「
殺し合いをしろだと……! くそっ、ふざけた事を!」
仮面ライダーギャレンこと橘朔也は憤怒に身体を震わせていた。
アンデットとの闘争も終結し、本来の研究員としての道でも歩もうかと考えていた矢先、橘朔也はこのバトルロワイアルに連れて来られた。
覚醒と共に一人の男が惨殺される瞬間を見せ付けられ、生き残りたくば殺し合えと宣告され、この場に立たされた。
ふざけるな、と橘は心底から憤る。
ある男がいた。
その男は仮面ライダーとしても一人の人間としても、自分など足元にも及ばない男であった。
名は剣崎一真。優しさと強さを兼ね揃えた真の仮面ライダー。
剣崎は犠牲となった。世界を、親友を救う為に、自らの意思で犠牲となった。
『人間』を止め、自らの意思で闘争を求め続ける『化け物』へとなった。
世界と親友―――そのどちらもを救う為に、全てをたった一人で背負い込んで、自分達の前から姿を消した。
ただ一人、犠牲になったのだ。
それまでの生活を、人間である事を、全てを全て失ってまで、剣崎は全てを救った。
そうして救った世界が、そうして救った世界に住む人間が、こんな殺し合いを開催する。
その現実に、橘は心底から憤りを覚えていた。
「どうする、どうすればこの殺し合いを止められる……」
決意は既に固まっていた。
何をしてでも殺し合いを止める。
そこに異存などあるわけがない。
ただ、どうやって?
それが分からない。
首輪により命が握られた現状。生き残る為には他を蹴落とさなければいけない。
一般人であれば恐怖に我を忘れ、恐慌状態へ陥ることだって充分にありうる。
声高に殺し合いの停止を呼び掛けても、そんな状態の人々は耳を貸そうとしないだろう。
しかも相手は何十という人間を、橘といった歴戦の戦士さえも、容易く拉致してしまうような組織。
少なく見ても、仮面ライダーを超えるぐらいの戦力は保有している筈だ。
せめて、最低でも、首輪の破壊。
そして、戦力の終結。
このバトルロワイアルを開催した組織に対抗し、勝利できるだけの力。
それが無ければ殺し合いは止まらない。本当に、最後の一人が決まるまで殺し合いは続くだろう。
「剣崎……お前ならどう行動する」
絶望的な状況に、どこまでも強かった後輩の姿が思わず脳裏に浮かぶ。
バックルもない今、ギャレンに変身する事もできやしない。
今の自分は少し訓練を積んだだけの普通の人間。
特別な力など何も無い、非力な人間だ。
殺し合いを止めるにはどう動けば良いのか。
もしあの後輩が、今の自分と同じ状況に置かれたとしたら、どう行動するのか。
殺し合いを止める為にどう動くのか。
知りたかった。
教えて欲しかった。
「俺は……どうすればいいんだ……」
幾ら悩めど答えは出ない。
橘は思考に顔を歪めながら歩き始める。
ただ立ち止まっているのだけはダメだと思ったからだ。
今も何処かで殺し合いが続いてる以上、何か行動を取らなければいけない。
そんな強迫観念にも似た思いに突き動かされて、橘は行動を開始する。
「な……!?」
そして、遭遇する。
「ん~~~~おいふぃ~~~~~! なにこれ、天国!? こんなに大きいチョコレートとか、も~~~~~~~最高~~~~~~~!」
人間の上半身体ほどもある大きなハート型のチョコレートに、一心不乱に齧り付いている少女に。
◇
「いや面目ありません……こんな状況でも食欲に負ける自分の理性に、何ていうかもう自己嫌悪です、ハイ……」
「ハハ……気にしなくても良いさ、桂木」
そんな強烈な遭遇から数分後、橘と少女・桂木弥子は簡単な自己紹介を行っていた。
とはいえ、弥子が橘の存在に気付いたのはチョコレートを完食し、たっぷり十数秒余韻に浸った後。
それまではどれだけ大声で話し掛けようと、弥子は見向きすらしなかった。
支給品の確認をしていたところ、デイバックから自分の身体より大きなチョコレートが転がり出てきて、それを見ていたら理性が何処かへとんでしっまったとの事だった。
悪食・大食漢で知られる橘であったが、これには流石に苦笑いを浮かべざるを得なかった。
「それで橘さんはこれからどうするつもりなんです?」
「殺し合いを止めたいとは思うが……具体的にはまだ何も考え付かないな」
「そうですね、この首輪だって何とかしないといけないし……」
