ゲームセット(後編) ◆ENH3iGRX0Y


シコウテイザー、粛清モードはその戦闘力を大幅に上昇させる云わばシコウテイザーの強化形態ともいえる姿だ。
しかし、それにはデメリットがある。
使用者は精神を汚染されるという最大のデメリットだ。無論、お父様はそれを知ったうえで対策は立ててある。
とはいえ精神汚染と神を抑え込まねばならない二重苦はとてもではないが、お父様の目指す神としての有様ではなかった。
更に言えば粛清モードは一度使えば、敵を全て滅ぼすまで解除不可能であるという点も非常に厄介だ。

だからこそ、本命はあの右手と会場の錬成陣を利用し神上へと至る計画であった。

しかしそれも崩れ去り、残されたのはシコウテイザーのみ。

今、お父様は精神汚染を抑え込み更には神も抑え込まねばならない。しかもエンブリヲから少なくない数の魂を奪還された上に、元より一度目の敗北前より賢者の石の数は減っている。
そうエドワード達はこの殺し合いの場に於いて最初にして、最大で最後の好機に立ち会っているのだ。

「ぬ、ゥ……!」

迫りくる柱の錬成を分解で無力化する。だが同じく放たれた電撃は分解を超えお父様の体へと突き刺さる。

全身を絶縁体に―――否、間に合わぬ。

防御を捨て、天井を槍に錬成し御坂の頭上へと振り落とす。
だがアヌビス神を持った雪乃が駆け出し、金属音と共に槍を弾き落とした。

「!!?」

目を離した僅かな隙に水流が撓り、お父様を貫く。
分解の錬成を水流に乗せた物質変換の電撃が無力化し、防御を突破したのだ。
皮肉なことに首輪解除の時に、黒は物質変換のコツを僅かながらに掴んだらしい。分解を妨害する程度なら、今の黒でも容易だ。
まるでお父様が黒を強化してしまったかのような、巡り合わせに苛立ちが増す。

「容赦すんな! 全力で叩け!!」

お父様はここまで攻撃を全て、防ぎきれてはいない。
徐々にではあるが、ダメージを受け再生を行い、その身に留めた魂を消耗し続けているのだ。
こちらは無数の集であり、人を凌駕した存在だ。対して奴らは個でしかない。
奴らが百回殺す間に四回殺せばいい。ただそれだけの取るに足らない筈が―――

「何故、だァ……!!」

届かない。
柱を錬成する。槍を錬成する。剣を錬成する。盾で防ぐ。分解して防ぐ。
砲弾を作り、大砲で射出する。
如何な攻撃手段を以てしても、奴らは耐え抜き、如何な防御を突破しこちらに一撃入れてくる。
だというのにこちらはたかだか四つの命の内、雑魚の雪乃一人殺すことができない。

後何回だ? あと幾つ命は残っている?

とてもではないが数え切れん。

どうする? どうする? どうする?

「―――死ね」

水流が無数の螺旋の槍となり、お父様が作り出した楯を粉砕しその全身を穿つ。
赤い錬成光が再生の前兆であることは、この場にいる全員が知っている。それを阻むかのように、物質変換の電撃がお父様の肉体を侵食し更なるダメージを蓄積させる。
離れなければ、このまま妨害されながら無駄な再生を続けていては、魂が底を着く。


「回、避―――し―――」

動けない。物質の変換という性質を乗せた電撃だ。
当然、感電すれば体は痺れ身動きが取り辛くなる。
更に御坂の電撃が降り注ぎ、お父様の全身は消し炭へと変わり、自動で再生が始まり柱が叩き込まれ、こちらの錬成をアヌビス神が全て防ぐ。

石だ。やはり、膨大な石がいる。回復にも攻撃にも全てにおいて石がいる。

しかし石の補充、たった四人でどれだけ稼げる? そもそも一人も仕留めきれてないものをどうやって石にする?

「なんだ、楽勝じゃねえかッ!」
『油断しては駄目よ』

お父様の攻撃を防ぎながら、雪乃は警戒を怠らない。
三人が攻撃に専念できるよう、防御に回るよう志願したのは雪乃の本人だった。
結果としては正解であり、現にお父様を圧倒し続けている。
しかし、彼女には不吉な予感があった。理由は分からないが、これで本当に終われるのだろうかという不安が。

「決めるわよ」

再生しきれないお父様に対し、御坂は電撃を手の先に溜め出す。
再生すら追いつけない程の圧倒的電力で仕留める。
圧倒している今こそ、そのチャンスだ。

黒も同じことを考えており、電撃に対する集中度を更に引き上げる。
お父様の中の賢者の石ごと物質変換で無へと還し、奴の息の根を止める。

決着の時は近く、それは迫ろうとしていた。

「もう、何もかも―――」

二つの水に乗せた電撃が電撃の槍が。
同じ一つの対象へと振りかざされる。

残された僅かな賢者の石では、到底凌ぎきれない。仮にそうなっても追撃で確実に命を落とすだろう。





「『世界(ザ・ワールド)』」




御坂とエドワードが、この殺し合いで幾度となく聞いた。
そのワードが叫ばれたか否かのタイミングで黒と御坂は吹き飛んでいた。

奴の能力は知っている。時を止めることだ。
今更、そんなことで驚きはしない。重要なことは一つ。何故、奴が今この場所に立っているかだ。


「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY――――ッ!!」


「……DIO、てめえ……なんで……!」

「簡単なことだ。DIOの魂に肉体を与え、私が創りあげてやった。
 クセルクセス人達のようにな……ああ貴様の時間軸では知らないか」


かつての戦いでホーエンハイムを煽る為に使ったこの手法だが、使い方によっては手頃な駒を増やす良い術になる。
更に言えばホーエンハイム同様、お父様はDIOの魂と対話も終えている。
奴らを皆殺しにすれば、再び肉体を授けようという条件付きで。DIOはこの好条件に真っ先に飛びつき、交渉も拗れなかったが為に選んだ。
正確に言えばDIO一人を作るだけでも手一杯でもあるのだが。

「ンッン~~やはり、肉体というのは素晴らしいなぁ~。そうとは思わないか、義手義足なんぞより生身の手の方がよっぽど精密に動くものなあ」

「チッ、こんな時に……」

DIOのスタンド、世界がゆらりと動く。

「―――速ェ」

咄嗟に機械鎧を炭素硬化させ世界の拳を防ぐ。
インパクトが腕を伝い、エドワードの小柄な肉体に走り抜ける。
たった一撃で体の芯まで打ち砕かれそうな重い拳だ。

「無駄無駄ァッ!!

だがDIOはまだ本気を出してすらいない。
ゆっくりと新しく手に入った体を試すような調子で一撃殴り、そのままラッシュを繰り出す。
音すらも置き去りにし流星のように降り注ぐ拳をガードしきれないエドワードは血反吐を吐きながら吹き飛ぶ。

「うむ、まあ悪くはない。
 金髪チビ、電撃娘……黒コートの男……こいつらを始末する程度、どうということはないか。
 ん? ほお……まさかこんな場所で再会出来るとはなあ。アヌビス神よ」

床に打ち付けられたエドワードを見つめながら、この場の人数を数えた時に一つDIOは面白いものを発見した。
自らが勧誘した変わり種のスタンド。恐らくは支給品として紛れ、ここまで残っていたのだろう。


「で、DIO様ぁ~お、お久しぶりです……」

『ちょ、ちょっと……何をやって……』

雪乃の体を操作していたアヌビス神はさっきと打って変わり、剣をぶらりと下げたまま戦意がないことを示すように雪乃の頭を下げる。

「うるせえッ! DIO様がいるなんて話が違う! 勝てる訳ないだろッッ!!」

『なっ……』

ここまでノリと勢いに乗せられていたが、考えればアヌビス神が雪乃たちに加担する理由など何処にもないのだ。
このままDIOに従い、ここの四人全滅させた後、DIO様から安全を買ってヌクヌク生活する方が利口だ。

「いやぁ、流石DIO様……このアヌビス神、貴方様の復活を信じておりました」

『貴方って、最ッ―――――低ね』

一度体の支配権を与えた以上、もう雪乃はアヌビス神には逆らえない。
そしてアヌビス神に体を貸してからまだ5分も経たない。
絶体絶命とはこのことだ。雪乃はただこのふざけたお喋りソードに、罵声を浴びせることしかできない。

「丁度いい、アヌビス神よ。そこの黒コートを殺せ。
 残ったチビと電撃娘はこのDIOが殺す」

「畏まりましたァ!! というわけで、死ねええええええッ!!」

『逃げて黒さん!!』

打撲した個所を抑える黒に向かい、雪乃が駆け出す。
彼らのやりとりを見た黒は既にアヌビス神が寝返ったことを知っていた。
友切包丁を抜き、アヌビス神の刃を受け止める。

「雪乃……!」

凄まじい速さと精密さだ。
アヌビス神の剣裁は黒の予想を遥かに超える。
面を狙った正面からの切り降ろしから、即座に軌道を変え横薙ぎへの払い。
コートの端が僅かに切れ、頬から血が垂れる。
僅か数度の攻防でアヌビス神は学習し、黒の死神の技量を完全に覚えてしまった。

「―――ッ!」

更にもっとも厄介なのが、黒は雪乃に攻撃できないという点だ。
黒はアヌビス神からの攻撃を防御し続けるだけで、雪乃本体には一切の手出しができない。
だからこそ、アヌビス神は反撃の心配なく。かつ、心の底からゆったりと黒の動きを見切り学習できる。
お父様が助っ人で呼んだ人選はこの上なく、的確で最善であったといえよう。
4VS1から一気に3VS3へと、巻き返したのだから。それも非常に黒達が不利な状況へと持ち込んだうえで。

幾度目かの友切包丁とアヌビス神の切り合いでアヌビス神の刃が透けた。
文字通り友切包丁をすり抜け黒の胸元へと滑り込む。
意識より早い、殆どノータイムの直感で黒は後ろへ逸れ剣を避ける。
そのまま上体を起こすと共に、剣を振るい切った雪乃の腕へワイヤーを巻き付ける。


「おッ!?」

驚嘆の声を上げるアヌビス神は無視し黒はワイヤーを手繰り寄せる。
切り合いの技量だけならばアヌビス神が上だが、ワイヤーを使った戦闘をアヌビスは学習していない。
黒の手から電流が発生しワイヤーを伝い、電撃が雪乃の体を流れる。

「あっ、あああ……!!」

「っ……く……」

雪乃の意識が消え、体が傾き倒れかけるのを黒が受け止め支える。

「とんだ……呪いの妖刀だ」

あまりまともに話したこともないが、ここまで戦った仲間だとほんの僅かでも思った自分が馬鹿だった。
さっさとこの剣を触れないよう処分し雪乃を退避させてから戦場へ戻る。
一先ず、雪乃のティバックにアヌビス神を収容する。黒は雪乃の手のワイヤーを解き、雪乃の手から離れたアヌビス神を―――

「―――なーんちゃってッ!」

「な―――」

黒の誤算は一つ。何故なら彼は―――

「気絶してても乗っ取れるんだよォッ!!」

雪乃の体が動き、その切っ先が黒の心臓へと向かう。
ワイヤーは既に覚えられた。ワイヤーを握る左手をアヌビス神は裏拳で弾き、残された右手の友切包丁では雪乃を殺めてしまう。
刹那、黒の右手の指輪が光りディバックから水流が飛び出した。
彼が残したもう一つの手はブラックマリンだ。これもアヌビス神は覚えていないので対応できない。
水流の勢いならば雪乃の手からアヌビス神は離れ、その呪縛から解放される。

「ぐッ……?」

水流の勢いが止まり床を濡らす。
黒は横方から柱を叩きつけられ吹き飛んで、壁に打ち付けられていた。
咄嗟に防御と受け身は取れたが、ほぼノーマークからの攻撃に流石の黒もダウンする。

「誰も私が参加しないとは言っていないが? 抜かったな」

お父様が錬成光の中から黒を見下ろし呟く。

「大丈夫か!? 黒!!」

「余所見とは随分と余裕じゃあないか」

炭素硬化したエドワードの機械鎧のガードをアッパーでこじ開け、そのまま頬に世界のストレートが叩き込まれる。
空中で二、三度回転しながら口から数本歯が飛び出し殴り飛ばされる。
床に打ち付けられかけたエドワードを御坂は磁力を使い、左足のオートメイルを引き寄せ抱きとめる。

「ガハッ……ゥ、オェ……!」

脳を揺さぶられ視界はグラつき、気持ち悪さと激痛が入れ混じった感覚だ。
加えて口の中も血で充満し、鉄臭いのが不快さを増していく。
御坂が受け止めなければ、落下の衝撃も加算してエドワードも暫く地べたで寝転がってもがいていたことだろう。


「……まだ、戦える?」
「何とか、な……まだ体は動く……」

「作戦会議か? 随分仲良くなったようだな。
 上条とやらを生き返らせるのに、そのチビは邪魔だろうに」

「その通りなんだけどさ……毎回事情が変わるのよ……。
 そう―――今も前もアンタが一番邪魔!!」

「フン、『世界』ッ!」

御坂が電撃を放つと同時に時は止まる。
大ぶりな電撃の槍、御坂の攻撃パターンなどいい加減見飽きていた。
もっとも『世界』の前では如何な攻撃も無駄なのだが。

「ッ? 奴は何処に」

だが奇妙なことに時の止まった世界でエドワードの姿が見えない。
DIOは首だけ動かしエドワードの行方が何処かすぐに見つけた。
DIOの背後、お父様の前へとエドワードは投げ飛ばさされていた。恐らく大ぶりな電撃はカモフラージュで本命はエドワードをお父様へとぶつける為だ。

「無駄な事を。無駄ァ!」

御坂が殴り飛ばされる。瞬間、時が動き出す。
だが予想以上に手ごたえは固く御坂の表情にもダメージの蓄積は見て取れない。

「確か、通電すると人体は硬直するらしいな……。なるほど、それを応用して予め筋肉を硬化してダメージを減らしたのか?」

「い、っ……。―――さあね、どうだか」

DIOの言った通り、時間停止のラッシュ対策に御坂は全身を通電させ筋肉を硬直させていた。
ダメージは減少したものの、だがやはり生身で受けているだけはあり痛みはかなりのものだ。

