網迫の電子テキスト乞校正@Wiki内検索 / 「外村繁「最上川」」で検索した結果

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  • 亀井勝一郎「中尊寺」
                            せきやま  平泉の駅から北へ約八丁の道を行くと、中尊寺のある関山の麓に達する。さほど高くはない が、相当に嶮しそうな一大丘陵で、その全体が寺域となっている。麓から本坊への登り道は、月 見坂と呼ばれ、かなりの急坂だ。全山を蔽うのは鬱蒼たる数丈の杉の巨木、根もとには熊笹が繁 り、深山へわけ入った感が深い。天狗が出て来そうな風景である。彼岸には大雪が降ったとい う。私の出かけたのは数日後だが、快晴にもかかわらず至るところ残雪があり、道もまだ凍りつ いていた。  急坂を登りつめて稍ー平坦になったところに、昔の仁王門の址がある。その傍に東の物見がある が、ここへ来て、眼前に突如として展けた広漠たる風景に驚いた。平泉の東北方深く、一望のも                                     たはしねやま とに眺められるのである。稲株の...
  • 国木田独歩「節操」
    「房、奥様の出る時何とか言つたかい。」と佐山銀之助は茶の間に入ると直ぐ訊いた。 「今日は講習會から後藤|樣≪さん≫へ一寸廻るから少し遲くなると|被仰≪おつしや≫いました。」 「飯を|食≪くは≫せろー」と銀之助は|忌々≪いま/\≫しさうに言つて、白布の|覆≪か≫けてある長方形の食卓の前にドツカと坐わつた。  女中の房は手早く燗瓶を銅壺に入れ、食卓の布を除つた。そして更に卓上の食品を彼處此處と置き直して心配さうに主人の樣子をうかゞつた。  銀之助は外套も脱がないで兩臂を食卓に突いたまゝ眼を閉ぢて居る。 「お衣服《めし》をお着更になつてから召上つたら如何で御座います。」と房は主人の窮屈さうな樣子を見て、恐る/\言つた。御機嫌を取る積りでもあつた。何故主人が不機嫌であるかも略ぼ知つて居るので、 「面倒臭い此儘で食ふ、お燗は|最早可≪もうい≫いだらう。」  房は燗瓶を揚げて直ぐ酌をした。銀之助は會社...
  • 佐藤春夫訳「徒然草」百五十一
     ある人の説に、年五十になるまでに熟達しなかった道は廃棄すべきである。その理由は、励み習うべき将来もなく、老人のすることは他人も笑うことができない。衆にまじっているのは愛想のつきる不体裁である。総体に年を取った人は万事を放擲して閑散に処するのが似つかわしくて好もしい。世俗のことに関与して生涯を齷齪《あくせく》と暮すのは愚である。ゆかしくて覚えたいと思う芸があったら、学び聞くとしても日とおり趣がわかったらあまり深入りしないでやめたほうがよい。無論、最初からそんなことを思いつかずにすんだら最上である。
  • 佐藤春夫訳「徒然草」二百四十二
     いつまでもあるいは逆境、あるいは順境に処して、それに支配されるのは専ら苦楽のためである。楽は好ましく愛するの意である。好み愛するものを求める情はいつまでたっても止まぬ。無際限なものである。人の楽欲するところは、第二に名誉である。名誉のうちに二種類、行為に関するもの、才能芸術に関するもの二つ。楽欲の第二は色慾である。その第三は飲食物に対する慾である。いっさいの欲望はこの三つをもって最上とする。この三つはいずれも人間の本性に違背した心から発しているの燐丶それには多かれ少かれ、煩悶を伴う。求めないのが最もいい。
  • 小倉金之助「荷風文学と私」
     私のような自然科学方面の老人が、荷風の文学について語るのは、はなはだ僣越のように思われよう。けれども私は、青春時代における人生の危機を、荷風の小説を力として切りぬけた、とも言えなくないのであって、荷風に負うところ大なるものがあると、衷心から信じている。それで今ここに、主としてその事実について、ありのままに述べて見たいのである。尤もそれは、今から四十年ばかりも前のことで、その当時の私の読み方・味わい方は、恐らく小説の読み方ではなく、文学の味わい方でもなかったであろう。私のような主観的な見方をされては、作家その人にとってはなはだ迷惑なことであるかも知れないが、そういった点についてはーただ昔の思い出ばなしとしてーお許しを願いたいとおもう。  私が荷風文学に親しみだしたのは、明治三十九年のころからであるが、特にそれに熱中したのは明治四十二年から大正元年ごろまで(荷風が満で三+歳から三+三歳のころ...