弥子と会話を進めながら、橘は一人感心していた。
こんな殺し合いの最中にいるというのに、弥子からは恐怖心が感じられない。
その振る舞いは平常心から出ているものにしか見えなかった。
元仮面ライダーである橘さえも異常だと感じる状況で、この落ち着き様。
自己紹介ではただの女子高生だと言っていたが、この精神力は常人の域を越えている。
「……桂木は、こんな事に巻き込まれて怖くないのか?」
「いやあ、なんていうか色々……本当に色々あったんで、こういう事には慣れてるというか……」
その感心の心を、橘は素直に口に出す。
そんな橘の言葉に弥子は引きつったような苦笑いを浮かべた。
心なしかその瞳は遠くを見つめている。
やるせなさが混じったその返答に、橘はあまり触れてはいけない内容だったのかと口を閉じる。
まあ真っ先に殺し合い乗っていない人物に出会えたのだ、それだけでも善しとしよう。
「そういえば橘さんは名簿の確認しました?」
「名簿? 何だ、それは」
と、話題を変えるように切り出してきた弥子の言葉に、橘は疑問符を浮かべる。
参加者名簿、という物について兵藤は何も語っていない。
とはいえ、兵藤の語っていたランダム支給品についても橘は確認していないので、余り意味はないと思うが。
「この殺し合いに参加させられてる人の名前が載っているんですよ。全部で七十人くらい居ましたね」
「七十人もの人が、こんな殺し合いに……」
「……多分見といた方が良いですよ。もしかしたら知ってる人が連れて来られてるかもしれません。少なくとも私はそうでした」
「知り合いが、連れて来られているのか」
「ああ、でも、大丈夫ですよ! どっちもこんな殺し合いで死ぬような奴じゃないんで! 寧ろこの状況をエンジョイしてそうな奴なんで!」
「だが……」
「まあまあ、心配しないで! 取り敢えず橘さんも名簿を確認して下さいよ」
弥子の言葉に憤りを感じながら、橘はバッグから参加者名簿と書かれた紙を取り出す。
A―4サイズの紙には、人名がびっしりと書き連ねられていた。
これ程の人数をこんな殺し合いに参加させたのかと、再度の怒りを覚える橘。
険しい顔で橘は名簿に目を通していった。
上から下へ。
左から右へ。
橘は一人一人の名前を確認していく。
そして、ある一人の名前を目に止めた時、彼の表情に変化が現れた。
それまで怒りに染まっていた表情が、目を見開いての驚愕に。
橘は名簿を両手に立ち上がり、眼前で弥子が見ている事すら忘れて声を張り上げる。
「剣崎!?」
それは
もう二度と会う事のできないと思っていた人物の、名前であった。
剣崎一真。親友と世界を救う為、人間からジョーカーへと変貌した者の名がそこにあった。
他にも橘の後輩、剣崎が救った親友、果てには既に死亡した筈の男の名前が、名簿には掲載されている。
が、そのどれらもを越えて、剣崎一真の存在は強烈なものであった。
名簿を見詰めたまま呆然としている橘に、弥子は声をかける。
「知ってる人、なんですか?」
「あ、ああ。俺の……後輩だ」
そう言う橘は、明らかに挙動不審であった。
一目で分かる。
橘と剣崎の関係は、後輩という一言で片付けられるような、そう単純なものではないのだろう。
弥子にとっての相棒のように。
弥子は相棒との様々な事件を通して、様々な人間の裏と表を見て来た『探偵』である。
人間と触れ合い、その真理を読み解く事を主とする、人の心の『探偵』。
それが桂木弥子である。
そんな『探偵』は、一瞬で理解する。
橘にとって、剣崎という存在がどれだけ大きいのかを。
「剣崎さん、ですか。橘さんの後輩っていうくらいだから、優しい人なんでしょうね」
「そうだな……優しく、そして強い奴だ」
だから、笑った。
出会って数分と経たない自分に、剣崎の事を深く聞く事はできない。
それでも良いと思う。
自分と相棒のように、誰もが人に話せない事の一つや二つは持っている。
それを自分から聞き質す事は出来ない。
でも―――『解決』はしたいと思う。
「なら、剣崎さんを探しましょう。私も協力します」
この殺し合いの中であったとしても、橘と剣崎とを再会させる。
それが『探偵』として弥子が考える『解決』であった。
「……だが、お前の知り合いは」
