079
黄は止まり青は進む◆BEQBTq4Ltk
彼らの耳に広川の声が届いたのは歩き始めてから割と直ぐだった。
適当に会話を流しながら歩いていたら突然声が響き始め足を止めた。
所謂放送であり、
タツミとさやかは筆記用具を取り出し彼の声に耳を傾ける。
上条当麻と呼ばれた男が殺された時のことを思い出す。
禁止エリアなり脱落者の発表なり色々と言っていたような気もする。
非常事態だったために記憶にはあまり残っていないのだが。
「朝からアイツの声を聞くなんてな」
「ちょっとテンション下がる」
不満も言いたくなる状況だ。
そもそも何故殺し合いに巻き込まれなくてはならないのか。
タツミは自分と
アカメを含むナイトレイド抹殺のためと考えるがイェーガーズの存在が引っ掛かる。
表では正義の執行機関が殺し合いに関わるなど体裁としては有り得ない。
彼らも巻き込まれているとするならば誰が裏で糸を引いているのか。
大臣とは考えにくいが、どうも絶大な権力を持った人間は理解出来ない。
それこそ竜だったり人造生物を始めとする危険種のようなものである。
主催者は人間ではなく人外の生物で神になろうとしています。なんて言われた方が解りやすい。
最も受け入れることなど不可能であり、何であろうと悪は斬り捨てるだけである。
対するさやかは主催者のことなどどうでもいいと考えている。
他人だ、それも自分とは一切関わる必要のない本当に知らない他人。
興味があるのは力だけであり、願いを叶えられる奇跡だけ。
本当に
巴マミが蘇生させられているなら自分も人生をやり直せる。
そのためには生き残らなければならない。
他の参加者を殺さなければならない。
成し遂げなければ、戻れない。
『おはようしょくん。既にルールは把握しているだろうが、念のためにもう一度確認しておく。
この放送は6時間ごとに行い、その都度『禁止エリア』及び『脱落者』を読み上げる。
一度しか流さないので、記憶力に自信のない者はメモをとるのをお勧めする。
30秒待とう。それまでに各自準備をしてくれ。
準備はできたかな?...では、今回の禁止エリアを発表しよう。
禁止エリアは3つ。
B-2。
E-6。
A-5。
以上の三つだ。
最初にも説明した通り、禁止エリアに踏み込むこめば首輪が爆発し死に至るため気をつけたまえ。』
読み上げられたエリアに印を付けていく。
誰にも殺されること無く自分の不注意で死ぬなど情けないにも程がある。
印を付けていく過程で一つ疑問が生まれた。
首輪が爆発するということは何かしらの反応があるということだ。
「なぁ、魔法って奴で首輪を外せないのか?」
「あたしの魔法ってそんな器用じゃないからね」
首輪には謎な部分が多い。
まず何時嵌められたか解らないのだ。
ジョセフや初春もきっと嵌められた記憶は持っていなかっただろう。
会場に誘拐したように広川は未知なる力を所有しているかもしれない。
未知なる力に対向するには未知なる力。
タツミはさやかに魔法での首輪解除を尋ねるが駄目なようであった。
「戦闘向きなの。それと回復ね、解りやすいでしょ?」
「剣と背中の傷の回復能力……まぁそうだな」
「それに知識がないから多分ムリ」
人生は必ずしも上手くいくとは限らず、壁ばかりである。
簡単に首輪が外れれば誰も殺し合わないだろう。
自分達の命が握られている状況が精神を煽り不要な争いを誕生させてしまう。
首輪の解除が不可能なおとであると解ったタツミは広川が読み上げる死者の名前に耳を傾ける。
名簿を取り出し呼ばれた名前を線で消していく。
「――っ」
呼ばれた名前の中に一つ知り合いの名前が在った。
それは仲間であるアカメの妹であるクロメ。
幼い頃、暗殺組織に投げ込まれ、其処で最終的に別れてしまった最愛の妹。
ナイトレイドとイェーガーズ。
決して交わることのない組織同士に身を寄せた姉妹。
その瞳には生き残る道と自分を必要と足らしめる証しか見えていない。
姉妹が暖かく一緒に暮らすには時間が空き過ぎたのだ。
妹よりも早く組織から抜けた姉。
残された妹にしてみれば自分を置いて逃げたのと同義である。
そんなことはないのだが、それでも人間は追い込まれると自分のことしか考えない。
姉妹の亀裂は誰にも修復出来ない。
(私が救済する『殺す』……なぁアカメ)
最愛の妹をこの穢らわしい世界から救済したい。
姉の言葉を思い出す、それは悲しいが愛情故の思考であった。
彼女自身で手を下せたのか、ならば笑って逝けたのだろうか。
最後は苦しむこと無く楽に逝けたのか。それは誰にも解らない。
(アカメ……俺が傍にいてやんないとな)
だからこそ。
どんな状況かは不明だがアカメもこの放送を聞いている。
遅かれ早かれ妹の死に気付くだろう。その死を受け入れることは出来るのか。
出来る。
彼女は強い。
けれど彼女とて人間であり、心を持っている。
支える人間が必要だ。
ならこの会場で誰よりも彼女のことを知っている自分が傍に居てやらないと。
美樹さやかは考える。
巴マミの名前が広川によって呼ばれた。
つまり彼女は生きていた。
殺されたと言うことは生きていたことになり、彼女はもう死んでいる。
当然だが本来死んでいた巴マミをどうやって生き返らせたのか。
魔法だろうか。金で買えるほど安くない奇跡を広川は持っていたのか。
誰かしらが契約を結び対価として彼女を蘇生させたのならば話は解る。
けれど白い契約者がこの会場に居るかどうかは不明で、関わっているかどうかも不明だ。
広川には謎が多い。
解明して行かなければ彼を出し抜くことは不可能である。
しかし美樹さやかは自分の人生をやり直す願いのみ見据えているのだ。
彼などどうでもよく。
出来れば知り合いに出会わないで願いを叶えたい。