「ようやく、一人だ」

ダウンした黒の元へお父様が近寄り手を翳す。
一先ず石だ。これで一つとはいえ補充できる。残った連中もDIOと結託すれば容易に石として養分にもなろう。
そしてDIOも適当な頃合いで肉体を消滅させ、再びこの身に取り込んでくれる。

「ウオオオオオオオオオオオォォォ!!!」

だが砲弾のように突っ込んできたエドワードの鋼の拳にお父様は殴られる。
意識が飛び掛け、視界が揺らめく。

「き、さま……」

これで何度目だ? 
以前の時は数える余裕すらなく殴られていた。
そして、また今度もだ。

「てめえの、相手は俺だ!」
「―――エドワード・エルリック!!」

両者とも無数の柱を錬成し打ち付け合う。
錬金術戦に於いて、勝敗を分かつのはその精密さと錬成速度に他ならない。
しかしお父様は神と精神汚染を抑え込んだうえで、更に錬金術の操作にまで手を回さねばならない。
対してエドワードは手合わせというモーションは必要ではあるが、全てを錬成に回すことができる。


「ぐ、おおおおおお!!!」

後発から放たれたエドワードの柱がお父様の柱を打ち砕き、お父様へと直撃する。
頬肩腹太腿を一気に強打され、体が引きちぎれそうなほどの激痛を誘発した。
速さだけならばまだしもその精密さでは、エドワードが勝ってしまう。

「ビンゴだったぜ杏子……お前の反動がヤバいって考えは。
 いける……いける!!」

DIOやアヌビス神を相手にするより、そのお父様をまず真っ先に潰した方が早い。
アヌビス神はまだしもDIOは一時的な蘇生であり、恐らくお父様が倒されれば消滅するはずだ。そうなればアヌビス神も自動的で戦意消失する。
何より杏子の直感も大当たりだ。神のほかに何らかのデメリットにより、お父様本体の戦闘力は大幅に低下している。
倒せる。倒しきれる。

「人……間が……ぁ」

殴られた箇所の痛みが治まらない。
再生がダメージについてこれていないのだ。不味い、明らかに石が底を尽き始めている。
いっそ精神汚染を抑えず、暴走のまま奴らと戦ってしまうか? いや本体と対峙されてしまっている以上、理性のない状態で戦えば奴らに良いようにされてしまう。
ならば神を開放してこちらの負担を減らすか? それこそバカげている。神の力の片鱗を振るってようやく、辛うじて戦闘になっているのだ。
それを逃せば、武装解除し奴らに首を差し出すのと同じこと。

「ッッ―――おおおおおォオオオォオオオオオオ!!!」

投げつけられた槍が頭を吹き飛ばし、射出された砲弾が半身を抉り、先を尖らせた柱の剣山が全身を串刺す。
石を外に垂れ流させていく。無意味で不要な再生に石は自動的に消化され、間髪入れずエドワードは攻撃を入れる。
血の代わりに吹き出す黒い影のような液体と、赤い錬成光がお父様の余命を現すかのようだった。

「こ……なぶ、ざ―――まなァ……」

全身を駆け巡る激痛とダメージに呂律も回らない。
あと数撃、それだけ入れればあの容れ物は崩壊しお父様の残機は残り一つになるはずだ。
この場にきて何度目になるか分からない、手を合わせを行う。機械鎧から刃が飛び出しエドワード愛用の剣として姿を変える。

「うおおおおおおおおおお!!!!」

終わる。この一撃で全てが終わる。
この場で出会った全ての参加者と見たこともないが、恐らく自分達と同じように殺し合いに抗ってきた者達の為にも。
奴のフラスコの中の小人の数百年に終止符を―――








――――大丈夫、みくは自分を絶対に曲げないから!




「なん――――」




「エドワード君!?」







そうだ。こういうことだってあり得た。
DIOを創り上げたように、また他の参加者を呼び寄せることもお父様ならやりかねないのだ。

「…………み、く……?」

目の前に放り出されていたのは、前川みくその人だった。
エドワードの剣はその目前で止まる。それが既に死んだ人間だとしても―――

「良かったにゃ、みく……みくね……」

「ど……いて……くれ……!」

「なんで? みくね、足戻ったんだよ! ほら!」

そこにいるみくは生存と全く同じ笑顔で、それでいてとても幸せそうな顔をしていた。
お父様が作り上げた紛い物の身体であろうと、それを壊す事などエドワードにはとても出来ない。

「あ、あれ?」

エドワードへとゆっくりと歩んでいたみくがバランスを崩した。

「お、おかしいな……あ、足動かな―――ぁ」

みくの異変にエドワードは気づいた。
確かに今の彼女は五体満足だが、その四肢が溶け出していた。
この場に人体を溶かすような劇薬も高熱もない。理由は一つ、お父様があえて不完全に作り上げた身体だという以外に他ならない。


「い、た……痛いよ……え……どわーど―――」

四肢が歪み、原型を留めなくなると徐々に融解はその全身に広がり銅を溶かし、その愛くるしい顔すら溶かしていく。
骨が飛び出し、目が零れ落ち、体の内臓物が外気に触れ醜悪さを醸し出す。
エドワードはそれを震えて見ることしかできない。

「た……s……け」

その震えは怒りに変わり、エドワードはその奥でほくそ笑むお父様へと叫ぶ。

「――――――――てめえええええ!!! ふざけ――――ゴッ……!?」

みくごとエドワードの身体はお父様が作り出した剣によって貫通していた。
エドワードに溶解したみくだったものが倒れこみ、エドワードも失われていく己の血液と痛みによって意識が呆然とする。
それでもあの目の前の糞野郎を倒すために、ここまで繋いでくれた仲間たちの為にエドワードは手を合わせる。

これが最後になっても構わない。この一撃だけは何があろうとも―――





「母―――さん……?」




目の前に居たのは母親。

違う。それは分かっていた。

容姿を容れ物と称するような奴だ。
エンヴィーが奴から生まれたのなら、その力を使えてもおかしくはない。

剣はエドワードの腹部を抉り、そのまま右の横腹を切り裂く。
腰の半分が切り裂かれ、エドワードの上半身と下半身は千切れかかっていた。
滝のような血を吹き出し、エドワードは倒れていく。
溶解したみくだった液体の上に重なるようにエドワードは倒れる。

「ご……め……ん……みく……みんな……アル……ウィn―――」

「……………手こずらせおって……」

血だまりに倒れたエドワードを見ながら、お父様は息を荒げ拳を握りしめる。
神として不相応な戦いだ。こんな人間如きに殺されるかと思う、その寸前まで追い詰められたのだ。
この殺し合いを始める前の事前調査でエドワードの母親、つまりホーエンハイムの妻の容姿を知らなければ、最低でも相打ちにまでは持っていかれるところだった。

「だが、死んだ……貴様は死んだのだ……エドワード・エルリック!!」

しかし過程がどうあろうと、勝利したのはフラスコの中の小人だ。
正史において敗北したこの男に今まさに、運命を乗り越え勝利した。
エドワード・エルリックという己の敗北を定められた未来を超越したのだ。



「あの、馬鹿……!」

御坂の叫びが木霊する。
遠目で正確には判断できないが、エドワードの瞳孔は開きっぱなしに見える。
瞼一つ動いていない。その上あの血の量を考えれば、ほぼ間違いなく手遅れ。

「無駄無駄無駄無駄ァ!!」

「――――ッッ!!」

『世界』のラッシュを貰い吹き飛んでいく御坂。
この状況でエドワードの脱落は致命的。更にアヌビス神さえ敵に回るという最悪の状況下で黒もダウンしている。
実質、御坂一人で奴らの相手をしなければならない。

「―――ガハッ……!」

壁に打ち付けられ、たまらず尻もちをつき項垂れる御坂。
DIO一人でこの有様なのに、残ったお父様とアヌビス神を相手にするなどたまったものではない。

(まだよ……あいつ本体を潰せば―――)

痛んだ体を鞭打ち、残された全ての電撃を手の先へ集めていく。
この際DIOとアヌビス神は完全無視だ。あの一時の勝利に浮かれ、余韻に浸っているお父様へ全てをぶつける。
御坂は鉄塊をティバックから取り出し、電撃を溜めた拳を渾身の限り打ち込んだ。

ポロッ。

そんな気の抜けた音だった。

「え―――嘘……」

御坂の全身を覆う電撃が嘘のように消失していき、拳には鉄塊を殴りつけた鈍痛だけが残る。
鉄塊はそれを受けて数㎝ほど転がっていきそのまま停止した。

電池切れだ。

むしろ、御坂はここまでほぼ休みなく良く戦ったというべきだ。
彼女の生きた短い時の中でこの殺し合い以上に電撃を浪費した戦いはなかった。
当然彼女の体力スタミナは限界値の底を尽き、電撃の制精度も次第に落ち辿るべき結末は目の前の有様。
それは自身の能力を誰よりも理解し、使いこんできた御坂が誰よりもよく知っている。
この現実にも心の何処かで納得はしていた。
しかし、だとしても現実を突き付けられるまでは信じられなかった。

「回復結晶―――」

最後の頼みである回復結晶も取り出すが、以前のようには光らない。
ティバックの中に入れていたとはいえ、DIOに殴られた衝撃でいかれてしまったらしい。
見れば罅が刻まれており、しばらくしてから無残にも回復結晶は砕け散った。
こうして最後の希望は潰える。

「これで実質、全員脱落だな」

絶望に叩き込まれた御坂を眺めながら、DIOは鼻歌でも歌いたい気分になった。
あの忌々しいチビガキと電撃娘の最期に立ち会えるとは実に清々しい。

「アヌビス神、その黒コートに止めを刺せ」

「了解しましたァ! DIO様!!」

アヌビス神に操られた雪乃の身体は、本人の意思に関係なく黒の元へ歩み寄る。
その足取りは実に軽い。本当に自分の身体ではないようだった。

『お願い……やめて……お願い!』

雪乃は罵声すら吐けず、口から紡がれるのは懇願だった。しかし、それが如何に無意味な事か雪乃本人が理解している。
アヌビス神とは元々成り行き上での共闘を果たしていたまでのことだ。それもこの殺し合いの中でも出会ってからは、非常に浅い時間だ。
彼にDIOへの強い忠誠心があり、それを上書きすることなど雪乃では不可能。悪には悪のカリスマ、救世主が必要なのだ。
その代わりを雪乃が果たすことなど到底できない。


「お前に恨みはないけどよ……」

アヌビス神を剣を振り上げる。
別にこいつらに情などない。人間など代用の利く部品のようなものだ。
連中が武器というものを、そうやって扱っているかのように。その中でもDIO様だけは特別なお方。
唯一無二の救世主であり。アヌビス神が初めて安心を得られるたった一つの存在だ。
それに抗うことなど出来ない。


―――後は頼んだぞ



―――...頼んだぞ、アヌビス




「ああ―――」



数時間前だが懐かしい。




こんな奴らいたな。




どうでもいいけど。










「ほう、アヌビス神よ」



アヌビス神の切っ先は黒ではなく



「愚かだなッ!」




DIOの脳天に突き刺さっていた。





「私はお前の戦闘力だけは高く買っていたが、仕方あるまい。―――死ぬしかないな」





黒を斬る寸前で方向転換し、DIOすらも見切れない速度で肉薄し一撃を入れたのだ。
DIOも流石にこの行動は予想外で、反応が遅れたのは無理からぬこと。しかし、吸血鬼の肉体は脳を貫かれた程度では滅びない。

「このまま脳みそをかき回せば―――」

吸血鬼が如何に優れた生物か知らないが、頭が重要な器官であることは共通しているはずだ。
何よりこのDIOはお父様が創り出した紛い物の肉体。ある程度急所を破壊してしまえばそれで息絶えない道理はない。
だが神速で動く剣は一瞬にして止められる。如何な速さであろうと時が止まってしまえば止めることは容易い。

「さて、誰の脳みそをかき回すのか。教えてもらおうじゃあないか」

たったの指二本で刀身を掴まれただけでビクともしない。
透明化を使うか? いやその前に圧し折られ雪乃本体が殺されるだろう。


「……悪かったな」

「アヌビス―――」

雪乃の手が剣から離れる。否、投げるようにしてその勢いのまま雪乃が後ろのめりに傾く。
アヌビス神の支配が解け、所有権が雪乃本人へと戻る。だが彼女に所有権が戻る以前にアヌビス神はより強く肉体を後方へ傾けていた為に、勢いを殺せぬままDIOから距離を取って尻餅をついた。
これがどんな意味を持った行為だったのか、雪乃には理解できた。
その剣の刀身には、雪乃に体を返す直前に青酸カリのカプセルを潰したものをふんだんに塗り込んでおり、投擲されたことでより深くDIOの脳内へと侵入し体を蝕む。
もっとも、DIOも即死はしないだろう。少なくともアヌビス神を圧し折って叩き壊す程度には死ぬまでの猶予はある。
つまりどう転んでもアヌビス神も死に相打ちだ。


何やってんだ。俺は。

でもよ、何でだろうな。

DIO様から買った安全なんかより、





―――頼んだぞ―――



あいつらから貰ったたったの一言のがよぉ。な~~んか嬉しいんだよなあ。


「アヌビス神、今お前は私と道連れに死ねると思っているのだろう?」

『……!?』


言われてから気づく、青酸カリを頭に直接ぶち込まれて吸血鬼といえども致命傷の筈だ。
しかしDIOは平然と笑みを絶やさない。

「こんなビタミン剤でこのDIOを殺せるとでも思っていたのか!」

DIOの手で弄ばれているカプセル。それは紛れもなく、アヌビス神が剣に塗り込んだと思っていた青酸カリのカプセルだった。
アヌビス神が裏切りの裏切りを決意したその瞬間に、DIOは『世界』の非常に精密な動きと超スピードでビタミン剤と青酸カリを入れ替えていた。
この勇気溢れるアヌビス神の行動も全てはDIOの掌の上だったのだ。

