ルルーシュと腹黒い仲間たち(前編) ◆MQZCGutBfo



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『ゼロレクイエム』を成し遂げた少年、ルルーシュは、この地において仮面を三つ持っている。


一つは『黒の騎士団』として優勝を目指す、グループのリーダー・ルルーシュとしての仮面。
平沢憂東横桃子秋山澪に対する時は一つ目の仮面を。

一つは理不尽にこの世界に飛ばされ、何の力も持っていない貴族、ルルーシュ・ランペルージとしての仮面。
デュオ・マックスウェル両儀式、及び今後出会う参加者に対する時は二つ目の仮面を。

一つはどんな手を使っても主催を殺し、枢木スザクを生還させるという、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしての仮面。
『ダモクレス』の存在、主催側の内通者の存在などを独りで抱えているのは三つ目の仮面。


この仮面を使い分ける行動が、今後どのような結果を残すのか。

今はまだ、誰も知らない………………。

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―――澪の苦悶には気が付かず、ルルーシュ達は会話を続ける。


「ナイトメアフレームっていうのは他のロボットに比べて安いんすね?」

ルルーシュが手に持つパンフレットを横から覗き込みながら桃子が尋ねる。

「そうだな。KMFが全長5メートル程度に対して、モビルスーツというのは3倍から4倍くらいあるらしい。その分の差だろうな。
 だが、大きさはそれ程問題ではない。戦術の組み立て方次第でいくらでも挽回できるだろう。
 ……まあ、それにはパイロットの技量も当然必要になってくるが。」

「えへへ、私頑張りますね!……澪さんも一緒に頑張りましょう!」

楽しげに笑いながら振り返る憂。

「あ、ああ……そうだな……」

憂の笑顔にやはり疑問を抱きながらも、澪が応じる。
ルルーシュからパンフレットを預かり、澪の元へ持って行く憂。

「ほら見て下さいこれ。『グラスゴー』と『サザーランド』って名前らしいです。
 こっちの青い方がかっこいいですよね。えへへ、楽しみだなあ~。」
「ああ……」
(憂ちゃんのこのテンション……私がブラッドチップで強制的にハイになっていたのとも、何か違う……)


そんな憂と澪を見ながら桃子が尋ねる。

「そういえばルルさん、私もロボットに乗ることになるんすかね?」
「いや、桃子は俺の傍に居てくれなければ困る。」
「……は?」

途端に顔が紅潮する桃子。

「な、な、な、な、なにを言ってるっすか!?」
「ん……?見ての通り右腕がこんな状態でKMFの操縦は無理だ。
 揚陸艇のような移動拠点が欲しいところだな。
 桃子には、その拠点内で俺のサポートをして欲しい。」

そんな桃子に気づく様子もなく、淡々と説明するルルーシュ。

「…………ああ、そういうことっすね。了解っす。」

(やっぱりルルさんって、無自覚の女ったらしっすね……)
さぞ周りにいる女性は振り回されたことだろうと溜息をつく。


そんなやりとりをしている最中に、通信機に連絡が入る。

「デュオ達からの連絡だな。」




収穫無しという連絡を終え、エスポワールに戻る為に夜の港を歩くデュオと式。
特に会話もなく歩いていると、珍しく式の方から話し掛け始める。


「なあ、そういえばさ。あの五飛って奴なんだが。」
「……ん?」
「アイツも何か隠し玉を持っていたのかな。身体能力が上がるような。」
「はぁ?ってか、なんだよ『も』ってのは。」

相変わらずの突拍子もない物言いにも、いい加減慣れてきたデュオが聞き返す。

「ああ、そういえば言ってなかったか。
 オレはさ、『刀を構える』ことで自己暗示をかけられるんだよ。
 それによって肉体や脳を戦闘用のモノに全て切り替えるんだ。」


デュオはバーサーカーと斬り合いを演じた時の式を思い出す。
気だるそうに傍らを歩く女性とは、まるで別人のようだった。
確かに倒れていた時も『刀を持ってきてくれれば動ける』とか言っていたような覚えがある。