それだけである。
(マミさん……また死んだなら辛いよね)
二度の死とはどんな感覚なのだろう。
そもそも死を体験していない彼女には解らない話である。
「ねぇ……この放送は全部真実だと思う?」
口から漏れた言葉は広川に対する疑問であった。
「嘘をつく理由がない。俺達にも広川にもメリットがない」
嘘をついた所で誰が得するのか。
生きていてよかった、と思う参加者は居るかもしれない。
だが死んだ者のために殺し合いに乗る参加者が生まれるかもしれないのだ。
広川が好んで行っている可能性も在るが、事実として受け入れる方が割りに合う。
「じゃあ願いが叶うのも本当だよね」
「……お前、やっぱそうなんだな」
「斧を構えなくてもいいよ。あたしは大丈夫だからそれより――死んだ人間って生き返ると思う?」
さやかの言葉からタツミは危険を感じ帝具を取り出していた。
言葉の節々から出ている気は常人の類ではない。
最後の一人になれば願い事を叶えることが出来る。
そんな戯言を信じている人間に背中を任せることなど出来ない。
「決まってるだろ」
死んだ人間を生き返らせることが出来るのか。
呼ばれた名前の中にあった巴マミ。
美樹さやかの知り合いである。きっと彼女に対してだろう。
仮に優勝して死んだ人間を生き返らせると考えているのならば。
「死んだ人間が生き返る何て有り得ない。そんなことはあっちゃいけない」
此処で殺す。
元々自分を襲って来た危険人物だ、何時牙を剥かれても可笑しくない。
彼女が再び暴れるものならばこの斧で首を斬り落とすだけ。
「そう……だよね、うん。やっぱ有り得ないよね!」
彼女の言葉は明るかった。
本心まで明るいかどうかは不明だが表向きは明るく振る舞おうとしている。
彼女がそれでいいのならば、それ以上干渉する必要はない。
死者の蘇生はタツミも一度考えたことが在る。
けれどそれは夢物語であり、仲間からは有り得ないと一蹴された。
甘い気持ちを捨てなければ闇の世界を生き抜くなど不可能である。
表面は明るく振る舞う彼女を信じて斧を降ろす。
心は許さないが、この瞬間は大丈夫であろう。
そして広川の声が再度響く。
『下手に長引かせれば、隣にいる者にグサリ!...などといった結末をきみ自身が辿ることになる。』
「あはは……可怪しいね」
「なに言ってるだよコイツは! って感じだな」
その言葉はまるで自分達を指しているようで。
二人は完全に心を許さないまま互いに行動をする。
其処に仁義は存在しなく、敵になれば見限ることなど容易く。
きっかけさえあれば殺せる程度には脆い結束であった。
「……じゃあ歩くか」
「……うん」
切り替えるように短い言葉を交わす。
沈黙は不信感を煽り、無駄な闘争を産んでしまう。
思惑はどうであれ、今は殺し合いの中を共に行動する相棒だ。
少なくても表向きは信じなくてはいけない。
心に仮面を付けて彼らは出会いを求めて歩き出す。
【F-7/一日目/朝】
【タツミ@アカメが斬る!】
[状態]:健康
[装備]:二挺大斧ベルヴァーク@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、テニスラケット×2、ソウルジェム(穢:小)
[思考・行動]
基本:悪を殺して帰還する。
1:さやかと共に西へと向かい、第二回放送後に闘技場へと戻る。闘技場が禁止エリアになった場合はカジノ、それもダメなら音ノ木坂学院でジョセフたちと合流する。
2:さやかを監視する。さやかに不穏な気配を感じたら即座に殺す。
3:アカメと合流。
4:もしもDIOに遭遇しても無闇に戦いを仕掛けない。
[備考]
※参戦時期は少なくともイェーガーズの面々と顔を合わせたあと。
※ジョセフと初春とさやかの知り合いを認識しました。
※魔法少女について大まかなことは知りました。
※DIOは危険人物だと認識しました。
※首輪を解除できる人間を探しています。
※魔法@魔法少女まどか☆マギカでは首輪を外せないと知りました。
※さやかに対する不信感。
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:波紋が与えた肉体への影響(小)、ソウルジェムの物理ダメージ(小)、精神不安定 、見滝原制服
[装備]:基本支給品一式、テニスラケット×2、グリーフシード×1、ほぼ濁りかけのグリーフシード×2
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:やっぱりどうにかして身体を元に戻したい。そのために人生をやり直したい。
0:タツミからソウルジェムを取り返す。
1:タツミと共に西へと向かい、第二回放送後に闘技場へと戻る。闘技場が禁止エリアになった場合はカジノ、それもダメなら音ノ木坂学院でタツミたちと合流する。
2:いまはゲームに乗らない。でも、優勝しか願いを叶える方法がなければ...
3:まどかは殺したくない。たぶん脱出を考えているから、できれば協力したいけど...
4:杏子とほむらは会った時に対応を考える。
[備考]
※参戦時期は魔女化前。
※初春とタツミとジョセフの知り合いを認識しました。
※DIOは危険人物と認識しました。
※ゲームに乗るかどうか迷っている状態です。
※広川が奇跡の力を使えると思い始めました。
※魔法で首輪は外せませんでした。
【さやかが話した魔法少女についての共通認識】
※ソウルジェムが本体である。破壊されるか、100メートル以上離れると身体が操れなくなり死ぬ。
※魔力を消費し、濁りが溜まると死ぬ。(さやかがそう説明しました。魔女化についてはさやか以外知りません)
最終更新:2015年09月01日 23:07