学園都市が誇る第一位の超能力者・一方通行(アクセラレータ)。
最強の能力者とされる少年が、
殺し合いの場にて君臨していた。
首には黒色のチョーカー、右手には現代風の杖。
一歩、一歩と進むたびに杖へと体重を預け、身体を不自然に傾けながら道を進む。
一方通行がいる場所は市街地であったが、電気の灯ったビルなど一つもなく、灯りといえば定間隔で置かれた街灯くらいしかない。
物音も聞こえない。
車が通る音、人々の歩く音、ビルの隙間を通り抜ける風音すらもなかった。
怖いほどの静寂に包まれたビル街に、最強の能力者が歩み進む音だけが響く。
(いいね、いいね、最ッ高だねぇ!! 愉快に素敵に決まっちまったぞォ!!)
一方通行は歪んだ愉悦に染まった笑顔を浮かべる。
突然始まった殺し合い。
集めた人々を前に謎の存在が告げた事は、生き延びてければ殺しあえというもの。
成る程、狂っていると断じるに充分すぎる内容ではあった。
『闇』に身を置き、『悪党』を自称する一方通行としては、殺意を覚えずにはいられない。
光の世界に生きる住人すら巻き込んだ、あまりに馬鹿げた殺し合い。
あのコスプレ野郎は、死体の一欠けらと残さずぶち殺す―――そう、一方通行は心の中で断じていた。
「上から見てみたが、参加者の姿は見えないな。どうやら森林の向こう側は市街地になっているようだが」
―――だがしかし、今この瞬間一方通行が浮かべる笑顔は、エクストリームガンダムへの殺意からのものではなかった。
一方通行の視線はある一点に集結していた。
それがさも当然のように、夜空を背に空を飛ぶ少女。まだ幼げな面持ちに、膨らみのない平坦な身体。
一方通行の頭上にてフワリと宙に浮き、少女はその見た目とは反した野太い声で語りかけてくる。
「そォか。なら、まずは市街地を目指すぞ」(おいいいい、何つー際どいアングル見せやがるんですかァ! さそってんですか、このガキはァ!!)
少女の姿を真下から見上げながら、一方通行は口だけは冷静に言葉を飛ばした。
顔にはこれ以上ないほどの満面で下劣な笑顔が浮かんでいるが、空中の少女からは見えることがない。
空を舞う少女の恰好は、黒色のレオタードに申し訳程度のスカートとマントを身に付けただけの、何とも露出度の高いものであった。
真下の一方通行からは隠されるべき点が殆ど丸見えである。
空中の少女を、更に言うならば空中の少女の股間あたりを凝視しながら、一方通行は必死に興奮を抑えていた。
「……了解だ。異論はない」
そんな下品な視線にさらされている事も知らずに、少女は一方通行の意見を了承する。
一方通行の隣へと舞い降り、視線を市街地がある方角へと向けた。
「なら、行くぞォ」(あー、やベェ! 何か良い匂いがする!! モフモフしてェ! モフモフしてェぞ、おいィイ!!)
既に一方通行の表情も、普段浮かべている他人を拒絶するかのようなしかめっ面へと戻っていた。
惚れ惚れする変わり身の早さに、少女はやはり一方通行の心底にある下劣な感情に気付くことはない。
ロリコンと少女、危険な臭いしかしない二人組が森林を進んでいく。
◇
そして、十数分程の時間が経過したところで、ようやく危険な二人組は市街地へと辿り着いていた。
高いビルディングの並ぶそこを見渡しながら、少女は目的の人物を探す。
W.D.M.G(ホワイト・デビル・マジシャン・ガール)。またの名を高町なのは。
少女―――フェイト・T・ハラオウンの親友にして嫁である女性だ。
共にこの場に召喚されたなのはの探索を、フェイトは何よりも優先して行動していた。
なのはとの合流。それだけがフェイトを突き動かす指標であった。
なのはの為ならば殺し合いに乗ることもできるし、なのはが殺し合いに乗らないというのなら殺し合いには乗らない。
フェイトにとってなのはは全てである。
一方通行と行動を共にしているのも、殆ど成り行きであり、言ってしまえば一方通行が無理矢理付いてきているようなものだ。
正直、どうでも良い存在であった。
邪魔だと感じれば、今この瞬間に殺害することだって出来る。
(彼女の気配はないか……くっ、確かに彼女の存在は感じるというのに……!)
