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See visionS / Fragments 7 :『Mercenary』 -アリー・アル・サーシェス-◆ANI3oprwOY





お前は汚い?
そりゃそうだ。こちとら毛先から爪先まで糞まみれだぜクソッタレ。
けどよ、世の中糞食って元気に生きてる生き物なんざごまんといるんだぜ?俺ひとり物珍しいってわけでもねえよ。
そもそもお前ら、人に言えるほど綺麗な生き方してきたのかよ?


お前は悪だ?
ああ、そうなんじゃねえのか?だからどうしたって話だがよ。
他人がどう名付けようが、歴史にどう残ろうが、天国だの地獄だの知ったこっちゃねえけどさ。
俺がなんであるかなんて、俺以外に決められるわけねえだろうが。



あぁ、死ねだあ?おいおい容赦なく言うねぇ。
――嫌だね。死ぬまで俺は、生き続ける。







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◆ ◆ ◆










See visionS / Fragments 7 :『Mercenary』 -アリー・アル・サーシェス-










◆ ◆ ◆



水面に波が立つこともなく、時間は安穏に過ぎていく。
嵐の前の静けさという言葉の通り、いっそ不気味ですらある沈黙の流れが生温い倦怠感を醸し出している。

決戦までの刻限は迫りつつありながらも、会場全体は依然として静謐としていた。
その理由は、島中に散らばっていた参加者の殆どが死に絶えたということが第一にある。
六十四であった数は八人にまで削り上げられた。
序盤に重なり合った因縁の大半が清算され、絶対数が減ったことで自然と戦いの回数も減っていた。
ましてやすべての生き残りが加わっての大乱戦の後であり、どの陣営も例外なく、重大な被害を受けている。
氷雨も降りしきり体力を消費させることもあり、陣営の立て直しと状況の膠着が相乗された結果が、この長いインターバルだった。

そしてもうひとつの理由は、戦いの局面自体の急激な変化にある。
終盤に突然現れた真の主催者。
殺し合いの仕組みの破綻。それに伴うルール変更。
即ち―――リボンズ・アルマークのバトルロワイアルの参戦。
詭弁。催促。予定調和。死刑宣告。
その宣告を覿面通りに受けた者などただの一人もおらず。
可否を問わずに、恭順をよしとしないことは共通し。
主催者の撃破を何よりの優先対象と見定め、神への反逆の準備を進めていた。

対主催やマーダーなどいった安易な組み分けなど関係なく、それぞれの思惑の元行動する。
轡を並べた者達は手を取り合い、孤高に決意する者は独自の道を目指す。
そのうちの一人、残りの参加者からは最も遠く離れている地点。
会場内に分布される雑多な組み合わせの施設群。
その中でひときわ未来的な印象と景観を備える区画、宇宙開発局。
その南西部に突き立つ、管制塔としての役割を担っているタワーに小さな影があった。

「……ったく。これだけ時間かけて目ぼしいのはなしってのも泣けるぜ」

愚痴を垂れつつも、アリー・アル・サーシェスはいつも通りの軽々とした足取りで回廊を歩く。
身を包んでいた装いは真紅の一張羅であったチャイナドレスから一転して、全身迷彩色の新たな姿と変わっている。
軍隊の使う本格的なものではない仮装用の贋作ではあるが、実用性より今は気分の問題だ。
単に趣味の合わない女の体を弄ぶ趣味もなく、動きやすい服に着替えただけでしかない。
当人の遍歴を思えばこれほど似合う服装もなく、本来の人格が思い起こされていくようで馴染みがいいのは好ポイントだ。

