See visionS / Fragments 6 :『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum-◆ANI3oprwOY



雨はまだ、降り続いている。


「彼女が秋山澪、か……」

古びた駄菓子屋の軒下で、壁に凭れたまま枢木スザクは呟いた。
先ほど出会った黒髪の少女の姿を思い浮かべながら。

「ああ」

大きな木箱に腰掛けて、両儀式は空を見上げていた。
髪から伝う雫が、木箱に小さな染みを作る。

「……もし僕が彼女と敵対したら、君はどうする?」

スザクは問いかける。
同じ軒下。擦りガラスのはまった引き戸を挟んだ反対側にいる式に。

「べつに、どうもしない」

答えはあっさりと返される。
その声に一切の迷いはない。

「僕が秋山澪を殺しても?」

問いも、答えも、淡々と。

「おまえにはおまえの、秋山には秋山の理由があるんだ。オレはどっちも否定しない」
「そして、どちらも肯定しない?」
「正しいとか間違ってるとか、オレはわからないし、興味もない。
 けど、あいつとの約束は無効になったわけじゃないからな。お前が殺しても、どうもしないけど。殺させたりは、しない」

あっさりと言い切る式はやっぱり空を見ていて、スザクはただ壊れた町を見ていた。
二人の間に、沈黙が落ちる。
先に動いたのはスザクだった。
凭れていた壁から離れ、デイパックに入れていた新品のビニール傘を式へと差し出す。

「もう濡れてる」
「知ってる」
「そうか」
「いらないなら捨てていい。余るだけだから」

差し出された傘を受け取って、式は木箱から降りて立ち上がる。

「捨てないよ。差さないけどな」







――雨はまだ、止んでいない。
今も一定のリズムで落ちてくる。
細く、弱い、幾つもの線が、割れたコンクリートを湿らせ、灰色を濃くしていく。

コロニー内の遙か上空に作り出される、人工対気。
それの生み出す雨雲が、虚構の空から雨を落とし始め、二時間と少し。
コロニー全体の洗浄機能を含んだ水分供給は次第に、弱まりつつあった。

白き修道着に滴が落ちる。
地表と上空の汚染を洗い流すに、かかる時間はそう長くない筈だ。
小雨に変わった雨脚を、インデックスという端末は備えた知識故に、そう理解していた。
次の戦いが始まる前に、この雨はおそらく止むだろう。

けれどまだ、止んではいない。
止んではいなかった。

雨が小雨に変わっただけで、まだ、止んではいない。
この世界において、どの場所においても、誰の空においても、そして誰の心の内側においても。



雨はまだ、降り続いている。






◆ ◆ ◆










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◆ ◆ ◆













倒壊したショッピングセンターの跡地にて。
帰還する少年を、端末はやはり無感情な瞳で迎えていた。

「続けるのですね」

目前に立つ少年を見据えながら、淡々と確認する。
少年の服装は至るところが破れ千切れ、その孔から血の滲んだ傷が幾つも見えていた。
この場所を離れる以前より更に倍加している怪我に、驚いた様子もなく。
新たな生存者を引き連れての帰還に、感心を示すでもなく。
ただ、確認をしていた。彼の意思を。

「……ああ」

少年は淀みなく答える。
血みどろでも、何処か晴ればれと。
憑き物の落ちたような気軽さで、戦い続けると宣言した。

「もちろん、殺し合いを続ける……ってワケじゃないけどな」

そして、それだけでなく。

「ならば始めるのですね」

彼の言葉の意味する所は、つまり――

「神に対する抵抗を」
「ああ、そうだ」

これより迫り来る神との戦い。
決して及ばない絶対者への、抵抗。
勝ち目のない、用意された茶番劇をそれでも、続けると言った。

「そうですか」

無感動に、やはり端末は聞き届け。
次に、少年の背後に、視線を移した。

「では、あなたも」

少年の背後に佇む者。
――平沢憂
ここに新たな生存者であり、生存の意思を示すもの。
阿良々木暦の背後にて、彼の手を掴んだまま、俯いている少女。
彼女もまた、同じ意思を持つのかと。

