13話 The thought to an elder brother
人通りの全く無い商店街を、一〇〇式機関短銃を装備した狼獣人の少女が歩く。
少女、本間優花は
殺し合いに呼ばれた腹違いの兄、正則の姿を捜していた。
「お兄ちゃんはどこにいるんだろう……ああ、何でこんな事になっちゃったの……」
昨日はいつも通り、自室で就寝したはずだと言うのに。
目覚めた時にはヒリューと名乗る赤竜が主催するこの狂ったとしか言いようの無いゲームに兄共々参加させられていた。
首にはめられた首輪の威力はあの開催式の時にまざまざと見せ付けられた。
真っ赤な鮮血が飛び散る様は余り思い出したく無い。
「死にたくない……お兄ちゃんを捜さないと、まずは……何よりも……」
脱出がどうのこうの、殺し合いがどうのこうのよりもまずは兄に会いたいと思う優花。
「……取り敢えずここに入ってみよう」
たまたま鍵が開いていた古書店に優花は入る。
店内には中古の雑誌、単行本、漫画本等が並べられた棚が数列置かれていた。
(こんな状況じゃなければゆっくり見て行きたいけど)
自分が好きな漫画も幾つか置いてあり読んで行きたい衝動に駆られる優花だったが、
そんな場合では無いと自制する。
そして奥の棚の所まで来た時。
「!」
「……」
誰もいないと思っていたがそれは間違いだった事を知る優花。
自分とは別の学校の制服を着た少年が何かの本を熱心に読んでいたのだ。
「……」
「あ、あのー」
「…? あ、ああ、君、いつからそこに?」
少年は優花に全く気付いていなかったようで、声を掛けられようやく気付き少し驚いた様子だった。
「え? いや、足音とかで気付かなかったの?」
「あー、僕は一旦読書に熱中すると、周りが見えなくなるんだよね、悪い癖なんだよ」
「危ないよ、だって今……殺し合いゲームの真っ最中なんだよ?」
「……それで、君はその銃で僕を殺すのかい?」
「えっ…ち、違うよ、そんなつもりは無いよ。私は殺し合う気は無い」
少年に問われ、少し慌てた様子で弁明する優花。
少なくとも進んで殺し合う気は無いのは事実である。
「本当? 証拠、見せてくれる?」
「えっ、証拠……えっ、証拠!? 証拠、証拠って」
「…冗談だよ、ごめんごめん、信じるよ」
「……信じてくれるのなら、良いけれど……私、本間優花って言うの、あなたは?」
「僕は長浜勝範。僕も殺し合う気は無いよ、良かったら一緒に行動しないか? 本間さん」
長浜勝範と名乗った少年に共に行動する事を提案される優花は少し考える。
(うーん、確かに一人で行動するのは不安だし怖いし……信用は、出来るかな……良いよね?)
「どうだろう?」
「うん、分かった、一人で行くのはちょっと怖かったから、宜しくね、長浜君」
「こちらこそ」
優花と勝範は互いに握手を交わした。
店内の少し広いスペースに移動し、優花は勝範に自分が兄を捜している事を話す。
「そうか、お兄さんを捜しているのか」
「うん」
「……お兄さん、ね」
ここで勝範の表情に曇りがかかる。
優花にはその理由は分からなかった。
「? どうかした…? 長浜君」
「い、いや、何でも無いよ。お兄さん、一緒に捜そう」
「うん、ありがとう……そうだ支給品、私はこの短機関銃だけれど、長浜君は?」
「僕? 僕は……」
優花に訊かれ勝範は自分のデイパックを開け中身を探る。
そして取り出したのは柄の部分にメリケンサックのような物が付いたナイフと、閃光手榴弾三つ。
「ナイフか……」
「ねぇ、何なら私の武器と交換する?」
「いや…いいよ。それより閃光手榴弾、三つあるから、本間さんに一つあげるよ」
「あ、ありがとう」
勝範は閃光手榴弾を一つ優花に手渡した。
「取り敢えず、この辺りを見て回ろうか…」
「そうだね、お兄ちゃん捜すと言っても宛てが無いし…案外近くにいるのかもしれないし」