「……よくわかんねえが、つまり刀を持てばパワーアップするってことか?」
「んー……。まあいいやそれで。
 で、五飛って奴もそういうのができるのか?」
「冗談言うな。俺の世界でそういうトンデモない現象なんて…………まあ、無いこともないけどよ…………」

脳裏に50階から飛び降りてもMSを自爆させてもピンピンしていた、トンデモない奴の映像が流れる。

「でもまあ、そういう魔法じみた存在なんてのを五飛が持っていたとは思えないけどな。
 そもそもあったら、信長とか言う化け物との闘いの時に使ってるんじゃないか?
 アイツは出し惜しみなんてするタマじゃねーしよ。」

「ふ~ん。まあ違うならいいや。ちょっと気になっただけだから。」

本当にどうでもいいのか、変わらずだらだらと歩く式。
その式を横目で見ながら考える。


(……確かに正義だなんだと自分に言い聞かせるのは暗示っぽいが、それなら常時かかってるってことになるよな。)

信長との戦いも、バーサーカーと遭遇したときの戦いも、
五飛は全力で戦っていたと間違いなく言える。

だが、最期にバーサーカーと真っ向から切り結んでいた時の五飛は
式が刀を持って応戦した時のような、常人ではありえない動きをしていた。

何か飛躍的に運動能力を向上させる薬のようなものがあったとしても、
五飛の性格上、そんなものに頼るとも思えない。


では外的要因か?
例えば―――誰かに戦いを強制させられる薬を使われたとか。
だがこの線も薄い。五飛の行動自体に疑問を挟む余地はないのだ。
五飛ならば、例え死ぬことになってもあの化け物に食らいついて行っただろう。


「あーもうわかんねえなあ!」

とりあえず小さな疑念はしまい込み、月と星によって照らされる港を黙々と歩くことにする。




「さて、デュオ達が戻ってきたら今後に向けての会議を行う。
 だがその前に、『黒の騎士団』として大筋の方針を伝えておく。」

「はい!」
「了解っす。」
「わかりました。」
ルルーシュの発言に『黒の騎士団』団員の三名が頷く。

「まず、モビルスーツのパイロットであるデュオ・マックスウェルに対し、優先して機体を購入する。
 そして揚陸艇のような移動拠点を購入し、両儀式は白兵戦要員としてその移動拠点に残す。

 これにより機動兵器戦、白兵戦の両局面に対して、残っている参加者の中でも最高レベルのカードを使えることになる。
 また、二人の戦場を分断することで、俺達に対する裏切りを抑止する効果もある。」

「私のロボットは買ってくれないんですか?」

「まあ聞け。
 首輪の換金額次第だが、バーサーカーは参加者中1,2を争う強さのはずだ。
 その換金額で買えないのならば、機体はただのディスプレイに過ぎないことになってしまう。
 恐らく購入は問題なく行えるだろう。

 また時間が経てば経つ程、参加者が機動兵器を手にする機会が増えてくることが予想できる。
 憂、そして澪には、機動兵器が場に出回る前に、KMFを乗りこなせるようにしておく必要がある。

 まずは今回の機体で操縦方法を覚え、次回放送以降更に上の機体に乗り換え、部隊の中核を担ってもらう。
 デュオはそれまでの盾だと思っておけばいい。」

「……相変わらずの外道っぷりっすね。」

「お褒めに預かり光栄だな。
 そして桃子は先程言ったとおり、移動拠点内で俺のサポートを引き続きしてもらう。
 今後、象の像などで新たな参加者をグループに収容した場合、監視を行う必要もあるからな。」

「はいはい、人使いの荒いルルさん。」

「では桃子は会議の間、外の見張りを頼む。
 会議が終わったらこちらから連絡するから、それまで消えておく必要はないぞ。
 ついでに身体も安めておけ。」

「了解っす。
 ……今度はちゃんと応答して下さいね、ルルさん。」
「ああ、分かっている。」
「桃子ちゃん大変だけどお願いね。」
「ありがと憂さん、それじゃ行ってくるっす。」