「…………」

俯いたままの少女は、首を振った。
数度、否定するでなく、分からないと伝えるように。

「…………」

まだ、分からないと。それでも、立っている。
少女はここにいる。阿良々木暦の手を掴み。それでも、座り込みはしない。
まだ重い体重を、少しだけ他人に預けながら。それでも、自分の足でここに居た。

ならばそれが、何よりもの答えになった。
たとえ答えの意味を、彼女自身が理解していないとしても。

「わかりました」

インデックスは了承する。
端末は承諾する。彼ら彼女らの抵抗を。
認め、伝える。

「ではあなた方は、これより世界の敵となります。
 この世界のこの場所の、神にとっての。殲滅の対象として選ばれるでしょう。
 執行は第七回定時放送の後。しばらくの間、お待ちください」

彼らが辿る、破滅の未来。

「待ってるよ。出来る限りの、準備をしてな」

阿良々木暦もまた、正面から受け止め、前へと歩み出す。
繋いだ手に引っ張られるようにして、その後ろを平沢憂もまた続く。
インデックスを通り過ぎ、端末の背後、未だ倒れたままのグラハム・エーカーに近づいていった。


頭上では重く垂れこめた灰色の雨雲。
そこから、ぱらぱらと、小雨が落ちてくる。


「……続けることにしたよ」

阿良々木は降り続ける雨の中で立ち止まり、蹲る男に告げた。

「勝つ方法も分からないけど。戦う術も知らないけど」

阿良々木暦は瓦礫の山の下に座り込んだままの男を見下ろしながら、訥々と自らの意思を伝える。
生き続けるという宣言。背後に立つ少女の手を、しっかりと握ったままで。
それにグラハム・エーカーは動かぬまま、呆然と生気のない目で少年を見上げ返したのみ。

「グラハムさんも一緒に、もう少しだけでいい。力を貸してくれないか?」

真っ直ぐな、二度目の助力を求める言葉には鈍く。

「……」

グラハムは、僅かに首を振るに、留まった。

「そうか」

彼の拒絶と再起不能の絶望を、阿良々木は受け止めて、噛み締めるように目を閉じる。
噛み殺す音を少しだけ、そのきつく結んだ口から絞り出した後に、もう一度。

「……わかった」

それは諦観を含む了承だった。
無理であると。何が、とは言うまでもない。
目前の男を立ち上がらせることは、出来ない。
少なくとも阿良々木一人の言葉で拭えるほど、彼の停止は緩くはないと理解したのだろう。

失われた存在は、阿良々木にとっても大きな者だった。
だがその価値は、彼の内側では阿良々木の想像を絶する規模を誇っていた。

もしもこの場所で、直ぐさま彼を立ち上がらせる者が存在するなら、それは失われた『彼女』に他ならず。
そして彼女はもう既に、この世界に存在しない。
故にこそ、不可能であるのだと、確信する。
だからこの場所には、もう留まる意味が無い。

ここに再起の望めぬ男をおいて、再び背を向ける少年と、彼の後を進む少女。
行く先には、一機の端末(インデックス)が佇んでいる。
砂利を踏みしめながら進む二人。視線を合わせず、もう一度通り過ぎ行こうとして。
すれ違い際、白い少女の形をした端末はその引き結ばれた口を僅かに開いていた。

「なぜ、あなたは、そのままでいられるのですか?」

不意の質問。
それは果たして、かつて誰かに向けた問いでもあった。
役割を失い、途切れはじめた端末の思考に、その記録はまだ薄弱なものとして残っている。
だがもう一度、繰り返すように口にする。

