「おい、のび太起きろ! 寝てる場合じゃねえよ!」
「う…ん……何? 今日は日曜日じゃない」
「のび太! いい加減に起きろって!」
「のび太さん!」
「ん……この声…ジャイアンに、スネ夫に、静香ちゃん? あれ?
何でみんながいるの?」
目を覚ました眼鏡の少年、野比のび太は、自分の寝室に何故か友人達がいる事に驚く。
だが、周囲を見渡し、今自分が寝ていたのは自分の寝室などでは無い事に気付き更に驚いた。
前方に巨大なモニターが設置された、壁も天井も床も白一色なホール。
窓は無く、入口らしき場所はあるがシャッターが下りている。
また、大勢の人間や、動物の頭を持った獣人のような人間、漫画に出てくるような怪物がいる。
皆、一様に混乱や困惑の表情を浮かべているが平然としている者も何人かいるようだった。
「ここは…!?」
「分からねえ……俺達も、いきなりこんな部屋にいたんだ」
ジャイアンこと剛田武がのび太に大まかに状況を説明した。
「何なの一体…怖いわ……明らかに人間じゃない人も一杯いるし」
「うう……しかも、見てくれのび太、僕達の首に、黒い首輪がはまってるだろ?」
「あ、本当だ」
スネ夫の言う通り、この場にいる全員の首に、黒い金属製の首輪がはめられているようだった。
勿論、自分の首にも。触ってみるとひんやりと冷たい感触が伝わってきた。
ブツ……。
突然、巨大なモニターの電源が入った。
のび太達を含め、人々がモニターを注視する。
そしてモニターに映し出されたのは、二人の人間。いや、片方は人間では無い。
一人は黒い長めの髪を持った白衣姿の男。もう一人は白い毛皮の狐獣人の綺麗な女性。
女性も同じように白衣姿だった。
『この映像を見ている皆さん、初めまして。
私は香取亮太(かとり・りょうた)と申します。隣は助手の稲村由布子(いなむら・ゆうこ)。
以後お見知りおきを』
香取亮太と名乗った男と、稲村由布子と紹介された白狐獣人の女性は軽く一礼する。
『皆さんに本日集まって頂いたのは、とあるゲームをして頂く為です』
ゲームという単語に人々はざわめき立つ。一体何のゲームをやらせようと言うのかと。
のび太達も気になったが、状況からして楽しい類のものとは考え難かった。
そしてその考えは正しかった事がすぐに証明された。
『皆さんにして頂くゲームは、バトルロワイアル……
殺し合いです。
これから皆さんに、ちょっと殺し合いをして頂きます。最後の一人になるまでです。
反則は有りません』
人々が更にざわめき立つ。最早話についていけない。
いきなり連れて来られいきなり殺し合えと言われれば無理も無い反応である。
何かの冗談か? タチの悪いテレビ局のドッキリ企画か何かか?
そう考える者も何人かいたが、深刻そうな表情でモニターを見詰める者も多かった。
「こ、殺し合い? な、何言ってるんだよあの人!」
「落ち着けスネ夫! 最後まで話を聞こう…」
「……」
スネ夫は動揺し、ジャイアンはそんなスネ夫を宥め、静香は不安気な表情を浮かべる。
のび太は必死に頭の中を整理しようとしていたが、上手く行かなかった。
『皆さんの首に、首輪がはめられていますね?
それは、ゲームをスムーズかつ確実に行うための物です。
くれぐれも無理矢理外そうとしたりしないで下さい――――爆発しますよ』
爆発する。その言葉が言い放たれた瞬間首輪に触れていた全員が一斉に手を下ろした。
『その爆発と言うものがどの程度の威力かと言うのをお見せします』
そう言った後香取は稲村に何かを促した。
すると稲村は机の上に置かれていたノートパソコンのキーボードを叩いた。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ……。
「え? 何これ?」
一人の色黒の肌を持ったダークエルフの少女の首輪が、電子音を一定間隔で響かせ始め、
赤い小さなランプがその音に合わせて点滅し始めた。
『皆さん、ディオナさんから離れた方が良いですよ』
「え? 何これ、何なのこれ!? 音が段々速くなって…ッ!?