  • 江戸川乱歩「断崖」
     春、K温泉から山路をのぼること一マイル、はるか目の下に渓流をのぞむ断崖の上、自然石のベンチに肩をならべて男女が語りあっていた。男は二十七、八歳、女はそれより二つ三つ年上、二人とも温泉宿のゆかたに丹前をかさねている。 女「たえず思いだしていながら、話せないっていうのは、息ぐるしいものね。あれからもうずいぶんになるのに、あたしたち一度も、あの時のこと話しあっていないでしょう。ゆっくり思い出しながら、順序をたてて、おさらいがしてみたくなったわ。あなたは、いや?」 男「いやということはないさ。おさらいをしてもいいよ。君の忘れているところは、僕が思い出すようにしてね」 女「じゃあ、はじめるわ……最初あれに気づいたのは、ある晩、ベッドの中で、斎藤と抱きあって、頬と頬をくっつけて、そして、斎藤がいつものように泣いていた時よ。くっつけ合った二人の頬のあいだに、涙があふれて、あたし...
  • 河上肇「古今洞随筆」
     今歳正月宿約を果さんがため一文を本誌に寄せし折、それは余りの短文ゆえ他日更に一文を草してその責を補うべしと約束してこのかた、しきりにその約束の履行を催促されているに拘《かかわ》らず、今日に至るもなお之を果す能《あた》わず、已むなくテエブルに向い、さしあたり思いつくままのことを書きつけて、形ばかりの責を塞ぐ。  私が今|倚《よ》りかかっているテエブルは、近頃京大経済学部の学生諸君から贈られたものである。それには「贈恩師河上肇先生、経済学部同好会々員一同」と書きつけてある。私は近頃大学教授の椅子を失ったが、その代りに、学生諸君から斯《か》かるテエブルを贈られたのである。私は悦《よろこ》んでこれを受け、今後私がなお生きていて、何等かのものを書くかぎり、永くこれを使用しようと思っている。私は従来、私宅では坐って執に向い、汰学の研究室では椅子してテエブルに向っていたのだが、大学へ出なくなって毎日...
  • 江戸川乱歩「日記帳」
     ちょうど初七日《しょなのか》の夜のことでした。わたしは死んだ弟の書斎にはいって、何かと彼の書き残したものなどを取り出しては、ひとりもの思いにふけっていました。  まだ、さして夜もふけていないのに、家じゅうは涙にしめって、しんとしずまりかえっています。そこへもって来て、なんだか新派のおしばいめいていますけれど、遠くのほうからは、物売りの呼び声などが、さも悲しげな調子で響いて来るのです。わたしは長いあいだ忘れていた、幼い、しみじみした気持ちになって、ふと、そこにあった弟の日記帳を繰りひろげて見ました。  この日記帳を見るにつけても、わたしは、おそらく恋も知らないでこの世を去った、はたちの弟をあわれに思わないではいられません。  内気者で、友だちも少なかった弟は、自然書斎に引きこもっている時間が多いのでした。細いペンでこくめいに書かれた日記帳からだけでも、そうした彼の性...