「さあ死ね! そして次は貴様だ電撃小娘ッ!」

圧し折られる。それも完膚無きに微塵のかけらも残さず徹底的に。

『ば、万事休すだああああああ!!』

「―――――――ッ!? ぐおあああああああああああああ!!!」

『世界』の拳がアヌビス神に触れるその寸前、柄にワイヤーが巻き付きランセルノプト放射光と共に高圧電流が流された。
肉体を電撃で焼かれる激痛にDIOは悶える。その間にワイヤーはアヌビス神に巻き付いたまま手繰り寄せられる。


「黒さん!?」

雪乃の声の先に傷を抑えながら、立ち上がる黒の姿があった。
しかし体を打ち付けた痛みやその時の衝撃で頭を揺らし過ぎたのか、黒の視点は定まらずまた姿勢も安定しない。

「チィ、蛙の小便より下賤な電撃を……!」

DIOの怒りの矛先は黒へと向く。今すぐにでも『世界』をけしかけたいところだが、DIOの身体に異変が起こりスタンドの操作が途切れた。
見れば右手が融解し骨が垣間見え、その骨ですら僅かに溶け出してきていた。お父様が創った紛い物の身体に限界が来たのだろう。
動揺狙いで作ったみくと違い、多少頑丈に作ったとはいえ元々お父様に死者を蘇らせる気などない。
その体はもうじきに崩壊しDIOは死人へと逆戻りだ。

(と、奴は思っているのだろうな)

しかしDIOは慌てない。これまでの戦いと後藤の不意打ちで死んだ経験から調子に乗ったり、慌てるといった行動は己の首を絞めるということを嫌というほど学んでいたのだ。
手繰り寄せたワイヤーからアヌビス神を放り捨て、黒は友切包丁を構えながらDIOを警戒する。なるほど、一連の行動を見てアヌビス神を助けはしたが体を貸すほどではないということらしい。

(確かにこの肉体は長くはもたん、しかし……あるではないか、目の前に格好の肉体がッ!)

そうDIOが狙うは黒の肉体だった。
女ではサイズが合わず、エドワードなど論外だったが黒の身体ならば一回り体系も小回りになるが十分な肉体だ。
あれを乗っ取ることで完全な復活を果たし、この場に残った連中、それこそフラスコの中の小人も含め抹殺し、帝王として君臨する。

(だが……流石に近づいてこないか……。『世界』の射程外だ……。私から近づいてもいいが、下手に反撃を食らってしまい肉体の崩壊を早めてしまう、何てことになるのは賢いもののする事ではないな)

黒はDIOの動きに注視し、構えを乱さない。
身体のダメージも時間の経過である程度回復し、戦闘に及ぼす支障も少ないだろう。
DIOも負ける気はないが、体の融解を考えれば射程外から攻めるというのはあまりしたくない。

「そうか……君が黒か」

故に一つ、必ず黒が動くであろう切り札を切る。

「何?」

「ジャック・サイモンから話を聞いていてね。そうそう、イリヤちゃんも随分お世話になったようじゃあないか」

「イリヤ……?」

「どうだった? 私の目論見……いやそれ以上に彼女は活躍してくれたようじゃあないか」

これはお父様と対話した時、万が一に使えるかもしれない為に渡された情報の一つだった。

「お前が……イリヤを……?」

「おっと勘違いするなよ。やったのは食蜂操祈という女なのだからな」

「貴様―――」

黒の沸点が頂点を超える。


(馬鹿がッ!)


空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)。
水圧カッターの原理で高圧で体液を目から発射する技。
もっとも黒ならば、それが初見であろうとも避けることは難しくはない。物事の変動を見極め、攻撃の前兆を予知することで先制回避を行う超感覚を黒は戦場で身に着けている。
だがこの一瞬は違う。黒はイリヤの事に関し心を奪われ、怒りという人間が抱く愚かな感情に苛まれ隙が生まれていた。黒の目に空裂眼刺驚が写った頃にはもう遅い。
黒では回避不能な速さと距離にまで迫っていた。

「―――ッ」

喉元へ飛んだ空裂眼刺驚は、黒が反射的に翳した友切包丁により弾かれ逸れた。
だが軌道を変えた空裂眼刺驚は黒の防弾コートを貫き横腹を貫通した。

(あの包丁頑丈だな)

見た目に反し予想以上に包丁が業物であることに驚くが、黒を無力化することに際し問題はない。
黒は腹を抑えながら膝を折り激痛に耐えている。致命傷ではないが、大ダメージであることに変わりはない。
所詮人間の肉体だ。痛みには怯み出血の量で大量は大幅に消費される。

(フンッ、まあいい。最期に勝利し笑うのはこのDIOよ)

ゆるやかに軽快なステップでDIOは接近する。
最早新たなボディは手に入ったも同然。口笛でも吹きたい陽気な気分だ。

「おっと、アヌビス神(こいつ)を手にされると厄介だったなあ」

「いっ、ぎ……!」

「ゆき……の」

雪乃がアヌビス神に右手を伸ばそうとした瞬間、その手を踵で踏み砕く。
そして軽く雪乃の顔面を蹴り飛ばし吹き飛んでいく様を眺めながら、アヌビス神を遥か後方へと蹴り飛ばした。





「さあ、死ねェ――――」




だが次の瞬間、DIOの視界は白く染まり肉体が消し飛んだ。
断末魔をあげることもなく二度目の生はこうして幕を閉じた。




「あーあ、みっともないねえ」



DIOごと巻き込んだ電撃の中から黒が飛び出しその姿を認識した。
カツカツと革靴が床を叩く子気味いい音と共にヨレヨレのスーツと黒い剣士の巨大人形が姿を現す。

「足立……? お前死んだんじゃ」
「ばーか! 俺があの程度で死ぬわけねえだろ!!」

本人の口調とは裏腹にそれは偶然だった。

(まあ本当に偶然だったんだけど……マガツイザナギにあんな力があるとは思わなかった……)

マガツイザナギには光を無効化するステータスがあった。その為シコウテイザーの光線を光と認識し無力化したのだ。
クマや雪子のように本体への耐性持ちは制限されているのだが、既に足立は首輪を外して制限が解けている。
咄嗟に出したマガツイザナギの影響で足立本体にもその耐性が付き、彼は九死に一生を得た。
結果として、この場で何度も助けられた悪運がまたもや足立を救った。
まるで死亡詐欺のバーゲンセールである。

「へえ、それにしても随分弱ってるじゃない。今なら楽に殺せるんじゃないの」

シコウテイザーがインクルシオとテオドーラ、ヒステリカによって動きを停止したのを見た足立は奇跡的に自分達が勝利へ近づいていることを理解していた。
そうなれば話は早い。勝ちそうなこの連中に便乗し自分は生還するだけだ。
マガツイザナギに抱えられながら空を飛び、やっとこさシコウテイザー内部の戦場へと駆け付ける。
そこには瀕死のエドワードと力を使い果たした御坂に片腕の黒、あのヘンテコな剣のない雪乃、追い込まれたお父様。これ以上の好機はない。
お父様含め全員ここで皆殺しだ。

「ハハハ……待ってたよ……この瞬間をォ……! マガツイザナギィ!!」

電撃がお父様へ降り注ぐ。斬撃が再生を終えた肉体を引き裂き切り刻む。
エドワードが堕ち、御坂が脱落した今この場に於いて最も火力に突出しているのは足立のマガツイザナギだ。
ただでさえ残りわずかな石をこれ以上減らされるわけにはいかない。しかし、回避すら間に合わぬほどの圧倒的広範囲の攻撃は容赦なくその命を削っていく。
元々人間ではなく、対シャドウの能力なのだ。それが一個の人の形をしたものに向けられればオーバーキルになるのは当然の摂理。

「次から次へと……!」

不確定要素だらけの現実にお父様は忌々しさを感じながら舌打ちする。
地面を錬成し針柱を足立へと叩きつける。しかしマガツイザナギが割り込み、柱は粉々に打ち砕かれた。
更にその剣を振るう衝撃が、かまいたちのようにお父様の身体に切り傷を増やしていく。

「オラオラオラオラァ! どうしたんだよォ!?」

マガツイザナギの猛攻は増す。
拳で頭蓋を捻り潰し、胸元へその剣を突き刺し上げる。
お父様の身体はその勢いのまま宙に舞い、更にマガツイザナギはボールを打つような動作で剣を振り上げお父様を切りつける。
斬撃でバラバラになり床に打ち付けられながら、バウンドしていくお父様へ追い打ちの電撃が放たれ体は黒炭へと変わっていく。


「つまんないねえ! 神様ってこんなに弱いのかよ! エンブリヲ以下とかミジンコみたいなもんじゃねえか!!」

殆ど何もやっていない足立だが上機嫌でお父様を煽り、高笑いでマガツイザナギをけしかける。
ようやくだ。ここにきてようやく足立に全ての運が向いてきた。
それで上機嫌にならないはずがない。

「より……よって……足立……如きに……」

賢者の石が消費され、肉体が再生し体制を立て直す。だが突っ込んできたマガツイザナギの狂剣に成すすべなく滅ぼされていく。
エドワードならばまだ分かる。御坂も黒も雪乃も分かる。しかし何故だ。何故よりにもよって足立透なのだ。
こんな屑のようなただの資源に何故嬲られる。何故殺されかける。何故最後に立ち塞がったのがこんなゴミなのだ。

「不服かよ? でもなあ、世の中こんなもんなんだよォ……現実を見ろ! この引きこもり爺ィ!!」

かつてある少年達に言われた台詞をまんまお父様へと突き付ける。
思い出すだけでイライラするが、それを晴らすサンドバックが居るというのは非常に心地いい。
切って切って切って切って切って、切り続け。電撃で焼いて焼いて焼き続ける。
これほどのストレス発散道具は存在しない。

「ハッハァ! 何回殺せば死ぬのかな、このおっさ―――あ?」

お父様を切り続けていたマガツイザナギの剣が止まる。
見ればマガツイザナギの腕に影が纏わりつき、再生しきっていないお父様の身体から無数の影が触手のように沸いていた。
それらはマガツイザナギを囲い、固定するとお父様の顔が伸びマガツイザナギの腹部へと突き刺さる。

「礼を言うぞ足立よ……よくぞ賢者の石を運んでくれた」

「ちょ、な……なんだこれ……!」

マガツイザナギは力なく項垂れ、ノイズが何度か走るとそのまま弾けるようにして消えた。
お父様は傷の再生速度が速まり、先ほどより幾分余裕を見せる。

「実に上質な賢者の石だったぞ。マガツイザナギはな」

「ぺ、ペルソナを……食いやがった……?」

足立は掌を広げるが、タロットカードがまるで出てこない。
テレビの外でペルソナが召喚できないのとはわけが違う。
お父様が賢者の石として変換し取り込んだが為にペルソナそのものが消えたのだ。。

「驚くことでもない。ペルソナはもう一人の自分が実体化したもの。見方を変えればもう一つの魂でもある。
 つまり、そこにも資源としての活用法はあるということだ」

お父様が掌を翳す。そこにはタロットカードが現れ、足立の目の前であっさりと握りつぶされた。


「自分のペルソナで死ぬのも面白いだろう」

マガツイザナギがお父様のペルソナとして足立の前へと対峙する。
足立は腰を抜かし、尻餅をついた。

「嘘だろ……おい……悪い冗談だろ……」

これまでペルソナだけは自分を裏切らず、全ての外敵から自分を守り続けてきてくれていた。
それがこんなあっさりと奪われたのだ。足立の心的ショックは計り知れない。




「―――なーんてね」




マガツイザナギが前進し剣を振り下ろす。その寸前、もう一つの剣が足立の眼前へ割り込んだ。


「イザナギ」


それはマガツイザナギの黒に赤の線を付け足したデザインと対になるような青いオーラを纏い、黒に白を付け足したデザインの剣士。
鳴上悠のペルソナ、イザナギであった。

「馬鹿な……貴様のような愚図が……ワイルドだと」

「なんでか分かんないけどさ……使えるんだよね」

鳴上も生田目も足立も元は同じ存在から力を授かった者たちだ。
そうであるなら、鳴上と同じ力を足立が使えない道理はない。ただ彼にはその条件がなかったに過ぎない。
果たして、その条件を何処で満たしたのか。いつ目覚めたのか足立には一切の自覚はないが。

「でもさぁ……イラつくんだよ。こんな糞みたいなペルソナ出させやがって!」

イザナギとマガツイザナギの剣裁が吹き荒れ、巻き起こる疾風が足立を煽る。
胸元からだらしなくぶら下がったネクタイは風に揺れ、ブレザーも足立の心象を現しているように波打つ。
20を超える剣の打ち合いの末、マガツイザナギの剣が手元から離れ零れ落ちた剣をイザナギがキャッチする。
まるであの時と同じ光景だ。ただそれを操る本体が逆転し、一人は全くの別人ということを除けば。


「まるでさぁ……本体がなってないんだよねえ!!」

マガツイザナギの胴体に剣を突き立て、更にその顔面にもう一本の剣を突き刺した。
ノイズを上げてマガツイザナギは消失する。
本体へとフィ―ドバックした激痛にお父様は手を抑え、眉を顰める。
ペルソナ使いとしては足立の方が幾分も格上だ。しかも手を知り尽くした奴自身の能力なのだ。その弱点や動きの癖も完全に見切られている。

「あーあー本当に気持ち悪い、あのクソガキの面が頭にこびりつくようでよォ……。どう落とし前つけてくれんだコラァ!!」

イザナギを駆る足立はまるで在りし日の鳴上悠を彷彿とさせた。それは足立本人にも言えたことで、一度殺したはずの鳴上の呪縛に囚われているかのようだった。
不快にならないはずがない。もう奴を一度殺し直すにしても、こんな気色の悪い思いをさせられた発端であるお父様とやらに全ての怒りをぶつけるくらいでなければ何も収まらない。

