第七十話≪俺オリロワ第二回放送≫
島を、夜の帳が覆う。
そして、この
殺し合いを操る男の声が、6時間振りに島に響く。
『はいはい、皆さんこんばんわ。俺ですよー。
午後の6時を回りましたので、第二回目となります定時放送始めま~す。
じゃあまずは死んだ人から発表しまーす。
前と同じく死んだ順番です。行きますよー。
以上18人! これで残りは……うおお!? たったの9人!
50人もいたのにたった半日で9人になっちゃいましたよ!
これは凄いです! 物凄いペースです!
……あーただ、この内二人は自殺してるんですよね。いけませんよ自殺は。
ちゃんと戦ってくれないと。折角こんな大舞台まで用意してお膳立てしてるんですから。
まあそれはさておき、禁止エリアの発表に移りますよ。
午後7時から、G-7!
午後8時から、C-3!
午後9時から、H-4!
以上でーす。ちゃんと聞きましたかー? 大丈夫ですねー。
でも残り9人なら、もう次の放送は無いかもしれませんね……。
あーそうだ。G-5に座礁客船ってあるんですけど、
どうやら沈没しちゃったみたいなんで、地図から消しておいて下さい。
では今生き残っている大崎さん、四宮さん、菊池さん、葛葉さん、志水さん、新藤さん、藤堂さん、松宮さん。
ここまでよく頑張りましたね。もう少しですよー頑張って殺し合って下さい。
ではさようなら~』
ブツッという嫌な音を最後に、放送は終了した。
◆
「ふ~」
放送用のマイクから口を離し、椅子の背もたれに大きく背を預けながら、
放送主の男――柴田行隆は一仕事終えた、というような感じで溜息をつく。
「しっかし、今生き残ってんのが男二人、女七人。
その内獣人が三人で後は純粋な人間……獣人の男勢が全滅ってのは驚いたな。
人間の女は、やっぱ強ぇーって事か?」
手元にある現在の生存者9人の様子などがまとめられた資料を見ながら、行隆が言う。
人間と獣人ならば、獣人の方が身体能力的にも潜在能力的にも大きく上回っているはずなのだが、
これは人間の底力とでも言うべきか。
男性より女性の方が多く生き残っているという点も行隆を驚かせた。
生き残っている獣人三人――内一人は人間に近いハーフ獣人だが――も、全員女性だ。
やはり女性は強い、と言う事だろうか。
「まあ、何にしてもだ、こりゃ、もうすぐ終わるかもな、このバトルロワイアルも……」
最初の放送までに23人、そしてつい先程の第二回放送までに18人が脱落。
参加者が減れば遭遇率も減る、のだが、どうやら生存者9人は皆、会場である島の南西部に広がる市街地に集結。
市街地にいない者も、どうやら全員市街地を目指して移動中のようだ。
このペースで行けば、恐らく三回目の放送を迎える前に、このゲームは終了する。
「優勝者が出るのか、或いは全滅か……まあ、答えは神のみぞ知る、って奴、だな」
椅子から立ち上がり、資料を片手に不敵な笑みを浮かべながら、
行隆は数十人もの兵士が働くオペレーションルームの奥にある自室へと戻って行った。
物語はいよいよ、結末に向かって動き出す。
どんな結末が、生存者達を待ち受けるのか。
希望か、絶望か。
その答えは――。
【残り9人】
最終更新:2009年11月23日 15:31