大破したアルケーから分離した脱出艇で宇宙開発局の区内に不時着し、手近にあった塔に入って調査をしてからはや数時間。
その間の時間をサーシェスはタワー内の構造把握に割いていた。
内部の探索はほぼ終了、そびえ立つタワーの機能については殆ど調べ終えた。
判明した機能は、最上階の管制室には複数の施設に一方的な通信を入れるため機能が付けられていたこと。
しかし情報をばら撒き混乱を促せる最序盤ならともかく、こんな終盤にあっては使い道などほとんどないだろう。
生き残っている者にわざわざ伝えることなぞ最早ない。交わすのは言葉ではなく銃と剣のみだ。
その他には施設の名前通り、宇宙技術に関する情報を閲覧することができたが、
それも元より宇宙を行き来しているサーシェスにとっては然程目新しい発見にもならない。
来る時期が早ければ使いどころもありそうだったが、やはりこれも価値のないものでしかなかった。
落胆といえば落胆だが、これも想定内の話である。
今となっては、他のどの施設の仕掛けだって意味が薄いものだろうと判断していた。

局面は既に最終段階まできている。
多人数入り乱れてのバトルロワイヤルは幕を閉じ、戦いは次なる形に変化する。
神なる者、リボンズ・アルマークの降臨による宣言。
己の糧として、敗残者を駆逐する殲滅戦へと姿を移した。
ここまで来ればあとはもう手持ちの戦力のぶつけ合い、総力をつぎ込んだ決戦しか起こり得ない。
少しばかり世界の真実を知る程度で、今更覆せる差ではないのだ。


「俺を活かして動かしたのはこの展開に持ってくため、か。いや大将も人が悪いねぇ。
 そんならそうと言ってくれりゃコッチもそれなりの対応をしたっていうのにさ」

エレベーターに乗り込み地上の階のボタンを押す。
指につまむデバイスの液晶には何の映像も映らず、無機質な砂嵐が流れている。
こちらから連絡をつけることの出来なかった通信機は受信側から接触を絶たれ完全に役目を終えている。
それがなによりも自分がお役御免であることへの証拠。
使い捨ての駒にされて憤るような大人気ない真似はしない。傭兵は"それ"が前提の仕事だ。
こうして新しい戦場で戦えるだけで儲けものというもので、むしろ事を面白くしてくれた礼くらい言ってやってもいい。

留まる意味のない施設に未練はなく、次なる目的地に向けてサーシェスは区画内へと躍り出ていく。
立ち入った者が少ないのか、あらかたが清潔に保たれている街の中。
市場を冷やかすように我が物顔で街道を歩きながら、指に引っかけた輪状の物体をくるくると回しながら弄んでいる。

それは、今までサーシェスの頸部に嵌められていた爆薬入りの首輪だった。
元を辿れば、サーシェスが宇宙開発局を目指した理由は首輪を解除することであった。
廃ビル群で発見した首輪の設計図。
工学の知識と設備さえあれば誰でも解除出来るだけの詳細に書かれており、サーシェスもその内容を熟知している。
あまりに露骨な誘い。故にルルーシュの指示で手を出す事はしなかったが、この段階に至ってはもはや邪魔なだけである。
このタワーも解除に十分な設備が整っているだろうと予め当たりをつけてあった施設のひとつである。
そしていざタワー内の研究室や開発室から必要な機材をかっぱらって準備をすれば、ものの数分でなんとも呆気なく戒めは外された。
拍子抜けしたが、これも想定のシナリオであったことを考えれば驚きには値しない。



「旦那と信長のヤロウは死んだ。嬢ちゃんとスザクは生きてやがる。
 関係は、決まったようなもんだな」

ルルーシュ・ランペルージと織田信長の脱落は、放送から聞き及んでいる。
圧倒的に不利であったルルーシュはともかく、信長の名が読み上げられたのはサーシェスにとって僅かながらも驚きだった。
あの状況から相打ちにまで持ち込めたことは予想に反する結果だった。
可能性として高いのは、援軍を連れてくるため戦線を離れた平沢憂が戻ってきたか。
その中に、信頼できる仲である枢木スザクが間に合ったか。
過程の成り行きがどうあれ、あの場で続いた戦いで相討つ結果と予想する。
そして、二者の方はまだ名前を読み上げられていない。
平沢憂は当初からこちらを敵視していたし、スザクも憂から正体を伝えられれば当然矛を向けてくるだろう。
雇用主が消えた今、契約も白紙に戻り再び敵の関係に戻ったということだ。