「そうか、ならば開放してやろう」

「は?」

刹那、突風と共にイザナギにノイズが走り吹き飛んでいく。
そのイザナギに影を巻き付けお父様はマガツイザナギ同様その身に取り込み始めた。
何が起こったのか、その一瞬の出来事に足立は目をパチパチさせながら呆然としていた。

「イザナギは風が弱点だ。そんなことも知らなかったのか」

お父様は大気の流れを変換し風の塊を作り出した。
それらを圧縮し砲弾の繰り出しイザナギへと放った。当然、風が弱点であるイザナギにとっては壊滅的なダメージだ。
その挙動は静止しあえなくお父様に捕まってしまった。

「え? え? ……え?」

「さて、誰がなってない……だったか」

無論、大気の流れに干渉する程の石の消費は今のお父様にとっては痛手だが代わりにイザナギを取り込めたことは非常に有益だ。
何よりこの場にはもう戦える者などいない。ペルソナのない足立などただの生ゴミに過ぎない。


「ちょちょちょちょ、ちょっとタンマ! ペルソナ! ペルソナァ!! おい出ろよ……出てくれよ! 頼む!! ペルソナァァ!!」

「どうした?」

足立の腹部に激痛が走り宙を浮きながら、そのまま背中から落下する。
先ほどまで足立のいた場所には柱が生え、それが足立の鳩尾を突き上げたのだろう。
もっとも足立はそんなことなど理解する間もなく、痛みにもがき苦しみ床の上をゴロゴロ這いまわる。

「ごはっ……!? い、いてえええええええええええええ!! ち、ちくしょお……ちくしょおおおおおおおお!!!
 こんなのありかよ!! お前返せ……俺のペルソナ返せよおおおおおおお!!!」

「不服か? だが、世の中こんなものだ……現実を見ろ。虫けらが」

更に複数の柱が足立の全身を強打し足立はボロ雑巾のように吹き飛んでいく。
ワイルドが使えるようになったはいいが、皮肉にも足立はマガツイザナギとイザナギしか使えない。
今の足立にはティッシュにラケットに警察手帳というガラクタしかない。つまるとこ一気に戦力外へと格下げした。

「―――いっ!?」

「伏せろ!」

喚く足立へお父様は巨大な槍を錬成し投擲する。その顔面を捉えた矛先は確実に足立の頭部を粉砕しかねない。
だがその足立の頭を抑え、前のめりに黒は伏せる。足立は顔を強打しながら、その幸運に感謝しため息をはく。

「……足立、走れるか?」
「へ? あ、ああ……」
「俺があいつの気を逸らしている内にあの剣を拾え」

足立の耳元で黒は囁く。
黒の言う剣とはアヌビス神のことだろう。雪乃の手元から離れ、DIOに蹴り飛ばされたが幸いにも距離はあるがお父様からも離れている。
決して取りに行けない場所ではない。
だが雪乃は顔から鼻血を流し、壁にもたれながら気絶している。エドワードは死にかけ御坂もスタミナ切れ。
消去法で足立が取りに行くしかない。
当然、足立もペルソナのない現状では黒に従うしかない。二つ返事で了承した。

「お前の相手は俺だ」

お父様の影は刃へと形成され、向かい来る黒へと振りかざされる。
黒は友切包丁でそれらの影と打ち合う。
胸元へ奔る三つの影を友切包丁を滑り込ませ薙ぎ払う。
顔面を穿つ一撃を上体を逸らし避けながら、友切包丁を投擲しお父様の脳天へと突き刺す。
繋いだワイヤーから電撃を流し、お父様の全身が感電した。だがそれらの電撃がお父様の掌に集まっていく。
次の瞬間、電撃から一つの光球を創り出し掌を黒へとかざす。
ワイヤーを手繰り寄せ、友切包丁を回収しながら光球を避ける。
光球は壁を溶かし、ドロドロの溶解物から異臭を上げていた。


(一人で何処まで奴を削りきれる?)

あと僅かの残機であることは分かる。ここまでのお父様は一切の手段を選ばずなりふり構っていない様だった。
しかし、黒は体術に優れていても相手をオーバーキルで殺すという火力に於いては長けていない。

「チッ」

指輪が光りブラックマリンの力で水流が竜巻のように舞い上がり、お父様へ躍りかかる。
お父様は手を合わせてから両手を水流へと翳す。瞬間水流は冷やされ無数の氷柱へと変貌した。

「ブラックマリンは使わせん。物質変換もその様では使えんようだな」

何より致命的なのが、黒一人なら彼が持つ唯一の高火力攻撃のブラックマリンへの対応は比較的容易だということだ。
物質変換の電撃を纏わせれば話は別だが、空裂眼刺驚による腹部の負傷により黒はその痛みから物質変換に必要な集中が出来ない。
お父様の錬金術に対して、一切の対抗術を失ってしまったのだ。

「……忘れるところだったな」

氷柱が突如膨張し破裂した。それらの破片は凶器となり、アヌビス神を取りに向かう足立へと突き刺さった。

「が、ぎゃあああああああああ!!!!」

足立の悲鳴が木霊する。背中に幾つも突き刺さった氷の破片はその背広を赤く染め上げる。
あまりの激痛に足立は転倒し、口を玄関まで広げながら目に涙を浮かべ両手の指で床を引っ掻き回す。
その引っ掻いた指先の爪が曲がり、爪が剥がれかけるがそれすらも意に返さぬほどの背中の痛みに足立は過呼吸気味になる。
不幸中の幸いなのが、頭は全くの無傷で命に別状はないのは流石というべきか。

「足立!」

血だらけの足立の様を見るに戦線復帰は不可能だろう。
これで残るは同じく負傷を抱える黒一人だけになってしまった。

「終わりだ……貰うぞ貴様の賢者の石を!!」

影の触手が黒の両腕を捕らえる。そのまま強引に引きずり寄せお父様は黒の胸元へ手刀を放つ。
手は黒の体内へとめり込み、その魂を賢者の石として生成していく。
体内に異物が侵入する不快さと、魂が一つのエネルギーとして変換される怖気に黒の本能が警鐘を鳴らす。
一刻も早くお父様から離れようとする本能を黒は抑え込み、むしろ前進する。
そのままお父様の顔面を掴み、黒の身体をランセルノプト放射光が包み込む。


「いや……終わるのは貴様だ」

電撃がお父様の全身を駆け巡る。
肉体を焼き回る高圧電流は今のお父様にとっても無視はできない。
賢者の石の生成より早く、お父様を殺すことが出来ればまだ黒にも生還の目途はある。仮にそれが不可能だとしても、お父様を道連れにはしてみせる。
強い覚悟と信念により放たれた電撃にお父様は表情を歪ませる。

「無駄な足掻きを」

賢者の石の生成速度が速まる。黒の意識が飛び掛け、視界が定まらない。
魂と肉体を結ぶ精神が不安定な状態に陥り、黒の身体も黒の意思に逆らい力が抜けていく。
契約能力の行使も収まり始め、お父様の身体を蝕む電撃は徐々に弱まり始める。

(ここで……終わるのか……?)

黒一人の力ではここまでは来れなかった。
全員の力があってそれを紡いできたからこそ、初めてこの遊技盤を引っ繰り返しフラスコの中の小人へと反旗を翻したのだ。
多くの犠牲もあり、救うことも守ることも出来ないこともあった。それでも、ようやくここまで辿り着けたその終着点がここなのか?

(……すまない。俺はもう―――)

黒の意識が落ちていく。体は人形のようにぶらりと腕を垂れ下げ、まさにドールのような感情のない無気力な表情でその瞼は閉じられていく。
最期に浮かぶのは助けると約束した少年と黒が守りたかったドールの少女―――そして金髪の少年と茶髪の少女。

「―――まだ……眠るには早ェぞ!!」

放たれた雷撃はお父様と黒を飲み込む。お父様の身体はそのあまりのエネルギーに消滅し、黒に突き刺さった手もまた焼き千切れる。
意識を取り戻した黒は一気に後退し距離を取る。
何が起こったか分からない黒はその雷撃の先にいる二人の少年と少女を見つめた。







「っ、たく……」

御坂は這いずりながらエドワードの元へと進んでいく。
全身に力が入らず、こうして体を動かすだけでも息があがり止まってしまいそうだ。
そうしてやっとの思いで、エドワードの元へ辿り着いたは良いが既にほぼ死んでいる状態だった。
何せ腰の半分近くを切断されたのだ。その出血量もダメージも想像に難くない。

「普通に血を抑える程度じゃダメか」

遠目からでも分かっていた事だが、こうなった以上生半可な応急手当では助からない。
普通ならばもう諦めるしかないだろう。
だが御坂には一つだけ秘策があった。

御坂は上体を起こし、それから両手を持ち上げ祈るように手を合わせる。
パンといった子気味いい音に自分でも些か驚き、お父様に気付かれないか心配になるがお父様は足立に気を取られていた。
好都合だ。“錬成”が終わるまで気を引き続けてくれていれば非常に有難い。

御坂は扉を開けた。それも他の参加者のように首輪を外す際に一端を見たのではなく、強制的にとはいえお父様によって御坂本人が開かされたのだ。
敬意はどうであれ真理に辿り着いた者がえるものは一つ。対価と引き換えに万物を操り、あるべきものを別の形へと再構築する御業。
その術者本体が錬成陣となることで発揮される手合わせ錬成。

知識はある。学園都市で最先端の教育を受けている御坂はほぼ最低限の人体の知識もその頭に取り込んでいた。
問題は一つ。錬成の際に何処から代用するか。これが科学であるならば魔法のように、消しゴムで消す誤字のように怪我が何事もなく消えるということはありえない。
傷を塞ぎ、尚且つ腰というデリケートな部分だ。何らかの形で立てる程度にまで補強しなければならない。
しかし単純に負傷個所を繋げても、恐らく腰の周囲の筋肉は不安定なまま立ち上がるには長期間の時間が必要になる。
それこそ、何時間どころか何週間何か月といったこの場では長すぎる時間が。

「本当に……何度も……ごめんね」

エドワードの血の海に混じったタンパク質の塊。御坂はこれを使うことにした。
そう、お父様が創った前川みくが融解し残った残骸だ。
これを再活用しエドワードの治療へと充てる。
元々人体であったのだ。これらを筋肉として、再活用し腰の補強に使うことは不可能ではないはずだ。
エドワードが復帰した時、それに対し何というか。だが、こうしなければエドワードは死んでいた。だから無理やりにでも納得させる。

「行くわよ……元々巻き込んだのはアンタなんだから……ここで死なれちゃ困るのよ!」

幾度となく殺し合った相手に対し、今度は施しを授けるのは何の因果か。


「ッ? ガッ……!」

御坂の身体に異変が起こった。全身から血が溢れだし、まるで拒否反応のように激痛が駆け巡る。
これはこの場に呼ばれた学園都市の能力者は魔術といった別系統の力を使った時、力の回路が異なる為に自らの肉体を損傷してしまう。
白井黒子もルビーに指摘され始めて気づいた事実だ。御坂が知らないのも当然だ。
だが御坂は錬成を止めない。それを止めることは己の敗北と、その先にある悲願が潰えることに繋がるからだ。

「戻って……こい……!!」

傷は塞ぎ筋肉を補強した。損傷が背骨にまで達していないのは不幸中の幸いか。
エドワードはそれからしばらくし、左手の指をピクリと動かした後、虚ろだった瞳に光が戻り何度か瞬きする。

「み、さか?」

血だらけの御坂を見て、エドワードは一瞬目を見開きそれから事の異様さに遅れて気づく。
死にかけた自分を御坂が救ったのだろうことは分かったが、何故これ程の血を流しているのか。
敵にやられたにしては、傷らしいものも見えない。むしろ内側から溢れてきているように見えるぐらいだ。

「なに、が……錬金術よ……このエセ科学……」

「おい、みさ……い”っ……!?」

「あの子を使っても……まだ完治しないか」

動こうとしてエドワードの意識が揺らぐ、まるで立ち眩みのようだった。
恐らくは多量の出血による貧血だろう。
そしてもう一つはそれを掻き消すほどの激痛が腰から走った。
傷は塞ぎ補強もある程度はしたが、それでも完治した訳ではない。無理にでも立ち上がることは出来るだろうが無茶な運動は禁物だ。

「あの子?」
「ええ、その残骸をアンタの治療に充てたわ。文句なら、あそこの親父と情けなく死にかけた自分に言ってよね」

エドワードは目を瞑り自分が救えない所か死後も弄ばれ続けた少女に思いを馳せた。
彼女の仲間すらろくに助けられず、挙句の果てにこうして自分が命を救われる本末転倒ぶりには苦笑すら込み上げてきた。

「戦いなさい……。少なくとも今、私たちの敵は共通してるのよ」
「だが、俺はまともに動けねえ。お前も……」
「だからこその共闘でしょ?」

御坂は笑みを浮かべてそう言った。







「エドワード……御坂……?」

「ぐ……ば、かな……貴様らにそんな力は……」

黒以上に驚きを隠せなかったのはお父様だった。
エドワードは致命傷を負い、御坂は能力の過度な使用で限界を迎えているはずだ。
何故また立ち上がり、この身に牙を打ち立てるのか。

「生憎……諦めが悪くてよ……」

何より奇抜なのがその見た目だった。
御坂とエドワードは互いに右手と左手を肩に回し、二人三脚の形で互いに支え合うようにして立っていた。
確かにこれならば二人とも何とか立ち上がり、その速度はともかく歩くことは出来る。
しかし分からないのが電撃だ。御坂は力を使い果たし、エドワードも両手が使えなければ錬成は出来ず。そもそもこんな電撃を操れる技量はない。

「エド!」
「おう!」

その光景にお父様は目を疑った。
二人の掛け声と共に、エドワードと御坂の右手と左手が合わさった。それこそお父様が欲する人柱の手合わせ錬成のように。
二人の手が合わせり錬成光が瞬き、電撃が舞い上がりお父様を穿つ。

