日没、そして闇が訪れる

第六十九話≪日没、そして闇が訪れる≫

日が暮れる。
幾多もの犠牲者が眠る殺戮の舞台である島を、夜の帳が覆うとしている。
現在時刻、午後5時45分。後11分程で第二回目の運営側からの定時放送が始まる。
当初、50人もいたこの殺人ゲーム・バトルロワイアルの哀れな参加者達は、
たった半日で9人にまで減ってしまった。
ルールに則り、戦いに身を置く者と、ルールに抗い、戦いを覆そうとする者や脱出を目指す者。
生き残っている者達は第二回目の放送を前に如何なる行動を取っているのか。


四宮勝憲金ヶ崎陵華の二人。
今度は道中で事故に見舞われる事も無く、無事目的地である市街地に到着した二人であったが、
定時放送の時刻が迫っていたため、F-2で発見したガソリンスタンドに車を停め、
奥にある事務室で放送を待つ事にした。

「暗いな……電気点けてぇ」
「気持ちは分かるけど、見つかっちゃうかもしれないし」
「まあな……我慢するしか無ぇか」

見付かる危険があるので、部屋の電気は点ける事は出来ない。
光源は基本支給品である懐中電灯のみ。もちろん外に光が漏れないようにしている。

菊池やと葛葉美琴の二人。
G-6幹線道路上を、その顔に疲労の色を滲ませながらも、強い意志を宿した狐の少女と青髪リボンの少女が歩く。
目指すは遥か前方に見える、僅かな明かりが灯る市街地。

「あ、船が沈んでる」
「本当ですね」

客船が今まさに沈没しかかっているのを見付け、二人は思わず足を止める。
地図に「座礁客船」というランドマークがあったので、恐らくあれがそうなのだろう。
もし平常ならば周囲に救助隊やら野次馬やら報道陣やらが集まり、大騒ぎになっているだろうが、
そんな状況になるはずも無く、客船は見守る者も無く静かに海の底へ消えて行く。

「行きましょう」
「はい」

そして、唯一の目撃者であるやとと美琴も、特に気を留める事も無く、再び足を進める。
今の彼女達にとっても、客船沈没は関心の外であった。

そして5分も経たない内に、遂に客船は海の底へ消えた。

志水セナ
F-3の民家の一つに身を潜め、放送の時を待つ。
例に漏れず電気は点けていない。家中のカーテンを閉め切り、子供部屋と思しき部屋の隅で、
懐中電灯の明かりのみを頼りに名簿と地図を開く。

「もうゲームが始まって12時間。約半日……今何人が生き残ってるのかしら?
っていうか私、山頂で三人殺してから、未だに一人も殺してないんだけど」

第一回目の放送以降、彼女は一人も殺せていなかった。
午前中に、山頂から不戦の呼び掛けを行っていた白虎獣人とその仲間の三人を殺害したが、
それからは襲撃しても逃げられてしまっていた。
サブマシンガンにショットガン、戦力は十分なのだが。

「何だか格好付かないわ……次こそは絶対に……!」

次に出遭った他参加者は絶対に仕留めてみせると、眼鏡を掛けた狐耳の少女は誓う。
自分が「仕留められる」という可能性は考えていないようだ。

新藤真紀
現在4人の殺害数を稼ぎ、現在はH-4灯台管理人詰所の事務机に座り放送を待っていた。
ソファーの周辺に夥しい量の血痕と、引き摺ったような血痕が海に面した窓まで続いていた。
ここには彼女が手に掛けた竜人の少年とバニーガールの女性の死体があったが、
「死体と同じ部屋にいるのは嫌」と、真紀が二人の死体を引き摺って窓から放り出してしまったのである。
死体は無くなったが血の臭いが漂っており、やむを得ず真紀は換気扇のスイッチを入れていた。