「苦しみながら。痛みながら。
 絶望を知って尚、何故あなたは、諦めることが出来ないのですか?
 苦しみ続ける道を、痛み続ける道を、選び続けるのですか?」

そのやり取りにだけは、無感情な端末に抑揚が宿っている。
空白の言葉の最後に疑問符が現れる。
奇特な事実に、誰も気づきはしない。
端末自体、理解できていないのかも知れない。
それでも口にして。

「多分……」

そして足を止めた少年の答えは、かつての少女の出したものと、また違ったものだった。

「前提が違うんだ。苦しくなんか、ないから……いや『苦しくない』なんて言うと嘘だけどさ。
 だけどこっちのほうが、僕にとってはきっと楽な道なんだよ」

少年は自嘲しながら、それでもハッキリと答えていく。

「諦めて留まって、それで後悔するよりもさ。
 精一杯抵抗する方が、ずっと楽なんだ。
 少なくとも隣に、僕以外にも、もう一人くらい、がんばってる奴が居るならさ」

つまり苦しむほうが、苦しまないよりもマシだと。
少年は言い切った。
後ろにいる少女の手を、握りながら。

平沢憂。
未だ己一人では何も出来ず、何かを成そうと行動することすらできぬ、少女。
ただ自分の足で立っている、それだけの。
生きようとのみしている。ちっぽけな少女の存在こそが、己にとっての救いだと。
立ち向かいうる理由になると。
それが一つでもここにある限り、戦い続ける事ができるのだと。少年は言った。

「つまり、苦しみが己一人の物ではないから、安楽、と?」
「違うよ。そういうことじゃない」

否定の言葉は淀みなく。

「ほんの少しでも、僕がここに居る意味があったから。
 それに、救われるんだよ」

そう告げた少年に、端末また呟いた。
感情を無くし、再び無機質に切り替わる。
色のない声色を乗せ。


「理解、出来ません」


「……そうか」

「ですが」

言葉は続けられる。
紛れも無い、インデックスの口から。


「知っている概念。かもしれません」
「……そうか」


ゆっくりと、同じ言葉を呟いた阿良々木はやがて、ぐるりと周囲を見渡した。
彼らの周りには相変わらず崩落したビル群と、灰色の曇り空と、雨と、消えた火の残り香だけがある。
武器になりそうなものも、状況を打開する鍵も、見当たらなかった。


「どうすればいいかな……これから……」


それはインデックスに聞いているのか、自問自答をしているのか。

「まぁ、お前に聞いてもしょうがないか」
「はい。私から、参加者の皆様にお伝えすることは、もうありません。
 インデックスはほぼ全ての役割を終えたと判断しています」
「だろうな」

いずれ、無用な解説に、彼は最初から期待すらしていなかっただろう。

「ですが、これらの事を考慮するのであれば」

しかし何処に向けられていたにせよ、その問いに、端末は答えることができた。

「『彼ら』と、話されるのがよろしいかと」
「彼、ら?」
「はい」

端末はもう一度、振り返る。
阿良々木の背後、そしてインデックスの背後から歩み来る。

「――生存者、更に二名、確認」

雨の中、瓦礫の町を進んで来る、新たな変調に。

「照合、枢木スザク、及び、両儀式」

新たな二人。
白い和服を雨に濡らしながら、悠然と進む少女。
傘に隠れた表情は見えないが、力強い歩みで進む青年。

「以上、新たな二名に、生存の意思を確認できます」

これで、四人。
神に抗う意思が、此処に集っていた。






◆ ◆ ◆



一人の青年と、一人の少女が、歩み来る。
瓦礫の道。阿良々木暦の目の前で、彼らは足を止めた。

「生きてたか」

現れた二人に向かって、阿良々木の発した第一声は簡単な事実確認。
もちろん言葉通りの確認ではない。
枢木スザク、両儀式、共に放送で名を呼ばれた者にあらず、生存していることは自明。
その質問は戦い続ける意思の持続を聞いている。