「……行こう」
再び表情を曇らせながら、勝範は優花を連れ古書店の出入口へと向かった。
◆◆◆
勝範には兄がいた。
成績優秀、容姿端麗で、自慢の兄だった。
だが、何が切欠だったかは分からない、しかし、兄は突然変わってしまった。
学校に行かなくなり、部屋に篭もり、両親や自分に突然、理不尽なまでの暴言や暴力を行うようになってしまった。
端麗だった容姿は次第に醜く肥え見る影も無くなっていった。
最初は何とか立ち直って貰おうと苦心していた両親や勝範も、段々と兄の事が疎ましくなっていった。
そして、ある日。
兄は死んだ。
両親と勝範をナイフで刺し、自分で自分の喉を刺して死んだ。
勝範は左腕を深く刺されたが命に別状は無かった。
だが両親は、父親は心臓、母親は背中を滅多刺しにされ、即死だった。
正直、当時の事はほとんどよく覚えていない、真っ赤な血の色だけは鮮明に覚えていたが。
兄がなぜ変わってしまったのか、なぜあんな事をしたのか。
今となってはもう何も分からなかった。
きっと何か理由はあったには違い無いが。
どんな理由にせよ、兄は自分の両親を殺害し、自分をも殺そうとした。
許せなかった。
憎かった。
「そうか、お兄さんを捜しているのか」
「うん」
「……お兄さん、ね」
目の前の本間優花と名乗る狼獣人の少女は兄を捜しているのだと言う。話を聞く限りだと、とても良い兄のようだ。
勝範は変わってしまう前の自分の兄と、優花の兄を知らず知らずの内に重ね合わせていた。
(僕の兄さんも、変わる事が無かったら……)
とても優花が羨ましいと、勝範は思った。
【早朝/B-4森】
【本間優花】
[状態]健康
[装備]一〇〇式機関短銃(30/30)
[所持品]基本支給品一式、一〇〇式機関短銃弾倉(3)、閃光手榴弾
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。お兄ちゃんを捜す。
1:長浜君と行動。
[備考]
※特に無し。
【長浜勝範】
[状態]健康
[装備]M1918トレンチナイフ
[所持品]基本支給品一式、閃光手榴弾(2)
[思考・行動]
基本:殺し合いはしたくない。殺し合いに乗っていない人及び本間さんの兄の捜索。
1:本間さんと行動。
[備考]
※本間正則について本間優花から情報を聞きました。
≪キャラ紹介≫
【本間優花】(ほんま ゆか)
16歳の狼獣人の女子高生。灰色と白の毛皮でスタイル良好。胸の発育が良い。
天真爛漫な性格で腹違いの兄、正則の事が大好きで肉体関係も持っている。
手先が器用で教えられれば大抵の事はそつなくこなせる。
【長浜勝範】(ながはま かつのり)
17歳の高校生。物静かで読書好き。クラシック音楽を良く聴いている。
二歳年上の兄がいたが引き篭もりと化し、15歳の時に両親と自分をナイフで襲い自殺、両親も死亡し、
勝範自身も左腕に重傷を負うと言う事件に見舞われた。以来「兄」と言う存在に複雑な感情を抱く。
左腕がやや不自由となっている。
≪支給品紹介≫
【一〇〇式機関短銃】
第二次世界大戦時に日本で開発された短機関銃。
物資の欠乏により生産数が限られてしまったり、輸送船が撃沈されるなど、兵站が崩壊しかけていたことから前線に数が届かず、
ほとんど使われなかったと言う。
【M1918トレンチナイフ】
第一次世界大戦で米軍が歩兵向けに支給したブーツナイフ。
グリップ部分にナックルガードが付いておりメリケンサックのような機能も持っていた事から、
「ナックルダスター」の愛称を持つ。
【閃光手榴弾】
凄まじい閃光により相手の視力を一時的に奪う非殺傷性手榴弾の一種。
| ゲーム開始 |
本間優花 |
:[[]] |
| ゲーム開始 |
長浜勝範 |
:[[]] |
最終更新:2011年10月25日 13:44