「後ちょっとで放送があるわね……」

時計に目をやりながら真紀が言う。

「襲禅の奴は、まだ生きてんのかな」

この殺し合いに呼ばれている唯一の知人の事を思い出す。
冷蔵庫の中に入っていた缶ジュースを飲みながら、多くの名前が消された名簿を眺める。


「……抜けられたな……」
「はい……」

ポツポツと灯る街灯、窓の明かり、放置された自動車、誰も通らない道路と歩道。
遂に二人は目的地である市街地へと辿り着いた。

「着いたな」
「そうですね……」

しかし、長い間求めて来た目的地に辿り着いた二人の顔に、歓喜の色は無い。
むしろ、悲しみや悔恨といった重々しい表情である。
二人には、後二人、志を共にする仲間がいた。
正義感が強く、道徳心溢れる若き狼獣人の陸軍兵士、北原大和
体力に難があったが、陽気でお茶目な性格でグループ内の精神的な支えになってくれていた老人、山本良勝
本来なら四人でこの市街地に到達するはずだった。
だが、二人はもういない。

「とりあえず放送があるな。メモる準備をしておこう」
「はい……」

間も無く始まる定時放送に備える二人。
手近な民家の塀の陰に隠れ、名簿と地図、明かり取りのための懐中電灯を取り出した。

松宮深澄
紫髪の女性憲兵は、自らが殺害し、手に入れた首輪を、G-3役場内で調達した工具で分解していた。

(分解自体は手近にあるマイナスドライバーなどでも可能なようだが……どうも、
起動している状態で下手に分解しようとすると起爆装置が作動する仕組みになっているようだ)

既に内部構造が露わになった状態の首輪を観察しながら深澄が思考する。

(これが爆薬か……見た事も無い色、種類……特別に配合された新型爆薬か?
……ふむ、成程……これは……)

分解して内部構造を見れば見る程、この首輪に使われている超高度技術に深澄は感嘆する。
完全防水、耐衝撃性共に完璧、下手にいじればすぐに起爆する仕掛け、
生体反応を感知する最新鋭のセンサー、市販でも手に入る純国産の部品が多いが、
全く出所の分からない正体不明の部品も使われている。
おまけに……。

(これは……マイクか?)

それは感度の高いコンデンサーマイクだった。首輪の裏から収音される仕組みになっている。
なぜマイクが? その答えはすぐに見当が付いた。

(盗聴か……くそっ、主催の連中め、小賢しい真似を……あまりベラベラと迂闊な事を喋らず正解だったな)

どうやら参加者間の会話は運営側に筒抜けのようだ。
下手な事を喋れば遠隔操作で首輪を爆破されていたかもしれない。
爆破されずとも、脱出工作を妨げようとあの手この手を尽くして全力で妨害してきただろう。
今の所、何とも無いのは幸いだった。
とにかく、深澄は首輪の構造を大方把握する事が出来た。
分解するのは簡単だが、そのためには首輪の機能を停止させなければならない。
そうでなければ、起爆装置が作動してしまう仕組みになっているのだ。

(やはり……運営のメインサーバーをどうにかするしか無いか)

そう思い、深澄は役場のインターネット回線に無理矢理接続したノートパソコンの画面を覗き込む。
現在、家電製品店で手に入れたツールを駆使して、即席のハッキングソフトを作っている。
これが完成すれば、恐らく運営のメインサーバーへの侵入も可能になるはずだ。
勿論、向こうも厳重なファイヤーウォール(防護壁)や暗証パスコードを設置しているだろうが、
何とかなるはず。彼女はそれ程のコンピューター関連の知識、ハッキングの腕を持っていた。

「そろそろ放送だな」

後数分で第二回目の放送が始まる。
ブラインドやカーテンを閉め切り、深澄が使用しているデスクの電気スタンドのみが光源の役場オフィス。
そのオフィスの中で、椅子に座りながら名簿と地図を取り出す。
現在何人が生き残っているのかどうかも気になったが、
それよりも深澄が気になるのは禁止エリアである。
現在位置の役場がもし禁止エリアに指定されると、非常に面倒な事になる。