「…………」

スザク、式、共に応えない。
一方は愚問と断じるが如く、もう一方は答えるまでもないと言うように、流す。

「君は、どうする?」

そして打ち返されたスザクの言葉は端的であり、核心を突いていた。
戦う意思の確認は元より、戦うために何をするのか。
生きると決めて、その更に次の行動こそが重要だと言わんばかりに。

「もちろん……戦うけど……」

機先を制されるような格好になった阿良々木が、語調を弱めて応える。
それに、スザクの追求は速やかだ。

「どうやって?」
「方法は……それは……これから考えるけど……」

インデックスと相対した時とはまるで違う、濁すように歯切れの悪い応答。
明白だった。
阿良々木暦はまだ、戦うという意思だけしか、ない。
その先を有していない。
阿良々木の頼りなく、弱々しい声に、スザクは怒るでも呆れるでもなく何の感情も示さずに

「わかった」

とだけ答え、再び歩き始めた。
目の前の男のことなどもはやどうでもいいかのように、彼の脇を通り抜けて。
その態度に、阿良々木は一瞬だけ呆けた後。

「お、おいっ」

慌てたように振り返り、スザクを呼び止める。
焦りを帯びた反応は至極真っ当なものだ。
スザクの行動は、あまりにも簡素に過ぎる。
これからの方針、敵の正体、放送の内容、一切話題に挙げず、一人で進むと言っているに等しいのだから。

「お前はどうするんだよ!? あいつに……あのリボンズって奴に、どうやって戦うつもりで――」
「僕は僕のやるべき事をする」

阿良々木の隣で止められた足は、そう長く留まらないだろうことを予感させた。
スザクの態度は強固であり、同時に以前に増して冷徹に切り替わっていた。
これからの事を話し合うでもなく、協力関係を築くでもなく、ただ、自分だけの道を行くように。

「もう一度聞くが、君に何が出来る?」

嘲笑ではない、詰る為に発された声ではない。
何の思惑も策略もない問い。
この時、この状況で、果たして阿良々木暦に何が出来るのか。
神に抗う武器は無い。神に逆らう策は無い。彼に力はない。
何もないただの半吸血鬼の少年に、この先どのような配役があるのか。

「…………」

己は何を為す者か。
その答えを、持たないからこそ。
阿良々木暦は今、彼を追う資格を持たない。

「早く、答えを出せって、ことかよ……」

理解して、少年は足を止めざるをえなかった。
騎士は再び歩を進める。
少年の傍に佇む少女へ向けて。

「――っ」

唐突に鋭い視線で射られた少女、平沢憂の肩が強張る。
今の今まで、いない者のように扱われていた事が、衝撃に拍車をかけたのか。
あるいは他の要因があるのだろうか。

憂の様子にも、スザクは表情を変えることはなく。
ただ、一言。

「君宛てだ」

これもまた簡素に。
騎士は必要なことだけを述べ、必要な物だけを手に持っている。

「……ぁ」

憂の視線は、スザクの差し出した物に釘付けになっていた。
ひとつは、阿良々木達が学校で荷物を分配した際にスザクの手に渡ったラジカセ。
そしてもうひとつ、ラベルに『to Ui』と記されたカセットテープ。
それが一体何を意味するのかを質するより前に、無言の圧力に押され、少女は手を伸ばす。

おずおずと憂がそれを受け取るのを確認して、今度こそ騎士は歩みだした。
砂利を踏みしめながら、小雨の中を去っていく。

ただ一人。
彼は孤独に、進んでいった。


「…………」
「…………」
「…………」


スザクの足音が遠ざかる中、誰も、一言も発しなかった。
雨が振り続ける。
一人は二人になって、二人は四人になって、四人から一人欠けて、三人になって、それでも変わらない。
依然景色は変わらず、瓦礫の町は静かなまま。
瓦礫の山の下に残った両儀式に、阿良々木は小さな声で話しかけた。