ルルーシュの警戒していた「消える女」こと東横桃子、その知り合いらしい天江衣の名も聞いた。
残る人数は、秋山澪、両儀式、グラハム・エーカー、阿良々木暦、一方通行。
一人を除けば直接面識か知識のある人間。サーシェスも含めて生きているのは計八名。
そしてその殆どが、主催に抗する集団の筈である。

「これでまた一人旅、か」

味方だった者はみな消えた。
仮初とはいえ轡を並べた輩達。
性質という点では憎からざるものだった好敵手達は、枯れ木の一葉と落ちていった。
在るのはもはや凌ぎ合う競争者と、最大の障害となった元雇用者。
協力どころか碌に関係がない連中相手では、共同戦線など夢想すら及ばない。むしろ因縁深い名前の方が多い。
加えてこの姿となれば信頼が得られよう筈もない。
現状は贔屓目に見てもかなり厳しい。勝ちの目など幾ら振っても見えてこないでいた。
今度こそ完全な孤立無援。
仲間も、指令を下す上司もいなくなったワンマンアーミー。
最大の兵装は呆気なく廃棄行きとされ、身一つでからがら逃げ出した有り様。
客観的に見れば、何とも情けない様なのだろう。

「……変わんねぇな」

だがそれは、この殺し合いが始まった頃からそうだった筈ではないか。
気づかぬ間に見知らぬ土地に連れ込まれ、有無を言わさず殺し合いを強要される。
一人秘めやかに優勝を目指していたあの頃と何も変わってはいない。更に言うなら傭兵時代から変わりない。
殺し殺され、無限に死に合い続ける戦場は、どれだけ流れても変わりない。
PMCの時代から不変の、一切同じ状況だ。

「変わらねぇよ」

結局、これがサーシェスという男の天命なのだろう。
裏切り、反逆、報復、転身。
前菜からデザートまで戦争のフルコース。
知り合いなど殆ど瞬きの速さで死んでいく。
そんな人生を選んだのは自分の意思であり、そこに後悔は微塵としてない。
悪くない、むしろ最高だと恥なく叫べるのだ。

「今も昔も、俺は永遠に俺のままだ」

現状の装備は拳銃一梃に突撃銃二梃、接着式爆弾が二個。
一般の範疇でいえば貧弱ではないという程度だが、ここから先単独で勝ち残るにはまったくの非力。
とてもじゃないが今後に開かれる戦いにはついていける気はしない。
これより幕を開くのは前人未踏の地獄絵図。ただ人間であるだけでは、観戦する資格すらない焦熱に満ちているのだから。
思えば、リボンズから支給されたアルケーは、ガンダムや信長相手を潰させるための一時的な貸し出しだったのかもしれない。
実際、向こうが望むだけの結果を出した後は廃棄場行きとなっている。
ちなみに、本機より分離した脱出艇は着陸してから以後そのまま打ち捨てられている。
元々緊急離脱用の備えだ。優勝を目指すサーシェスにとって無用の長物でしかない。

「あと使えるのは……この布くらいか。上手く使えりゃそれなりに楽しい仕組みがあるみてえだが、信じていいんだかねぇ、この説明書……?」

勝ち残るのを諦める気は毛頭ない。
しかし冷静な視点で俯瞰してみれば勝ちの目は薄い、いやゼロなのが実情たる有様だ。
脱落しかけたところから復帰しただけでも儲けものではある。ハンデはまだまだ継続中ということだ。

「死ぬ気でやれってことですかい……はっ、今となっちゃ気の利いた洒落にしかなんねぇなあまったく!」

一寸先は闇。勝機は限りなく絶望的。
にも関わらず、戦争屋は陽気に無人の街を練り歩いていた。




■ ■ ■




殺し合いから一両日経っていても、宇宙開発局区内の一帯は整然としていた。
手付かずの道具や消耗品。小規模な車両の衝突の痕跡こそ見えたものの、血なまぐさい死の滓は散らばっておらず。
この付近ではまともな形での戦闘は一度として行われず、通りがかった参加者の数も微小だったらしい。
生き残りの人数と、今しがたの戦場との距離を鑑み、周囲に危険はないとサーシェスは結論づけた。