  • 江戸川乱歩「百面相役者」
    1  ぼくの書生時代の話だから、ずいぶん古いことだ。年代などもハッキリしないが、なんでも、日露戦争のすぐあとだったと思う。  そのころ、ぼくは中学校を出て、さて、上の学校へはいりたいのだけれど、当時ぼくの地方には高等学校もなし、そうかといって、東京へ出て勉強させてもらうほど、家が豊かでもなかったので、気の長い話だ、ぼくは小学教員でかせいで、そのかせぎためた金で、上京して苦学をしようと思いたったものだ。なに、そのころは、そんなのがめずらしくはなかったよ。なにしろ給料にくらべて物価のほうがずっと安い時代だからね。  話というのは、ぼくがその小学教員でかせいでいたあいだに起こったことだ。 (起こったというほど大げさな事件でもないがね)ある日、それは、よく覚えているが、こうおさえつけられるような、いやにドロンとした春先のある日曜日だった。ぼくは、中学時代の先輩で、町の(町といっても××市のこ...
  • 江戸川乱歩「火繩銃」
    (この一篇は、作者が学生時代に試作した未発表の処女作です。当時の日記帳の余白に筋書きが書きつけてあったのを、友人をわずらわして清書してもらいました。筋書きのままですから、組立てや、文章も未熟で、いっこうおもしろくありません。といって、この筋で新しく書き直す元気もありませんでした。  原作には前置きとして、主人公である橘梧郎《たちばなごろう》というしろうと探偵の人となりを長々と書いてあったのですが、おもしろくもないので削ってしまいました。  橘は高等学校の学生で、探偵小説や犯罪学の心酔者で、シャーロック・ホームズというあだなをつけられていたような、変わり者です。 『わたし』という人物は橘の同級生で、ワトスンの役割りを勤めているわけです)  ある年の冬休み、わたしは友人の林一郎から、一通の招待状を受けとった。手紙は、弟の二郎といっしょに一週間ばかり前からこちらに来て毎日狩猟《しゆりよ...
  • 江戸川乱歩「防空壕」
    一、市川清一の話  きみ、ねむいかい? エ、眠れない? ぼくも眠れないのだ。話をしようか。いま妙な話がしたくなった。  今夜、ぼくらは平和論をやったね。むろんそれは正しいことだ。だれも異存はない。きまりきったことだ。ところがね、ぼくは生涯《しようがい》の最上の生きがいを感じたのは、戦争のさいちゅうだった。いや、みんながいっているあの意味とはちがうんだ。国を賭《と》して戦っている生きがいという、あれとはちがうんだ。もっと不健全な、反社会的な生きがいなんだよ。  それは戦争の末期、いまにも国が滅びそうになっていたときだ。空襲が激しくなって、東京が焼け野原になる直前の、あの阿鼻叫喚《あびぎようかん》のさいちゅうなんだ。  きみだから話すんだよ。戦争中にこんなことをいったら、殺されただろうし、今だって多くの人にヒンシュクされるにきまっている。  人間というものは複雑に造られている。生まれな...
  • 科学への道 part4
    !-- 十一 -- !-- タイトル -- 科学と芸術 !-- --  科学と芸術とは一見対蹄的位置に立つごとく見えるものであるから、科学者は芸 術を|遊戯《ゆうぎ》のごとくに|蔑《さげす》み、芸術家は科学をあらずも|哉《がな》の|所作《しよさ》と断ずる。しかし、こ れらはいずれも人間性に|立脚《りつきやく》した|崇高《すうこう》の所作であり、真と美に対する人間の創作た ることを信じて疑わず、かっ尊敬するに|躊躇《ちゆうちよ》しないのである。即ち人間性中、美を 対象として|憧《あこが》れる心も、理性的に自然に即さんとする心も、いかなる外力を以てし ても|圧《お》し|潰《つぷ》すことは出来ないのである。これらはいずれも本能に起因される所作で あるからである。  芸術家の養成については、その才能がまず問題となり、全く好きであるという出 発点があって、音楽家となり、画家となり、彫刻家...