(ここが禁止エリアにならんよう、祈るだけだな……)

良い方に転ぶ事を願い、深澄は再び時計に目をやる。


――放送まで、残り、45秒。


血のように赤い夕陽が沈み、漆黒とも言える闇が訪れる――。



【一日目/夕方/F-2ガソリンスタンド】

【四宮勝憲】
[状態]:全身打撲(軽度)、金ヶ崎陵華がちょっと心配
[装備]:FN FAL(9/20)
[所持品]:基本支給品一式(食糧1/3と水一本消費)、FN FALの予備マガジン(20×10)
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る気は無いが、襲い掛かってくる奴は殺す。
1:放送を待つ。
2:陵華と行動する。
3:麗雅と美琴の捜索。
4:あの緑髪の女(新藤真紀)には二度と会いたくない。
[備考]
※支給されたFN FALはセミオート限定モデルです。
※緑髪の女(新藤真紀)の特徴を大まかに把握しました。

【金ヶ崎陵華】
[状態]:足に軽い擦り傷、全身打撲(軽度)、精神的疲労(中)、気分が悪い、食欲不振、
[装備]:コルトM1908”ベストポケット”(6/6)
[所持品]:基本支給品一式(四人分の食糧)、コルトM1908の予備マガジン(6×10)、
調達した食糧及び飲料、牛刀包丁
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。
1:放送を待つ。
2:気分悪……食欲無い……ああもう……。
3:四宮さんと一緒に行動する。
[備考]
※緑髪の女(新藤真紀)の特徴を大まかに把握しました。
※死体や血痕に敏感になっています。見ると気分が悪くなる恐れがあります。


【一日目/夕方/G-6幹線道路】

【菊池やと】
[状態]:健康、市街地方面へ移動中
[装備]:ミロクSP-120(2/2)
[所持品]:基本支給品一式(食糧1/3消費)、12ゲージショットシェル(50)、
S&W M36”チーフスペシャル”(5/5)、38S&WSP弾(50)
[思考・行動]
基本:殺し合いの転覆。或いは脱出。そのために仲間を集う。
1:襲われたらまず説得、駄目なら戦うか逃げる。
2:首輪を外す方法も探す。
3:何で10代の頃の身体に戻ってるの……?
[備考]
※運営側による盗聴の可能性を知りました。

【葛葉美琴】
[状態]:左頬に掠り傷(治癒中)、緑髪の女性(新藤真紀)に対する憎悪、市街地方面へ移動中
[装備]:十三年式村田銃(1/1)
[所持品]:基本支給品一式(食糧1/3消費)、11.15㎜×60R弾(ポケットに11、デイパックに22)、出刃包丁
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。
1:絶対に、生き延びる……。
2:首輪に盗聴器が内蔵されている事を他参加者に知らせる。
3:知人(四宮勝憲、朱雀麗雅)と合流したい。
4:襲われたら戦う。
[備考]
※運営側による盗聴の可能性を知りました。


【一日目/夕方/F-3仲販家】

【志水セナ】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM31(2/2)
[所持品]:基本支給品一式(食糧四人分、消費中)、イングラムM11A1(30/30)、
イングラムの予備マガジン(30×6)、12ゲージショットシェル(38)
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。他参加者を積極的に殺していく。
1:放送を待つ。
[備考]
※水色ショートヘアの少女(桂川八重)を殺したかどうか分かりかねています。


