第五十三話≪お目覚め女狐タイム≫
午前11時50分、
霧島弥生は仮眠という名の昼寝から覚醒した。
寝ぼけ眼で時計を確認すると、主催側からの放送時刻まで後10分という事に驚き、
危うく包装を聞き逃す所だったと安堵した。
そして正午12時になり、どこからともなくあの教室で聞いた男の声が響いてきた。
島のどこかにスピーカーのような物が設置されているのだろう。
弥生は名簿と地図、ボールペンを取り出し、詳しい内容を待った。
まず死者。呼ばれた名前は23人だった。実に半数近くが既に落命している事にさしもの弥生も驚いた。
呼ばれた23人の名前の中には、自分が殺害した犬警官と変態不細工男の名前もあるはずだ。
名前を聞いていなかったので、あの二人の名前は分からなかったが。
有名野球選手である
長谷川俊治の名前も呼ばれた。
自分は野球になど興味は無かったが、よくスポーツ番組などでも取り上げられていたので、名前と顔ぐらいは知っている。
後は全然知らない名前ばかりだ。
名簿は線で消された名前で一杯になった。残りは27人。
いや、もしかしたらこうしている間にもどんどん頭数は減っているかもしれない。
次に禁止エリア。今自分がいるのはエリアF-3である。
午後1時から病院のあるG-2、午後2時から山頂のあるD-5、午後3時から島の西北の端の方のB-1が、
それぞれ禁止エリアになるらしい。
病院のあるG-2は市街地の真っ只中なので、注意が必要だ。
地図には正方形に区切られてエリアが表示されているが、
実際の会場にはエリアの境界を示すような物は一切見当たらず、うっかり禁止エリアに侵入してしまっていた、
という事態も十分有り得る。
後の二つのエリアは、これから行く予定も無く、かなり離れた場所なので気にする必要は無いだろう。
やがて、放送が終了した。
「随分死んでるわねー……」
机の椅子に座り、多くの名前が横線で消された参加者名簿を見つめながら、
弥生が興味深そうに言った。
「これなら優勝もあながち夢じゃ無いわね。いけるわ」
既に自分を含めた参加者50人の内、半数に近い23人が死亡。
想像以上のハイペースでこの
殺し合いは進んでいるらしい。
弥生は勝利を確信したような笑みを浮かべる。
頭数が減れば減る程、生存率も必然的にアップし、優勝へまた一歩近付ける。
自分も既に二人殺害しているが、他にもやる気になっている者は大勢いるようだ。
他の者が互いに殺し合ってくれれば、それだけ人数もどんどん減っていく事になる。
「まあねぇ、私は正面から戦って殺す、みたいな芸当はちょっと無理だから……」
弥生が取っている戦法は、無害な振りをして不意を突いて殺す、と言う物。
普段の生活でも猫を被って(狐だが)常連客の男に接近し、肉体関係の末金品をねだったりしている弥生にとって、
それぐらいの芝居は朝飯前だった。
事実、その手段で二人を殺害したのだから。
自分のデイパックから革製のホルスターに収まった、大型のナイフを取り出す。
それは自分が殺害した男――
富山醇一(弥生本人は名前を知らない)から奪ったハンティングナイフだった。
ホルスターからハンティングナイフを抜き、反りがある鋭利な刃をまじまじと見つめる弥生。
「ウフフ……次の獲物は誰になるかしら……」
邪悪にも見える笑みを浮かべながら、弥生はハンティングナイフの刃を舐める。
再び彼女の毒牙に掛かる者が現れるのか。
それとも――。
「いっ……たぁ」
数秒後、舌から血を流して涙目になっている雌狐の姿があった。
カッコつけようとするから……しょうがないね。
【一日目/日中/F-3大島家二階寝室】
【霧島弥生】
[状態]:舌に軽傷、涙目
[装備]:登山ナイフ、ハンティングナイフ
[所持品]:基本支給品一式、ブーメラン、和英辞典、閃光弾(3)
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。
1:痛い……!
2:基本的に正面から戦うというより、不意を突いて殺すという手段を取る。
3:民家(大島家)の探索。
4:銃器が欲しい。
[備考]
※服を着替えました。元々着ていた服はF-3住宅街伊藤家内に捨てられています。
最終更新:2009年11月15日 02:15