十回も言ってきただろう。」
「そうだったな。分かった、言い直そう。
これからも宜しく頼む、Ray。」
「もちろんさ。こちらこそ、な。」

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最終更新:2012年05月10日 22:09