頭の上を、鉄の箱がゆっくりと通過していく音がする。
放送塔に籠ってる間に、破損部分を復旧した運行を再開した電車だ。
誰も乗せずに、新調された線路を細い命脈にして会場を回る姿は、夜行する幽鬼の群れにも似ていた。
殺し合いという体裁が事実上瓦解した今になって、なぜわざわざ機能を復旧させるのか。
ただ単に進めていた修理作業が完了したのがこの時間帯だっただけなのかもしれないが、あまりに事務的だった。
泡沫のように浮かびあがる疑問。それを今更どうでもいい、重要なことじゃないとすぐさま記憶から抜く。
電車の利用法などひとつしかなく、それがサーシェスになにを齎すのでもない。まったくの興味の外だ。

黒光りする箱から取り出した煙草をくわえて火を灯す。
紫煙はたちまち肺の中まで浸透し、芳香が鼻を刺激する。
廃ビルでの自販機の購入の際、何の気なしに買っておいた品だ。
高級銘柄とはいえ所詮は煙草。箱買いでも二万ペリカであり、この程度なら手持ちでも十分足りた。
久方振りの、この体では初めての大人の味を堪能する。
苛立ちを紛らわすための無聊の慰みだが、思考を柔軟にするにはストレスは抜いておいた方がよい。
始めは咳き込み僅かに涙目にもなったが、今ではすっかり元の年齢に相応しい感覚に戻っている。
自分用にあてがってくれたのなら、もう少し大人向けの体かニコチン漬けにでもしといてくれたらよかったものを。
今更ながら、"元"雇用主の趣味の悪さにはほとほと呆れ返る。

初経験の体にじっくりと憶え込ませるよう延々と吸い潰す。
本数が増えていく毎に慣れ親しんだ感覚を取り戻していく。
余程ニコチンに飢えていたのか、それとも煙を吸えなかったストレスをここぞとばかりに晴らしているのか。
そこだけ早送りでもしたかというほどに、次々と紫煙を取り込んでは吐き出す。
人間のいない街で、陽炎のような煙だけが生ある証として揺らめいていた。





「……なんだ、こりゃ」

その痕が、止まる。
目先にあるずず黒い波動が、足の進みを遅らせる。

毒気が、渦を巻いていた。
暗雲が蜷局(とぐろ)上になって真下の祭壇に呑み込まれていくようだ。
それが現実の光景でないとしても、目にしたサーシェスの直感はそのようにしてイメージされていた。

建立する展示場は外観こそ立派だがやはり特別な趣向はなく、戦闘が起きた余波なども感じられない。
しかしそこから溢れ出る陰気は空気中に拡散し、まさに闇の神殿に相応しい邪悪さを放っていた。

胸の内を締め上げる不快感。
頭の内側から鳴り響く叫換。
己を社会の底辺に蠢く下衆と自認しているサーシェスは、これまでに幾つもの゛死゛を感じ取ってきた。
目で見つめ、耳で聞き届け、肌で感触を味わって。
神秘にも異能にも縁遠い只人は、世界の歪みから生まれる闇を存分に味わってきた。
その悪辣なる傭兵をして、立ち込める空気の異質さは群を抜いていた。

「なんだか、面白そうなもんを積んでそうじゃねぇか……」

在るだけで臓腑を腐らせる邪気を振り撒く狂気の澱。
今見せているのはきっと表層に過ぎない。理由はないが確信がある。
その根源、この呪いを湧き出させているモノはこの先にある。
奥に潜むのは紛れもなくあらゆる死をもたらすモノ。生あらば例外なく蝕みに這いずるおぞましい影だ。
自分にとっても間違いなく毒であろうが―――ならば、決して無用ではない。



「けど――こいつはまだお預けだな」

しかしサーシェスは勇み足を踏まず、ここは見に回る。
臆病と慎重さは取り違えない。リスクなぞは喜んで受けよう。
どの道今では詰みのまま敗死するしか先のない身だ。
避けた理由は漠然としていて、しかし本人にとっては何よりも優先されるべき第六感から発生している。
要するに、放っておいた方が『面白くなりそう』なのだ。

