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彼にしか出来ないぶち抜き - (2013/06/16 (日) 21:22:50) のソース
*彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 「ヒーッ! ホーッ!! こりゃいいや!!」 空を飛ぶという初めての感覚に、猫の機嫌は鰻登り。 今まで地に足を着けて歩くことしか知らなかった彼は、大空の旅を満喫していた。 とはいえ、そこまで自由なものではないのだが。 飛ぶ方向は決まっているし、速度も一定。 自分の思い通りに動かすことは、出来ない。 けれども、初めてというのはやはり気持ちがいいもので。 全身を使って風を切る、ということを思う存分楽しんでいた。 「ふぅ、もーいっかいと行きたいけど、ここは温存しとくべきだよね~」 初めてとは思えない完璧な着地をこなし、上機嫌の猫はあたりを見渡していく。 あたりに広がっているのは、瓦礫の山。 すこし歩きにくい地面を、よたよたとケットシーは歩く。 「おっ、マグネタイトじゃん? ラッキーラッキー」 転がっていたいくつかの死体から、生体マグネタイトを吸い取っていく。 死んでから間もないからか、その量はケットシーの予想以上に多かった。 「これでしばらく安心だね! うーんオイラってほんとにラッキーボーイ!」 丸々二日は生き延びられると見ても良いほどの、大量のマグネタイトを手に、ウキウキで探索を続ける。 その他にも、死体が持っていた道具を次々と拾得し、自分のものにしていく。 見事逃げ仰せた上に、マグネタイトと道具も手に入った。 なんて幸運なのだろうと、自分でも思う。 そう、確かに幸運だった。 「ん……これって」 光輝く「それ」さえ見つけなければ。 かつて投げ捨てた、一つの金属片。 それを、傷ついた手で触ってしまった。 さっきは手袋越し、しかも傷の付いていない手で触ったから良かったのだ。 もし、あのとき傷口が「それ」に触れていたら、話はまた変わったかもしれない。 まあ、今こうして。 「傷口」で「それ」に触れてしまったから、どうしようもないが。 ぶつん、という音と共にブラックアウトする意識。 自分のモノが、自分だけのモノが何かに塗り変えられていく。 手放しちゃいけない、誰にも渡してはいけないと分かっているのに。 体はとっくのとうに言うことが利かなくて。 染まる、染まる、染めあげられる。 ……肉は確かに細切れになっていた。 だが、あの時一つだけ確認しなかったことがある。 なぜ、楽俊はザフィーラ達を襲ったのか。 その大本を突き詰めることをせず、"再起不能"の烙印を押した。 元凶は、元気に生きていたというのに。 こうして、再び"肉"を得た「それ」は、再びこの地に蘇った。 さらに、面倒なことは続く。 悪魔が実体化するために必要なエネルギー、生体マグネタイト。 ケットシーは、大型悪魔でも一日は暮らせる量を持っていた。 生体マグネタイトは、用途に応じて姿を変える。 故に、どんな悪魔にも適合し、その力となることが出来る。 いわば、何にでもなれる"秘宝"といってもいい。 それが、デビルガンダム細胞と組み合わさった。 自在に変形することができるデビルガンダム細胞と、どんな姿にも適合する生体マグネタイト。 もちろん、反応が起きないわけではない。 生体マグネタイトが何であるかを理解し、即座に情報を組み替えていく。 ケットシーの体すらも生体マグネタイトに変換し終えた細胞は、次々に変形をこなしていく。 その途中、あたりの瓦礫を巻き込み、あたりの死体を巻き込み。 有象無象と化した一本の塔が、天高くそびえ立つ。 まるで、悪魔合体が行われているかのように。 やがて、ぼろぼろと肉片や瓦礫がこぼれ落ち、塔が崩れさっていく。 