「そういうことか」

共同錬成。

御坂が理解し演算を行いエドワードが分解再構築する。
御坂はスタミナこそ切れたが、演算力は未だ健在だ。電撃だけが発せられない状態に過ぎない。
ならば電撃をエドワードが錬成してやればいい。その電撃を御坂が演算処理し攻撃へと利用する。
扉を開いた御坂ならばエドワードと共に錬成を行うことも可能だ。

「だが長くは持たん」

お父様の言うように御坂は一度の電撃を放つたびに血を吹き出し体を壊し続けている。
共同とはいえ御坂も錬金術を発動している状態。それは能力者拒否反応を引き起こす。
そしてエドワードも御坂の肩を借りているとはいえ、立つことすら困難なほどの負傷を抱えており、支える御坂が弱れば弱るほどエドワードも己の負担が増し立つことすらできない。

再生を終えたお父様へエドワードと御坂は手を合わせ合い電撃を放ち続ける。
影が巻き上がり盾となる。二人は構わず電撃の出力を上げて突破した。
御坂が吐血しエドワードの額に脂汗が浮かぶ。
お父様は電撃を受けながらもまだ余裕を以て、影を槍状に変え奔らせる。


「御坂ッ!!」
「分かっ……てる!!」

血反吐を吐きながら更に二人は手を合わせ、砂鉄巻き上げた。
影の槍は砂鉄の渦に飲み込まれ、ズタズタに切り裂かれながら消えていく。
だが攻撃を防いだ二人の表情は苦痛に苛まれ続けていた。攻撃も防御も全てが自分たちの身体を削っているのだ。
長くは持たないという、お父様の言葉は間違っていない。むしろこれ以上なく的確だ。

「それが―――」
「どうしたってのよ!!!」

電撃が沸き立ち、砂鉄が撓る。
身体が限界だとか、ダメージが蓄積してるだのはもううんざりだった。
今越えねばならない壁が目の前にあって倒れる暇などない。
その先にあるものが、決して交じり合わない平行線であろうとも目の前のあの男は壁だ。
神だろうがホムンクルスだろうが関係ない。

「てめえは」
「アンタは」

真理をぶっ飛ばし元の身体と弟を取り戻すために。アイツを今度は嬉し涙で泣かしてやるために。
失ったあの全てを取り戻し。もう一度あの日々を送るために。
そこに立ち塞がるのであれば何者であろうとも叩き潰す。


「「邪魔だ!!」」





「ゆ、雪乃……ちゃん……頼む……医者を……呼んで……くれえ……」
「……そうね。世の為に……ドクターキリコでも、呼んだほうが良いかしら……」


痛みにもがく足立を煽ってから素通りし、雪乃はその先にあるアヌビス神へと手を伸ばす。
今でも頭がクラクラする。鼻は幸い折れてはないようだが血は止まらず、華の女子高生とは思えないほどその美貌は崩れ去っていた。
雪乃は髪のリボンを外し、アヌビス神を握った左手を巻き付ける。これで何処まで固定されるか分からないが、ないよりはマシだろう。

「アヌビス神さん……さっきのことは後で問い詰めるわ。だから……もう一度戦って」

砕かれた右手の痛みに耐えながら雪乃はアヌビス神に声を掛ける。

『良いのかよ。俺は一度裏切ろうとしたんだぜ』
「そうね。とても下種だった。けれど……貴方は戻ってきてくれた」
『何でだよ……。何でお前らは……』

「い、いてえ……た、助けてくれぇ……い、医者を……」

「うるさい! 少し黙ってて!!」

喚き散らし会話を邪魔する足立を一喝しながら雪乃は更に言葉を紡ぐ。

「最後にはDIOに打ち勝ったじゃない。貴方なりに悩んで考えた「本物」なのでしょう?
 だからもう一度だけ信じるわ。それが私達の「本物」だから」 

『馬鹿だな……本当に……』

「まあ貴方のせいで最悪の事態にはなってしまったけれど……ここで汚名挽回のチャンスということね」
『汚名は挽回じゃなくて返上するものらしいぜ』

「いえ、汚名挽回が実は正しいという解釈もあるのよ」

『そうかよ』

下らない雑談を挟んだが、それが良い効果を齎してくれたのか。ほんの少しだけ体が軽くなったような。
そんな清々しさを感じた。
右手は相変わらず痛い。正直なところ動くだけで泣き叫びたくなるほどに。鼻血だって全然止まらずジワジワと詰るような痛みが続く。
けれど何故だか、不思議と負ける気はしない。



「私の身体、好きにしてくれていいわ」


アヌビス神もだった。タスクと組んで足立と戦った頃もそうだが、何故か誰かに頼られているというプレッシャーが逆に自分を何よりも強くしているような気がした。
DIOに従っていたころとは違う。あの頃には絶大な安心感があったが、これほどの強さというものを感じられなかった。
何が違うのだろうか良く分からない。それでもこれが本物だというのなら、悪くないような気がした。

「だから、任せたわ。アヌビス神さん」

『ああ―――任せろ』

人格が変わる。肉体の所有権が移り替わり雪乃の体にアヌビス神の意識が乗り移った。


「呆れたな。どこまでもしぶとい連中だ」

影と電撃が鬩ぎ合う。影は露散し黒い粒子のようなものを巻き散らす。
電撃は弾けては消え、更なる次弾をエドワードと御坂の二人の掌を合わせることで装填する。
何度も繰り返した見慣れた光景だ。だが着実に御坂の身体は蝕まれていき、それを支えるエドワードの負担も増える。
お父様にとっては勝敗の決まった消化試合の一つに過ぎない。

「チッ、面倒な」

水流が唸りお父様へと叩きつけられる。
エドワードと御坂の相手をしている間に黒がブラックマリンを操作していた。
掌から冷気を放ち、水流の勢いを止め氷の柱を作り上げた。それを爆破させ、足立を撃破したように破片を黒と御坂たちの三人へと浴びせる。
御坂が砂鉄を操作し壁を練り上げ氷の破片は遮られる。黒は氷を紙一重で避けながら、破片に紛れ姿を晦ます。
僅かな刹那の後、お父様の死角から肉薄した黒はそのまま前進し突撃する。

「馬鹿が、また賢者の石に―――」

だが黒がお父様に触れようとしたその瞬間、手のひらサイズの水が黒のティバックから飛び出しお父様の胸元で破裂した。
冷気は間に合わず超高圧の水の爆弾はお父様の容れ物の上半身を容易に吹き飛ばす。

「工夫しろ、か」

後藤の戦いで何度か聞かされた台詞を口にする。
皮肉にも黒が食らった空裂眼刺驚がヒントになり編み出した即席の技だが、一度限りの不意打ちならば効果はあるらしい。

「行けるか御坂ッ!」
「分かってるわよ!!」

血まみれの御坂の掌と、鋼のエドワードの掌が合わさる。
磁力が生じ御坂のティバッグから鉄塊が飛び出す。御坂は拳を握りしめ鉄塊に狙いを定める。
だが血を流し壊れ続けた身体は御坂の意思に反しふらついてしまう。それをエドワードが渾身の限り支え抜く。

「打ち砕けええええええ!!!」

拳が触れ鉄塊が御坂美琴の二つ名であり必殺の超電磁砲(レールガン)へと変貌する。
音速を超え電磁を纏った雷の弾丸は再生を終えたお父様を捉え吹き飛ばす。
視界を司る上半身が消えていたが為に、お父様は回避が遅れレールガンに直撃した。

「……グ……ォオオオオオオオオオオオオ!!!」

シコウテイザーの内部よりもう一つの風穴が開きそこからレールガンは流星のごとく流れ去り消えていく。
残された軌道の後には赤い光を漏らしながら、散らばった肉片から再生するお父様の姿があった。
だが今までの再生と違い、非常に遅いペースでその野太い声で地の底から響くような声を上げ手を伸ばし続けている。


「限界だ……限界が来たんだ!」

エドワードの叫びに全員が反応する。だが真っ先に倒れたのはその声の主のエドワードと御坂だ。
錬金術の強引な行使に御坂の身体は悲鳴を上げ、同じく支えを失ったエドワードも腰から駆け巡る激痛により地べたに這いつくばる。
黒が友切包丁を握り、ブラックマリンを翳す。だがまた彼も深い傷を負っていた。
腹部が赤く滲み黒の表情が苦痛に歪む。

(に、逃げなくては……)

その僅かな隙をお父様は見逃さない。
こんな戦いに勝利する必要などない。生きて再び力を付けてから、連中を始末すればいい。
それ以前にこの場で全員野垂れ死ぬかもしれない。
とにかく重要なのは生きることだ。ここから逃げ遂せることだ。

「逃がす……か」

血に触れブラックマリンで出血する血液を操作し止血しながら黒が後を追う。
お父様の身体は足の再生が追い付かず、這いずり回りながらその両腕でしか前へと進めない。
その後ろを、友切包丁を片手に追う黒の姿はまさに死神のようだった。

「こちらに……来るなああああああ!!!」

なけなしの賢者の石を使い無数の槍を錬成し飛ばす。
その間にお父様は必死に腕を動かし前へ進む。
黒はそれを打ち落としながら着実に距離を縮める。

「ッ!? ギャアアアアアアアアア!!!」

匍匐で進むお父様の腕にワイヤーが巻き付く。
黒は投擲したものだ。そこから電流が流れ、何度目かも分からない感電の痛みに悶絶する。

「このままお前を殺し尽くす」

冷徹に言い放たれた抹殺宣言にお父様は畏怖を感じ、恐れと恐怖で気が狂いそうになった。
無我夢中で手をジタバタさせ、タロットカードを出現させる。

「ぺ、ペルソナ!!!」

「くっ!」

ワイヤーが切断され突風に煽られ黒は壁際へと打ち付けられる。
足立から奪ったマガツイザナギは、主を変えながらもその禍々しさを見せ付けた。

「ッ!?」

だがマガツイザナギの左腕が一瞬にして切断される。
フィ―ドバックする痛みに、お父様は目を見開き忌々しく下手人を睨んだ。
アヌビス神を握った雪乃は更に肉薄しマガツイザナギへと切りかかる。
数回りも体格が上のマガツイザナギに対し、アヌビス神はその対格差を生かし俊敏に動きながら剣を合わせ立ち回る。


「遅い遅い! ブラッドレイのが百倍速えぞ!」

数度に渡る切り合いの中でマガツイザナギの剣に罅が入り、飛躍したアヌビス神の一閃により砕け散る。
そのまま脳天を勝ち割り、縦に一直線に伸びる剣線がマガツイザナギを一刀両断した。
お父様は頭を抑えながら焦りを募らせる。

「や、やめろ……」

「やめる? やめるわけねえだろうが!!」

辛うじて出した影の触手も全てが切り伏せられアヌビス神と雪乃は止まらない。
ブラッドレイとの戦い、アカメがタスクが握ったアヌビス神が学習した戦闘力は既にお父様を遥かに凌駕していた。
そうだ負けるはずがないのだ。
新一とミギーが繋ぎ、アカメとタスクが振るい続け。最後に雪乃が手にしたアヌビス神が負ける道理などない。

「俺“達”は絶対に……絶~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ対に負けなあああああいィィ」

袈裟掛けに一斬が刻まれる。
それが致命的だった。その一斬が引き金となってお父様の身体は瓦解していく。
その内に取り込んだ残り僅かな賢者の石が放出し、彼の内に収められた神すらもその身から抜ける。

「い、イザナミが……!! 神が……ば……かな……」

「これで―――『葬る!』」

雪乃とアヌビスの声が重なるようだった。
これが文字通り最後の一撃となるだろう。全ての元凶にして黒幕にこの血塗られた茶番劇の終止符を打つ。









「…………………あるではないか」

「え―――――」









その爆破は全てを飲み込んだ。
シコウテイザーは吹き飛び、中にいた6人はどうなったのか。
傍から見れば異様な現象だ。停止したシコウテイザーが内部から光り唐突に爆散したのだから。
自爆スイッチでも押したのだろうかと思うだろう。





「奴らを殺し尽くし、かつ石の消費を最小限に抑える究極の変換効率を誇る物質が」



シコウテイザーの瓦礫の中心で、お父様は今にも崩壊しそうな肉体を露にしながら不敵に笑っていた。
お父様だけではない。瓦礫を解け黒が起き上がり、御坂と雪乃はエドワードの錬成した壁に守られ足立は偶然助かったのか全員五体満足で息をしていた。

「何というしぶとさ……。しかしそれもここまでだ人間どもよ」

お父様の掌に何らかの物質が作られていく。
それが何なのか、科学に長けるエドワードでも皆目見当もつかない。
御坂も同じなのだろう。エドワードを横目で見ながら、初めて目にする物質を食い入るように見つめる。

「究極……変換効率……まさか?」

御坂の顔が青ざめる。出血多量から血の気が引いているのではない。

「反物質……1円玉……1グラムサイズの対消滅で電力換算で5000万キロワット。熱量換算で約180兆キロジュール。TNT爆薬換算で約43キロトンの対消滅を引き起こす」

「なっ―――」

御坂の呟きにエドワードは驚嘆し唖然とした。
これらの単位自体は聞き覚えがあるが、その数値がもはやあまりにも非現実的すぎる為にエドワードの天才的な頭脳ですら理解が追い付かない。

反物質。
それはある物質と比べて質量と角運動量が同じで電荷などの性質が全く逆である物質である。
これの最大の特徴は対消滅という現象を引き起こすことだ。
反物質と通常の物質が触れ合った時、衝突し消滅する現象。その際に引き起こされる爆破規模が、人間が常日頃から活用するエネルギーの変換とは比べ物にならない。

1円玉と同じ1グラムの反アルミニウムが対消滅した場合、東京都の総電力3時間分、広島に投下された原子爆弾の役2.9倍の爆破を引き起こす。

「最後の勝負といこう。生き残るのはホムンクルス(わたし)か人間(きさまら)か」

シコウテイザーが吹き飛んだだけで済んだのは、時間がないために1円玉以下のミクロサイズの反物質を錬成した為だ。
今度は違う。この島、この空間もろとも消し飛ぶほどの反物質を生成し対消滅を引き起こす。
ここにいる黒達は勿論、何処ぞで死にかけているタスクと杏子。そしてエンブリヲですら、この空間では本体が孤立し制限は消えたとはいえ不確定世界と入れ替わる不死の力はない。
この一撃で今いる人間どもは確実に滅びる。


