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おーぷにんぐ

「……イラ。起きて、エイラ」

声が聞こえる。大切な、サーニャの声が。その声の導きのままに、私――エイラ・イルマタル・ユーティライネンは目を覚ます。
私は夜間哨戒で疲れてるんだけどなぁ……。まあ、それはサーニャも一緒なんだけど。
それに、サーニャに起こされるってことは目覚めてすぐにサーニャの顔を見ることができるってことだ。そう考えると疲れも吹き飛んでしまう。
大きく伸びをして、目を開く。最初に見えた景色は期待通りサーニャの顔だった。ああ、今日も可愛いなぁ……。どこか不安げな様子なのが気になるけど……。
でも、なんでサーニャがここにいるんだ? 私は夜間哨戒が終わった後、自分の部屋のベッドで眠りについたはずだ。
それなのにサーニャがここにいるということは……ああ、そうか。また寝ぼけて私の部屋に入ってきちゃったんだな。まったく、今日だけだかんな。
それにしてもなんか部屋の中が暗いぞ。サーニャはもう着替えてるみたいだし、電気ぐらいつけてくれたっていいと思うんだけどなぁ。
そういえば何でサーニャは私を起こしたんだろう? 今日は軍議の予定は入ってなかったはずだし……。
もしかしたら私が忘れてるだけかもしれないけどな。とりあえずサーニャに聞いてみよう。

「おはよー、サーニャ。どうしたんだ? ……あ、まさかツンツンメガネに何か言われたのか!?」
「違うの、エイラ。周りを見て」

サーニャにそう促されて辺りを見回す。まだ暗さに目が慣れてなくてよく見えないけど、気配や時折聞こえる話声から大勢の人がここにいるのがわかった。
未だ寝ている奴。私のように近くの人に起こされている奴。既に起きていて何か考え事をしている奴。見える範囲だけでも十数人はいるだろうか。
年齢も性別も、おそらく人種もバラバラな人間が、一つの部屋に集められていた。
そう、一つの部屋に、だ。私の部屋にこんな大勢の人間は入らない。
それに、501基地の内部というわけでもない。私とサーニャがいるのは、まったく来たことがない部屋の中だった。

「なんだよここ……そうだ! 隊のみんなは!? サーニャ、誰か見てないか?」
「いいえ、誰も見てないわ。私もついさっき目を覚まして、近くにいたエイラを起こしただけだから……」

私の問いかけに、サーニャは首を横に振りつつ答える。
ウィッチが十一人いる501基地から、私たちだけがこの部屋に連れてこられているとは考えにくい。
きっと他のみんなもこの部屋のどこかにいるはずだ。
だったらまずはみんなを探そう。ミーナ隊長や少佐、大尉がいればこういう事態でも的確な指示を出してくれるだろうから。
その時だった。部屋に、一人の男の声が響いたのは。

「全員が目を覚ましたようだな。では始めようか」

その声と同時に、部屋の明かりがつけられた。
これは幸いとばかり改めて辺りを見回すと、少し離れたところに見慣れた顔を見つけられた。
宮藤と少佐、それとツンツンメガメ。どうやらあちらはあちらで目覚めたあと合流できたみたいだ。ミーナ隊長や大尉、他のみんなの姿は見えない。
まあ、誰かがいることを確認できただけでもいいとしよう。。
今気にするべきなのは、さっきの声の主のことだ。始めようかと言ったからにはさっきの男が私たちをここに連れ込んだんだろう。
501基地からウィッチを誘拐だなんて、そう簡単なことじゃない。でも私たちがこんなところにいるってことは、さっきの男はそれをやってのけたんだ。
いったいどんな奴なんだ? すると、私が抱いた疑問に答えるかのように、またさっきの声が聞こえてきた。

「余の名はアドルフ・ヒトラー。もっとも、一部の者には言うまでもはないだろうがな」

声の発せられたほうを向くと、そこにはチョビ髭を生やした男が立っていた。
余だって? なんだか偉そうな奴だな。それこそツンツンメガネよりもよっぽど偉そうだぞ。
でも、あの男――ヒトラーって言ってたかな――の立ち振る舞いというか風格というか、まあその類のものはたしかに偉い者のそれだった。
なんだかカールスラントの皇帝に似てる気がしないこともないぞ。

「ヒトラーッ! キサマ、何をするつもりだッ!」

すると、今度はまた別の男の声が。なんかこのヒトラーって奴と知り合いっぽいな。
叫び声を上げつつ立ち上がったのは、高そうなスーツに身を包んだ男だった。あの偉そうなヒトラーの知り合いってことは、こいつも偉いんだろうなぁ……。

「そう騒ぐな小泉ジュンイチロー。何をするかは余が今から直々に説明してやる。
 ……さて、少し邪魔が入ったが本題に移ろうか。お前たちには、今から殺し合いをしてもらう。最後の一人になるまで、な」

……は? 殺し合い? 最後の一人になるまで? 何を言ってんだこいつ?