表面がはげ落ちるようにボロボロと、休む間もなく崩れていく。 そしてしばらくして、削げ落ちる物がなくなったとき。 「我は――――」 無数の翼、光輝くような髪、天を突かんとする白い角。 「――――魔王」 漆黒を纏いし存在が、そこに立っていた。 沈黙。 ナメた口調の放送が流れてから、三者共に口を開かずに居た。 目的を失ってしまったイギーは押し黙り。 最初はベラベラと自己紹介に花を咲かせていたホロですらも口を閉ざしている。 そしてクロも例外ではなく、放送に言葉を失う。 「あー、ったく、待ちっぱなしってのはガラじゃねぇなぁ」 しばらく沈黙が続いた後、クロがおもむろに口を開く。 我慢が出来なかったのか、それともこの空気を壊そうとしたのか。 「だったら雨でも浴びて来いよ」 「機械の体じゃ雨は楽しめねぇよ」 「だろうな」 それに乗るようにイギーも口を開く。 軽口を飛ばしあうくらいには、待ちというものは辛い。 しかも、今は放送の所為で妙に重苦しい空気が流れている。 イギーとしても、気を紛らわせたかったのだろう。 何より行動派のクロにとっては、そんじょそこらの攻撃より辛いかもしれない。 イギーにナメられるわけにもいかないし、かといってここをほっぽりだして大暴れするわけにもいかない。 まだ口を開こうとしないホロの行動も見守りつつ、ただただ待つ。 ストレスの限界と戦いながらも、クロはただひたすらに待ち続けていた。 そして、念願のストレスフリーを、クロは手にすることとなる。 「……ッ!!」 その場にいる三者全員が、息を飲む。 いや、息を飲まざるを得ない。 むしろ、飲まない者がいたとしたら、よっぽどの脳天気野郎か自信過剰のキチガイくらいだ。 踵から尻の穴、背筋を通ってうなじまで、ぴったりと離れることなく舐められる感覚。 ゾゾゾッ、とした悪寒が止まらない。 現に、そこまで場慣れしていないであろうホロの足は震え、歯を慣らして怯えはじめている。 イッスンに至っては言葉を失うあまり、白目を剥いているほどだ。 場慣れしているイギーやクロでさえ、冷や汗が止まらないのだから無理もない。 「仲良くそろって大脱走、ってのを許してくれそうも無ぇな」 「あの図体相手じゃ逃げ場もねぇだろ」 ようやく言葉を出すことができたイギーに、クロは冷静に突っ込んでいく。 目の前にはサッカー場を覆わんとする巨体、隠れ場所は一時しのぎでしかないし、逃げ場は無いと言って良い。 あの巨体の目の位置から見えないところまで逃げるのは、相当骨が折れることだろう。 ……それも、相当な脚力があっての話だが。 「つーか、逃げんのか? 臆病なんだな、お前」 「君子危うきに近寄らずってヤツだ、オメーみたいな脳味噌筋肉のキチガイ野郎と一緒にすんな」 クロの問いかけに、イギーはとてもめんどくさそうに答える。 もとより、面倒臭いことはとことん嫌う性格だ。 ヤバいと分かっていながら突っ込むなんて、大馬鹿のする事だ。 「ハッ、大口叩いといてイザって時は逃げ腰か。 しゃーねぇなぁ、バブちゃんの為にいっちょ大暴れすっか!」 「何とでも言えこの野郎、誰も好き好んで死にに行きたくはねーよ」 「ケッ、これだから温室育ちは……」 クロの皮肉たっぷりの言葉にも耳を貸さず、イギーはスタンドを発現させ、早々に逃げる準備を整える。 そんなイギーを横目に、クロはすっかり怯えきったホロへと視線を向ける。 「ま、っつーことで。ここは俺に任せて、おめーは全速力で走って逃げろ」 「し、しかしぬしは――――」 「三人そろって逃げ出す余裕なんざ無えっつってんだよ!!」 自分がそこまで死にそうな顔をしているのに、まだ他人を心配するというのか。 そういうヤツから死んでいく、というのはクロは良く知っている。 だから、あえてキツい言葉で突き放す。 こんな場所に安全なところはないとしても、ここに留まるよりかは幾分かマシなはずだから。 