フェイトの表情には目に見える焦燥があった。
兎にも角にも会いたくて仕方がない。
そんな心中の表れは、隣の一方通行にも容易く感じ取れた。
「落ち着けェ。焦ったところでなンも変わりはしねェぞォ」
「……すまない」
杖を持つ方とは逆の手で、一方通行は優しくフェイトの頭に手を置いた。
傍から見れば子どもを宥めつかせようとする大人の対応。
そして、弱弱しく目を伏せたフェイトは、まるでその一言に心を落ち着かせた子どもの対応。
中々に睦まじい光景であるが、だが当の本人達の心中はまるで違った。
(ああああああ!! その表情は反則だろォがよおおおお!! やべェよ! 俺の理性が風前の灯火ですよ、オイィ!!)
(さ、ささささささ触られた……なのはしか撫でることの許されない私の聖域を、この白ゴボウが撫でただと……!!)
両者ともに相当に異常な思考を辿っている。
至福の中にいる一方通行は、フェイトが噴出させる漆黒の殺意に気付かない。
屈辱の中にいるフェイトは、一方通行が身から滾らす劣情に気付かない。
いっそ殺してしまうか、とフェイトは手中のバルディッシュへと魔力を流入させる。
「フェイトちゃん、やっと見つけた!」
その時であった。
闇の中から、声が聞こえた。
声が届いた瞬間、フェイトの心中から一方通行の存在など影も形もなくなる。
なのは。なのはの声だ。
フェイトの心に浮かぶは愛らしい微笑みを浮かべる親友の姿。
頭を撫でる手を払いのけ、フェイトは闇の中へと走り出す。
「こっちだよ。フェイトちゃん!」
あそこだ。ビルとビルの間の路地裏。
なのははあそこにいる。
あそこから声を掛けてくれているのだ。
待ってて。今直ぐに行くから。
「なのは!!」
野太い声を張り上げながら、フェイトが路地裏へと飛び込む。
そんなフェイトの姿を愛おしく思いながら、一方通行も路地裏の方へと足を進める。
あのフェイトが言っていた少女。おそらくはフェイトと同等、もしくはそれ以上の可愛さなのだろう。
(ッエーイ☆ ロリもう一匹ゲットってかァ!! 何なんですか、ここはァ! 天国か、天国なんですかァァァ!!)
ただでさえ赤い瞳を更に血走らせながら、一方通行は天使二人が待つ路地裏を目指す。
不自由な身体がこれほど煩わしく感じたことはない。
僅か十数メートルの距離が、まるで拷問のような距離だ。
もう制限時間など無視して能力を解放してしまおうか、などと考えながら、一方通行は着実に路地裏へ近づいていった。
そして、ついには辿り着く。
一度大きく深呼吸をして、一方通行は念願の天国へと一歩踏み出す―――
「―――アァ?」
―――その直前で、『何か』が一方通行へと飛んできた。
丸いバスケットボール程の大きさの『何か』。
片手が塞がっている一方通行には、その『何か』をキャッチすることができなかった。
『何か』は一方通行の痩躯に当たった後で、地面へと転がり落ちる。
『何か』は水にでも濡れていたのか、それが触れた箇所の服が生暖かく湿る。
一方通行は、暗闇に落ちた『何か』を凝視するよりも早く、腰に刺さった拳銃へと手を伸ばしていた。
殆ど反射的な動作だ。五感よりも先に、『闇』を生き抜いてきた一方通行の勘が働いていた。
「ッ、がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
だが、その俊敏な動作をもってですら、至らない。
一方通行の肩から腹に掛けて、熱い何かが通り抜ける。
力が抜け、立っている事すら敵わない。
激痛に一方通行の意識が漆黒に染まっていく。
自身が倒れたことすらも理解できない状況で、一方通行は見た。
先程飛んできた『何か』の正体と、闇の中にいる者の顔。
『何か』は微笑んでいた。
『何か』は歓喜だけが存在する中にあった。
『何か』―――フェイト・T・ハラオウンの生首は、生首だというのに満面の笑顔を浮かべていた。
天使の笑顔に見守られながら、一方通行は深淵へと意識を落としていった。
路地裏に待っていたものは、本当の意味での天国だったのかもしれない。
【フェイト・T・ハラオウン(BKMG)@遊戯王なのはMAD 死亡確認】
「ふぅ、これで二人ですか。存外力を有しているようでしたが、これなら案外楽勝かもしれませんね」
そして、意識を失った一方通行を見下ろしながら、闇の中から彼女は現れた。
参加者名簿にて
セイバーと記されている英霊(サーヴァント)。
伝説の騎士王。アーサー・ペンドラゴンがその人が、そこにはいた。
順調に聖杯戦争を勝ち進んでいたセイバーであったが、気付けばこの場所にいた。
何でも願い事を叶えてくれるという、聖杯戦争と同様の誘い文句。
マスターも参加しているのならいざ知らず、この状況でセイバーが殺し合いに乗らぬ道理などなかった。
優勝を目指す為に早速参加者を探し回り、フェイトと一方通行の姿を発見した。
