「お前!!ふざけんなァ~!!」
意識が覚醒した少年は、突然大声で叫んでいた。
少年の名はモンキー・D・ルフィ。
大海賊時代の『ルーキー』で、敵味方を問わず多くの者から信頼されている男だ。気絶していたことにさえ気付かず、悪の神父・言峰綺礼に向け怒りを露わにしている。
彼は海賊だ。しかし、その心に宿る仁義の心はとても強い。時には『王下七武海』の人間と激突し、ついさっきまでは兄を救うために難攻不落の大監獄に潜入していた。
今の彼が抱く怒りは過去最高級―――本気の大激怒。
あの幼い少女の『父』を、あんなにも無惨に殺したことが許せなかった。
人の命を弄んで笑っていたあの男が、許せなかった。
そのルフィの声は勿論商店街一帯に響き渡っていて。無論、その声を聞きつけた者も近くに居た。彼が気付いたかどうかは知らないが、彼の後方に一人の少女が居る。
いきなりこの状況で叫んでいる人間に驚きを隠せない様子だ。
露出度の少々高い服装で、手には一本の剣を持っている。
しかしながら、ルフィは何時まで経っても少女に気付く様子がない。
危機察知能力の低さは海賊としてどうかと思われるところがあった。
「え、えーと、ちょっといい?」
「うおっ!?何だお前!?」
やっぱり気付いてなかったか、と少女はため息混じりに漏らす。
ルフィに敵意がないことは理解していた為、少女が物怖じする様子はない。
警戒されるかもしれないと思ったが、剣を警戒するほどルフィは慎重な性格をしていないだろう、という理由でそのままルフィに近付いていく。
「あたしは美樹さやかっていうんだ。あんたは?」
「おれはルフィ!よろしくな!」
明らかにさやかより年上、少なくとも高校生以上に見えるルフィの身長。
しかし、どうしてもさやかにはこの青年に敬語を使う気にはなれなかった。
純真無垢という点ではさやかよりも更に年下の気さえする。
さあ、この二人の、余りにも数奇な二人の出会いは何を生む?
◇ ◇ ◇
「そっか………さやかの仲間も、こんなふざけたことをさせられてんのか……」
許せない、という風にルフィは握り拳を作り、怒りに身を奮わせる。
今の二人は、出会った場所のすぐ近くにあった芝生の上に座っていた。
ルフィは胡座をかいて、さやかは体育座りで隣り合わせに座っている。
レジャーシートなど敷物の類はなかったがそこまでは望まない。
さやかはルフィの食べっぷりを見つめる。
さやかに支給されたハンバーガー(ビッグサイズ)を美味そうに右手で持って頬張り、左手で握り拳を作り怒るという、何とも器用な真似をしている。
元はさやかが支給品の確認をしていた際にハンバーガーを見つけ、余りにもルフィが物欲しそうな顔で見ていたので譲ってやった物だ。どちらにしろあの『セレモニー』での惨劇を思い出すと食欲も湧かなかったし、彼女は構わなかったのだが。
何とも素晴らしい食べっぷり、むしろあげて良かったとさえ思えた。
「うん……マミさんや杏子って奴は強いからいいけど、まどかが心配で」
「大切な奴なのか?」
こくり。と、さやかは迷うことなく首を縦に振った。
じゃあおれもそいつ探して守ってやる、とルフィは元気そうに笑う。
それを見てさやかも、ありがとう、と薄く微笑みながら応じるのだった。
だが内心、ルフィは腸が煮えくり返りそうな程の怒りを覚えていた。
今までに彼は『麦わら海賊団船長』として数多く戦いをくぐってきた。
砂を使う能力者、敵わないほどに強大な氷使いの『青キジ』、空島にて戦った雷を操るこれまた強大な男。世界政府の人間とも戦い、二年前にはそれで敬愛する兄を失った。つい最近では、怨念の魚人とも。
辛勝したことも多いが、敗北したことだって何度もある。
相手が『正義』でも『悪』でも、彼らは皆敵対するだけの理由があった。
しかしその中でもルフィが主催者・言峰綺礼と織田信長に抱く怒りは最悪のモノ。彼らには、一歩の譲歩も出来ない。願いなどで人を惑わし、更にはあの小さな少女の尊敬し、敬愛する父親をわざわざ目の前で爆殺してみせたのだ。
その卑劣な行為を、モンキー・D・ルフィという青年は断じて許せない。