お守りから逃れたいとかそういう気持ちもあったが、先に思ったのは「無駄に死なれたくない」という事だ。 「ザフィーラが戻ってきたらちゃんと伝えっから、今はあれから逃げることだけ考えろ!! あと犬公! テメーはホロを守るくらいしやがれチキン野郎」 「あァ?!」 突然言葉を向けられたイギーが、思わず怒りを露わにした反応をしてしまう。 なぜ先ほどであったばかりの話が長いだけの女を守らなければいけないのか。 そんな義理はないというのに。 「チッ、わーったよ脳味噌筋肉」 けれども、イギーはそれを受けた。 なぜか、というとシンプルな理由しか思いつかない。 目の前の猫に、ナメられたくないからだ。 「正直てめーでホロが守れるかは不安だがな」 「んだと……!?」 「キレてる暇があったら早く逃げろ!」 最後の最後の皮肉に思わず反応してしまったと同時に、クロは剣を片手に漆黒へと飛びかかっていった。 チッ、と軽く舌打ちをしながら、まだ怯えた顔をしているホロを見る。 これを助ける義理はない、分かっているけれどあの猫には舐められたくない。 どちらも"意味のないこと"だとは、分かっているが。 「おい、行くぞ」 心に残る何かに唆されるまま、イギーはホロと共にサッカー場を全速力で後にした。 サッカー場をぼんやりとした目で見つめながら、魔王は立ち尽くしていた。 と、いうのも、実はまだ"魔王"としての意識が目覚めきっていないというのが正直なところなのだ。 魔獣、ケットシーを媒介として行われた疑似的な悪魔合体。 正規の手段ならば生まれた先の意識のみとなるのだが、今回はそうではない。 生体マグネタイトと、獣たちの肉、そしてDG細胞による変形能力を用いて行われた今回の合体は、イレギュラー中のイレギュラーな手段と言っても良い。 その上さらに、通常の悪魔合体でも起こるマグネタイトの異常反応――――俗に言う"合体事故"も起きた。 あり得ないことにあり得ないことが上塗りされた結果、あり得ない者が生まれた、と言うべきか。 ともかく、今ここにいる魔王に自我はない。 あるのはDG細胞の支配と、それに抗おうとするケットシーを初めとした肉体たちの意志。 そして途中で取り込んだヒョウヘンダケのこともある。 魔王の意識がその中にあるのかどうかは、分からない。 様々な要素が重なりあって生まれた、不安定な存在。 それが、この"魔王"だ。 「ゴアアオッ!!」 本来、その姿を象っているべき存在ならば、絶対に出さないであろう醜い声と共に腕を振るう。 見る者を包み込んでしまいそうな巨体から放たれた一撃が、豆腐を砕くかのようにいともたやすくサッカー場の一部を砕いていく。 「ガアッグアアアオッ!」 続けて放たれた一撃が、さらにサッカー場を抉っていく。 たった二撃でこの惨状、サッカー場、いやこの世界全体が崩れさるまでに、そう時間はかからないだろう。 もう、この場にいるもの達には絶望しか残されていない。 誰もが、そう思うだろう。 「どぉおおおおりゃああああああああ!!!」 そんな絶望に正面から突っ込んでいく、たった一つの"黒い希望"が居た。 巨体の脚部から駆け上り、顔へとまっすぐに駆け抜けていく。 それに気がついたのか、たまたまなのかは分からないが魔王は腕を振るう。 駆け上るクロを振り払うように、剛腕をうならせていく。 「うおぁっ!」 地面に対して直角に走り出していたクロは、それをなんとかよけるものの、重力に従って落ちはじめてしまう。 これではまた登り直しだ。 「にゃろっ!!」 だから、手をのばす。 魔王の体に向けて、手に持つ剣をのばしていく。 ほんの一瞬だけ、魔王の体に剣の先端が刺さる。 その一瞬を利用し、全身の力を込めて魔王の体へと戻っていく。 すたっ、と着地した場所は、地面からほぼ直角の場所。 立ち止まっている暇など、もちろん無い。 足に渾身の力を込めて、そのまま駆け上る。 