一度気配を消し、甲板に向かう桃子。


―――そんな慣れた三人のやりとりを、何となく一歩外から見てしまう澪。
まだ『黒の騎士団』として、何かを為したわけではないのだ。

それにグループで行動していると、軽音部メンバーとの違いをまざまざと認識してしまう。
丁々発止と人殺しの話をするこのテンションには、中々ついて行けない。


「そうだ澪さん、会議の時に荷物の中身を見てもらったらどうですか?使い方とかがわかるかも。」
「あ、ああ、そうだな。」


加えて、憂ちゃんのこの軽さ。こちらはこんなに重いのに。


こんな機関銃じゃなくて、ベースケースをこそ背負いたい。
寝坊した律と一緒に登校して、ぶーぶー文句言いながら、ベースの重さをこそ感じたい。


私のベース『FENDER JAPAN JB62/LH/3TS Jazz Bass』の重量は約4.5kg。
それをライブ中ずっと抱え、移動時には律のドラムセットも半分持ってやったりする。

でも、それを重いなんて思ったことはない。
もちろん「重いぞ、律」なんて冗談めかして言ったことは多々あるが、こんな重さとは違う。



人の命を奪う重み。


―――それが、重さの違い。


でも、だからこそ、私は頑張らなくちゃいけない。


軽音部の『おもい』をこそ、取り戻す為に。


そこにデュオと式が戻ってくる。

「外はやっぱり激戦があったみたいだな。自販機とかは恐らく瓦礫の下だ。
 目ぼしい物はなーんにも残っちゃいなかったぜ。」

通信機をルルーシュに返しながら報告するデュオ。

「お疲れ様でした。こちらは有力な情報がありましたよ。
 それで会議室も見つけましたので、そちらで今後の方針を練ろうと思うのですが。」
「オーケー。んじゃ、ちゃっちゃと始めようぜ。」




エスポワール内会議室。
会議とはいえ、主にルルーシュとデュオが会話を行っている。


「ご覧のように、機動兵器が売りに出されています。
 そこで、首輪のうちいくつかを換金して機動兵器を入手したいと思うのですが。」

パンフレットをデュオに渡しながらルルーシュが話す。

「ああ、前に言った通りだな、異論はないぜ。んで首輪はいくつ換金するんだ?」
「首輪は全部で10個、優勝に近い人間ほど金額が高いということですので、戦闘に向きそうな人達の首輪を換金したいと思います。」

ルルーシュが上げた名前は
セイバーキャスター、バーサーカー。尋常ではない戦闘力を持ったサーヴァントという存在。
何人もの参加者を殺した戦国武将、明智光秀
伊達政宗の救援に向かったからには、腕に覚えがあるであろうヴァン
そして、張五飛。合計6名。

光秀のところで澪が、五飛のところでデュオが、それぞれあるか無きかの反応をする。


「それでも首輪は多いに越したことはありませんから、すべてを換金するのではなく、
 必要な金額がある程度貯まったところで換金は止め、残りは取っておこうかと思います。」
「ああ。首輪一個でどのくらい貰えるかも分からねえしな。」
「ええ、それにここに載っているのは恐らく旧式の機体ばかりでしょう。
 次回放送で機体が増える可能性もありますしね。」
「んー旧式……って言う程、古かあないんだがな、俺にとっては。」

苦笑しながらデュオが言う。

「どういうことでしょう?」
「ああ……リーオーもエアリーズも俺にとってはまだまだ現役の機体だ。
 だが五飛にとってはきっと旧式だったろう。
 俺と五飛ではここに連れて来られる元の時間が、一年近く違っていたんだよ。」

「…………そうでしたか。」
(やはり、主催は時間移動が可能なのか……)


―――ルルーシュの予測した通りではあるが、これで確証を持つことができた。
スザクはダモクレス決戦の前後から、ユフィは虐殺前後から呼び出されているのだろう。

過去の人間が死んだ場合、後続の世界にどう影響を及ぼすのかは分からないが、
影響の範囲が分からない以上、やはりスザクの生還という基本目的は変わらない。

(桃子をこの場に残さなくて正解だったな。)