  • 江戸川乱歩「二廃人」
     ふたりは湯から上がって、一局囲んだあとをタバコにして、渋い煎茶《せんちや》をすすりながら、いつものようにポッリポッリと世間話を取りかわしていた。おだやかな冬の日光が障子いっぱいにひろがって、八畳の座敷をほかほかと暖めていた。大きな桐《きり》の火バチには銀瓶《ぎんびん》が眠けをさそうような音をたててたぎっていた。夢のような冬の温泉場の午後であった。  無意味な世間話がいつのまにか、懐旧談にはいって行った。客の斎藤氏は青島役《ちんたおえき》の実戦談を語りはじめていた。部屋のあるじの井原氏は火バチに軽く手をかざしながら、だまってその血なまぐさい話に聞き入っていた。かすかにウグイスの遠音が、話の合の手のように聞こえて来たりした。昔を語るにふさわしい周囲の情景だった。  斎藤氏の見るも無残に傷ついた顔面はそうした武勇伝の話し手としては、しごく似つかわしかった。彼は砲弾の破片に打たれてできたとい...
  • 内藤湖南「山片蟠桃について」
    山片蟠桃について  この懐徳堂のお催しとして、大阪出身の勝れた人々について講演をするということでございます。それで、私は妙な縁故からして、山片蟠桃《やまがたばんと う》について調べたというほどに調べておりませぬが、少し関係がありますところから、私に蟠桃のお話をいたせということでありました。ちょうど十日ほど前 に風を引きまして、声が低くてお聴き取りにくかろうと存じますが、どうか悪しからず御承知を願います。  今申しましたとおり、山片蟠桃のことにつきましては、私はいっこう詳しく調べておらぬので分からぬのであります。しかしこの人について注意をし、またそ の著書を読んだことはずいぶん古いほうであると思います。この人の著書の有名な『夢《ゆめ》の代《しろ》』というのは、「日本経済叢書」に載っております から、多数の方は御覧になっておられると存じます。その中に「無鬼」という篇がありますが、明治二十五年に...
  • 科学への道 part3
    !-- 六 -- !-- タイトル -- 科学者と先入主 !-- --  科学者というものは|偏《かたよ》らずして平静な心の持主であろうと想像するが、実は決し てさようでなく、先入主の|凝《こ》り|固《かたま》りとしか見えぬ人にも接することがある。しかし、 この人達は決して大なる科学者とは思えないのである。  科学者に|成《な》る資格の中には、先人が自然現象の中から苦心して取り上げた事実を 記憶していなくてはならない。またそれらの事実を根底として組み立てられた系統 --即ち法則とか定理とかと呼ばれるもの--を知っていなくてはならない。即ち 事実と系統とが教えられてしまうと、今度新しい事実が出て来ても両立しない場合 に於ては新事実の出現を知らぬことにするか、認めない態度に出る学者がいる。こ れは全く先入主が心の中にあまり幅をきかしておる結果にほかならない。  学校に在学中は極めて...
  • 江戸川乱歩「心理試験」
    1  蕗屋《ふきや》清一郎が、なぜ、これから記すような恐ろしい悪事を思い立ったか、その動機についてはくわしいことはわからぬ。また、たといわかったとしても、このお話には、たいして関係がないのだ。彼がなかば苦学みたいなことをして、ある大学に通っていたところをみると、学資の必要に迫られたのかとも考えられる。彼はまれに見る秀才で、しかも非常な勉強家だったから、学資を得るために、つまらぬ内職に時を取られて、好ぎな読書や思索がじゅうぶんでぎないのを残念に思っていたのは確かだ。だが、そのくらいの理由で、人間はあんな大罪を犯すものだろうか。おそらく、彼は先天的の悪人だったのかもしれない。そして、学資ばかりでなく、ほかのさまざまな欲望をおさえかねたのかもしれない。それはともかく、彼がそれを思いついてから、もう半年になる。その聞、彼は迷いに迷い、考えに考えたあげく、結局やっつけることに決心したのだ。 ...