魔王はそこでようやくクロの姿を認識したようで、その瞳に姿を映していく。 グォオ、と低く唸る魔王に希望は銃を構える。 ただし、それは攻め手ではなくあくまで道を造るためのもの。 軽い音を立てながら放たれる無形の銃弾たちは、魔王の体に突き刺さることはない。 「うおっ!?」 それどころか、まっすぐに希望の元へと跳ね返ってきていた。 軌道が真っ直ぐだったので避けることは苦ではなかったが、銃が足止めに使えないと言うのは大きな痛手だ。 先ほどの剣の突き刺さる感覚からして、心臓を一突きという訳にもいかない。 「ゲッ!」 だったらどうする、と考えていた矢先。 クロの小さな体を簡単に飲み込んでしまいそうなほど大きな火の玉が、彼の目の前に鎮座している。 大きく避けなければ、直撃は必至。 「クソッ!!」 せっかく稼いだ前進距離を少し犠牲にしつつ、希望は大きく横に避ける。 チリッとしっぽが火球を掠め、焦げ臭いにおいが広がっていく。 舌打ちをしながら前を見る、そこには同サイズの火球がもう一発待ちかまえていた。 「マジか……」 ぽつりとつぶやいた一言と共に、クロの小さな体が飲み込まれていった。 「あー!! くそ! 熱い熱い熱い!!」 火球が落下し、サッカー場の瓦礫を溶かすと同時に、一つの銀色の影が火球から飛び出す。 纏っていた皮を抜け出し、本来の姿へと戻っていく。 いや、本来の姿であり、仮初めの姿と言うべきか。 彼は動物達が集うこの場所で、ほぼ唯一と言っても良い機械の体の持ち主。 剥き出しになった金属面が、それを物語っている。 「体はデケぇし硬ぇし、銃は跳ね返ってくる上に、お手手からは炎が出ると来た」 魔王の死角に潜り込み、"銀色の希望"は状況を整理する。 とはいっても、絶望的な今を噛みしめれば噛みしめるほど、彼に抵抗の手段など残されていないというのが分かる。 自分の攻め手は無いに等しく、相手の攻め手は強烈なモノばかり。 いわば"詰んで"いる、分かりきったことなのに。 「……おっもしれえ」 彼は笑う、それも狂気をたっぷりと含んだ笑顔で。 こうでなければ、こうでなければいけない。 今まで散々我慢してきたのだから、これぐらい"狂わせて"くれないと、話にならない。 使いモノにならない銃を捨て、剣を腹の中に仕舞い、もう一本の剣を携えていく。 なぜ、武器を切り替えたのか? 初めに持っていた剣の方が、切れ味は上だというのに。 「おおおおおおおおおっっ!!」 一直線に走り抜ける。 使えないナマクラを手に、魔王へと向かっていく。 間を置かずに、クロの前進に気がついた魔王が炎を放つ。 先ほどとほぼ同サイズ、それでいて広範囲の火球が四方八方縦横無尽に飛び回る。 そのままクロへと牙を剥き、それぞれが炎の渦を巻き起こす。 筈だった。 炎が向かった先、そこには剣を構えるクロの姿。 そして、真逆の方向へと跳ね返っていく火球達。 一体、何故? 答えは、彼の持つ剣にある。 ある地方、ある王国に代々伝えられた伝説の剣。 主に桃缶を開けるために使われる……のではなく、万物を切り裂き道を造るとされている伝説の剣だ。 しかし、それは伝説の宝石と聖なる者の魂があってのこと。 それがなければ、この剣は"何も斬ることが"できない。 この世でもっとも使えない、ナマクラ剣と言っても良いだろう。 少なくとも、"斬ることに関しては"。 伝説の剣が本来の力を手にしていないときの特徴が、もう一つある。 それは、"どうやっても砕かれない"ということ。 来るべき覚醒の日まで、砕けるわけにはいかない。 故に、この剣はその日まで"絶対に砕けないよう"作られた。 そう、来るべき伝説の日まで。 万物に対して干渉しないし、されないように作られていた。 故に斬ることもできない、代わりに斬られることもない。 何も破壊できないが、何にも破壊されることはないのだ。 それを――――クロは理解していた。 