現にこの美樹さやかは、大切な親友の身を必死になって案じている。
自分の仲間は強いから心配要らないが、さやかの親友は至って普通、むしろ普通よりも少しか弱いかもしれないくらいの人間らしい。ならさやかの不安とは一体どれほどのものか。
改めてルフィは怒りに身を焦がす。そして、何としてもこの少女を『まどか』と会わせてやる、と強い決意を固めた。
守る。さやかは自分で『あたしはそれなりに戦えるから心配要らないよ』なんて言っていたが、ルフィの仲間たちが呼ばれた時点でかつての強敵たちのような強者が居る可能性はとても高いのだ。自分の力でさやかを守らなければ、とルフィは再び決意を固める。
「ルフィ、お願い。あたしに力を貸して」
「おう、おれに任せろ!!」
親指を立ててグーサインを作り、満面の笑みでそれをさやかに突き出す。
そして、一口サイズになったハンバーガーを口の中に放り込み、もぐもぐと噛む。肉汁が溢れ出し、適度な塩辛さのソースと絶妙にマッチしてとても美味だった。
肉。それこそ、モンキー・D・ルフィの最大の力の源である。
『うまかったァ~~!!』と叫び、芝生に倒れ込むルフィ。
静寂の闇が包む空間に、青年の叫びだけが木霊する。
『叫ぶな、見つかったらどうすんの』とさやかが苦笑してルフィを窘めた。
「あっ、気になってたんだけどさ~、ルフィってひょっとして探検家か何か?何となくそんな感じの雰囲気が漂ってるんだよね」
「おれは海賊だ。いずれ『海賊王』になる、それがおれの夢なんだ!」
ぴくり。『海賊』というワードを聞いた瞬間、さやかの眉が僅かに動いた。
しかし、ルフィはそんな事に全く気付かず、麦わら帽子を被ってゆっくり立ち上がる。その瞳には、美樹さやかの友達を守る、という強い決意がありありと見られた。
『行くか、そろそろ!』とルフィが元気な声で言った時。
美樹さやかは、近くに置いていた剣をゆっくりと掴み取っていた。
「うん、分かった。一緒に頑張ろうね、ルフィ」
「勿論だ!早くまどかって奴を見つけて、あの腐れ男をぶん殴る!!」
そう力強く言うと、ルフィはさやかに振り返った。
何ら理由はない、ただ『何となく』振り返っただけ。
――――背後の少女を見て、ルフィの中の時間は停止した。
剣を、持っているさやか。
その切っ先が、ルフィに突き出されていた。
「……………え」
ゴムで出来た肉体の、胸の中心に、冷たい質感が入り込んでくる。
突き進み、それは人間の生命の根幹である臓器を刺し貫く。
紅い、真紅の液体が雫れ落ち、美しい満月の光に照らされて、ルフィの呆けた面を照らし出していた。嫌な、色だった。
即死には至らず、少しずつ視界が霞んでいく。
手はもうロクに動かせなく、指が痙攣じみた震えを見せるだけ。
「ぁ……」
振り返った時からでも、攻撃を止めることくらいは出来た。
それを彼はしなかった、いや、理解が出来なかった。
先ほどまで年相応の笑顔を見せていたさやか。
振り返った時の彼女の、濁りきった瞳。同じ人物とは、思えなかった。
「………さ、やか」
彼が最期に思ったのは、仲間のことではなく、自らを殺した少女のこと。
彼女がどういう人間だったのか、モンキー・D・ルフィには分からなかった。
最期に見た光景は、剣を抜き取ったさやかの、笑顔だった――――。
ぐちゃ。
そして、つい先刻まで楽しく談笑していた芝生に、ゴム人間は崩れ落ちた。
もうぴくりとも動かずに、胸元から滴る血液がただ芝生を朱に染めてゆく。
世界政府に喧嘩を売った賞金首・『麦わらのルフィ』。
厳しい鍛錬と二年の歳月を経て段違いに鍛えられた肉体はもう動かない。
何一つ成さず、何一つ成し遂げず。
『海賊王』を目指した青年は―――此処に眠る。
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE 死亡】
◆ ◆ ◆
―――ルフィは、一つの重大なミスを犯した。本人は気付き得なかったろうが。
美樹さやかという『魔法少女』は、元来正義感が強かった。