首輪の解析辺りの話になった場合、憂や澪は言い包めることが出来そうだが、桃子に関しては油断できない。そう思って離しておいたのだが。

時間移動について知ってしまえば、大きく影響を受けてしまう可能性がある。
主催の言う『生き返り』が、最悪のケースの場合『他の時間』から連れてくるだけということもありうる。

その場合、連れてこられた人間の『元の時間』の桃子は、その人間を失ってしまうことになるのか。
或いは生き返らせた人間が、『ある時間』になったら、この場に再び召喚されてしまうのではないか、等。

仮に優勝し、本当に主催者が『魔法』とやらを使えたとしても、
『主催者が時間の移動が出来て』しまうことで、あらゆる疑心暗鬼を抱えたまま、後の世界を過ごすこととなる。

(まあ……しばらくは桃子には伏せておくべきだろうな。)

また、逆にこの想定を話して桃子が多少なりともショックを受けている隙に、ギアスをかけてもいい。


「どうかしたか?ルルーシュ。」
「……ああ、すみません。機体の話でしたね。
 私としては、デュオには乗り慣れた元の世界の機体で、十全に活躍して頂きたいのですが。」


「まあ、俺としてはありがたいけどな。
 俺の世界の機体ってのは、さっき言った『リーオー』と『エアリーズ』だな。
 リーオーは汎用機で色々な武装が使えて、近接戦でも遠距離戦でも武器次第で対応できる。
 エアリーズは空戦に特化した機体だ。機動性ならリーオー以上だけど、近接戦闘はできない。まあ、空中っていうアドバンテージは大きいかな。」

「デュオはどちらの方が力を発揮できそうですか?」
「そうだなあ。リーオーの方は何度か拝借したこともあるし、俺は近接戦闘の方が好きだから、やっぱリーオーかねえ。」
「なるほど……」


ここでルルーシュは思考を3つ目の仮面に切り替える。

『ダモクレス』を見据えるなら、当然空戦用の機体を選ばせる必要がある。
だが現状、バーサーカーのような相手や、機動兵器を使う『殺し合いに乗った』人間を駆逐するのなら、
デュオの戦力を十分に発揮させる機体であるのが必須条件だ。


「このリーオーというのは、空は飛べないのですか?」
「んー…バーニアを噴かせてジャンプってのが精々かね。
 ……あー、いや『高機動オプション』を付けてやれば空戦も可能か。」

(後に空戦が可能となるならば、申し分はないか)
「……そうですね、ではデュオにはリーオーを優先して購入して頂きましょう。」
「オーケー。問題ないぜ。」


「後は式の方ですが……」
「あーオレはパスパス。そんな機械を動かすなんてめんどくさくて嫌だ。」

気だるそうに座っている式が、手を振りながら拒否する。

「そんなもんより、刀が何本か欲しい、刀が。」

心持ち澪の方を見ながら要求する。


「……わかりました。では式には刀を。
 それと、こちらの憂と澪にはKMF……私の世界の機動兵器を購入しようと考えています。」
「は?」


唖然としつつ、憂と澪に目を向けるデュオ。


「はい。私、頑張りますよ!」
元気よく言う憂と。

「……私も、覚悟は決めています。」
生真面目に言う澪。


「……あーもう!わかったよ!俺が二人をカバーしろってんだろ。」

揚陸艦内でのやりとりから、どうせ否定しても意地になって反論してくるのだろうと観念する。


正直に言えば、邪魔以外のなにものでもない。
だが、炎に包まれたマックスウェル教会を見た時に決意した自分には、この少女達の決意は痛々しい程にわかる。
この覚悟は、きっと翻らないのだろう。


「まあ、機体をどう動かすか、どう考えるか、とかは教えられるとは思うけどよ。
 でもそもそも、そのKMFって兵器自体の動かし方とかはわかんねーぞ。」
「ああ、基本動作ならば、なんとかこちらで教えられます。」

「…………ルルーシュは機動兵器の操縦までできんのか。」
「まあ貴族の嗜みという奴です。私達の世界のブリタニアという国では、皇族ですらKMFの操縦ができるように訓練しているのですよ。」