飛び交う極大の火球、それをかわす手段。 そう、避けれないなら"弾け"ばいいのだ。 時には剣のように、時にはバットのように、時には槍のように。 伝説の剣をうねらせ、無形である炎を弾き飛ばしていく。 クロは、剣ではなく"盾"としてそれを使うことで、活路を見いだした。 「おぅ……らァッ!」 そして、最後の一発。 それを弾き返すと同時に、弾き返した炎の上に"乗る"。 伝説の剣をまるでサーフボードのように操り、魔王へと真っ直ぐ戻っていく炎に乗って、一直線に眼前へと近づいていく。 超高速で近づくクロに、魔王は反応が遅れる。 ほんの一瞬、されど一瞬。 クロが懐から取り出したヴァルセーレの剣を投げつけるには十分すぎる隙だった。 弾丸のように飛び出した剣が、魔王の眼に突き刺さる。 ぐらり、とすこしだけよろけると同時に、クロが飛び出していく。 そして、再び伝説の剣を振りかぶり。 突き刺さったヴァルセーレの剣の"ちょうど中心"を、真っ直ぐに叩く。 何も斬れない、砕けない、破壊できない、干渉できないナマクラ刀。 けれども力を伝える事はできる。 絶対に何も斬れず、絶対に何にも砕かれないからこそ、一直線に力を伝えることができる! まるでトンカチのようの振りおろしたそれが、魔王の眼に突き刺さったヴァルセーレの剣を縦へ進めていく。 「うおおおおっ!!!」 当然、魔王は暴れる。 剛腕はうなり、火球は乱れ飛ぶ。 けれども、クロは止まらない。 「おおおおおおおおっ!!」 加速、重力、自分が使えるありとあらゆる力を乗せ、振りおろしていく。 止まらない、止まらない、暴走列車のように。 縦に真っ直ぐ線が入り、魔王の体が斬り裂かれていく。 瞬時に再生を始めようとするが、それは遅すぎた。 断面、つまり外皮に覆われていない内蔵が見えているという事。 それさえ見えれば、十分だ。 「うっ……るァァァァァッ!!!」 瞬時にヴァルセーレの剣へと持ち換え、一薙ぎ、二薙ぎと攻撃を重ねていく。 断面を境にぶちり、ぶちりと斬り飛ばされていく肉体、その攻撃は再生速度を優に上回っていた。 吹き飛ばされた肉は、瞬時に形を失っていく。 魔王の体は純粋な肉体とは違い、元々死骸だったものと生体マグネタイトで無理矢理構成されたものだ。 細胞の力がなければ生きていられるわけもない。 それを知ってか知らずか、クロは大きく振りかぶって魔王を"ブツ切り"にしていく。 弾け飛んだ部位から、溶けだしていく。 足、足、胴、胸、肩、肩、次々に吹き飛ばされていく。 そして、最後に残った頭。 未だに抵抗をやめようとしない魔王に、クロは最後の一撃を叩き込んで行く。 「おっ……らっ」 始めに突き刺さった部位を基準に、顔が両断されていく。 「よぉっ!!」 吹き飛ばされる、顔の半分。 断末魔の叫びも空しく、空に溶けていった。 どろりと融けた肉塊に包まれ、その中心でクロは倒れこむ。 初撃で浴びてしまった炎が思っていたよりも体を蝕んでいたようで、あちこちで金属の軋む音が聞こえる。 というか、軋むどころではなく半身もっていかれている。 どろりと融け始めていた金属を押し通してあんな無茶をしたのだから、無理も無い。 だが、クロは止まらない。 「手前が本体か」 残った片腕を伸ばして掴み取るのは、光り輝く一枚のチップ。 先ほどまで、魔王を形成していた"悪魔"の本体だ。 クロが手に取ったことを察知し、チップは何時もどおりにクロの意識を乗っ取ろうとする、が。 「悪ぃな、テメーも一緒に死んでもらうぜ」 クロは生体ではない、寧ろチップと同じ"金属"と"半導体"で出来ている。 自分で思考し自分で行動できる、天才科学者、剛万太郎の自信作(サイボーグ)。 そんじょそこらの人間の肉体を乗っ取る程度のチップに、遅れを取る訳が無いッ!! 「ぬぅぅぅうりゃああ!!!」 クロの自我を食い荒らそうと侵略を始めるチップに、全身全霊全プログラムを賭けて対抗する。 