とある先輩魔法少女に憧れたのもあるし、彼女の性質でもあったのだろう。
だがそれはとても未熟な正義。矛盾を抱えたある種の独善。
彼女なりの正義を貫き通すために戦い、ある事を知り――――美樹さやかという夢と希望に満ちていた少女は、壊れた。しかも、悪い事は重なり、バトルロワイアル。
歪んだ正義はここに来て捻れた正義に。
他人に危害を加える恐れのある者は、老若男女を問わず皆殺しにする。
それが、バトルロワイアルにおける美樹さやかの『正義』であった。
「海賊なんて危ない人、生かしてはおけないよね」
瞳の濁りが消えて、満足そうな笑顔で息絶えたルフィを見下ろす少女。
ルフィを刺した瞬間の狂気じみた印象など露も見せず、事情を知らない者なら一発で心を許してしまうだろう――――それほどに、純粋に狂った笑顔だった。
「最後の晩餐は美味しかった~?」
動かない死体を踏みつける。
美樹さやかがルフィの反撃を受けてしまう可能性だって低くはなかった。
しかしそんな事は彼女にとって、最初から問題ですらなかったのである。
美樹さやか―――――『魔法少女』。
インキュベーターという生命体との契約により、魂を対価に願いを叶える。そうすれば晴れて夢と希望を叶える魔法少女。悪しき『魔女』を狩る正義の味方―――というのは所詮表向きの話。
魂を対価に、それはつまり、魂を『ソウルジェム』に変えてしまうこと。
魂(ソウルジェム)が壊れない限り、魔法少女が死ぬことはない。
いや、死ねない。
半身を吹き飛ばされようが胸を貫かれようが死ねない体になる。
それは不死の怪物『ゾンビ』と同じともいえるだろう。
美樹さやかを絶望の淵、崩壊まで追い込んだのはそれだ。
自分が人間ではなくゾンビだということ。
想い人にこんな体では愛してもらえないこと。
それは中学二年生の少女の青臭い正義感を破壊するのに十分すぎた。
だが、皮肉にも彼女の魔法少女としての性質は余りにゾンビとしてはお誂え向き。痛覚の遮断に、致命傷でなければ瞬時に回復し、時間を掛ければ致命傷さえ癒す回復力。
「言峰綺礼………アンタはあたしがぶっ殺してやる」
バトルロワイアルは壊れかけていた彼女の正義を間違ったベクトルで変えた。
もはや彼女は、
殺し合いへの積極性に関わらず悪を殺す機械と化している。
「まどか、それに何で生きているのか分からないけどマミさん――――あたしやるよ。必ず、このバトルロワイアルを潰してみせる」
彼女は気付かない。自分が殺したのが限りなく『善』の海賊だったと。
気付かぬまま堕ちていく。何処まで堕ちるかは分からない。
ただ―――悪人を『退治』する度に、彼女の中の正義はどんどん捻れ、より複雑で難解な螺旋となっていく―――それだけは、どうしようもなく確かだった。
【一日目/未明/E-4 商店街の外れ】
【美樹さやか@
魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、精神汚染(中)
【装備】さやかの剣@魔法少女まどか☆マギカ
【所持品】支給品一式、不明支給品×1、さやかのソウルジェム(濁り80%)@魔法少女まどか☆マギカ、モンキー・D・ルフィのデイパック
【思考・行動】
0:『悪人』を殺して、最後に言峰綺礼を殺す。
1:まどかとマミさんを探す。
2:暁美ほむら、佐倉杏子には警戒。不審なら殺す。
3:ルフィの『仲間』の海賊も見つけたら悪として殺す。
※魔女化直前からの参加です
※回復能力にある程度規制がかかっています
※ソウルジェムを破壊されなければ死亡しませんが、濁りが100%になると『魔女の結界』を発動させて魔女化します。
【さやかの剣@魔法少女まどか☆マギカ】
美樹さやかの主武装。支給品扱いとなっている。
見た目は洋剣だが、複数召還して投擲にも使える。無限の剣製じゃないよ。
【ハンバーガー@現実】
美樹さやかに支給。
何の変哲もないビッグ○ック。
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最終更新:2011年12月26日 09:10