それは文化の違いだと言わんばかりに、淡々と説明する。

「…………そうかい、じゃあ嬢ちゃん達への基本動作の説明はお願いするぜ。」

再び湧き上がりそうになる疑念を抑え、デュオも返答する。


「それと、買える範囲で移動拠点を購入したいと思っています。
 移動拠点の利便性は、先程までの揚陸艇で皆十分理解できていると思いますので。」
「……ああ、それは確かにそうだな。」

「移動拠点と機動兵器を手に入れた後は、予定通り象の像へ向かおうと思いますが、購入は18時30分まで待たなくてはいけませんので、
 もしかしたら遅すぎるかもしれません。早く到着することは諦めて、途中で機動兵器の習熟訓練を行っても良いかもしれませんね。
 ……方針についてはこんなところでしょうか?」

「そんなところかね。俺はいいぜ。」
「では、首輪を交換しておきましょう。」

先の議題で出た6つの首輪をルルーシュが預かり、
残りの兵藤和尊・田井中律・竹井久・荒耶宗蓮の首輪を解析用にデュオが預かる。


「あ、あの!」

会議が終わりかけたタイミングで、澪が発言する。

「どうした、澪?」
「私の道具、伊達政宗って人に勝手に入れられてて。わからないものがいくつかあるから見て欲しいんだ。」
「いいぜ。っても、トンデモないものが出て来ても、俺には分からないけどな。」


苦笑混じりに言うデュオに頷き、デイパックから道具を取り出す澪。


まずは本が三冊。
「……さっそく分からないものが出てきやがったな。」
デュオは『絶対に読むべからず。発狂注意!』と書かれている本を手に取る。
そのままルルーシュを見るが、ルルーシュも首を横に振る。

「……式、これなんだか分かるか?」
「ん……?封印されてるってことは魔術書かなんかだろ。オレに使い方が分かるわけがない。」
魔術師なら使えるんだろうがな、と『赤』の人形師を思い出しながら付け加える。


続いて出したのが笛のようなもの。

「…………」
静かに首を横に振るデュオ。

「……説明書のようなものは一緒に入っていなかったのか?」
「えーと……」

ごそごそとデイパックを探し、「あった!」と叫ぶ。
説明書を読むと、グライダーに変わる脱出装置だそうだ。

「これは使えそうですね。」
と頷く憂に、やっぱり唯との違いを認識させられてしまう。


唯なら「さるとびさすけぇ!?」とまず反応し、「ねぇねぇ澪ちゃん、吹いてみていいかな?いいかな?」
と言いつつ止める間もなく吹いて一悶着あるところだろう。


「これはKMFから脱出した時の為に、澪と憂が一つずつ持っておくのが良いでしょうね。」

澪は韜晦を打ち消し、憂にひとつ笛を渡した後、バッグからジャンケンの絵が描かれたカードを取り出す。


「えっと、ジャンケン……ですね。」

澪がポツリという言葉を余所に、デュオは念入りにジャンケンカードを調べ始める。

「この硬さ、もしかすると……」
この地にて幾度となく助けられた、デスサイズの装甲板と同様の硬さがあるように感じる。

「これ、何枚か預かってもいいかい?」
「ええ、構わないですよ。」

澪に確認を取ったあと、首輪の解析に役立つかもしれないと、グー・チョキ・パーを一枚ずつデュオが預かる。


続いて出したのは、ぐねぐねと波打つような形状をした両刃の剣。

「これは……カトルの……?」
「知っているのですか?」

デュオの反応にルルーシュが訊ねる。

「ああ……俺の世界の『ガンダム』の武器の一つだ。もちろんサイズは小さくなっているけどよ。」
「確かこれを使っていた時、赤く光って相手の剣をスパッと斬っていました。」
「……ああ間違いねえ。これはサンドロックのヒートショーテルだ。」
(これがあれば、もしかすると首輪も斬れるかもしれねえな。)


