――――――嘘だろ?
サッカー部員・池田潤一郎は心の中でそう呟いた。
先に断っておくが、黒崎はルールを何一つ説明していない。最新科学の結晶といわれる『記憶の書き換え』が出来るとある装置で脳に書き込んだのだ。
エリアも、ルールも、長期記憶として脳にしっかりと刻み込まれている。
その上で、満を持して彼らを『フィールド』に配置した。
池田潤一郎も、そんな哀れな参加者たちの一人であり、事態に怯える一人だ。
「死にたくねえ……死にたくねえよぉ……」
ただ咽び泣く。情けない姿ではあったが、幸せな日々を謳歌していたどこにでもいる高校生としては、無理もない当然の反応だったのかもしれない。
参加者の中で、潤一郎と同じサッカー部の仲間は二人。
まずは小川海斗。
彼は信用できる。おちゃらけた奴だが、
殺し合いに乗るような奴じゃない。
海斗とは仲も良かったし、あいつには練習に付き合ってもらったりもした。正直なところ、彼にとってまともに信頼できるのは海斗くらいしか居ないのではないだろうか。
そして沖崎翔。
彼は池田潤一郎にとって最も殺し合いで合いたくない人物であった。
一言で言えば、奴は外道と形容するのが一番だ。
クラスの中では、少し短気だがムードメーカーな明るい奴と認識されているようだが、潤一郎は知っていた。翔が窃盗や強姦にも手を出す、最悪の外道だと。
潤一郎もまた、財布から金を抜き取られたり、暴力を振るわれたりした。
尤も、サッカー部内では天才的なプレーを見せて慕われているのだが―――。
駄目だ。
沖崎翔を殺さなければいけない。
仮に誰も死なずに『学級レク』からクラス一同生還できたとしても、沖崎翔の居場所はもう与えない。翔は、この『学級レク』で自分が殺さなければならないんだ。
やってやる。
あの外道を、屑を!
臓物を引きずり出してぶち撒け、頭を滅茶苦茶に潰して殺してやる!
「あぁ……殺してやるよ、翔……」
数分前まで咽び泣いていた少年とは思えない爛々とした瞳で呟く。
デイバックの中身さえ確認しないまま、恍惚に浸り続ける。
結局、池田潤一郎は黒崎刑梧の主催する殺し合いを甘く見ていたのだ。
やはり彼は、幸せな一生を『送りすぎてしまった』。
ダァン!という乾いた音がして、潤一郎の背中に赤い華が咲いた。
野太い悲鳴をあげて悶える彼を嘲るように見下すのは、当然彼のクラスメイトだ。
伊藤遺。
クラス内でも有数の美人だが、無口で刺のある言動がネックの女子。
その艶やかな黒髪に、ハイライトの無い瞳でただ、嘲笑していた。
「ひ、ひ……!!たす、たすたす、助け――――――――――!!」
「哀れね、池田少年」
二発目の銃声がして、潤一郎の頭が呆気なく破裂した。
最後まで何も為さなかった池田潤一郎の死に様は、余りに哀れだった。
◆
「殺人は初めてだけれど、案外楽しいものねえ」
返り血を僅かに浴びて、尚遺は嘲るように微笑んでいた。
そのサイケデリックな雰囲気に、彼女を知る者はきっと驚くことだろう。
本性を隠し、内に秘めた破壊衝動をさらけ出した彼女は、真っ黒に歪みきっていた。
遺は潤一郎の命を奪った銃・FNF2000をデイバックにしまい、名簿に目を通す。
だが、特に気にする人物は居ない。
皆殺しにするのだから、気に留める相手は必要なかった。
潤一郎のデイバックの中身は、アーミーナイフとジッポライターの二つ。
今一つ魅力が足りなかったが、役には立っただろう。
まずガソリンか灯油を調達できれば、切り札と成り得るだろうし。
デイバックを回収し、遺は目の前の死体に目もくれずに背を向け、歩き出す。
【池田潤一郎】 死亡
【残り37/38人】
【深夜/A-1】
【伊藤遺】
[状態]返り血(小)、高揚
[所持品]FNF2000、アーミーナイフ、ジッポライター
[思考・行動]
0:皆殺しにして優越を味わう。
1:参加者を減らしていく。
【池田潤一郎】
サッカー部員で、ほぼ坊主に近い髪型。
臆病かつ遠慮がちな性格のせいでいつも損をする。
沖崎翔に激しい殺意を抱いている。
【伊藤遺】
帰宅部員で、クラス内で上位に食い込む美人。
いつも寡黙にしているが、内に激しい破壊衝動を隠している人格破綻者。
| たの『死』い学級レク |
投下順 |
[[]] |
| GAME START |
池田潤一郎 |
GAME OVER |
| GAME START |
伊藤遺 |
[[]] |
最終更新:2011年09月17日 21:33