「あいつ……自分ごと全員巻き添えにする気か……!!」
「止めて! あいつを!!!」

無論、それだけの規模の爆破が起きれば術者本人のお父様すら無事では済まない。事実シコウテイザーの爆破に巻き込まれ一度滅んでいるのだ。



(これは賭けだ)


この爆破の中で、もしも賢者の石が僅かでも残ればその再生力で復活することが可能かもしれない。
だが決して分の良い賭けではない。いやむしろ自殺のようなものだ。
神の力はおろか本来のホムンクルスとしての力も残されておらず、仮に神の力があったとしても確実に生き残れるかは分からない。
故に最後の勝負とお父様は宣言した。すべてはこの一撃で決まるのだ。
人が生きるかホムンクルスが生きるか、全てが死に絶えるのか―――


「さらばだ―――鋼の錬金術師よ」


必ず生き延びて見せる。その強い覚悟は止まらない。

御坂とエドワードは身体の酷使で体の自由が利かず激痛で動けない。
雪乃はアヌビス神を握るが、爆破の際吹き飛ばされお父様と距離が離れた為、とてもではないが間に合わない。
そして足立は役に立たない。

「間に合うか……!!」

唯一お父様に近く、爆破の前に肉薄出来たのは黒一人だけだった。
彼は爆破の際に崩壊した瓦礫などが盾になり、立地条件も良かったために距離も離れずに済んだのだ。
黒はブラックマリンで水流を叩きつける。お父様は防御の姿勢も取らず攻撃を受けた。
だが掌の反物質だけは生成をやめない。
あと数秒でもあればお父様を殺しきれるだろう。しかし反物質はそのコンマ数秒前に完成する。

(物質変換しかない)

理屈の上なら物質変換で反物質を安定した物質に変えれば爆破は起きない。
だが黒にとってあまりにも未知な物質の上、コンディションも良くはなく、流星の欠片といった能力補助のアイテムすらない。
首輪解除の時のような特異な条件も満たせない黒が果たして物質変換に成功するか。
黒はお父様の眼前に迫り、掌を翳す。
やれるか否かではない。やらなければ死ぬのだ。例え無駄な足掻きだとしてもやらないよりはマシだ。

(無駄だ)

お父様は己の成功を確信する。
反物質の生成の妨害は全て無意味に終わる。




「おい何とかしろって!! 何とかしてくれええええええ!!!!」

何も出来ない足立が口だけは達者に動かし大声で喚き散らす。

「くそっ……一か八か……」
「……結晶」

御坂は結晶体を取り出し、エドワードも手を合わせ激痛を誘発する腰に当てるが、それらの行為が終わるより先に終焉が全てを間引くだろう。

『お願い、間に合って』
「ああ、畜生! あと一太刀でも浴びせれりゃ終わりなのに!!」

雪乃の身体を全力で疾走させるアヌビス神。
しかしその距離はあまりにも今の雪乃達にとっては遠すぎる。



(戸塚……お前との約束、果たせそうに―――)



ここまで散々破った末に、目の前で死なせてしまうだろう少女、彼女を助けてくれと願った少年の願いは聞き届けられそうにない。
最後まで抵抗しながらも黒は目を瞑り、彼に謝罪した。





一人のゲームクリエイターの夢想から始まり、イザナミとフラスコの中の小人の介入により実現されたバトルロワイアル。
64人と1人の見せしめの犠牲者の屍を積み重ね、今この瞬間全ての幕が閉じる。
この狂気の宴は閉演し残されるのは無か、神を切望する一つの異形か――――













「る……破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)……だと……?」










だが、その歪んだ刀身の短刀は全ての幻想を白紙へ戻す。




裏切りの魔女メディアが持つ宝具、破戒すべき全ての符その真価はあらゆる魔術を“破戒”する。
それはフラスコの中の小人が操る錬金術も例外ではない。
胸元に突き立てられた短刀から反物質を生成していた錬成エネルギーが消滅し、錬成前の状態へと全てがリセットされていく。


「あ、ありえん……何故こんな……ものを……貴様が……!!」


これはこの場にある筈がない。あっていいものではない。
本来、この場にある筈のないものだ。メディアが関わる、とある聖杯戦争とも、それどころかギリシャ神話すらこの殺し合いとは何の因果も縁もない。
唯一メディアと同質の力を齎すクラスカードキャスターもこの参加者達の手に渡ってはいない。

「なんだこれは……?」

お父様にルールブレイカーを突き立てた黒ですら、これを予見してはいない。
ただ彼は物質変換を行う寸前に『アーチャー』のクラスカードを取り出し、僅かばかりの可能性にかけ物質変換の強化に充てようとしただけだった。
だがそのクラスカードが突如として光を浴び、変貌し破戒すべき全ての符へと姿を変えた。

『アーチャー』のクラスカード。その英霊(ちから)は本質は投影にある。
かつてイリヤが鳴上悠との戦いで発揮したように、あらゆる武器、宝具を贋作として投影することで、古今東西あらゆる英雄たちの力をその身に刻み込む贋作者の力。

「……そうか、お前の――」

そしてもう一つ、このカードの本来の主であり一体化していた少女クロエ・フォン・アインツベルンの存在がある。
エンブリヲが感づいていたように、彼女は願望機としての機能を備えていた。
イリヤに魔力を譲渡し消滅した彼女だが、短い期間とはいえ彼女の核として在り続けたクラスカードには僅かながらの願望機としての機能が受け継がれていた。

そして黒がクラスカードを握り、物質変換に利用するために能力を流したその瞬間、願望機としてクラスカードは起動し黒の望む願い。
この場合、お父様の企みを何としても阻止するという願望を、過程をすっ飛ばし結果だけ齎した。
その齎された結果がクラスカード『アーチャー』の限定展開(インクルード)。そしてこの場に最も適した宝具の投影、それが破戒すべき全ての符だった。

「い、嫌だ……私は戻りたく、ない……!」

何より重要なのは破戒すべき全ての符は魔力による契約や魔力によって生み出された生命体の魔力を前の状態に『リセット』する。
つまり、錬成のキャンセルはもとより錬金術により現世に生まれ落ちたお父様もそれは例外ではない。
お父様がリセットされたその先にあるもの―――

「お、がっ……おあああああああああ!!!」

人としたの形は崩れ、その声も壮年のものから電子音のような甲高いものへと変貌していく。
胸元の破戒すべき全ての符から黒い血液のような物質が溢れだし、そこへ飲まれようとするのをお父様は必死で堪え続ける。

「い、石ィ……石を寄越せええええ」

手だけを構築し飲み込まれる黒い渦の中から黒へと伸ばす。

「葬る!!」

しかし、その先に居たのはアヌビス神を持った雪乃とエドワードだった。
腕は切断され黒には届かない。




「邪魔よ。さっさと退場しなさいド三下」


更に電撃の槍が渦に吸い寄せられ、ダメ出しのように抵抗するお父様を痙攣させた。
結晶を使った御坂が再び電撃を練り上げて放ったものだ。
この一瞬が運命の分け目だった。痙攣し硬直したお父様は虚しく渦に絡めとられ抵抗も出来ず飲み干される。


「も、戻らん……あんば場所へ……二度と……」


それでもまだもがく。
もがきもがき続け、鋼の拳がその渦の中でもがくお父様へと命中する。
それが最後の止めとなった。



「生まれた場所へ帰れ フラスコの中の小人」




最後に掛けられた台詞まで同じだった。




「え……エドワード……え……っく……」



こうして神に挑んだ一つの異形の物語は二度目の終着を迎えた。













――――また、ここか。

白い空間に巨大な扉、見覚えがる。
私が生まれた場所でそして二度と帰りたくもないあの場所だ。
そして、私の他に“奴”もいるのだろう。

「真理、か」

今の私と対照的な白い球体。それこそ私をあの先へ送り込んだ存在。
認めたくはないが真理と呼ばれるモノ。

「やはり、最後にはおまえか」
『当然だ。
 思い上がらぬよう正しい絶望を与える。それが真理(わたし)だ』
「ふざけるな。思い上がるなよ、おまえ如きが私を見下ろすな!」

実に下らん。奴こそが真理こそが何も知らず思い上がる愚者ではないか。
私が見てきた1世界には奴程度遥かに凌駕する者たちが山ほどいた。

容易く改変する魔人と呼ばれる存在があった。殺し合いにも呼ばれた生死を超越した調律者なる存在があった。

真理など超えた超越者たちだ。

その時私は如何に狭い世界に囚われていたか知ったのだ。

「真理だと? 貴様の強いるルールなどに縛られる私ではない。
 このちっぽけな世界に頂つ貴様など、所詮矮小な存在にすぎん。私は更にその上を行く」 

だからこそ作り上げたのだ。
私だけの世界を私だけの真理(ルール)を。

そして成り上がりる筈だった。イザナミとイザナギによる神生みの伝承に見立てた儀式により何物をも超え全てを知る者に。

『まだ自分を信じぬか。大馬鹿者め』

扉が開く、奴が私を送り込もうと準備しているのだろう。
構わん。何度でも送り込むがいい。
また何度でも、私は這いあがってみせる。
今回は私の敗北だ。だがまだ次がある。次こそは私は神になる。


『勘違いしていないか』
「なに?」
『おまえに“戻る”場所などあると思っていたのか?』

何を言っている……? 何の話だ。

『忘れたのか? おまえが定めたこの場の真理(ルール)ではなかったか』

奴は唇を釣り上げて言う。

何だ……どういうことだこれは……。

身体が冷たい? 今までに感じたことのない喪失感と虚無感、何より恐怖が私を襲う。

「や、やめろ……なんだ……何だというのだこれは!!」

『敗者には死を―――それがバトルロワイアルなのだろう?』

死……? 死!? 死だと……この私が死ぬ?

「い、やだ……いやだ……き、消えていく……私が……」

球体上の私の身体は半分ほどまで消えていた。

「死にたく……ない……まだ死にたくない……。助けろ……だ、誰か……助けてくれ!!」

ラース! プライド! エンヴィー! 広川! アンバー! 誰でもいい、誰か……誰か!!







『誰も来ん。それが貴様が望んだ存在なのだからな』






ここで終わるのか、私は……何も……何も成せぬまま……







「私は……生きたい……助けて……誰か……」






どうしてこうなる……何故なんだ。





『お前は答えを知っていた。二度も好機はあった。
 なのに何故気付かぬ。終わりだ、もう次はない』







私はどうすればよかったのだ?







「―――助けて、ホーエンハイム…………」








【フラスコの中の小人@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】死亡













「大丈夫なのか?」

黒は横のエドワードに視線を向けて声を掛ける。
腰をやられて動きに支障があった筈だが、最後に飛び込んできてあれだけ動けたのが不思議なくらいだ。

「エンブリヲのあのヘンテコな技がヒントになったんだよ。
 あいつみたいに体の感度を弄って、痛覚を腰の辺りだけ遮断した」

腰の痛覚を遮断したことで体の自由は比較的に効きやすくなった。
後はもう黒の知る通りだ。

「あまり無理はするな。場所が場所だしな」

そう言ってから黒は少し顔に穏やかさが戻り、小さく笑ってしまった。
自分も含めて全員がそれなりにボロボロだ。中々に痛めつけられたものだと思う。

「勝ったぜ……みんな」

エドワードのその呟きは誰に送られたものか。
それに応えるように傷だらけの杏子とタスク、そして彼らに肩を貸してこちらぬ向かってくるヒースクリフ。
その後に続く猫と愉快な動物たちがやってきた。

「ようエド……ボロボロだな本当」

「きょ、杏子……? お前……なんか角生えてんぞ」

見れば杏子に角が生えていた。

「角ぐらい何だっていいだろ」
「良いのかしら……まあ削れば目立たないか」

物珍しそうに角を眺めて雪乃は腰を下ろす。
全身が痛い、それに重い。こんなに運動したのは生まれて初めてだろう。

「でも、良かったよ。何だかんだで全員無事で」

「猫の言う通りだな。ここにいる奴ら、全員しぶといわ」

タスクの言葉に杏子もまた笑って応える。
二人ともヒースクリフの肩から離れて、そのまま寝っ転がる。
とにかく一段落付いたのだ。僅かな休息が欲しかった。




「ありがとな、クロ」


誰にも聞こえない声で黒は呟き、お父様のいた場所に落ちているアーチャーのカードを拾う。
試しに先のようにもう一度カードに能力を込めてみたが、何の反応もなかった。
願望を叶えた影響で、願望機として残された機能が全て消失したのだろうか。
黒には詳しいことは分からない。ただ最後に力を貸してくれたのはクロで、彼女の助太刀がなければ死んでいた。

「俺は助けられてばかりだな」

そして全員が恩返しも出来ないところの遠い場所にいる。





「まだだ」




ヒースクリフの声が響いた。

「まだ殺し合い(ゲーム)は終結していない」

彼の紡ぐ言葉は冷徹にして残酷だった。



「流石、このゲーム作っただけはあるよな。悪いけど私はこいつボコるけど邪魔するなよ」
「どういう意味だ。ヒースクリフ」
「フラスコの中の小人は退場した。だが、聖杯はまだ残っている。
 この場に残された私を除く8人の参加者の内、誰が所有者として相応しいか。見極めようとしている」

「言ってる意味が分からない。ヒースクリフさん、貴方は何を―――」

「残る参加者を全て殺せ。そうすれば願いは叶う……ということだよ」


それは最悪の一言だった。
そのたった一言に込められた力はヒースクリフ本人にすら計り知れないほど。



「マガツイザナギ!!」

足立の傍からマガツイザナギが姿を現す。

「ハハッ……戻った……ペルソナが戻った!!」

先ほどまで激痛を忘れたように、血だらけの身体を引き摺りながら足立は再び立つ。
目には狂気に満ちた空虚な炎が宿っていた。

「馴れ合いも終わりだよ……ハハ……もう終わりだよお前ら全員!!」

「足立、もう殺し合う必要はないだろ! 帰れるんだよ! 恐らく、あの地獄門からお父様の玉座まで行って扉に辿り着くはずだ」

「はあ? ぶああああああああか!! 俺は全人類をシャドウにするのが目的なんだよ! 特にお前らみたいなクソガキをな! このまま帰ってもどうせ刑務所で檻のなかさ。
 最後に好き勝手やってやるよ!!!」

「お前あんだけ生きて帰りたがってただろ!」

足立はいざ生還するというその直前に自分が置かれた現実に気付いていた。
そう彼はこの地で何をしようとも、あの元の世界で鳴上悠に敗北した事実に。



―――現実が最低なのはお前だけじゃない

―――現実と向き合え!