「すまないが、この剣を少し貸しておいてくれねえかな。」
「え……」


この剣ならば、自分でも敵を倒せるかもしれないと思い、澪は少し躊躇する。

「な、頼むよ。代わりにこれを貸しておくから。」

中務正宗を取り出し懇願する。
その刀を見た式は、貸すくらいならオレによこせという目線でデュオを睨むがあえて無視する。


「貸してあげるといいんじゃないか?澪はKMFを乗りこなすのが優先だろう。」
ルルーシュがデュオに助け舟を出す。

「……わかりました。」
不承不承という感じで、ヒートショーテルと中務正宗を交換する。

「へへ、助かるぜ!」
(カトル……『僕のサンドロック』の力、ちっと借りさせてもらうぜ。)

「……えと、こんなところです。ありがとうございました。」

最後に出そうとした、優勝時に1億ペリカ増額されるというチケットは結局出さずに、澪はぺこりと礼を言う。




甲板の上、夜の港を双眼鏡で監視する桃子。

辺りに闘争の気配はなく、物が動く気配もない。
海側に目を向けてみるが、灯台が壊れてしまった為遠くまで見通せることはできず、ただ闇が見えるのみである。


「んーひとまずは安全ぽいっすね。」

文字通り一息つきながら、港側に向かって折り畳み椅子に座る。


―――ここまでは理想的に物事が進んでいる。

荒耶宗蓮、バーサーカーと人外とも言える強者達を殺し、
その際に参加者を数名巻きこんで殺している。

そして『黒の騎士団』は傷つくどころか、他者の血を吸って強くなるが如く強化されていく。


「しかも、今度はロボットっすよ、先輩。」

苦笑しながら、愛しき人に語りかける。


ルルーシュの鬼謀は群を抜いており、打つ手打つ手が結果を残している。
『黒の騎士団』に入れたことは、僥倖とも言うべき出来事だったのだろう。


正直、外敵に負ける気はまったくしない。
もし崩れることがあるのなら―――そう、内部からの崩壊だ。


新しく入った人間を注意深く監視し、崩壊の兆しとも言える人間が現れたのなら、その時『狩る』のは自分の役目だ。


ルルーシュ自身に対する疑念はどうしても拭い去れないが、作戦が順調にいっている以上、
その疑念を抑え『黒の騎士団』を利用する形でこのまま終盤まで乗って行けばいい。


「…………さっきはまあその。ちょっと不意を突かれちゃったっすけど。」


ルルーシュの発言に対して動揺してしまった自分に首を振る。


荒耶宗蓮を殺した時の必殺の型。

―――背後からのビームサイズによる強襲―――

がバーサーカーに破れてから、少し気弱になっているのも原因かもしれない。


“孤独”


夜空の下に独りでいると、どうしても荒耶宗蓮の戯言を思い出してしまう。
だが、孤独だからなんだというのか。


先輩を取り戻す。


その為になら他人にも、そして自分にも、孤独にだって負けはしない。


そんなことを思っていると、ルルーシュから連絡が入る。


「こちらの会議は当初の方針通りに終わった。これから装備を整える。」
「流石っすね。こっちも異常なしっすよ。」
「了解した。すまないがそのまま監視を頼む。
 移動拠点が手に入れば、もう少しお前に楽させることができるだろう。」

「…………了解っす。」
「購入が終わったら連絡する。そうしたら合流してくれ。」


通信を切り、溜息をつく。


「わかってるんすか、ルルさん。全員殺し終わったら、そうしたら、私達敵になるんすよ……?」


引き続き港を監視しながら、今後の行く末を想う。


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240:Murder Speculation Part2(後編) デュオ・マックスウェル 245:ルルーシュと腹黒い仲間たち(後編)
240:Murder Speculation Part2(後編) 両儀式 245:ルルーシュと腹黒い仲間たち(後編)
240:Murder Speculation Part2(後編) 平沢憂 245:ルルーシュと腹黒い仲間たち(後編)
240:Murder Speculation Part2(後編) ルルーシュ・ランペルージ 245:ルルーシュと腹黒い仲間たち(後編)
240:Murder Speculation Part2(後編) 東横桃子 245:ルルーシュと腹黒い仲間たち(後編)
240:Murder Speculation Part2(後編) 秋山澪 245:ルルーシュと腹黒い仲間たち(後編)


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最終更新:2010年04月28日 11:03