アレは恐らく、殻だ。孵化を前にして胎動し内側から出てくるモノを塞ぐ殻の蓋だ。
そして、今はまだ殻を破る時ではない。ここに身を埋める闇はきっとまだ大きくなる。
存分に肥え太って抑えきれなくなり破裂して中身を撒き散らす、その瞬間こそサーシェスの最も望む光景となるだろう。
故に今は見守るのみ。銃の形に曲げた指の照準を館に収める。

「あばよベイビー、早く良いコに育ちなさい、ってな!」

彼なりの生誕祝いを送り、直進していた道のりを横に逸らす。
暫く進み続ければ不快感も収まりを見せ、正常な空気が戻ってきた。
区画内は相変わらず物音のしないゴーストタウン。時折遠くから鳴っていた電車の走る振動も聞こえない。
阿鼻叫喚こそないものの、ここは地獄とさほどの違いもない。
多種多様の絵具で濁りきった絵画は極まれば真黒となるように。
死で埋め尽くされた場所は地獄と呼ばれるのが、古くからの習わしである。

「――――――」

気にせず歩き続け、すると、半ば無意識に指が震えた。
夕暮れ前の時刻で館内に光が差し込むとはいえ、照明は付いておらず暗所や死角も多い。
体に染み付いた習慣は本人の意思に関わらずに機能を動作させる。
虫の羽音すら聞き逃せぬ無音の空間。
そこに、小石が転がる程度の波紋が広がった。

後ろを見ることなく、長年の経験則から他者の存在を察知する。
このタイミングで他の参加者に遭遇するのは予想外ではあったが、手をこまねく暇はない。
気づいた以上は対応するのみ。接触するというのなら是非もない。

全身が弾ける。
イメージは雷の波。全身の経路を流れる血脈の如く電気を巡らせる。
迸る電気信号はサーシェスの意思に関わらず肉体に司令を下し、しかしサーシェスの意図通りに行動した。
腰元のホルスターに収まったコルト・ガバメントを引き抜き、後ろに振り向きざまに構える。
己ならばこの結果に収束すると信じ、能力を行使する。学園都市に定義される能力者の条件。
それを見事に満たし、電速の体捌きで銃口は視線の源へと向けられる。
そのまま引き金を引き銃弾が射出される前に……追いついた思考が、指の最後の動きを差し止めた。

「……?」

振り向いた場所に見えるのは、建物の間に挟まれて出来た路地裏に通ずる道だった。
その先の光景は塗りつぶされたように見通せず、獲物を丸呑みする間際の怪物の口を思わせる。
そこに気配は確かにある。傭兵の勘は過つ精確に狙いを当てた。
だがそこからが妙だった。あまりに動きがない。
こちらを狙撃する腹であったのなら攻めるか退くかを選ぶし、ただ隠れるつもりにしては怯えも震えもない。
自分に気づけと言わんばかりに微動だにしなさすぎた。
そう、まるで、こちらを観察して品定めでもしてるかのような。


「よお、誰だか知らねえが、俺に用があるなら顔くれぇ見せろよ」


狙い付けられた銃口に観念したのか、隠匿する気など元より更々なかったのか。
音を消すこともなく、緊張感のない自然な足取りが奥から近づいてきた。
銃把を握る力を強める。警戒の度合いはむしろ増していた。
どんな理由であれ、こんな腐れた場所から顔を出すようなものなど、マトモな部類ではあるまい。


窓から差し込む昼の光が、陰に隠れた影を白日の下に晒す。
隠形のベールはゆっくりと剥がされ、目前に現れたその姿は―――――

















【 Fragments 7 :『Mercenary』 -End- 】



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304:crosswise -black side- / ACT1:『疼(うずき)』(一) アリー・アル・サーシェス 337:1st / COLORS / TURN 7 : 『Chase the Light!』


最終更新:2015年03月08日 00:15