強力な魔力を有したフェイトを見て、セイバーが選択した作戦は、彼女特有のスキル『精神攻撃:A+』を活用しての陽動作戦。
相手の弱点を見抜き、想い人の声色を真似て路地裏へ近づかせ、隙だらけのその首元へと渾身の一閃を見舞う。
次いで現れた一方通行にも不意打ちの一撃を当てるだけ。
何とも簡単な作業であった。
「マスターもいれば、もっと効率良く参加者を減らせるのでしょうが……だが、それでは優勝を目指すこともできなくなるか。何とも面倒なものです」
セイバーは『、眼下の一方通行へトドメを刺そうと、『風王結界』にて不可視にした剣を振り上げる。
そこで気付いた。
一方通行の姿がない。
物音もなく、動く気配もなく、一方通行は何処へともなく消えていた。
「な……馬鹿な! 動けるような傷じゃなかった筈だ!」
焦りの声を上げながら周囲を見るも、あるのはフェイトの生首と首のない死体だけ。
一方通行の姿は、その移動した後に出来るはずの血痕さえもない。
ダ、と人外の力で地面を蹴り、月下の市街地を見回す。
だが、誰もいない。静寂で無人の市街地が広がるだけであった。
「逃がした……のか。まさかあの状態から逃げ果せるとは……」
失意と屈辱の中でセイバーは強く唇を噛んだ。
自身の詰めの甘さに怒りを覚えずにはいられなかった。
【一日目/深夜/D-1・市街地】
【セイバー@順調すぎる Fate/Zero セイバー陣営編】
[状態]健康、外道王
[装備]約束された勝利の剣(エクスカリバー)@Fate/Zero、騎士甲冑@Fate/Zero
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~1
[思考]
基本:優勝し、願いを叶える
1:参加者を探し、殺害していく
[備考]
※【MAD】順調すぎる Fate/Zero セイバー陣営編からの参戦です。動画補正で(かなり)外道です
◇
「バレて……ねぇよな。くそっ、何なんだ、あのアマは」
そんなセイバーの、十数メートル先の道路にてエドワード・エルリックは小さくごちた。
その小さな背中には気絶状態の一方通行が背負われている。
一方通行の命の危機を救ったのは、まさにこのエドワード・エルリックであった。
市街地から、切り伏せられる一方通行の姿をエドは確認した。
特技である『背景にまぎれ、自分の存在を他者から限りなく認識しづらい状態にする』を用いて、セイバーに接近。
一方通行を救出し、市街地を進んでいる。
少し振り返れば其処には、険しい顔で市街地を見回すセイバーの姿がある。
自分の特技を誰よりも知るエドであったが、流石に肝を冷やさずにはいられない。
(逃げるには逃げれるだろうが……コイツが助かるか、どうかは……)
見たところ、一方通行の傷は相当に深いものであった。
今すぐにでも治療をしなくては、確実に命に関わる。
いや、それでも助かるかどうかは五分五分以上の賭けとなる。
「気張れよ、オイ……絶対に助けてやるからな」
激励の声を掛けながら、治療が出来る場所へと必死に進むエド。
彼は気付いていない。
一方通行の身体で発生している異常な現象に。
斬られた血管から外に漏出する筈の血液が、まるで見えない血管を通っているかのように循環しているのだ。
ベクトル変換。神業ともいえる緻密な計算と能力操作を無意識の状態で行使し、一方通行は失血を最低限なものに抑えていた。
とはいえ、直ぐに治療をしなければ危険なことに変わりはない。
一人の命を救うために進む錬金術師。
彼らのバトルロワイアルは開始したばかりであった。
【一日目/深夜/D-1・市街地】
【一方通行@とある魔術の禁書目録】
[状態]ロリコン、肩から脇腹にかけての斬り傷、失血(中)、能力(残り27分)にて止血中、気絶中
[装備]一方通行の杖@とある魔術の禁書目録
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]
基本:主催者を殺害する
0:気絶中
1:殺し合いに乗った参加者を殺す
[備考]
※アニメ二期終了後からの参戦です。ニコ動補正でロリコンです
【エドワード・エルリック@ニーサン】
[状態]健康、隠密スキル
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3
[思考]
基本:殺し合いを阻止する
1:白髪頭(一方通行)を治療する
2:甲冑ドレスの女(セイバー)を警戒
[備考]
※ニーサンMADからの参戦の為、背景にまぎれたり、他人に気付かれずに行動することが可能です
【動画紹介】
- 【MAD】順調すぎる Fate/Zero セイバー陣営編
外道なセイバー陣営が順調に聖杯戦争を勝ち進んでいくMAD。
嘘、不意打ち、声マネ、精神攻撃……なんでもござれの外道王が、外道マスターと共に大活躍していく。
最終更新:2012年02月06日 19:49