奴に負けた世界。
恐らくだが、全人類のシャドウ化も既に食い止められているのだろう。
仮に帰って奴を完全に抹殺したとして、それで残ったガキどもを全員相手にする。

詰んでいる。

ここにきて足立は自らの帰還後の末路を思い、そして恐れだしていた。
捕まりたくない。人殺しとて豚箱にぶち込まれるなど真っ平だ。

「そうね……馴れ合いは終わりよね。あの糞親父をぶっ殺したんだから」

エドワードの背後で御坂が立ち上がる。

「御坂……やめろ。死者の蘇生なんて」
「お父様ってのは、DIOとみくって娘を生き返らせてたわよ? これは死人を蘇らせた貴重な実例よね」

それに対しエドワードは反論できなかった。
少なくともこの場に於いて死んだ者に限っては、死者蘇生も可能なのではという仮説をエドワードも打ち立てる程だ。


「だが対価がいる。DIOもみくも完全な蘇生ではなかった。生半可な蘇生は対象者を苦しめるだけだ」
「だからアンタに死んでもらうのよ。一人につき一人差し出せば十分な対価じゃない?」

「やはり殺すべきだったな」

黒が友切包丁を御坂に向ける。
その殺意に手心は欠片もない。
生かす理由は何処にもないのだ。
例え雪乃やエドワードが止めようとも、黒は確実に御坂を殺めるだろう。

「なっ―――」

だが次の瞬間、雷光が瞬く。それはまるで閃光弾のように。
御坂は電撃の光を可能な限り発光させこの場にいる全員の視界を潰した。
御坂も現状の不利は理解しているのだ。この人数差で戦うのは得策ではないと。
だからこそ、一時的な撤退を選択した。

「こっちも忘れてんじゃねえよ!」

御坂が消え視界が戻った時には入れ替わるようにマガツイザナギの剣が振るわれた。

「―――インクルシオ」

轟音と共にマガツイザナギが殴り飛ばされる。
竜の鎧を纏った杏子はそのまま拳を振り戻し、足立本体へと突撃した。
足立は舌打ちしながら、ペルソナをチェンジさせイザナギを手前に召喚し杏子を迎え撃つ。

「この雌ガキッ!」
「チッ、一体増えてんじゃねえか!!」

インクルシオの拳とイザナギの剣は僅かに拮抗し、互いに後退する。

「行きなエド! 足立は私が何とかする!」
「杏子!?」
「大丈夫だ。こいつをとっちめたらすぐ後を追うよ……その後でタスクの喫茶店で祝勝会、だろ?」

杏子を案じたエドワードだが顔に穏やかさが戻り、小さく笑う。

「そうだったな……。ここは任せるぜ。絶対に追って来いよ」

エドワード達は踵を返しその場を後にする。






「邪魔すんじゃねえよ……お前は俺側の人間だろうがよッ!」





足立は激昂する。
あの忌々しい魔法少女の敵に。


「見てりゃ分かるんだよ。エドワードに憧れてんだろ? でもなァ、てめえはどうせ屑なんだよ!
 承太郎から聞いたよ。殺し合いに乗ってた魔法少女ってお前だろうが。
 え? 何かい。あの高潔なエドワード様に着いていけば私の罪も清算されるわぁー。なんて思ってんだろ!?」

「はっ?」

杏子は可笑しくなって吹き出した。
正直な話、少し当たってる部分はある。
最後に愛と勇気が勝つストーリーを引き寄せるエドワードに少し憧れていた。
そんな魔法少女になりたかった自分のなりたい姿のようで―――

「はっきり言ってやるよ。お前のやったことは消えねえよ。
 お前のせいで、皆死んだんだよ。この屑が」

「そんなことは分かってるさ」

「あ?」

「アンタさ、勘違いしてるよ。別に私はエドワードの為に残ったわけじゃない。
 たまたま残るのが“都合が良かった”だけなんだ」

足立は杏子から放たれた威圧感に一瞬たじろぐ。
気付けば一歩後ずさっていた。

「エドがいると都合が悪いんだよね……アイツさ人殺す時、超うぜーから」
「なんだって?」
「もうここまで言えば分かるだろ? 私はね、殺し合いなんか関係ない。元々アンタを絶対にここで殺す気だったんだよ」

年齢こそ足立の一回りしたの杏子だが、その殺気殺意は足立に畏怖を抱かせるのに十分だった。

「まどかとほむらの仇……あんな話聞かされて頭にこない奴はいないからね。
 本当ならさやかの仇のエスデスや色々やらかしてくれた卯月というのも殴りたかったけど、もう死んだ後だし、そいつらの分まで付き合ってもらおうかな」

――まあ私にそんな資格はないかもしれないけど。

だが美樹さやかは違うのだろう。
彼女がここでどんなことをしたか、正直なとこあの精神状態を考えると殺し合いに乗ってもおかしくない。
エドワード曰く最後には味方だったらしいが、その過程がかなり怪しい。

人のことは言えないが。

それでも、友があんな目に合わされて頭に来ない筈がない。怒る権利ぐらいはある。
だから、杏子が代わりに足立をぶっ飛ばす。それがせめてもの手向けだ。


「ふざけんな! あの糞女達の分まで尻ぬぐいだ? 御免だよ!」

ここにきて奴らの名を聞くとは思わなかった。
実に苛立つムカつく名前だ。こうなればストレス発散で聖杯とやらで奴らを蘇らせてから、服従させるというのも面白いかもしれない。
エスデスの身体だけは最高だったし、卯月も見た目は悪くない―――

(……いや、それじゃエンブリヲと同じじゃ)


一瞬頭をよぎった煩悩を即座に否定した。



「まっ、それにアンタやっぱ気に入らないからさ……ここで殺すわ。本当にクッソうぜえ……」

「なーにが魔法少女だ。薄汚い本性現しやがってよ」

イザナギを消しもう一度タロットカードを握りつぶす。



カッ



「ペルソナッ!!」


やはり、こちらの方が使いやすい。
マガツイザナギは足立の声に応えるように漆黒と赤の中から現れる。
その感情のない瞳が杏子を見下ろした。


「教えてやるよ。俺は世界に選ばれたんだ……だから、この俺が負けるはずがないってなァ!!」

「…………違うね。世界は誰かを選んだりなんかしない。だから、みんな必死で足掻きながら生きてんだ」


災厄を孕む禍津と赤い幻惑を纏う竜の鎧が激突した。



【G-7/二日目/日中】


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、精神的疲労(大)、顔面打撲、強い決心と開き直り、左目負傷 、インクルシオの侵食(中)、首輪解除
[装備]:自前の槍@魔法少女まどか☆マギカ、悪鬼纏身インクルシオ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、医療品@現実、大量のりんご@現実、グリーフシード×2@魔法少女まどか☆マギカ、使用不可のグリーフシード×2@魔法少女まどか☆マギカ
    クラスカード・ライダー&アサシン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、不明支給品0から4(内多くても三つはセリューが確認済み) 、
    南ことりの、浦上、ブラッドレイ、穂乃果、ウェイブの首輪。
    音ノ木坂学院の制服、トカレフTT-33(2/8)@現実、トカレフTT-33の予備マガジン×3、サイマティックスキャン妨害ヘメット@PSYCHOPASS‐サイコパス‐、
    カゲミツG4@ソードアート・オンライン
    新聞、ニュージェネレーションズ写真集、茅場明彦著『バーチャルリアリティシステム理論』、練習着、カマクラ@俺ガイル
    タスクの首輪の考察が書かれた紙
[思考・行動]
基本方針:生きて帰ってかタスクの喫茶店にみんなともう一度集まる。
0:足立を殺す。
1:後悔はもうしない。これから先は自分の好きにやる。
2:0を終わらせてからエドの後を追う。
[備考]
※参戦時期は第7話終了直後からです。
※封印状態だった幻惑魔法(ロッソ・ファンタズマ)等が再び使用可能になりました。本人も自覚済みです。



【足立透@PERSONA4】
[状態]:鳴上悠ら自称特別捜査隊への屈辱・殺意 広川への不満感(極大)、全身にダメージ(絶大)、右頬骨折、精神的疲労(大)、疲労(大)、腹部に傷、左太腿に裂傷(小)
    爆風に煽られたダメージ、マガツイザナギを介して受けた電車の破片によるダメージ、右腕うっ血 、顔面に殴られ跡、苛立ち、後悔、怒り、片足負傷、首輪解除
    悠殺害からの現実逃避、卯月と未央に対する嫌悪感、殺し合いからの帰還後の現実に対する恐怖と現実逃避、逮捕への恐れ
    全身に刺し傷、腕に銃傷、血だらけ
[装備]:ただのポケットティッシュ@首輪交換品、
[道具]:初春のデイバック、テニスラケット、幻想御手@とある科学の超電磁砲、ロワ参加以前に人間の殺害歴がある人物の顔写真付き名簿 (足立のページ除去済み)、
    警察手帳@元からの所持品
[思考]
基本:全人類をシャドウにする。
0:杏子を殺す。。
1:生還して鳴上悠(足立の時間軸の)を今度こそ殺す。俺はまだ鳴上悠を殺してない。殺してないんだよォ!
2:捕まりたくない。
[備考]
※参戦時期はTVアニメ1期25話終盤の鳴上悠に敗れて拳銃自殺を図った直後。
※支給品の鉄の棒は寄生獣23話で新一が後藤を刺した物です。
※イザナギが使用可能になりました。










「一つだけ伝えておこう」

走るエドワード達を引き留め、ヒースクリフが口を開いた。

「何かしら? 貴方の口は公害のようなもので永遠に閉じていてほしいのだけれど」
「聖杯を破壊しろ。そうすれば殺し合う理由はなくなり、君たちの勝ちだ」

以外にもそれは殺し合いに乗らない者達への勝利条件だった。
ヒースクリフの話を聞き、少し思いに耽った雪乃は提案する。

「……ねえエルリック君、このまま私たちが逃げるというのはどうかしら」

逃げるという言葉の響きはあまり良くないが、雪乃を見るに臆病風に吹かれたという訳ではないらしい。

「私たちが死ななければ、聖杯というのも使えないんじゃないかしら。ヒースクリフさんの口ぶりから考えてもそういうことでしょう。
 なら元の世界に帰れば……」

「俺もそれは考えた。けど、これだけ複数の世界を巻き込んだんだ。多分だけどお父様は異世界そのものを繋げようとしていたはずだ。
 聖杯ってのも、本来はお父様が使うべき代物で、それを動かす燃料はその異世界の人間たち、なんじゃないか?」

規模は違えど、お父様も錬金術師の一人だ。
であるならば、如何な異世界の技量を取り入れようともその中心には錬金術がある。
そこまで分かれば何を繋ぐか、何処に錬成陣を刻むかを考えた時、必然と異世界という単語が頭に浮かんだ。

「その通りだ。仮に君たちが逃げても御坂は聖杯を起動して、異世界の人間を石へと変え上条当麻を始めとし仲間たちを蘇らせるだろう。
 当然、足立もそうするだろうね」
「随分楽観的ね。自分は死なないとでも思っているのかしら」
「いや私は既に茅場という人間は死んでいる。ここの私はアバターに過ぎない」

「何がしたいんだお前は」
「私は茅場晶彦という残骸のようなものだ。だがそれでも私はゲームマスターとして、最後までゲームの行方を見届けたいだけだよ」

黒は腕を伸ばしヒースクリフの胸倉を掴んだ。

「俺はお前たちの駒じゃない」
「当然だ。そんなもの私は要らない」
「神にでもなったつもりか? あのお父様とやらより質が悪い」

突き放すように黒はヒースクリフから手を離した。

「行くぞ。こいつを見てると反吐が出そうだ」

「いや俺はここで皆と別れる」

出発を促す黒にタスクは別れを切り出した。

「エンブリヲが気になる。きっとアイツも共通の敵が倒れたことで俺達を襲いに来るはずだ」

言われてから気づく。
確かに、エンブリヲはもうこちらに協力する義理はない。
今一番何をしでかすか分からないのはあの男だ。

「ヒステリカは、あのお父様のロボットとの戦いで随分破損した。多分今なら倒せるかもしれない」
「けど……一人じゃ無理よ」
「ごめん……これは俺の我が儘だ。アイツと決着をつけさせてくれ」

タスクにとってエンブリヲは両親の仇だ。
必ずこの手で滅ぼすと決めた相手であり、何よりアンジュの夫を名乗るのが許せない。


「必ず、また杏子と追いかけてくるよ……。それで喫茶アンジュで宴会だ」

「タスクさん、これ」

雪乃はアヌビス神をタスクに差し出した。
タスクにはろくな武器がなくナイフ一本程度の装備だ。
雪乃はタスクの身を案じ、アヌビス神を持たせようとする。

「……いやこれは君が持っていてくれ。その方がきっといいと思う」
「でも……」
「ならこれを持っていけ」

黒が友切包丁を取り出し柄をタスクに向けた。

「え、でも……」
「見た目と違って良いナイフだ。役に立つ。
 それに俺にはまだ武器がある」

そう言って黒はコートの下のナイフを見せる。
タスクは納得し安心したように友切包丁を受け取った。

「ありがとう……」

確かにしっかりとした重みで、黒があれだけ振るい続けても刃こぼれ一つしないのは、とてつもない業物である証なのだろう。

「そうだエド……君の爆弾を良かったら譲ってくれないかな……出来たらちゃんとした殺傷力のある爆弾に戻してほしいけど」
「パイプ爆弾の事か?」
「うん……万が一、俺が倒れた時の為に先に言っておく。エンブリヲはヒステリカと生身の本体を両方倒すことで絶命する。
 君の場合、機体を破壊してからエンブリヲを拘束すれば……俺としてはアイツだけは殺したほうが良いと思うけど」
「……分かった」

