【体育館倉庫付近】
○
眩しい、とあたしは呟いた。
事実眩しいので異論は受け付けない。
四月一日。
始まりを予感させる日。
エイプリルフール。
嘘をついても許されるアホみたいな日。
こんな出来事も、貴則くんが死んだのも嘘であれば全てが
全くの虚実であれさえすれば、あたしは何もいらない。
ねぇキリストさん。あなた今何処で何をやらかしているのでしょう。
こんなバカげた催しが行われて何が楽しいのでしょう。
嗚呼、神様。
神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様。
あたしはこんなにも神様を愛しているのに。
あたしはこんなにも神様に尽くしているのに。
どうして、こんな仕打ちにあうのでしょう。
意味がわからないです。
あたしに恵みをささやかなるものでいいので神のご加護を。
神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様。
嗚呼どうかあたしに―――――――――――
○
おれの名前を紹介しておこう。
赤羽紅葉だ。
決してアカバアカバではないのでそこんとこ注意だ。
さて、んなこと言ってる場合ではなくなった。
大変な事態におれは立ち会ってしまったらしい。
殺しあい。
意訳、二年の時のクラスメイトを殺したり、殺されたりしてください。
いや意味わかんないし。
未だにおれは既にクラスメイトを一人失っているという事態に頭が追いついていない。
あんな惨劇が起こったにも関わらず、まだあいつが隣にいるんじゃないかという錯覚。
あいつと俺は友達だった。
小学校の頃から仲良くやっていたいわば幼なじみ。
そこにプラスして桜江のやつと三人でよく遊んだのを覚えている。
―――なのに死んだ。
首が飛んで生き返ったと思えば刺殺され。
もう一度だけ言う。
意味がわからん。
おれらの人生はいつからこんなとち狂った?
バカいえ、おれの人生に狂う要素など全くない。
なのに、それなのにーーー。
「―――ちっ」
舌打ちが反響する。
おれが今いるのは、体育館の倉庫のマットの上。
そこでおれはのんびりとしていた。
もちろんおれは、貴則のことは悔しいと思っているし、
校長に、一手お見舞えさえたい。それは事実。
だが、だからといって。
「殺しあいなんてできるわけねぇだろうが」
それに尽きる。
もし、今おれが他の懐かしきメンツにあったら、
その全てをねじ伏せれる。
そう断言できるぐらいになら
いまのおれは憤慨していた。
だから、おれは大人しくしているというわけだ。
おれは「赤」をその名に刻んでようが、マンガやアニメの「赤」い主要登場人物等みたいに、
リーダーシップがあるわけでもなしに、ましてや主人公なんて持っての他だ。
だからこそ息を潜める。
目立ちたくなんてない、ひっそりと。
静かにおれは終わりを迎えたい。
そんなときだった。
ダァァン
一発の銃声が倉庫を倉庫を揺らしたのであった
おれはさすがにそれにはいても立ってもいられなかった。
そりゃ無視するなんてーーーできるわけねぇだろ。
と、おれはマットから身を降ろし、すぐさまドアに手を掛ける。
そこで俺は息を飲んだ。
もしかしたらそこには、銃を持った誰かがいるかもしれない。
血濡らした顔の元クラスメイトがいるかもしれない。
だけど。
ここで引いたらさすがに漢じゃない。
事実に立ち向かわなければ、いけないんだ。
それにまだ、仲のいいクラスメイトは当然として。
桜江のやつも残っているしな。
あいつは、おれが守ってやらなきゃな。
そうしておれは、ドアを開けた。
そこにいたのは、十字架を持った、見知った顔。
村崎未来の姿がそこにあった。
「―――――――あら」
○
村崎未来と言えば、おれの中では小難しい女の子だと考えている。
なんか「これ以上は立ち入り禁止、立ち入ったら殺します」そんなオーラを無言のうちに放っているようなそんな女。
彼女についたあだ名―――というよりも物好きな先生により大抵の奴はあだ名と言うものを付けられるものなのだが。
ともかくとして、彼女に付けられた厨二的ハンドルネーム。
『不可侵領域』
なんてぶっ飛んだあだ名である。
まあそれにちなんでいる訳ではないが、おれとこいつの接点は無きに等しい。
だけどさすがにイメージはついているもんだ。
―――だが。
「まさか紅葉くん―――あなたが神の使いだったの?」
あれ?
確かにおれは未来といった。
だけどこいつってこんな性格じゃ……。
「は、は、はいっ!?」
思わず固まる。
なんだこいつ。
「殺しあい」だって言うのに神だのなんだの言って大丈夫なんかこいつ。
「はい……YES……。ってことはやっぱりそうなのね! くっ、この村崎未来。一生の恥だわ。
こんな身近に潜んでいるとはね、神の使い―――おみそれいったわ」
話を聞いちゃいない。
―――あぁ、あれかな。ショックのあまり自我を喪失って奴?
貴則のことそれほど思ってくれたことについてはおれが代わりに何十倍にして返さなきゃいかんが――。
「だっ、だからおれの話を少しは」
聞いてほしかった。
ま、とは言ったものの結果は目に見えているが。
「わかっているわ、紅葉様」
「様っ!?」
予想を斜め上をいってくれました。
こいつ絶対頭打ってやがる、だって未来はこんなキャラじゃねーし!
「これからはあたしが献身してあげるわ。なるほど得心いったわね。
確かにあたしはクラスメイトに対する愛がなかった。だからこんな殺しあいなんてさせられているのね」
「あ、あのー未来さん?」
「安心して。紅葉様。不肖村崎未来、
全力を持ってあなた様をお守りいたします」
「安心できるかっっ!」
銃声よりも大きかったのではないかという
大きな声でおれはつっこんだ。
どうやらこの女、
盲目的な信仰崇拝主義者らしい。
てゆーかおれの緊張感を返してほしかった
最終更新:2011年11月24日 18:56