「お前はどうなんだ?」

最後に見た時と同じく、白く鮮やかな和服に身を包んだ両儀式の風貌に大きな変化はない。
先の連戦で消耗し、未だ外見上は無傷とはいえ、一方通行と長期間戦い続けた代償は決して軽くなかった筈だ。
その体内には膨大なダメージを抱えていることだろう。
彼女といえど細かな汚れを服装の至る所に受け、流石に疲れきった表情で、降りしきる小雨の中にあって。
それでもなお、両儀式は悠然として、神秘的な美貌を崩さない。
世界に守られているが如く、否、一種の世界感そのものを周囲に纏うがごとく、彼女は変わらず此処に立っていた。

「たぶん、おまえ達と一緒だろうな」

返答こそ阿良々木に向けられているものの、式の視線は彼を捉えていない。
ぐるりと周囲を見回す動作は、まるで何かを探しているようだった。

「オレも、オレのするべき事とか役割とか、知らないよ。ただ……」

一周した視線をようやく、阿良々木に向けて。

「――やりたいことは知ってる」

言い切った彼女もまた、歩みを再開する。
スザクとは別種の、しかし確固たる目的を持って。

「じゃあ何を、するつもりで……」
「そうだな、まずは雨宿りだろ。おまえこそ、いつまでここで濡れてるつもりだ?」

言葉を無くした阿良々木から視線を外し。
両儀式は、廃墟と化したショッピングセンター立体駐車場へと進み始めた。

「……」
「……」

残されるのは一人の少年と、一人の少女。
共に言葉なく。行動もなく。
暫く停止していた。

やがて立ち込める冷気に震えた少女の手がぴくりと動いたのを、きっかけにしたのか。
少年の足も、重く動く。

「――――」

背中を打つ端末の視線を、少年は振り返らず。
少女の手を引いて、何処かへと行こうとする。
行き先無く、目的も瞭然とせず。

「それでも止まってる時間は無いんだ。僕も動くよ。せめてこの雨が、止む前に――」

己のやるべき事を見つけてみせる。
そう、己の中のルールを決め。
阿良々木暦はまた歩き出す。
平沢憂も、手を引かれるまま彼の後を歩む。

未だ埋まっているかもしれない武器を探すのだろうか。
あるいは無人販売機を見つけ、そこに希望を見出そうとするのか。
いずれも、来る戦いにおいて意味のある行為にはなり得ないだろう。
観測を続ける端末は、そんな彼らをただただ見続けている。
そうして、




「コロニーの汚染度は予想よりも重度だったようですね。
 GN粒子の会場への過剰流失が原因と見られます。
 降水量の増加が見込まれますので、ご注意ください」




ぼそりと付け加えられた解説は、既に誰の耳にも届かない。
ただ、雨が、少し強くなった。
小雨に変わっていた雨脚が、再び勢いを増していく。


それでも、進んでいく。
生きることを選んだ者たちが。
続けるために、終わりに向かって。

歩んでいく。
終わりを約束された世界の中で、4つ。

虚しく、生きる意志を失えない少年と。
か細く、生きる意思を取り戻す少女と。
愚直に、生きる契約を遂行する青年と。
伽藍に、生きる約束を夢見る殺人鬼と。
4つがここに、残っている、それだけ。


シナリオの変調。
続けられた抵抗。

そしてそれは、それだけのことだ。
本質的なことは何も、まだ何も、変わってはいない。

生きる思いを手に、けれど彼らには、戦う術がなにもない。
神に敵う武器はなく、向かう果ては依然として断崖。
非力で、空虚で、それでもあり続け。
四時間後の死を待つでなく、四時間後の死に『向かい行く』彼らを、インデックスは見つめ続けていた。

からから、と。空回るように。
生きる思いすら、無く。
故に脆弱な彼ら以上に、空虚な存在として、彼らの生を見つめ続けていた。
雨に濡れながら、端末もまた、濡れ続けながら。


雨はまだやんでいない。
誰の身にも平等に、今も降り続いている。




雨はまだ、止んでいない。





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最終更新:2013年09月08日 06:36