エドワードはタスクの話を聞き複雑な心境だった。
恐らくタスクはエンブリヲを殺すのだろう。可能ならば、それを止めたいのも事実だ。
だが、それはタスクのこれまでの全ての生涯を否定しかねない。

「持ってけ二つともあと、俺が作った二つ合わせて四つ」
「君の分は?」
「学院で集めたガラクタで、あと丁度四つ作ってある。万が一の時はそれで何とかする」

エドワードはパイプ爆弾の中身を模倣しガラクタを錬成し爆弾を作っていた。
全く便利な能力だと思いながら、エドワードに感謝しタスクは爆弾をしまう。
ラグナメイルがない自分には、これがヒステリカを破壊する唯一の鍵だ。
使いどころを誤ってはいけない。


「この指輪もあのロボット相手なら役立つかもしれない」

更に黒はブラックマリンを外しタスクに手渡す。
タスクは試しに指に嵌めてみるが水流の操作ができない。
どうやら、相性は良くないらしい。

「俺には使えないみたいです……これは黒さんが持っていてください」
「……そうか。気を付けて行け」

「きっと勝ってね……あの変態には粛清が必要よ」

「ははっ……本当にその通りかも……うん、行ってくるよ」

タスクの背中が徐々に小さくなる。
その背中が見えなくなる前にエドワードも駆け出した。

(まだ……腰は大丈夫か……)

走りながらエドワードは腰の様子を気にする。
エドワードは腰の痛覚を遮断はした。だが痛覚は人が生きるのに必要な信号であり、危険を教える赤信号でもある。
つまるとこそれはエドワードの傷は癒えておらず、体は無理な動きはするなと警告しているに等しい。

(頼むぜ……何とか持ちこたえてくれ)

背骨には至らないものの腰を切られたというのは人間としてかなりの致命打だ。
御坂からの治療を受けたものの、安静にすべきで本来は歩くことも出来ない激痛がある筈なのだ。
エドワードとしてもまるで生きた心地がしない。この時限爆弾がいつ爆破してエドワードに降りかかるか分からないのだから。
この先待ち受けているであろう、御坂との戦いまではせめて―――


(もうすぐだな)


身体にノイズが走り残された時間が僅かであると、ヒースクリフは感じていた。
エンブリヲに肉体の再構築を頼んだ時点で分かってはいたことだ。
奴は不十分な肉体をわざと作るであろうことは。エンブリヲはヒースクリフに妬みのような憎しみを抱いているのだから。
それを理解したうえで、敢えてヒースクリフはゲームの攻略を優先しアンバーの交渉の裏で手を組んだ。

(だがこのゲームを見届け、このゲームと共に心中できる。悪いものではないかもしれないな)

ヒースクリフはこのゲームが自身の作った中で最高傑作であると確信していた。
SAO程の規模や世界観はないが、このゲームはヒースクリフの作りたかったものを現実に再現しつくしている。
彼が夢見た異世界はこの空間に嫌というほど詰まっている。

「おい、良いのか? あいつら先行ってるぞ?」

立ち止まり思案に耽るヒースクリフに猫が声を掛ける。

「いや、私は後からゆっくり追おう。彼らには嫌われてるようだしね」

このゲームの結末を、脱落者であり最早傍観者たる自分が関わることは避けたかった。
ヒースクリフはもうどうあってもこの物語の主役にはなれない。

「そ、そうか……」

いまいちヒースクリフを理解しきれない猫はカマクラとエカテリーナちゃんを率いて首をかしげながら三人の後を追う。
その光景は何処か殺し合いに似合わない、コミカルな場面だ。


「……そういえば、もうアインクラッドには入れるんだったな」

ふと思い出したのがアインクラッドの存在だった。電子世界に生み出し現実に再現したあの場所。
恐らくゲームが終幕を迎えた時、この世界は崩壊するはずだ。その最期の時を過ごすのならやはりあそこがいい。



【F-5/二日目/日中】


【黒@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
[状態]:疲労(大)、右腕に刺し傷、腹部打撲(共に処置済み)、腹部に刺し傷(処置済み)、戸塚とイリヤと銀に対して罪悪感(超極大)、首輪解除
     銀を喪ったショック(超極大)、飲酒欲求(克服)、生きる意志、腹部に重傷
[装備]:黒のワイヤー@DARKER THAN BLACK 黒の契約者、包丁@現地調達×1
     傷の付いた仮面@ DARKER THAN BLACK 流星の双子、黒のナイフ×10@DTB(銀の支給品)、水龍憑依ブラックマリン@アカメが斬る
[道具]:基本支給品、ディパック×1、完二のシャドウが出したローション@PERSONA4 the Animation 、大量の水、クラスカード『アーチャー』@Fate/kaleid linerプリズマ☆イリヤ
[思考]
基本:殺し合いから脱出する。
0:聖杯とやらを壊す。
1:御坂を追う。
2:銀……。




【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、精神的疲労(大)、全身に打撲、右の額のいつもの傷、黒子に全て任せた事への罪悪感と後悔、強い決意 、首輪解除、腰に深い損傷(痛覚遮断済み)
[装備]:無し
[道具]:デイパック×2、基本支給品×2、ゼラニウムの花×3(現地調達)@現実、不明支給品0~2、ガラスの靴@アイドルマスターシンデレラガールズ、
    エドの作ったパイプ爆弾×4学院で集めた大量のガラクタ@現地調達。
[思考]
基本:生還してタスクの喫茶店にもう一度皆で集まる。
0:聖杯を壊し、御坂を倒す。
1:大佐……。
※登場時期はプライド戦後、セントラル突入前。



【雪ノ下雪乃@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(極大)、友人たちを失ったショック(極大) 、腹部に切り傷(中、処置済み)、胸に一筋の切り傷・出血(小) 、首輪解除、右手粉砕骨折、顔面強打
[装備]:MPS AA‐12(破損、使用不可)(残弾1/8、予備弾倉 5/5)@寄生獣 セイの格率、アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、ナオミのスーツ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞
[道具]:基本支給品×2、医療品(包帯、痛み止め)、ランダム品0~1 、水鉄砲(水道水入り)@現実、鉄の棒@寄生獣
    ビタミン剤、毒入りペットボトル(少量)
[思考]
基本方針:殺し合いからの脱出してタスクの喫茶店にもう一度皆で集まる。
1:自分の責任として御坂を何とかする。
2:もう、立ち止まらない。



【ヒースクリフ(アバター)@ソードアートオンライン】
[状態]:HP25%、異能に対する高揚感と興味、真実に対する薄ら笑い
[装備]:ヒースクリフの鎧@ソードアートオンライン
[道具]:なし
[思考]
基本:ゲームの創造主としてゲームを最後まで見届ける
0:最後はアインクラッドと心中する。
[備考]
※数時間後に消滅します。


【マオ@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
[道具]カマクラ@俺ガイル、エカテリーナちゃん@レールガン
[思考]
基本:生還する。
0:エドと共に行動し、御坂美琴に対処する。







「……不味いわね、これ……」

血が噴き出し視界がぼやける様を見ながら御坂は呟く。
おまけに結晶を使ったせいで能力の拒絶反応が起き、御坂の全身は壊れていない個所の方が少ないほどだ。

「でも……もう一歩……あと少しなのよ」

結晶はまだ残っている。あと残ったあの人数を処理するくらいならば、恐らくまだ体も持つはずだ。
今は撤退し、エンブリヲや足立も暴れているだろうからそこで分散したところを叩く。特にエドワードはこの手で全ての因縁を清算する。

「何……あのチビに拘ってんだろ……変なの」

こういう出会い方をしたからこそ敵同士になってしまったが、もし違う出会い方なら多分友達くらいにはなれたかもしれない。

「でも……ここまでよエド……私はアンタを殺す……アンタも―――」

きっと、彼は殺さない覚悟で挑むのだろう。
何度やっても懲りない男だ。
だから今度こそ、その覚悟と共にエドワードに引導を渡す。

「来なさいエド……最後の決着よ」


【F-2/二日目/日中】


【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】
[状態]:ダメージ(絶大)、疲労(絶大)全身に刺し傷、右耳欠損、深い悲しみ 、人殺しと進み続ける決意 力への渇望、足立への同属嫌悪(大) 四肢欠損、首輪解除
    寿命半減、錬金術使用に対する反動(絶大)、能力体結晶微量使用によるダメージ(大)、全身血だらけ
[装備]:コイン@とある科学の超電磁砲×1、能力体結晶@とある科学の超電磁砲
[道具]:基本支給品一式、大量の鉄塊
[思考]
基本:黒子も上条も、皆を取り戻す為に優勝する。
0:残った生存者を殺す
[備考]
※参戦時期は不明。
※電池切れですが能力結晶体で無理やり電撃を引き出しています。






「アンジュ、もうすぐだよ。君はもうすぐ目を覚ます」

十字架に貼り付けにされたかのように、全裸のアンジュが宙に浮かんでいた。
これは後藤が食い散らしたアンジュの血や肉片から、エンブリヲが蘇生させたアンジュの肉体だ。
しかし魂だけが取り戻せず、完全な蘇生には至らなかったが。お父様からアンジュの魂をイリヤの心臓に奪還したことで最後のピースは揃った。

「さて、このゲームも終局だな」

フラスコの中の小人は倒れた。残る参加者たちが如何な行動をとるか、まあ大体想像は付くがエンブリヲには興味のないことだ。
何せ全てを無に帰すつもりなのだから。

エンブリヲはイリヤの心臓をアンジュの胸へと手刀でねじ込む。

あとは心臓がアンジュへ適合しすれば千年待ち続けた天使は目を覚まし、調律者と結ばれ新世界が築かれる。
ヒステリカの修復も順調だ。この場に呼ばれた者たちの残された時間は少ない。

「そうだアンジュ……君との結婚式、婚約指輪としてこれを送ろうと思う」

取り出したのは彼に支給されたヴィルキスの指輪だった。
ヴィルキス自体はお父様が破壊した可能性が高い、恐らくは外れ枠として紛れ込ませていたのだろう。
だが二人が結ばれるには、これ以上ない婚約指輪には違いない。

「そしてイリヤ、クロエ、彩加、雪乃……凛……皆待っていてくれ、すぐに私が迎えに行く」

アンジュを第一夫人とし、第二夫人渋谷凛、第三夫人雪乃、第四夫人イリヤ、第五夫人クロエ、第六夫人戸塚、第七夫人美樹さy―――いやあれは要らない。
とくにさやかは声が実に不快だ。サリアに非常によく似ている。
賢くもないし美しくもない、あんな女に僅かでも触れたのは本当の当時の気の迷いだったのだろう。
かわりに第七夫人は御坂が良い。実のところ、エンブリヲは御坂も気に入っていた。
男の為に戦っているのが癪だが、すぐに忘れさせてやろう。

「彼女たち全員を私の胸で受け止めよう……フフフッ……」

「エンブリヲ!!」

しかし無粋な邪魔者は何時だって存在するものだ。

「フン、やはり来たか……まあいい。無粋な猿には制裁が必要だな」

「アンジュ……? エンブリヲ……!」

「安心しろ。アンジュは私のものだ。新世界を築くイヴとなるのだよ」

タスクは友切包丁を抜き、エンブリヲは銃を構える。

「そういえば、ヒルダの口ぶりから未来の私は倒されたらしいが……貴様が殺めたのか?」
「ああ、お前を真っ二つに切り裂いてやったよ……そして今もう一度お前を殺す!!」
「ならば、仇を討たせてもらおう。未来の私のな!」

銃声が鳴り響き調律者と騎士の一撃が交差した。
それを見守るのは、未だ目覚めぬ一糸纏わぬ魂のない天使のみ。

果たして天使の祝福を最後に手にするのは誰か。

それは神のみぞ―――否、神すらも知らない。



【E-5/二日目/日中】


【タスク@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(絶大)、ダメージ(絶大) 、アンジュと狡噛の死のショック(中)、狡噛の死に対する自責の念(中)、首輪解除
[装備]:刃の予備@マスタング製×1、友切包丁(メイトチョッパー)@ソードアート・オンライン、パイプ爆弾×2@魔法少女まどか☆マギカ、エドが作ったパイプ爆弾×2
[道具]:なし
[思考・行動]
基本方針:生還しアンジュ喫茶でもう一度皆と集まる。
0:アンジュの騎士としてエンブリヲを討つ。


【エンブリヲ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、服を着た、右腕(再生済み)、局部損傷(完全復活)、電撃のダメージ(小)、参加者への失望 、穂乃果への失望、主催者とヒースクリフに対する怒り 、首輪解除
[装備]:FN Five-seveN@ソードアート・オンライン、ヒステリカ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(修復率80%程)
[道具]:基本支給品×2 クラスカード『ランサー』@Fate/kaleid linerプリズマ☆イリヤ、ガイアファンデーション@アカメが斬る!
     各世界の書籍×5、基本支給品×2 ヴィルキスの指輪@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞、サイドカー@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞、アンジュの肉体(全裸、イリヤの心臓入り、エンブリヲパワーで浮遊中)
[思考]
基本方針:アンジュを蘇らせる。
0:タスクを始末する。
1:ハーレムを作る。(候補はアンジュ、渋谷凛、イリヤ、クロ、戸塚、御坂、雪乃)
2:アンジュを蘇生させ選ばれし女性たちを蘇らせた後、この世界をヒステリカによって抹消する。

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最終更新:2017年10月05日 20:44