い、嫌! クレアス! エロリア! 助けて! 助けて!」
ディオナと呼ばれた少女の言う通り、電子音の鳴る間隔がどんどん速くなっていく。
間違い無く、とても嫌な事が起きると誰もが予感した。
だが、助ける事は出来ない。どうして良いのか分かるはずが無い。
助けを請われた二人の彼女の仲間も同じであった。
ピィーーーーーーーーー。
「あ―――」
バァン!!
ホール内に爆発音が響き、ディオナの首輪の喉笛に当たる部分が炸裂した。
ディオナは喉笛に風穴が空き、真っ赤な液体を噴き出しながら、床にうつ伏せに倒れ、
血溜まりを作り動かなくなった。
ホールはしんと静まり返り、火薬と硝煙の臭いに混じり、血生臭い臭いが漂い始めた。
「デ、ディオナ……」
「……」
ディオナが死の直前、名前を呼んだエロリアとクレアスの二人は、
呆然とただの血塗れの肉塊と化した仲間のダークエルフの少女を見詰めていた。
「う、あ、ああ……!」
「マジ、かよ…」
「酷い……」
「……っ」
のび太達は、生まれて初めて人が死ぬ場面を目の前で目撃する事となった。
『お分かり頂けたでしょうか……』
理解したく無くとも、理解せざるを得まい。
下手な事をすれば首にはめられた首輪は爆発する。ディオナという少女の二の舞になる。
ここはおとなしく香取の言う事に耳を傾けた方が良さそうだ。
人々のほとんどはそう判断した。
『では
ルール説明に移りましょう……由布子、頼んだ』
『うん、分かった……では、ルールを説明します。
先程も言った通り、皆さんで最後の一人になるまで殺し合って貰います。
最後まで生き残った一人が優勝となり、帰る事が出来ます。
参加者の間のやり取りに反則はありません。ゲーム会場の施設の利用も自由です。
首輪に関してもう少し詳しく。 首輪は無理に外そうとしたり、禁止エリアに進入したり、
ゲーム進行に大幅な支障を来すような行動を取った場合、爆発します。
ゲーム開始の際、支給品の入ったデイパックを渡します。
デイパックは特別製でして、死体を含む参加者、明らかに規格外の物以外は、
何でも入れる事が出来、重量も変わりません。
最初から入っている物はゲーム会場の地図、参加者名簿といった、
基本支給品一式と、武器等のランダム支給品が1~2個です。
ランダム支給品は役に立つ物ばかりとは限りません。これはハンデを少なくするためです。
一応会場にも色々な物が落ちていると思いますので、
もし武器が貧弱だったならば、すみませんが自弁して下さい。
0:00、4:00、8:00、12:00、16:00、20:00の四時間おきに、定時放送を流します。
内容はその時刻までの新たな死亡者と、禁止エリアの発表です。
禁止エリアはその名の通り、入ると首輪が作動するエリアです。
放送から一時間後に指定のエリアが禁止エリアになります。
また、地図の外や上空100メートル以上も禁止エリア扱いです。
侵入すると同じく首輪が作動します。
24時間新たな死者が出なかった場合、その時点での生存者全員の首輪を爆破します。
つまり優勝者無し、ゲームオーバーです。 また、参加者が全員死亡しても同様です。
なお、魔法や超能力、特殊能力の類は一切使用出来なくしてあります。これもまた、
ハンデを少なくするための措置です……以上です』
『ありがとう。由布子』
知り合いがいる者もいない者も、周囲の人々と顔を見合わせる。
これから自分はこれらの人々と、知り合いと、殺し合いをしなければならないのか。
一体なぜ、何のために。なぜ殺し合いをしなければいけないのか。
モニターの向こうの香取亮太にその理由を是非問いたい。
だが、それは叶わない。
「それでは、バトルロワイアルを開始します……皆さん、ご健闘をお祈りします。
ククク……ハハハハハハ……」
香取が笑い声を上げるのとほぼ同時に、人々は強烈な眠気に襲われた。
勘の良い者は、それが催眠ガスだと分かったが、分かってもどうしようも無かった。
次々と床に伏し、眠りに就く人々。
(殺し合い、なんて…僕は……みんなを…殺さなくちゃ…いけない……の………!?)
薄れゆく意識の中で、野比のび太はこれからの自分の行く末を案じた。
【ディオナ@VIPRPGシリーズ 死亡】
【残り51人】
【ゲームスタート】
最終更新:2010年10月02日 10:04