5910 ~隔離された小島で~ ◆kALKGDcAIk



「やっぱり泳げないよな……」

僕は無意識に呟いた。
支給されたデバイスで位置を確認してみるとエリアF-2。遺跡のある小島の一角らしい。
地図を見る限り、向こう岸に渡る為の橋などは見当たらない。
少し散策した所、見つかったのは小型のモーターボートが一隻。
但し、対岸に。かろうじて目視出来る距離だ。
デバイスに付属している方位磁石によると、だいたいF-1辺りに停泊している。
対岸までは別に水泳が得意な訳でもない僕にはとても泳ぎきれる距離ではない。
正直手詰まりだ。


だからといって、こんな所でじっとしていても仕方がない。
先ほど確認した名簿にはよく知る名前が二つあった。
両儀式浅上藤乃だ。
両儀式。
人を殺せない殺人鬼。
あらゆるモノの死が見える特別な目の持ち主。
彼女は強い。こんな馬鹿げたゲームで人を無差別に殺したりしないし、簡単に殺されることもないはずだ。
浅上藤乃。
死に接触して快楽する存在不適合者。
視界内の任意のモノを捩じ曲げる超能力の持ち主。
かつては、復讐の末の殺人者だったが。既にそれは解決した問題だ。
無差別に参加者を殺すとは思いたくない。
他にもまだ13人分名簿に載っていない名前がある。鮮花や橙子さんが参加させられている可能性だって十分あるのだ。


式とは合流したいし、浅上藤乃の存在も気になる。
それに自分だけ、逃げの姿勢をとりたくなかった。

先ほど見せしめとして目の前で殺された少女。
大切な家族を想い、勇気を持って壇上に上がった少女。
彼女のような何の罪もない人たちがこの会場には恐らく多くいるだろう。
そんな人たちがいるのに、僕だけ逃げの一手を考える気にはなれない。

僕には式のような戦う力はない。守る為でも、相手を殺すための引き金を引けるか分からない。でも、反攻の意思は示し続けたい。見せしめになった少

女のように。
だから僕はこんな所に隔離されている気はない。

参加者全員に支給された物品ではこの窮地を脱す手助けにはならない。
周囲に特にめぼしいものも落ちていない。
だったら、この状況を切り抜ける術をこのゲームの命綱ともいえるランダムアイテムに賭けるしかない。
そんな神様にも祈る気持ちで取り出したランダムアイテムは―――。



たった一冊の本。タイトルはバトルロワイアル観光ガイド。



「―――なにこれ?」
驚きとイラつきが僕の頭を過ぎった。
観光ガイドなんてこの場で何の役に立つのか。
付属している説明書には、
  • バトルロワイアルをより盛り上げる為に用意された施設。
 その魅力を存分に詰め込みました。
 殺し合いを有利に進めるマル秘情報も満載!

確かに地図を見ると、確かに象の像やらショッピングセンターとか殺し合いの会場とは思えない変わった施設が多く書かれている。
だからといってこんな参加者をあざ笑うような観光ガイド。
これを入れようと決めた奴は楽しんでやったと思う。

投げ捨てる衝動を抑えつつ、とりあえずこの小島にある唯一の施設である遺跡のページを捲って見る。

【F-2/遺跡】
  • 神根島の遺跡をそのまま移築しました。
 太古から伝わる遺跡に歴史のロマンを感じながら、凄惨な殺し合いを楽しむことが出来ます。
 申し訳ありませんが、ゲームの進行に関係のない思考エレベータに関しましては、現在機能を停止させております。
【マル秘情報!】
  • 遺跡には隠された地下道が存在します。どこに繋がっているかは入ってからのお楽しみです。

前半の文章で、破りたくなる衝動にすら駆られたが、一つの文章が目を引いた。
"遺跡には隠された地下道が存在します。”

最初は大はずれだと思ったが、どうやらそれは見当違いだったようだ。
少なくともこの場では大当たりも同然だ。

選択肢なんてない。地下道がどこに繋がっていようが、進むしかない。
僕は覚悟を決めて、遺跡への一歩を踏み出した。



【F-2/遺跡前/一日/深夜】

黒桐幹也@空の境界】
[状態]:健康
[服装]:私服
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、バトルロワイアル観光ガイド
[思考]
基本:ゲームに乗らない。ゲームに反抗する姿勢は持ち続けたい。
1: 小島から脱出する為に、遺跡の地下道を探す。

[備考]
※参戦時期は第三章「痛覚残留」終了後です。

【バトルロワイアル観光ガイド】
会場内にある各施設の名称やその特徴、見所について写真と共に掲載されています。
マル秘情報として、普通に見て回るだけでは気づきにくい事柄が載っている事もあります。

  • 遺跡について
遺跡は神根島の遺跡@コードギアス 反逆のルルーシュR2を移築したものです。
F?1の畔に3人ほど乗れる小舟が一隻あるのが確認できます。
思考エレベータなどの機能は停止されています。機能を復旧させられるかどうかは不明です。
遺跡には地下道が隠されています。
地下道の具体的な場所やどこに通じているかは、後の書き手さんにお任せします。


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黒桐幹也



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最終更新:2010年01月19日 20:22