【一日目/夕方/H-4灯台管理人詰所】

【新藤真紀】
[状態]:疲労(中)、身体中に掠り傷及び軽度の打撲、左肩に掠り傷(いずれも応急処置済)
[装備]:二六年式拳銃(6/6)、長谷川俊治の野球帽
[所持品]:基本支給品一式(食糧1/3消費)、9㎜×22R弾(26)、 ラドムVIS-wz1934(5/8)、
ラドムの予備マガジン(8×9)、ウィンチェスターM1873(14/14)、
44-40ウィンチェスター弾(140)、マークⅡ手榴弾(3) 、サーベル、ブッシュナイフ、三人分の食糧
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。積極的に他参加者と戦う。
1:放送を待つ。
2:知人(須牙襲禅)とは出来れば会いたくない。
[備考]
※リボンを付けた青い髪の和服姿の少女(菊池やと)の姿を確認しました。


【一日目/夕方/F-3市街地】

【大崎年光】
[状態]:疲労(大)、左腕に掠り傷、やりきれない思い、喪失感
[装備]:九四式拳銃(6/6)
[所持品]:基本支給品一式(三人分の食糧)、九四式拳銃の予備マガジン(6×1)、手斧、
織田信治の首輪、モシンナガンM1891(4/5)、7.62㎜×54R弾(30)、
AMオートマグ(7/7)、オートマグの予備マガジン(7×10)、日本刀
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。そのためにも仲間を集める。
1:放送を待つ。
2:リフィアと行動を共にする。
[備考]
※参加者詳細名簿により、全参加者の容姿と名前をある程度把握しました。
※織田信治の水と食糧は完全消費しました。

【藤堂リフィア】
[状態]:疲労(肉体的、精神的共に大)、首、胸元に貫通創(命に別条無し)、返り血(大)、
口元が血塗れ、右腕上腕部に銃創(応急処置済)、喪失感
[装備]:コルトM1900(7/7)
[所持品]:基本支給品一式(四人分の水と食糧、食糧1/4消費)、コルトM1900の予備マガジン(7×9)、ベレッタM92(15/15)、ベレッタM92の予備マガジン(15×2)、トカレフTT-33(8/8)、
トカレフTT-33の予備マガジン(8×4)、コルトパイソン(6/6)、357マグナム弾(27)、
直刀、クロスボウ(0/1)、ボウガンの矢(86)、参加者詳細名簿
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。 脱出方法を探る。
1:放送を待つ。
2:大崎さんと行動を共にする。
[備考]
※生命力が異常に高いです。頭部破壊、焼殺、首輪爆発以外で死ぬ事はまずありません。
但し一定以上のダメージが蓄積すると数十分~一時間ほど気絶します。
※参加者詳細名簿により、全参加者の容姿と名前をある程度把握しました。


【一日目/夕方/G-3役場】

【松宮深澄】
[状態]:右腕上腕部に掠り傷(応急処置済)、返り血(少)、ハッキングソフト制作中
[装備]:S&W M10”ミリタリー&ポリス”(6/6)、ダマスカスソード、防弾チョッキ
[所持品]:基本支給品一式、コルトM1911(7/7)、コルトM1911の予備マガジン(5×10)、
スタームルガー ブラックホーク(6/6)、357マグナム弾(60)、38S&WSP弾(24)、
マイナスドライバー、ハンティングナイフ、登山ナイフ、五人分の水と食糧、
雑貨店より調達した食糧、簡易レーダー
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。首輪の解除。
1:放送を待つ。
2:仲間になりそうな他参加者を探す。但し足手纏いは切り捨てる。
3:殺し合いに乗っている者には容赦しない。
[備考]
※簡易レーダーの使用方法及び性能を確認しました。
※首輪の内部構造を把握しました。
※運営側による盗聴の可能性を知りました。



【G-5座礁客船  沈没】


本庄忠朝伊藤文子の荷物の一部は新藤真紀、
北原大和、山本良勝、須牙襲禅の荷物の一部は大崎年光、藤堂リフィアがそれぞれ、
立沢義篠崎廉生鎌治伸霧島弥生の荷物の一部は松宮深澄が回収しました。
※G-5座礁客船は沈没しました。





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最終更新:2009年11月23日 23:08
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