○
【野菜庭園付近】
○
簡単に言うと、桃沢結衣は。
つまりアタシは妄想癖があるようなんです。
それはもう昔から。
中二病とかそんな生優しいものではありません。
確かに妄想の『一つ』として似通ったことを考えることもあります。
ですがあくまで一つ。
時には被害妄想もします。
時には加害妄想もします。
時には色恋沙汰な妄想もします。
時には流血沙汰な妄想もします。
つまるところ何でもします。
貶されようがやる。
罵られようがやる。
これがアタシのアイデンティティであり、個性であり、特徴であるかぎり、
アタシはアタシでなければならないんです!
―――あ、今のも妄想はいってましたね。
いけないいけない。
さて、そんなアタシは殺しあいに巻き込まれました。
脈絡なく、抵抗する暇さえなく。
もちろんのこと怖いですよ?
ものすごく、強烈に、途方もないぐらいには。
あのー、チャバタくん? だったと思うんですが、死にましたね。
なんかのギャグなのか。
そりゃあもう、見事に面白いように。
アタシはもちろんのこと。
そんな彼をみて罪悪感が―――わくことはなかったんですけど。
むしろ。
そのときのアタシはゾクゾクしてました。
あぁ妄想していたことが実現してる―――と。
ある種の歓喜すら覚えていました。
先ほど言ったとおり、アタシは流血沙汰の妄想だってしています。
たとえば、クラスメイトを好きなように殺す。
みたいな妄想だってなんべんもしてきました。
見るからに残酷なものだね、
ってアタシはそんな妄想に興奮して。
同時にそんなイケナイ妄想をしている自分に興奮しました。
自己淘汰といわれたらそうなんでしょう。
否定する気もないですよ。
全く持って、アタシが悪いんですから。
でもですよ。
妄想をマイナスなものだと捉えられると困ります。
それにバカにする人なんて大っ嫌いですよ。
いいですか。
妄想というものは現実逃避のもっとも手軽な手段なんです。
それを奪われたら誰しもが現実と向き合わなければなりません。
とても辛いことです。
融通が効いてない、効率が悪い。
大変燃費の悪い行為です。
時には逃げなければいけないでしょう。
時には狂わなければいけないでしょう。
真面目なだけな人間は痛い目にあうのは世の中の摂理です。
ものごとを柔軟に。
たまには向かい合い、
たまには逃げ出して。
妄想はそんな機能すら持っています。
とはいったものの。
ま、これまでのやつ。
全部ひっくるめて―――――妄想ですけど。
一回言ってみたかったんですよね。
こういう一見して正論みたいだけど実を言うとただの戯言みたいな?
………。
さてはて。
そんなアタシが語り部をやってもしょうがないですし。
それに。
もうそろそろ時間も近いみたいですので、最後にアタシはこう言うのであった。
「では、刺してください。ミドリカワくん」
○
と、いうわけで俺ー人を殺しちゃいました。テヘッ☆
まあ、なんつーか殺人っつーのもなんか飽きるな。
快楽殺人鬼とか言われるやろーどもはなにが楽しいんだろうかね。
で、だ。
俺がこいつを刺したのにはちゃんと深い訳がある。
聞いてくれ、お願いだから。
―――コホン、では静聴に。
なんとこいつ、自分から死にたいだの言ってきたからさぁ?
やむ終えず刺したって訳よ。
うんうん、我ながらこれは仕方ねぇよなー。
理由?
あぁうん理由ね。
なんかね、
このままだと歓喜のあまり
『本当』に人を殺しそうなっちゃうから、その前に殺してほしかったそうだよ。
よくわかんないけどそういうことらしいぜ。
『没頭怪奇』の名は伊達じゃねーってか。
いやー憧れるねー。
しっかし一切の抵抗がなかったのはそれほどまでに意志は固かったってことかな。
すげぇな。この女。
ホレボレしちゃう。―――さすがに屍姦の趣味はねーけどよ。
まあなにはともあれ。
「おまえもご愁傷様ってこった」
ご冥福に。
そう俺は残して立ち去っていくのであった。
―――あぁ? もうそろそろこのナイフもだめか?
ま、ナイフの知識なんてないんだけどね。
ともあれ、俺は行くあてもなく歩きだしたのであった。
――太陽が、眩しいな。
【桃沢結衣:死亡】
最終更新:2011年11月28日 13:59