普通か下等か

「不採用」そんな紙が履歴書とともに帰ってきたことが数え切れないほどある。
失業者、つまり無職。今の私の状態。なぜこんなことになったのか。ワカラナイ
妻が死んだからか、それとも子供たちも全員死んだからか。ワカラナイ
恐らく神様は私のことが嫌いなのだろう。ワカラナイ

ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ

なんでこんなことになったのがワカラナイ。
誰か教えてください。誰か助けてください。

□□□

転送された先はE-1に位置するコンビニだった。
先ほどまで考えていたことが頭をよぎるが、頭の中からそれを追い出す。

「はあ…」

ため息をついた。先ほど追い出したハズの考えが頭のなかによぎる。

神様は私のことが嫌いで、俺のことを玩具としか見ていない。
不幸に嘆く私を見て神様はほくそ笑んでいる。
神様だけでなく私は妻にも子供たちにも見捨てられた。だから一人。
だから失業者。だから無職。ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ…

あわててその考えを頭の中から追い出す。しかし何度も何度もその考えを頭をよぎる。
もう深く考えるのはやめよう…もう忘れよう。
生き残ろう。そうすれば神様もきっと私を好きになってくれるだろう。
動いて死んでしまっては意味がない。ならば動かなければいい。だから

「ここに篭城しよう。そうすれば大丈夫だ。」

暫はとっても愚かな結論を導き出した。

□□□

コンビニの近くに転送された普通の人間、田中仲他はコンビニに向かっていた。
彼はどこにでもいるような普通の人間…のはずである。

「コンビニに行けばなにかあるだろう…」

と田中は普通にドアを開け…自動ドアだった…
心の中で普通にズッコケると、コンビニに普通に入る。すると

「それ以上入るな!でないと撃つぞ!」

先客がいたようだ…その先客はショットガンを構え立っていた。
仕方なく、普通に手を上げる。そして普通に質問した。

「なんで入っちゃいけないんですか?」
「五月蝿い!入るなといったら入るんじゃない!ここから立ち去れ!」

理不尽だなあ…どうしよう…

そう考えた末に説得してみることにした。普通に。

「あのすみません。僕は人畜無害な普通の人間ですよ?」
「どういうことだ?」

息を普通に思いっきり吸うと普通に言った。

「さきほど言ったとおり僕は普通の人間です。」
「誰よりも強くなくて、でも誰よりも弱くない。」
「誰よりも頭が良くなくて、でも誰よりも頭は悪くない。」
「誰よりも足が速くなくて、でも誰よりも遅くはない。」
「誰よりも体重は軽くて、でも誰よりも重くはない。」
「誰よりも身長は高くなくて、でも誰よりも身長は低くはない。」
「誰よりも勝てなくて、でも誰よりも負けない。」
「誰よりも美しくなくて、でも誰よりも醜くはない。」
「誰よりも特別ではなくて、誰よりも普通…そんな人間です。」

長ったらしい普通の説明をし終えて普通に一息つく。恐らく分かってくれたと思う
しかし返ってきたのは予想外の答え。

「なにが普通だ?そんなのただの妄想だろうが。お前みたいなやつなんか腐るほどいる。」

否定…否定だ。そうか…そしてまた答えが返ってきた。

「お前が普通だとしたら私のほうがよっぽど普通だ。」

これには普通に納得できないな。普通に反論をしてみた。

「失業者のどこが普通なのか説明してください。」
「………!!」
「失業者はただの下等な生物。それ以外になにもありません。」
「貴様…!」
「僕と同じにしないでいただきたい。あなたのような下等な生物が普通などとほざかないでください。」
「あなたのような人間は誰からも必要とされません。」
「もしあなたと結婚をした女性がいたら哀れんであげます。」
「あなたとその女性のところに生まれた子供がいるのであれば嘆いてあげます。」
「どうしてあなたのような無能のところへ嫁いだのかと。生まれたのかとね…」
「たぶん死んだんでしょうけどね。可愛そうに…」

そして僕は普通に背を向けコンビニから普通に立ち去る。男は何もせず立ち尽くしたままだ。
そして最後に一つ。

「あなたは死んだほうが世の為になります。下等な生物さん。せいぜい足掻いてみてくださいね。可能性をみせてください。」

そしてコンビニを普通に立ち去る。後ろで下等な生物が怒気を含んだ声音で叫んでいたのは気のせいだろう。
にしても目障りなノイズだな…早くコンビニを立ち去ろう。
急ぎ足でここを普通に放れることにした。
さて…下等な生物はどういう死に方をするだろうな…普通に想像すると普通に笑いが止まらなかった。
きっとコンビニに篭城したまま死ぬだろう…
笑いを堪えつつ急ぎ足で普通に立ち去った。

【F-1/森/一日目・日中】

【田中 仲他】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品×3
[思考・行動]
基本:普通に生き残る
1:ともかくコンビニから普通に放れる。

□□□

彼が去った後、思いっきり叫んだ。
自分という存在をことごとく否定された。しかし納得できるような気がする。

自分のせいで妻は死んだんだ…自分のせいで子供は死んだ…

自虐的な考えが次々と思い浮かぶ。涙が止まらない。なぜ我慢できたのだろう…
そして思いっきり泣いた。妻や子供に謝り続けながら…

神様…なぜ私を生かすのですか…それとも生きなければいけないのでしょうか…

誰か教えてください。

誰か

助けてください。

【E-1/コンビニ/一日目・日中】

【暫 勘太】
[状態]健康、精神的ショック(弱)
[装備]ショットガン
[道具]支給品一式
[思考・行動]
基本:生き残りたい…でも…
1:コンビニに篭城する。

【参加者特徴】

田中仲他
参加者の中では普通の人間…のはず。高校2年生。
自分を普通の人間と思っている。能力はどれを見ても平均的。顔も中の上。
しかし失業者やニートとかを下等な生物とみなして見下している。

暫勘太
もともとは優秀な会社に勤めるサラリーマン。
しかし、クビになり失業者に。
そして立て続けに妻や子供は死に絶えていった。

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最終更新:2012年02月15日 21:20
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