傍から見れば、チップを手にクロが叫んでいるだけ。 けれど、そこで起こっている事はここにいる誰もが出来ないこと。 この場所で彼にしか、彼だけしか出来ないこと。 ばちん、と雷が弾ける。 先ほどと同じ、いやそれより激しい戦い。 動きは無く、仲間も無く、音は弾けた雷だけ。 けれど、けれど、彼にしか出来ない戦い。 「ああ……」 戦いを終え、遠くを見つめる。 身体を動かすどころか、もう思考すらままならないけれど。 「やっぱ……こうじゃなきゃな」 この上ない満足感に包まれながら、ゆっくりと眠る。 目は、覚まさない。 &color(red){【クロ@サイボーグクロちゃん 死亡】 } &color(red){【ケットシー@真・女神転生if... 死亡】 } &color(red){【デビルガンダム細胞@機動武闘伝Gガンダム 機能停止】 } ※放置支給品(E-4):メガブラスター@クロノトリガー 、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ アームターミナル@真女神転生if...、伝説の剣@ハーメルン ※放置支給品(D-4):まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(コロナショット@真女神転生if...(12発)) 和道一文字@ワンピース、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、 グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、ケットシーの帽子@真女神転生if...、 フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実、キメラのつばさ*1@DQ5、 伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5) 【E-4/南部/1日目/日中】 【イギー@ジョジョの奇妙な冒険】 【状態】:全身打撲(小・治療済)、疲労(中)、精神的疲労(中) 【装備】:腕時計 【道具】:支給品一式(食糧:ドライフード)、犬笛 【思考】 基本:面倒なので殺し合いには乗らない。 1:とりあえず逃げる 【備考】 ※イギーの参戦時期はペット・ショップとの戦闘で、下水道に逃げ込む前後です。 ※スタンドの制限に気づきました。 ※タヌ太郎に少し心を許しました。 ※コロマル、アライグマの父と情報交換をしました。 ※ピカチュウたちと情報交換しました。異世界という情報を得ています。 ※オーボウ、グレッグル、ミュウツーへの伝言を預かりました。 【ホロ@狼と香辛料】 【状態】右腕に切創(小。止血済み) 【装備】:イッスン@大神、魔甲拳@ダイの大冒険 【所持品】:支給品一式、身かわしの服@DQ5、まんまるドロップ@聖剣伝説Legend of Mana(四個)、 ラスタキャンディ@真女神転生if...(二個)、アギラオジェム×3@ペルソナ3 【思考】 基本:ゲームに乗る気はない。ただし、向かってくる者には容赦しない 1:逃げる。 2:どうにかして血を手にいれたいの。 3:わっちの麦はどこにあるのじゃ? 【備考】:参加時期は6話「狼と無言の別れ」の後です。 ※生き血を飲んで変身できる事は話していません。 *時系列順で読む Back:[[空が別れを告げている]] Next:[[ひとつ火の粉の雨の中]] *投下順で読む Back:[[陰の天、宙の風]] Next:[[]] |099:[[蛙人乱れし修羅となりて]]|ケットシー|&color(red){死亡}| |092:[[驟り雨]]|クロ|&color(red){死亡}| |092:[[驟り雨]]|ホロ|| |092:[[驟り雨]]|イギー||