「ふざけるなッ! ヒトラー!」
「そんなことやるわけないだろっ!」
「っべーわー! 殺し合いとかマジべーわ!」

部屋の中は即座に怒号に満たされた。そりゃそうだよなぁ。殺し合いをしろって言われてはいそうですかなんて言う奴がいるわけないよなぁ。
かく言う私も殺し合いなんてやる気はさらさら無い。そんなことをするならウィッチになってネウロイと戦ったりしてないぞ。

「そう騒ぐな。お前たちの首に付いているものに気が付かないのか?」
「首だと……これは」

小泉ジュンイチローとか呼ばれてた男が首元に手を運ぶ。そこには鈍く光を反射する銀色の首輪が嵌められていた。
咄嗟に自分の首元にも手をやると、そこにもたしかに首輪は存在していた。そしてそれはもちろん、サーニャの雪のように白くてキレイな首元にも。
気付かない間にはめられていた首輪。これは不味いぞ。脳のどこかで警報が鳴り響いている気がする。

「この首輪はだな……ラインハルト、前へ出てこい」
「ハッ、総統閣下」

ヒトラーの声に呼応して、軍服姿の男が出てきた。
いかにも真面目な堅物軍人って感じの奴だ。

「お前には特別な任務を言い渡していたと思うが、それは別の者が遂行することになった。
 よって、お前にはまた別の任務を今からやってもらう」
「はぁ……」

そう言うと、ヒトラーはポケットから何やらスイッチのような物を取り出した。
なんだ? 何をするんだ?
ヒトラーがこの後何をするかを探るために、私は魔力を開放する。固有魔法である未来予知を使うためだ。
そして見えたもの、それは――

「サーニャ、見ちゃダメだ!」
「エイラ!?」

私がサーニャに覆いかぶさるのと、ヒトラーがスイッチを押して――爆発音が聞こえてきたのは、ほぼ同時だった。
部屋の中は一瞬、静寂に包まれる。そして一拍遅れて――

「嫌あああぁぁあああぁああっ!?」
「キサマァッ!?」
「嘘だろ!?」
「っべーわー! 首輪が爆発とかマジべーわ!」

怒号と悲鳴が響き渡った。
それも当然だと思う。ラインハルトと呼ばれた軍人の首から上が先程の爆発で吹き飛んだんだから。

「何ッ!? 何があったの!?」
「ダメだサーニャ! 見ちゃダメなんだ……!」

未来予知の固有魔法を持っていて本当によかったと思う。
あんな光景は、サーニャには絶対に見せたくない。

「このように、余は首輪を自由に爆破させられる。この殺し合いを妨害する者には今のラインハルトと同じ目にあってもらうことになるぞ。
 ……さて、それでは説明の続きをしようか。お前たちには一人一つずつこのデイバッグが与えられる。
 中には様々な道具や武器が入っているから有効に使うべきだな。中身の詳しい説明は省かせてもらう。
 次に禁止エリアについてだ。禁止エリアとは……」

その後も、ヒトラーによるルールの説明は続いた。
こんな状況でもその説明に耳を傾けられたのは私が軍人だからだろうか。
でも、私にできたのは説明を聞くことと、震えるサーニャの近くにいてやることだけだった。

「……説明は以上だ。では、これよりお前たちには第三帝国の技術力を用いて作った転送装置でランダムに余が用意した会場に移動してもらう。
 移動が完了したその時がこの殺し合い――バトルロワイアルのスタート時刻だ。それでは、お前たちの健闘をこのヴァルハラ宮から見させてもらおう」

ヒトラーのその言葉と同時に、部屋にいるヒトラー以外の全員――この殺し合いの参加者の身体が光に包まれる。

「サーニャ!」
「エイラ……!」

私は咄嗟にサーニャに手を伸ばす。サーニャも私の方に手を伸ばしてくれた。
手と手が触れ合う、その直前。その直前に、サーニャの姿は掻き消えて。そして私も、同じように。



◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆


「……総統閣下」
「どうした、トリスタン」
「何故このような催しを? 小泉ジュンイチローを亡き者にするためならば、このような催しを開催せずともよかったのでは……」
「お前もまだまだ若いな、トリスタンよ。……そうだな、今は亡きスコルツェニーのように言うなれば、『余の慈悲深さは底なし』ということだ。しかし、今はそんなことは重要なことではない。
 お前にも持ち場があるはずだぞ、トリスタンよ」
「……失礼しました、総統閣下。それでは持ち場に戻らせて頂きます」
「それでよい。……ククク……ハハハ……」




【ラインハルト@ムダヅモ無き改革 死亡】
【残り32人】 


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最終更新:2012年01月16日 00:34
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