  • 江戸川乱歩「D坂の殺人事件」
    事実  それは九月初旬のある蒸し暑い晩のことであった。わたしは、D坂の大通りの中ほどにある、白梅軒という、行きつけのカフェーで、冷やしコーヒーをすすっていた。当時わたしは、学校を出たばかりで、まだこれという職業もなく、下宿屋にゴロゴロして本でも読んでいるか、それに飽きると、あてどもなく散歩に出て、あまり費用のかからぬカフェー回りをやるくらいが、毎日の日課だった。この白梅軒というのは、下宿屋から近くもあり、どこへ散歩するにも必ずその前を通るような位置にあったので、したがって、いちばんよく出入りするわけであったが、わたしという男は悪い癖で、カフェーにはいると、どうも長っちりになる。それは、元来食欲の少ないほうなので、一つは嚢中《のうちゆう》の乏しいせいもあってだが、洋食一サラ注文するでなく、安いコーヒーを二杯も三杯もおかわりして、一時間も二時間もじっとしているのだ。そうかといって、別段...
  • 江戸川乱歩「何者」
    奇妙な盗賊 「この話は、あなたが小説にお書きなさるのが当然です。ぜひ書いてください」  ある人がわたしにその話をしたあとで、こんなことをいった。四、五年以前のできごとだけれど、事件の主人公が現存していたので、はばかって話さなかった。その人が最近病死したのだということであった。  わたしはそれを聞いて、なるほど、当然わたしが書く材料だ、と思った。なにが当然だかは、ここに説明せずとも、この小説を終わりまで読めば、自然にわかることである。  以下「わたし」とあるのは、この話をわたしに聞かせてくれた「ある人」をさすわけである。  ある夏のこと、わたしは甲田伸太郎《こうだしんたろう》という友人にさそわれて、甲田ほどは親しくなかったけれど、やはりわたしの友だちである結城弘《ゆうきひろかず》一の家に、半月ばかり逗留《とうりゆう》したことがある。そのあいだのできごとなのだ。  弘一君は陸軍省軍...
  • 江戸川乱歩「虫」
    1  この話は、柾木愛造《まさきあいぞう》と木下芙蓉《きのしたふよう》との、あの運命的な再会から出発すべきであるが、それについては、まず男主人公である柾木愛造の、いとも風変わりな性格について、一言しておかねばならぬ。  柾木愛造は、すでに世を去った両親から、いくばくの財産を受け継いだひとりむすごで、当時二十七歳の、私立大学中途退学者で、独身の無職者《もの》であった。ということは、あらゆる貧乏人、あらゆる家族所有者の、羨望《せんぼう》の的《まと》であるところの、このうえもなく容易で自由な身のうえを意味するのだが、柾木愛造は不幸にも、その境涯《きようがい》を楽しんでいくことができなかった。かれは世にたぐいもあらぬ厭人病者《えんじんびようしゃ》であったからである。  かれのこの病的な素質は、いったいぜんたい、どこからきたものであるか、かれ自身にも不明であったが、その徴候は、すでにすでにかれ...
  • 太宰治「お伽草紙」
    青空文庫の「新字旧仮名」をもとに、新仮名に改めました。 https //www.aozora.gr.jp/cards/000035/card307.html その際、講談社文庫を参照しました。 お伽草紙 太宰治 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)間《ま》 |:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号 (例)約百万|山《やま》くらい [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 「あ、鳴った。」  と言って、父はペンを置いて立ち上る。警報くらいでは立ち上らぬのだが、高射砲が鳴り出すと、仕事をやめて、五歳の女の子に防空頭巾をかぶせ、これを抱きかかえて防空壕にはいる。既に、母は二歳の男の子を背負って壕の奥にうずくまっている。 「近いようだね。」 「ええ。どうも、この壕は窮屈で。」 ...
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