「だがら、大丈夫ですって。あんな奴と合流しちゃったら、むしろ大変な事になっちゃいますよ」
魔人・脳噛ネウロに、怪人・X。
片や二年振りの再会を果たしたばかり魔人、片や二年前に死亡した筈の人間。
あのネウロをどうやって拉致したのか。
死んだ筈のXが何故名簿に書かれているのか。
弥子には分からない。
分からないけど、大丈夫だとは思う。
弥子の知る彼等は、こんな殺し合いでどうこうなる存在ではない。
「……分かった」
目を閉じて少しの間考えた後、橘は弥子の提案に頷いた。
「だが、優先するのは殺し合いの停止だ。争いがあれば争いを止める。殺し合いにのった奴がいれば無力化する。剣崎達を探すのは……その次いでで良い」
しかし、弥子の案を了承した訳ではない。
あくまで橘は、殺し合いに巻き込まれた人々の無事を目標とする。
その返答に弥子はキョトンと目を見開き、数瞬後に笑顔を見せる。
満面の、満面の、笑顔。
その笑顔に、橘の方が面を食らう。
何故弥子がそんな表情をするのか、橘には分からなかった。
「? どうしたんだ、桂木?」
弥子は無性に嬉しかった。
自分ではなく他人の為に行動する、それがあたかも当然のようにできる人。
そんな人がこの殺し合いを打開する為に動いてくれる。
思わず笑顔が零れた。
こんな人が居るということ自体が、嬉しかった。
「フフッ、何でも無いですよ」
誰もが『悪意』と『知性』と『向上心』を以て『謎』を造る訳ではない。
こんな人も、いるのだ。
他人の為に命を張れる人も、この世界には居る。
『知性』と『向上心』を『悪意』では無い方へと費やせる人間が、この世界には居る。
それは、こんな『悪意』の塊のような殺し合いでも、変わらない。
これもまた『進化』の可能性の一つだと、弥子は思う。
「それじゃあ頑張りましょう、橘さん!」
「ああ、行こう。桂木」
探偵と仮面ライダーが、暗闇の市街地を歩いていく。
殺し合いの中で、それでも希望を宿して二人は進んでいく。
彼等の未来は如何に―――、
【一日目/深夜/F-2・市街地】
【橘朔也@仮面ライダー剣】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3
[思考]
1:殺し合いを止める。桂木を守る
2:桂木の仲間を探す
3:剣崎、仲間と合流したい
4:何で天王路の名前が?
※原作終了後から参加させられています
【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]
1:殺し合いを止める
2:剣崎と橘を再会させる
3:ネウロとも合流する
4:Xが生きてる……?
[備考]
※原作終了後からの参戦です
※支給品は確認済です
※スペースウーマンのチョコレート@銀魂を完食しました
◇
そして、そんな二人を遠くから見ている少女がいた。
少女は竜宮レナ。
つい先刻、とある心優しきサイボーグを殺害した少女であった。
「あの人達も宇宙人なのかな……見ただけだと普通の人に見えるけど」
レナは自身の喉元を軽く掻きながら、およそ数十メートル先を歩く橘達を観察していた。
夜なのにイヤに暑いと、思う。
ベタベタと纏わりつく汗が非常に不快だった。
「どうする……? 二人組を相手にするのは流石に……でも……」
レナは思考する。
新たに発見した宇宙人達を、上手く殺害する方法を。
見る限り、誰もが誰も危険な性格をしている訳ではない。
でも、どんなに人が良く見えても、それは宇宙人でしかない。
何時かは殺害せねばならない存在だ。
だから、思考する。
どう立ち回り、どう動けば、あの宇宙人達を殺害する事ができるのか。
歪んだ青色の炎を胸に、竜宮レナは思考する
【一日目/深夜/F-2・市街地】
【竜宮レナ@ひぐらしの鳴く頃に】
[状態]健康、雛見沢症候群発症中(L4)
[装備]レナの鉈@ひぐらしの鳴く頃に、ヴァィジャヤの毒薬(12/13)@魔人探偵脳噛ネウロ
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~1
[思考]
0:会場にいる宇宙人を全員殺し、雛見沢に帰る
1:あの宇宙人達を殺すには……
2:圭一達は宇宙人にすり替わっているか確かめ、宇宙人であったら殺す
最終更新:2011年03月05日 20:50